穣子と静葉は地霊殿の近くへとやってきていました。
遠くに宮殿のような建物が見えます。
「ふむ。あれが地霊殿なのね。穣子」
「そうよ! あそこにさとりやお空がすんでるのよ!」
「本来ならば……。ね」
「そう。本来ならば……!」
「それにしても、まがまがしいオーラを感じるわね」
「うん! いかにも敵の本拠地って感じよね!」
「……で、どうやって中に侵入する気なの」
「え……? どうやってって……?」
「このまま正面から入ったらすぐに見つかってしまうでしょ」
「そりゃそうだけど……」
「見つからないように侵入するルートとか、事前に調べてあるんでしょ」
「いや? まったく……」
「……あなた、どうする気だったのよ」
「いやぁー? このカードを使いまくって正面突破かなーって……」
「……いくらなんでも無鉄砲すぎるわよ。それに言ったでしょ。カードを無駄遣いするなって」
「いや、そうは言ってもさ。こんなスゴイ力持ってるんだから使わなきゃもったいないじゃん? それにまだまだこんなにあるし!」
そう言って彼女は、フトコロからたくさんのカードを取り出して見せます。
「はぁ……」
思わず静葉はため息をついて天を仰いでしまいます。と、そのときです。
何か覚えのある気配を、かすかに感じた静葉が、ふと、あたりを見回していると……。
「ねえ! そこの穣子さん! それと……。えーと、そこの赤いお姉さん! こっちこっち!」
「ん……?」
二人に声をかけたのは、鴉を
「あ! アンタは! もしかしてお
「穣子さん! お久しぶりでーす! はーい! お空でーす!」
「アンタ、もう大丈夫なの?」
「はーい! おかげさまで! もうこの通り元気全開でーす!」
そう言ってお空は、陽気にその場で跳ねるようにくるりと一回転します。前にあったときとはまるで別人のようです。
「……アンタ、全然キャラ違うわね。ま、あっちの時がおかしかったんでしょうけど」
「はーい! あの時は本っ当、大変でしたよー! もー!」
「……まあ元気になったようで何よりだわ!」
「……ねえ、二人とも。つもる話をしたいのはわかるけど、ここにずっといるのはキケンじゃないかしら」
「あっ! そうだ! 忘れてた! 二人とも私について来て下さい! 隠れ家でさとりさまが待っていますよ!」
「え!? さとりが!?」
「そう。はやく行きましょう」
お空の案内で二人は、さとりの隠れ家へとやってきました。そして彼女がいる部屋の扉の前まで案内されます。
「さとりさま! 二人を連れてきましたー!」
「ご苦労さま、お空。下がっていいわよ」
「はーい!」
そのままお空は、軽やかなステップでその場から去って行きます。ムダにテンション高いです。
「二人とも。どうぞ。お入り下さい」
「そんじゃ、遠慮なく……」
戸を開けて部屋の中に入ると、部屋の真ん中にあるベッドで体を起こしている、さとりの姿がありました。
疲れからでしょうか。少しやつれているようにも見えます。
「アンタ。……大丈夫?」
「ええ、ご心配なく。少し疲労が出てしまっただけですので」
「ふむ。あなたが地霊殿の主の古明地さとりなのね」
「ええ。はじめまして秋静葉さん。アナタのことはうかがっていますよ。色々裏で動いてくれていたようで……」
「たいしたことはしてないわよ」
「そんな謙遜はいりませんよ」
「……あれ? さとり。そういえば、アンタいつもみたいに心読まないの?」
「……ええ。疲労がたまると心を読む力も弱くなってしまうので、そういうときは、このように普通に会話しています」
「なーんだ。そうなのね。アレ面白かったのに」
「……まあ、やろうと思えば出来ますよ? ……ふむ。穣子さんアナタは今、焼きイモのことを考えてますね?」
「お! さっそくバレた! ほら、姉さんこの人スゴイでしょ!? 心の中が読めるのよ!?」
「……そうね。でも、アナタが焼きイモのことを考えているのはいつものことでしょ」
「う、それはそうかもしれないけど……」
二人のやりとりにニヤニヤしていたさとりでしたが、仕切り直すように真顔になって二人に告げます。
「……さて、穣子さん、静葉さん。お願いがあります」
「あらたまってなによ。お願いって?」
「既にご存じかと思いますが、地霊殿はリバースという組織に乗っ取られてしまいました」
「……ええ。そのよーね」
「奴らから地霊殿を奪い返してくれませんか?」
「モチのロンで、そのつもりよ! ソイツらを壊滅させればやっと穏やかな日々が戻ってくるんでしょーし!」
「ありがとうございます。きっとそう言ってもらえると思ってましたよ」
「ええ! やったるわー!」
と、ヤル気満々な様子の穣子。すると静葉は何やらフクザツそうな表情でさとりにたずねます。
「……ふむ。主さん。ちょっといいかしら」
「なんでしょうか」
「あなたはこの『異変』について、私たちに何か隠してないかしら」
「え……?」
「……ねえ。この『異変』は本当に私たちが解決すべきなの」
「ちょっと。姉さん!? 何を言い出すのよ!」
静葉の思わぬ発言に思わずあぜんとしてしまう二人。構わず静葉はさとりにたずねます。
「……主さん。地霊殿を取り返すためには、具体的に何をすればいいの。ただあの二人を倒せばいいってわけじゃないんでしょ」
「……はい。おっしゃる通り、あの二人を倒したところで何も解決はしません。地霊殿の奥にある『幻夢鏡』を壊して下さい」
「ゲンムキョウ……。ってことは鏡かしら」
「ええ。魔力を持った大きな鏡です」
「……ふむ。きっと強大な力を持ったものなのでしょうね」
「お察しの通り。とても危険なシロモノです。というのも、あれは持ち主の夢を現実に反映させてしまう力を持っているのです」
「夢の具現化……。それは危険ね。鏡の出所とかわかるかしら」
「いえ、そこまではさすがに……。すいません」
「……そう。ともかく首謀者の二人はその鏡の力を使って、今回の『異変』を起こしたということは間違いなさそうね」
「そっか! じゃあ、その鏡をブッ壊せば、この変になった幻想郷も元に戻せるってコトなのね!? そんじゃ、早く正邪ってヤツをとっちめないと! あとなんだっけ、しんとくまる?」
「
「そ、そう! ソイツ! とにかく、まずその二人をなんとかしないと!」
「はい。でも、一筋縄ではいきませんよ。何しろ彼女らはありったけのマジックアイテムを所持しています。私の弾幕や能力も通じませんでしたので……」
「ふむ。それは確かに厄介ね。……でも、きっと大丈夫よ」
「そーよ! なんてったって私たちにはこのすんごいカードがある!」
「ええ、それに、この『異変』を解決するのは私たちじゃないから」
「そうそう! この『異変』の解決するのは私たちじゃ……。って。はぁ……っ?」
「えっ……?」
あっけにとられる二人に静葉は告げます。
「この『異変』は私たちでは解決できないのよ」
「ちょっと姉さん! なに言ってんのよ!? トチ狂ったの!? もしかしてこのカードの副作用とか!?」
「いえ。私は正常よ」
さとりは訝しそうな表情で、静葉を凝視します。どうやら心を読んだ様子。
「……静葉さん。アナタまさか……」
「……わかったかしら。それが私の答えよ。主さん」
そう言って静葉は、不敵な笑みを浮かべるのでした。