秋姉妹の奇妙な大冒険   作:バームクーヘン2号

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その16

 ところ変わって、ここは地霊殿。

 奥の鏡の間にいる針妙丸と正邪の元にお燐が現れます。

 

「針妙丸さま! 正邪さま!」

「なんだ。お燐。騒がしいな」

「何かあったのか?」

「はい。フェアリーの報告によると、パルスィと勇儀がやられたようです!」

「な、なにぃ!?」

「おいおい、マジかよ……」

「どうやら命蓮寺の一味にやられたようです」

「お、おい、正邪どうするんだ? 貴重な戦力が……」

「フン! まあ、いい。しょせんアイツらは捨て駒だ」

「し、しかし……。正邪。アイツらは我々の主戦力じゃ……」

「大丈夫ですよ。針妙丸さま。私たちにはコレがあるじゃないですか!」

 

 そう言って彼女は、部屋の奥に鎮座ましましている大きな鏡に目を向けます。

 

「おお、そういえばそうだったな! すっかり忘れてたぞ! コレさえあれば、怖いものなど何もない!」

「あの、この鏡……。そんなにスゴいんですか?」

 

 不思議そうな様子で鏡を眺めるお燐に、正邪は含み笑いを浮かべて告げます。

 

「……クックック。そうさ。コイツはタダの鏡ではない。『幻夢鏡』と言ってマジックアイテムを超える存在。……その名もスーパーマジックアイテムなんだ!」

「スーパーマジックアイテム、ですか……! それはスゴそうですね。して、これはいったいどんな力を持ってるんです?」

「おっと、それは企業秘密だ。誰にも教えられん! ……と、言いたいところだが、オマエはよーく働いてくれてるからな。いいぜ。特別に教えてやるよ」

「それは恐悦至極」

「いいか。一度しか言わないからよく聞けよ? ……コイツはな。一言で言えば、持ち主が思い描いた世界をそのまま現実に変えてくれるシロモノなんだよ」

「思い描いた世界……。ですか?」

「ああ、そうさ。……そうだな。例えばの話、私が妖怪の力だけが強くなる世界を思い描いたとしよう。するとなんと、その思い描いた世界が、そっくりそのまま、この鏡を通じて現実の世界へと反映されるんだ」

「へぇー。なるほど。それは確かにスゴイ……。え、それってもしかして……?」

 

 何かに気づいた様子のお燐に、正邪はニヤリと不敵な笑みを浮かべて言い放ちました。

 

「……ああ。そうだとも。この世界の妖怪が急に強くなったのは、ほかならぬ、この鏡の力。そして、その世界を思い描いたのは、他の誰でもない、この私!」

「……そ、それじゃまさか『あの日』ってのは……。もしかして?」

「そうだ! 何もかもぜーんぶ私が仕組んだのだ! ハハハハハハッ!!」

 

 と、高笑いをあげる正邪に、すかさず針妙丸が言います。

 

「おい! 正邪! 助言したのは私だぞ? 妖怪の力をみんな強くして仲間に引き入れようと言ったのは、この私だ!」

「ええ、わかってますとも。自分はあくまでも実行役で、今回の首謀者はアナタですよ。針妙丸さま」

「まったく。……いいか、正邪。このリバースという組織のボスはな。オマエではなく、この私なのだと何度言えば……」

 

 お燐は二人の話そっちのけで、魅入られたように鏡を見つめます。そして彼女が思わず鏡に手を触れようとした瞬間。

 

「あ、そうだ。お燐よ」

「は、はい! なんですか? 針妙丸さま」

「ちなみに、この鏡は一度使うとしばらくは使えなくなってしまうんだ」

「……あ、そうなんですか?」

「ほれ、見てみろ。ここにゲージがあるだろう? コイツが満タンになればまた、この鏡を使えるようになるのだ」

 

 彼女の言うとおり、よーく見ると、鏡の下に温度計のような赤いゲージがあります。そのゲージの赤い部分が端まで届きそうになっています。

 

「ほうほう、なるほど。……って、もうすぐたまりそうなんですかね。これは」

「ああ、そうだ。次にコイツが使えるようになったら、今度こそ世界はひっくり返るぞ! そう! 弱いヤツが上に立ち、強いヤツは弱者となる。文字通り、下克上の世界が完成するのだ!」

「へぇ。……それは実に楽しみですねぇ。正邪さま」

 

 正邪は鏡をなでながら、含み笑いを浮かべ彼女に告げます。

 

「クックック……。ま、それまでもう少しだけ働いてくれよ? お燐。……ああ、そういえば、侵入者の始末、ご苦労だったな」

「ああ。……いえいえ。あれはどちらかというとナズーリンの手柄ですよ……?」

「またまたー。そんな謙遜しなくていいんだぞ? お燐よ。あ、そうだ! 世界を手に入れた暁にはオマエにも領地を分け与えようじゃないか! 世界の半分くらいでいいか?」

「おやおや、それはなんと太っ腹なコトで。針妙丸さま」

「ワハハハッ! 楽しみにしておくがいい!」

 

 そう言って高笑いをする針妙丸を横目に、お燐は『幻夢鏡』に目を向けます。

 

 鏡は異様な雰囲気を放ちながら鎮座し続けています。

 

 ふと、正邪が思い出したように、お燐へ話しかけます。

 

「ああ、そうだ。お燐! そういえば、オマエに聞きたいコトがあったんだ」

「あ、はい、なんでしょうか?」

「典のヤツがどこに行ったか知らないか?」

「……ああ。あたいもあの方に用事があって、フェアリーつかって探してるところなんですが、見つからなくて……」

「まったく。あれほど、こまめに報告しろと言ったのに。アイツは有能だが、いかんせん自由すぎるのが玉にキズだな」

「い、いや、ホントまったくですねえ……」

 

 そう言ってお燐は、思わず苦笑いを浮かべるのでした。

 

 

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