秋姉妹の奇妙な大冒険   作:バームクーヘン2号

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その18

 

 夜の暗闇の中で、話をする二つの怪しい人物の姿がありました。

 一人は長い髪を束ねたスカート姿の女性。もう一人はふさふさの狐のしっぽを携えた妖怪です。

 

「……ご苦労さま。もうすぐね」

「はい。ようやくですよ。本当」

「ところで、あの二人はどうするつもり?」

「そうですね。出来れば元のところへ帰してあげたいところですけど」

「そうね。それは私も大いに賛成だわ。……それで、彼女はなんて?」

「要検討中だそうです。色々忙しいのはわかりますけどね。最近なんて呼びかけても、とうとう返事すらくれませんよ」

「そう。ま、彼女らしいわ」

「……さて、それじゃあそろそろ行ってくるとしますか」

「ええ、気をつけてね。幸運を祈ってるわよ」

「ありがとうございます。あなたもお気をつけて。それでは……!」

 

 そう言ってその人物のウチの一人は、一礼とともに姿を消します。

 

 残った方の人物も、空の月を見上げ、しばらく眺めていましたが、その長い髪をかき上げると、ほどなくして姿を消すのでした。

 

 □

 

 

 そのころ穣子と静葉は、さとりの隠れ家を出て、地霊殿の入口の扉の前にやってきていました。

 本当は裏口から侵入しようと思っていたのですが、何やら、さとりが言うには、正面から入った方が安全だろうとのコトで……。

 

「……ふむ、まさか正面から堂々と入ることになるとはね。本当に大丈夫なのかしら……」

「だいじょーぶよ! 館の主がそう言ってたんだから間違いないわ!」

 

 自信満々に答える穣子。思わず静葉がボソッとつぶやきます。

 

「……アナタのその楽天的なところ、たまにうらやましくなるわね」

「姉さんが色々考えすぎなのよ。それはそうと、いよいよね……! 腕が鳴るわ!」

「……穣子。何度も言うけど、余計な戦闘はさけるのよ。私たちの目的はあくまでも……」

「わかってるわよ! 館の奥の何かスゴそうな鏡を壊すんでしょ?」

「……恐らく普通の鏡ではないわ。そう簡単は壊せないでしょう」

「そのためにこのカードの力を使えばいいってコトでしょ? わかってるって。それじゃ入るわよ!」

 

 穣子は扉を開けて館の中に入ります。

 

「おじゃましまーす……?」

 

 館の中は薄暗く、静まりかえっています。二人は物音を立てないように中を進みます。

 

「……静かねー。誰もいないのかしら?」

「ふむ。何かワナがあるかもしれないわ。気をつけて進みましょう」

 

 二人が恐る恐る奥へと進むと、廊下に何かが横たわっているのが見えます。

 

「あれは……!」

 

 二人が急いで駆け寄って確認すると、それはリグルと慧音でした。

 

「……リグル! それに先生!? 二人ともしっかりして!」

「こ、ここは……?」

「地霊殿の中よ」

「何……。地霊殿だと? 私たちは旧地獄街道にいたはずでは……」

「え……? それって」

「いけない。穣子。これはワナよ」

「へっ……?」

 

 そのとき急にまわりが明るくなり、二人の目の前に何者かが姿を現します。

 その特徴的な丸い耳と細い尻尾にあざけるような表情……。そう、その正体は。

 

「……やれやれ。まさか正面から堂々と侵入してくるとは思わなかったよ。せっかく裏口にトラップをたくさん仕掛けておいたのに」

「アンタは……! 出たわね!」

「ネズミの妖怪。……そう、あなたがナズーリンね」

「ハハハッ! いかにも私がナズーリンだ。ここにコイツらを置いておけばきっと寄って来ると思っていたよ」

「この裏切りモノめ! この穣子大明神さまが成敗してくれるわ!! このー! このー!」

 

 穣子はナズーリンに向かって念を送るようなポーズで威嚇します。

 

「……確かに、今のあなたには祟られそうだわね」

「ハハッ! 私を倒す? それはどうかな」

「……穣子! アイツのマジックアイテムに気を付けて!」

「え? どんなのなの? リグル!」

「穣子。来るわよ」

「えっ?」

 

 言ってるそばから光の壁のようなモノが迫ってきて、穣子吹き飛ばしました。

 

「ギャーー!?」

 

 吹っ飛んだ穣子は、もんどりうって壁にぶつかってそのまま倒れてしまいます。

 

「ふむ。これは……。どうやら魔法壁のようね」

「そのとおり。このマジックアイテム『神の見えざる壁』で生み出された魔法壁は、あらゆるものを跳ね返す力を持っている。そして……」

 

 ナズーリンがパチンと指をはじくと、いくつもの魔法壁が発生し、その壁と壁がぶつかった瞬間、バァーーンとはじけ飛びます。

 

「このように壁同士をぶつけることで、爆発を起こすコトが出来るのさ。つまり防御だけではなく遠隔攻撃も可能という、まさに攻防一体の武器というコトになるわけだ」

 

 得意げな様子で説明するナズーリン。そのとき穣子が復活します。タフさだけが取り柄です。

 

「ぐぬぬぬ……。たしかに厄介な力ね! でもっ!!」

 

 穣子は手当たり次第にアビリティカードを発動させると、ナズーリンに突撃します。

 

「ウラァーーーーー!! くらいりゃぁあああああっ!!」

「おやおや。文字通り神風特攻というワケかい。だが、この魔法の壁でキミたちの攻撃はふせぐぞ!」

 

 ナズーリンは穣子の特攻を防ごうと目の前に魔法壁を展開させます。

 

「甘いわよ。ネズミさん。私を忘れないで」

 

 彼女が穣子に気を取られているスキに静葉は、気配を隠して背後に忍び寄ると、すかさずアビリティカードを発動させます。

 

「ん!? しまった! う、動きが!」

「どうかしら。みとり印の金縛りカードは」

 

 彼女が動けなくなると同時に魔法壁が消えてしまい、そのまま穣子の特攻を食らったナズーリンは、吹っ飛んで部屋の壁に激突し、床に倒れ込んでしまいました。

 

「どやぁ!! これぞ秋姉妹ならではの息のそろったツープラトン攻撃ってヤツよ!」

「……協力する気なんてゼロだったくせに」

 

 静葉の冷たい視線もお構いなしに穣子は、両手でピースを作ってリグルたちに向かって勝ち誇っています。

 

「穣子! まだ終わってないよ!」

「ヤツが目覚めたぞ。気をつけろ!」

「えっ!? もう!?」

 

 慧音の言うとおり、ナズーリンはあっさりと起き上がります。やはり彼女も『異変』の影響で強くなっている模様。

 ナズーリンは一息をつくと二人に言い放ちます。

 

「やれやれ、二対一か。さすがに少々分が悪いな。それじゃあ、私も仲間の力を借りるとしようか!」

 

 そう言って彼女が指パッチンをすると。

 

「ほいほい。待ってましたっと」

 

 そう言いながら、どこからともなく現れたのは……。

 

「あ……!?」

「……やはり現れたわね」

「……穣子。それに静葉さん。悪いけど二人にはここで退場してもらうよ」

 

 そう言ってお燐は、二人に向かってふっと笑みをうかべました。

 

 

 

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