秋姉妹の奇妙な大冒険   作:バームクーヘン2号

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その19

「こらぁー! お燐っ! そこのネズミヤローはともかく、アンタまで裏切るとは思わなかったわよ!?」

「ま、悪く思わないでおくれよ。あたいにも色々事情があるんだ」

「……ふむ、どうやら戦うしかなさそうよ。穣子」

「……あんまり気が進まないけど……。やるしかないのね!」

 

 穣子たちはアビリティカードをもって構えます。対するナズーリンとお燐は。

 

「よし、お燐。こんなヤツらに時間をかけるのも面倒だ。手っ取り早くアレをやるぞ!」

「了解! それじゃあフォーメーションG発動といこうか!」

 

 ナズーリンは例の魔法壁をあたりに張り巡らせ始め、お燐は懐から鈍色に輝く銃のようなモノを取り出します。

 

「さて、オマエさんたち! あたいのマジックアイテムはコレだよ!」

「それは……。銃……?」

「そう。その名も『霊銃(レイガン)』さ! 能力を説明すると、使用者の霊力に応じて威力が変わるってヤツだ」

「……ふむ、怨霊を操るあなたに、うってつけの武器ってわけね」

「さて、それじゃお二人さん! いくよ!」

 

 お燐が銃の引鉄(ひきがね)を引くと、無数の青白い光線が発射されます。しかしその光線は穣子たちとは別の方向へ。

 

「へったくそー! どこ狙ってのんよ。私たちはここ……」

 

 と、穣子が挑発した瞬間、光線はナズーリンの作り出した魔法壁にガキガキガキィーン! と、反射して穣子たちの方へ一斉に襲いかかってきます。

 

「ひょげぇえええっ……!?」

 

 間一髪のところで二人はなんとか光線をよけました。

 

「これは……。反射攻撃ってわけね」

「その通り。コイツは壁の角度を変えれば、どこにでも攻撃が出来る! 申し訳ないけど、二人に逃げ場はないよ!」

「ハハハッ! キミたちに未来はないというワケだ」

 

 再びお燐が銃を発射すると、ガキガキガキィーン! と、反射した光線が穣子に命中します。

 

「ギャーーーーーーーーーーーー!?」

 

 口から煙を上げて倒れる穣子には目もくれず、静葉は苦々しい表情を浮かべるリグルたちの方を見ます。

 

「……私たちは、あの攻撃にやられたんだ」

「……ああ、そうだ。光線が、どこから飛んで来るか全く読めなくてな」

「なるほどね。確かに厄介な攻撃だわ。……でも」

 

 静葉は何かに気づいた様子で、二人にフッと笑みを浮かべると、ナズーリンたちの方を向きます。

 

「さあ、次でチェックメイトといこうか。神さま」

「……あら、それはどうかしらね」

 

 静葉は不敵な笑みを浮かべると、二人に言い放ちます。

 

「言っておくけど、私たちはあくまで時間稼ぎに過ぎないのよ」

「時間稼ぎだと……? どういうコトだ」

「私たちは、あくまで前座ってこと」

「……ほう。つまりキミたち以外に真打ちがいるってコトかい?」

「ええ。そうよ」

「それは面白い。それじゃ、今すぐ登場してもらおうじゃないか。その真打ちとやらに!」

「……焦らなくても、もうすぐ来るわよ」

「なに……?」

 

 と、そのときです。

 突然ドォーーンという轟音が鳴り響いたかと思うと、あたりに砂ぼこりが舞い上がります。そして、その砂ぼこりの中に、何者かが立っていました。

 

 その人物は、その黒髪を手で払いながら、あたりを見回すと言い放ちます。

 

「……ふう。よし! どうやらここが敵の本拠地で間違いなさそうね! 私の勘がそう伝えているわ!」

 

 そう、その正体は博麗の巫女こと、博麗霊夢でした。

 彼女はどうやら異変解決モードになっているようで、お祓い棒で武装し、その全身からは赤い殺気がにじみ出ています。

 

 あっけにとられていたナズーリンとお燐でしたが、お互いアイコンタクトをとると、巫女のもとへ向かいました。

 

