高町なのはくん2   作:わず

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なのは VS アクトロス

 

 凄まじい攻防が繰り広げられる。

 また攻防というよりは攻撃と攻撃の応酬だった。

 

 武器が壊れることを考慮せず、力の限りにメギドを振るう。

 剛剣の頑丈さは異常であり、未だ刃こぼれすらなかった。

 

 なのはが二刀で受け止める。

 続けざまにアクトロスの蹴りが入る。

 

 二足一刀の間合いが開く。

 

「おまえ」

 

 追撃はしない。

 

「二刀流は本領ではないな?」

 

 立ち止まり、問いかける。

 

「わずかではあるが、動きの継ぎ目に隙がある」

 

 そもそも二刀流は初めてである。

 ここまで応戦できていること自体普通ではない。

 

「咎めることはせんし、戦い方はおまえの自由だ──だが容赦はせん。このまま勝たせてもらうぞ」

 

 アクトロスが向かってくる。

 

(もう、大丈夫)

 

 二刀流は初めてである。

 初めてではあるが、両手に持った時から妙に馴染んでいた。

 

 思い出すのは兄と姉の修行風景。

 朝もやを斬る小太刀。

 無駄のない足運び。

 

 なのはの中にある御神流剣士としての感覚が研ぎ澄まされていった。

 

 間合いに入ると同時に技を繰り出す。

 

 高速の四連斬り。

 小太刀二刀御神流、薙旋(なぎつむじ)

 

 二撃が防がれる。

 その後の二撃がアクトロスを斬りつける。

 

 足と腕を負傷する。

 継ぎ目に隙のない無駄なき攻撃。予想外の連撃に一度距離を取る。

 

「なんだ、不慣れな真似でもしていたのか? 随分と器用なことをするもんだな」

「そういうわけじゃないけどな」

 

 本来、御神流とは二刀流である。

 二刀を持ったことにより、今まで見てきた御神流の技が体に染み込んでいっていた。

 

「決着をつけよう」

 

 二刀を構える。

 

「無論だ」

 

 その意気に応える。

 

 二人の体力は限界を超えていた。

 次で決まる。互いにそれを理解していた。

 

 メギドが輝き出す。

 

「最後の一撃だ、存分に受け取るがいい」

 

 振りかざす。

 間を置くことなく、なのはに向かって振り下ろされた。

 

 王域魔法、王剣。

 

 剣王の一撃が放たれる。

 

 それに対し、なのはも魔法を発動させた。

 胸の内に刻まれた新たな魔法。

 

 なのはもまた、王の資質を持っていた。

 ただ、その資質は王の資質の中でも異質だった。

 

 

 

 王は神に選ばれ、その責は神に帰す。

 ただ一人、民を持たぬ王は他の王を断罪する役目を与えられていた。

 

 王域魔法、ディバイン・ライト・オブ・キングス。

 

 

 

 

 王剣をかき消す。

 跡形もなく、何もなかったかのように消し飛ばしていた。

 

 王を断罪する魔法。

 それがなのはの王域魔法である。

 

 駆け出す。

 

 神速により、アクトロスの横を駆け抜ける。

 胴体には魔力斬撃の跡が残っていた。

 

 もはや反応することはできなかった。

 

「高町なのは」

 

 膝をつく。

 

「おまえの勝ちだ」

 

 アクトロスが倒れる。

 

 決着がつく。

 高町なのはと勝利となり、それはフィラム軍の勝利を意味していた。

 

「なのは」

 

 フェイトが近くに来る。

 続くように他の面々も集まってきていた。

 

「みんな勝ったのか」

「うん。なのはが消耗させてなかったら、どうなってたかはわからなかったけど」

 

 フェイトがそのように話す。

 気を遣ってとかではなく、本当にそう感じていた。

 

「ぶい!」

 

 アリシアがピースをする。

 そしてなぜか腕には猫がいた。

 

(危ないから保護したのかな)

 

 やけに目つきの悪い猫だなと印象を受ける。

 

「あたしも勝ったわ!」

「アリサ……すごいなおまえ」

 

 驚きを隠さずに褒める。

 そのことを非常に喜んでいた。

 

「当然よ!」

 

 アリサが胸を張る。

 そのとき、マントが開いてしまい裸体が晒されてしまう。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「うお! 何も着てねぇ!」

 

 なのはは先ほどよりビックリしていた。

 

「こっち見んなバカ!」

 

 アリサがグーパンチを繰り出す。

 顔面に直撃する。

 

「ちょ、やめろ! わかったから、とりあえずこれ着ろ」

 

 なのはがシャツを脱ぎ、アリサに渡す。

 すぐにシャツを着込む。肩から腰までやぶけた斬新なデザインだが、ないよりはマシである。

 腰から下はマントで隠し、落ちないようにきつく縛っておく。

 

