そのころ、穣子達は、お空を地霊殿にいるさとりのところへ返すべく、地底の中を、えっちらおっちら進んでいました。
「はぁー。地底ってジメジメしててやだわー」
「そう? 私は好きだけど」
「……そりゃそーでしょーよ。アンタは元々地底の妖怪なんだもの。ヤマメ」
「うにゅーん……」
「ん? どうしたお空。何か見つけたのか?」
にとりの問いに対してお空は指で示して答えます。その方を見てみると遠くに橋が見えます。そしてその橋のたもとには人影が。
どうやら女性のようです。緑色の目で何やらコチラをねたましそうに見ています。
「ねえ、ヤマメ。なんかいるんだけど……?」
「ああ、アイツは橋姫のパルスィだね」
「知り合い?」
「まぁ……。多分、部分的にそう。一応」
なんとも歯切れの悪い答えですが、この橋をこえないコトには先に進めません。
「よーし、わかったわ! なんかイヤな予感するから空飛んでとびこえちゃいましょう!」
「あ、それ名案。どっちみちあまり関わりたくないし」
「そんじゃ、にとりとお空も、ココからは飛んで一気に進むわよ! 準備して!」
すると、にとりが困った様子で告げます。
「お、おい、ちょっと待ってくれよ。穣子! お空のヤツ、なんか空飛べないみたいなんだけど……」
「は……?」
三人がお空を方を見ると、たしかに彼女は、一生懸命に羽根をバタバタさせてはいるものの、全く飛べる気配がありません。
まるで生まれたてのヒナのようです。
「……あちゃー。飛び方も忘れちゃったのね。んじゃ、アンタが背負ってあげなさいよ! にとり!」
「えぇ……!?」
「元はと言えばアンタがその子に変な実験したからそうなっちゃったんでしょ!? 自業自得よ! さあ早く!」
「ちぇっ……。何で私が……」
ぶつくさ言いながらにとりは、しぶしぶお空を背負います。お空は「うにゅー」とうれしそうに鳴きました。
「じゃあ、いくわよ。セーノ……!」
穣子の合図で四人はピョイっと宙に飛び上がると、そのままブーンッと橋を飛び越えます。
パルスィは、穣子たちの様子をじっと眺めていますが、特に追いかけてくる気配はなさそうです。
「よーし、特に何もなさそうね!」
「だと、いいんだけどね……」
「ちょっとヤマメ! 不安になるようなこと言わないでよね? 大体何なのアイツは!?」
「
「……へえ。そりゃ相手にしなくて正解ね。何されるか分かったもんじゃないわ」
そのまま四人が更に進むと、何やら急にあたりが明るくなりました。
地面に降りてみると、そこは建物が並び、灯りもついていて、さっきまでとは打って変わって、何だか活気が感じられる場所です。
「ヤマメ。ここは? 急に賑やかなんだけど」
「ここは旧地獄街道だよ」
「へー。街道ってコトは、お店とかあるのかしら? 何か楽しそうね」
「気をつけてくれよ。ここは鬼が出るから」
「え!? 鬼?」
「そう」
「鬼って。……あの鬼?」
「そう。あの鬼。ここは鬼たちのナワバリなんだ。変な行動すると、目をつけられてしまうよ」
「そ、そうなのね……。じゃあ、面倒ゴトに巻き込まれないうちに、さっさと抜けちゃうとしましょうか」
と、再び飛ぼうとする穣子を、にとりが呼び止めます。
「お、おい、ちょっと待ってよ。穣子!」
「今度は何よ!?」
「……ゴメン、ちょっと休ませてくれないか? お空をずっと背負ってて疲れたよ……」
「えぇー? こんなところで!? っていうか、なんでまだ背負ってんのよ!?」
「だって降りようとしないんだもん……。コイツ」
その通り、お空はまるで子泣きジジイのように、にとりの背中にぴったりとくっついてます。
絶対に離れないぞという、強い意思表示が見て取れます。
「おいおい、お空。さすがにもう自分で歩いてくれよ。にとりが疲れちゃうだろ?」
しかしヤマメの言葉にもお空は、ぷいっとそっぽを向いてしまいます。もはや、だだっこです。
「はぁ……。無理矢理引き離して大泣きされても困るし、仕方ないわね。じゃ、そこの路地で少し休もうか……」
と、穣子たちが路地裏に入ろうとした、そのとき!
「よお。オマエら、そこで何してるんだ?」
突然、四人の目の前に盃を持った大柄な女性が姿を現しました。
その額には立派な赤い角が……って、まさか彼女は……!?