世界に掛けられた魔法が解かれていく。
全てが終わる。
もう何をしても変わりはしない。
思い出すのは大切な人。
時の庭園から落ちていくフェイトを助け出そうと、必死に手を伸ばしてくれたことがあった。
手を伸ばす。
掴める手はなく、記憶にある温もりだけがよみがえる。
それは二度と触れることのできない温もりだった。
枯れることのない涙が溢れていく。
「けど、もう悲しむ必要もない」
この悲しみともお別れである。
喜びも悲しみも、あと少しですべて忘れてしまう。
終わりが近づく。
そうして諦めとともに目を閉じようとした時だった。
さなか、聖王のゆりかごを中心に何かが広がっていく。
「あれは」
とてつもなく膨大な魔力だった。
何の魔法かはわからない。
だが、何かが生まれようとしていた。
元に戻っていく世界。
それと同時に、新しく作られていく世界があった。
フェイトは魔法の深淵に触れている。だからこそ知覚できることがあった。
その世界に三つの光が向かっていく。
「なのは、それにアリシア」
確信に近いものがあった。
あの光はなのはとアリシアである。
ただもう一つの光に関してはわからなかった。
しかし、今は気にする必要はない。
重要なことは、なのはがまだ消滅していないということだ。
閉じようとした意識を蘇らせる。
「待って」
再び、雷神化する。
次元を超えた存在であれば、あそこに跳ぶことができる。
「私も、そっちに……!」
立ち上がる。
フェイトは何もかもを諦め、ただ終わりを待っていた。
だがそんなフェイトはもういない。
この世で一番大切な人のためであれば、何度でも立ち上がることができた。
何よりも大切で、かけがいのない存在。
世界を天秤にかけたとしても高町なのはに勝ることはない。
「諦めない」
全身に活を入れる。
「だって、まだ!」
目に力が宿る。
「キスしかしてない!!」
想いが募っていく。
力が溢れていき、周りに電気がほとばしっていく。
飛び上がる。
全速力で向かっていく。
(待っててなのは)
向かう先は新たに生まれようとしている世界。
そこにはなのはがいる。
フェイトが知っているなのはがいる。
フェイトを知っているなのはがいる。
家族もいる。
姉がいる。
亡くなってしまった母がいる。
「母さん」
過去、夢に見た時間がある。
母と姉、アルフと共に過ごす時間。
求めていた時間がそこにはあるかもしれなかった。
(必ず、また会いに行く)
元に戻りゆく世界を抜け出し、新たに構築されていく世界へと入り込む。
フェイトは世界を超え、次元のその先へと跳躍した。