「ふー、ふー」

 

 何やら鼻息が聞こえてくる。しかも荒い。

 

「どうしたフェイト?」

 

 なのはが心配そうに声を掛ける。

 

「どっか痛めたのか?」

 

 今、なのはは上半身裸である。

 フェイトは興奮していた。

 

 ゴクリ。

 

 固唾を飲み込む音が聞こえてくる。

 

「なのは」

 

 フェイトが手を伸ばす。

 しかし、それは静止させられた。

 

「ストップ」

 

 アリシアがフェイトとなのはの間に入る。

 

「だーめ」

「そんな」

 

 とても残念そうにする。

 

「す、少しだけ」

「ヒドゥン」

 

 フェイトにタイムストップを掛ける。

 

「アルフ、バインドで縛って」

「え、でも」

 

 アルフはフェイトの使い魔である。そのようなことできるはずもない。

 無言でアルフを見る。その目に逆らうことはできなかった。

 

「う……フェイト、ごめんよぉ」

 

 フェイトがバインドで縛られる。

 時の進みが戻る。フェイトに自由はなかった。

 

「え? ちょっと!」

「少しおとなしくしててね」

「ア、アリシア」

 

 がっくりとうな垂れる。

 姉には逆らえなかった。

 

「高町君」

 

 レイニアが近くに来る。

 

「勝ったのね」

 

 倒れているアクトロスを確認する。

 

「はい」

 

 アクトロスは倒した。

 これで戦いが終わる。

 

 空気が弛緩し始めたときだった。

 

「まだだ!」

 

 皆、声のするほうを向く。

 そこではリッジラインが立ち上がっていた。

 

「まだ、終われない!」

 

 足が震えていた。

 どう見ても戦える状態ではない。

 

「ライン」

「俺はおまえを救う。必ず助けてみせる」

 

 拳を握りこむ。

 腕が折れようと、自分一人になろうとも、リッジラインの心は折れていなかった。

 

「ティル、頼む」

『兄弟……』

 

 ティルの言葉に情が入る。

 

『死ぬかもしれないぜ』

「構わない」

 

 これ以上の確認は不要だった。

 

『そうかい、クールだぜ兄弟』

 

 ティルはその気持ちに応えることにした。

 

『マスター』

 

 レイジングハートが点滅する。

 

『急ぎ、ご友人から魔力を分け与えてもらってください』

 

 珍しく焦った様子だった。

 聞き返す間もなく、レイジングハートが続ける。

 

『神域魔法が来ます』

 

 焦り具合に納得する。

 それであれば、なのはも神域魔法で対抗しなければならない。

 

『それと今すぐそのうす汚い黒剣を叩き壊してください』

「えっ、なんで」

『そうしないと神域魔法が使えません』

「ど、どうして!?」

 

 わけがわからなかった。

 

『容量オーバーです。私をマスターに刻めば、心が壊れるか脳が焼き切れれます。マスターが浮気したせいで私の居場所がありません。早くどかしてください』

 

 次から次へと情報が流れてくる。

 なんとなく上辺だけの理解はしているが、ちゃんとはわかっていなかった。

 だが今はそれで十分である。

 

「いや、でも、これ……壊れないと思うぞ?」

 

 黒剣は非常に頑丈である。

 ちょっとやそっとじゃ傷すらつかない。

 

 なのはがあたふたする。

 そうこうしているうちにリッジラインの準備が終わっていた。

 

「行くぞ」

 

 魔法が発動されようとした時だった。

 

「ふむ」

 

 レイニアの横には一人の男が立っていた。

 白衣を着ており、この場には不釣り合いな恰好である。

 

 手に魔法陣が展開されており、それをレイニアにかざしていた。

 

「だ、誰ですか?」

 

 レイニアが一歩離れる。

 それを見てリッジラインが魔法の発動を中断する。男の排除を優先するべきかと考える。

 

「プレシア・テスタロッサの症状と似ているな」

 

 そう話す男はジェイル・スカリエッティだった。

 

「ドクター」

「やあ、なのは君。壮健そうで何よりだ」

「どこをどう見たらそう思うんだよ」

 

 なのはは倒れそうなほどボロボロである。

 

「さて、リッジラインといったかな?」

 

 ジェイルがリッジラインに近寄る。

 

「取引をしないかね?」

「取引だと」

 

 訝しげに睨む。

 

「私ならこの女性の病を治すことが可能だ」

「何?」

 

 聞き捨てならない内容だった。

 だがどう考えても怪しい。

 

「どう信じろと?」

「信じないのであればそれはそれで構わないさ」

 

 リッジラインが嫌な表情をする。

 正直に言えば苦手なタイプである。

 そして今は気持ちに余裕がない。次に面倒な話し方をしたら叩き潰そうと考える。

 