「あんたはナズーリン! それにお燐も? こんなところに何してるのよ?」

「……おいおい、ノックもせずに入ってくるなんて、ずいぶん不躾(ぶしつけ)じゃないか」

「ノック……? 扉なんてどこにもなかったけど……。 入り口の扉は何か勝手に開いてたし」

「……やれやれ、こんな不良巫女にはお仕置きが必要だな。そう思うだろう? お燐」

「ああ。同感だよ」

「なんでもいいけど、そこどけてくれない? 私はアンタらじゃなくて、奥にいるヤツに用事があるんだけど」

「そうかい。だが、残念ながら、私はキミに用事がある。奥へ行きたければ……」

「あたいたちを倒してみろ!」

「ふーん。どくつもりがないなら退治するまでよ!」

「お燐! やるぞ!」

「ほいきた!」

 

 二人はすかさず例のフォーメーションを展開させます。

 

「さあ、よけれるモノならよけてみろ!」

「……ん? 何する気よ?」

 

 お燐が銃の引鉄を引くと、いくつもの光線が放たれ、壁に跳ね返って霊夢に襲いかかります。

 

「うわっ!?」

 

 霊夢はそれをサッとかわします。

 

「ちょっと! いきなり何するのよ!?」

「先手必勝ってやつさ! 異変解決モードのキミは普段より強いからね」

「ふーん。あ、そういや聞いたわよ。アンタら弾幕ごっこする気ないんだってね? そっちがその気なら、こっちもその気でいかせてもらうわよ!」

 

 そう言うと霊夢は陰陽玉を取り出し、それを床で(まり)つきのように弾ませ始めます。

 

「アイツからもらった特製陰陽玉の力、……見せてあげるわ!」

 

 霊夢はその陰陽玉を手に持っているお祓い棒でグワァラゴワガキーン! っと、はじきます。

 

「む、何をする気だ……?」

 

 するとその陰陽玉は、あちこちに反射しながら跳ね飛び回り、魔法壁を次々と壊していきます。そして、あっという間に全部の壁を打ち砕いてしまいました。

 

「なんだと……っ!?」

「ふふん。次はアンタらがこうなる番よ!」

 

 間髪入れず、彼女の陰陽玉がゴム玉のようにはじけとびながら二人に襲いかかります。

 その様子を静葉たちはボーゼンと見ています。完全に見物客です。ちなみに穣子はまだ気絶したまま。まったくのん気なもんです。

 

「す、すごい……。本気の巫女ってこんなに強いんだ!」

「……もしかして、秋神さまが言っていた時間稼ぎとは……」

「ええ、そうよ。彼女がここに来るまでの時間よ。私たちが地霊殿に入るときに彼女の気配がしたのでね」

「……そうだったのか。しかし、なぜ霊夢を?」

「『異変』の解決は巫女の専売特許だもの。それにこの世界のバランスと秩序がずっと崩れたままだったのは、彼女が動かなかったから。でも、ここにきてようやく彼女は動き出した。おそらく元凶の手がかりを掴んだのでしょう」

「……なるほど?」

「そうこうしているうちに決着ついたみたいよ」

 

 静葉の言うとおり、ナズーリンとお燐が地面にヘタり込んでいます。どうやら霊夢が圧倒的勝利をおさめたようです。

 

「うーん。こりゃたまらん。しかたない、ここはいったん退却するぞ。お燐!」

「おっけー。たいさんだー! やれ、にげろー!」

 

 二人はそのまま奥の部屋へと逃げていきます。心なしかなんか楽しそうに見えますが……。

 

「こら! ちょっと待ちなさいよ! アンタたちに聞きたいコトあるの! ってもう! 人の話聞きなさいよ!」

 

 霊夢も二人を追いかけて、奥の部屋へと行ってしまいました。

 

「あ、行っちゃった」

「……さてと私たちも追いかけましょう。奥にある鏡を壊さなくちゃ」

「鏡……?」

「事情はあとで話すわ」

 

 静葉はキョトンとしているリグルと慧音を尻目に、穣子をたたき起こします。

 

「ほえ……!? もう朝?」

「さあ、行くわよ。いよいよ最終決戦だわ。この長きにわたる戦いにピリオドをうちましょう」

 

 静葉は皆にそう告げると、奥の部屋へと向かうのでした。

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