「君と戦った少女がそこにいるだろう?」

 

 フェイトを指し示す。

 

「彼女は人造魔導師でね。造られた存在なのさ」

 

 信じられなかった。

 どう見ても人間と変わらない。

 

「そして、技術の基礎を構築したのは私さ」

 

 ジェイルは生命に関する知識に精通している。

 また生命だけでなく、知識の幅は広く深かった。

 

「少しは信憑性が出たかな? 彼女を造れるのだから、病を治すことなど……」

「パパ」

 

 言葉が遮られる。

 

「その言い方嫌い」

 

 アリシアがフェイトを抱きしめる。

 ジェイルに向けられた目線には非難が込められていた。

 

「私は微力ながら彼女の誕生に携わったに過ぎない。そして私にはそれしか出来なかった。生まれてきたことを祝福することしかできなかったのだ」

 

 ジェイルがアリシアを見る。

 アリシアの表情は冷たい。

 

「今度は笑顔を与えたい。幸せになってもらいたいのだ。どうだろう? 私に病を治す機会を与えてくれないだろうか?」

 

 ジェイルがアリシアを見る。

 アリシアは笑顔だった。

 

 ジェイルは一安心する。

 

「私の手を取る気にはなったかい?」

 

 リッジラインが考える。差し出されたのは悪魔の手。

 だとしても、自身の気持ちに逆らうことはできなかった。

 

 レイニアを救いたい。

 それが叶うのであれば、どれだけ怪しくても手を取ってしまうのは止められなかった。

 

「本当に治せるのか?」

「もちろんだとも。それに治す以外にも方法はある」

 

 ジェイルが楽しそうにする。

 なのはは嫌な予感がした。

 

「そうだな……普通に治すのもつまらない。特別にコースも選ばせてあげよう。充実したラインナップを用意してある。必ず満足のいくサービスを提供することを約束しよう」

 

 雲行きが怪しくなる。

 ジェイルはそのコースとやらを説明していった。

 

「一つ、生身の体を捨てる戦闘機人コース。二つ、脳髄を移植し他人の体で再スタートコース。三つ、子を孕み自分の記憶を転写して自分が自分を生む自己完結型転生コース」

 

 ジェイルが両手を広げる。

 

「さあ選びたまえ! いずれも素晴らしい人生を送れることだろう!」

 

 選択を迫る姿は悪役そのものだった。

 

「普通に治せ」

 

 なのはがすねを蹴る。

 

「痛いではないか、なのは君」

 

 痛みによりジェイルからは大量の脂汗が出ていた。

 

「ごめんね、パパは悪い人じゃ…………悪い人なの。ごめんなさい、けど腕は確かだから」

 

 アリシアがフォローしようと思ったができなかった。

 

「何が望みだ?」

 

 リッジラインが問う。

 

「私たちをこの世界の住人として受け入れてほしい。その手伝いを君にして欲しいのさ」

 

 ジェイルはラトリアの住人となることを望んでいた。

 

「無理だ。俺は反乱軍として自国に弓を引いている。その手伝いはできない」

 

 リッジラインの表情に暗い影が差す。

 

「知っているとも。そう卑下しなくてもいい。君には君の役割がある。十分に役に立つさ」

「……何をすればいい」

「私が望む全てを」

 

 悪魔の取引だった。

 だがリッジラインは承諾した。

 

「交渉成立かな?」

「……ああ」

「では最初のお願いだ。彼女たちが起きた時に君から説明をしてくれたまえ。私たちが君たちと仲良くしたいということを」

「わかった」

 

 交渉が終わる。

 その場から離れ、ずっと探していた人物の元へ行く。

 

「話は終わったよ」

「……そっか」

 

 沈黙が流れる。

 再会を果たしたのだから言うべきことがある。

 なのだが、どことなく気恥ずかしさを感じていた。

 

「じゃ、引き上げようぜ」

 

 耐え切れず、ジェイルに背中を向けた。

 

「なのは」

 

 立ち止まる。

 

「……うん?」

 

 振り向かず、返事だけをする。

 

「風邪、引かなかったかい」

「……うん」

「そうか、ならいいんだ」

 

 やり取りはそれだけ。

 それだけだが、二人の間において気持ちを伝えるには十分だった。

 

 会えてよかった。

 口にはできないが、その気持ちは伝わっていた。

 

「……っ」

 

 声が出ないように我慢する。

 バレないように涙を拭い取る。

 

 ジェイルは上を向いていた。

 

 お互いに見られないように背中を向け合っていた。

 

「もう、無器用なんだから」

 

 横から見ていたアリシアが言う。

 嬉しくて涙が出てくる。それを拭いながら、二人のもとへと向かった。

 

 

 

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