施設内を走っていく。
なのはが目的の場所へと到着する。
「はやて!」
ドアを開けて部屋を見渡す。
はやてはベッドに上にいた。
「なのは君!」
「大丈夫だった?」
「うん、平気や」
「良かった」
無事な姿を確認して一安心する。
「って、うわ!」
はやてが仰天する。
「なのは君のほうこそ大丈夫なん?」
なのはの胸には大きな傷跡があった。
すでに血は止まっており、傷も塞がっている。ユーノの回復魔法のおかげである。
ただこの結果にユーノは不思議がっていた。とりあえず止血だけでもと思い回復魔法を掛けたのだが、思った以上に効果が出ていた。
「もう平気、それよりここから出よう」
なのはが背を向ける。
そこにはやてが慣れたように乗っかる。
「……ごめんな」
「うん?」
「あのとき、助けられなくて」
はやてが連れていかれそうになったとき、なのはは動けずにいた。予測不能の事態だったとはいえ、こんな怖い思いをさせるつもりはなかった。
「ええよ」
ふわっと優しい匂いを感じる。
「助けに来てくれるって信じてたから」
はやてはなのはの肩に顔を乗せていた。
「守護騎士のみんなも守ってくれてたしな」
「そっか」
外に出て、みんなと合流する。
「連れてきた」
「ふむ、それでは転移の準備をしよう」
ジェイルが連絡を入れる。
『座標を送る。転移装置の起動を』
『ええ、わかったわ』
プレシアから了解の返事が来る。
これから時の庭園に移動し、ジェイルがはやての診察を行う予定である。
隔離されていたはやての体調が気になるため診察を、そして重症であるなのはの治療が行われることになっていた。
その予定ではあるのだが、時間が経つにつれて状況が変化していた。
なのはの傷がほぼ塞がりつつある。それも異常な速度で治っていた。
時の庭園に移動している頃には、治療の必要がなくなっているかもしれないくらいだった。
(ジュエルシードの影響と推察するのが妥当といったところだろうか……諸々落ち着いたら調べる必要がありそうだね)
なのはを観察しつつ、今後やるべきことをリスト化しておく。
そしてその観察されていたなのはが声を上げる。
「あの、さ」
なのはに一筋の汗が流れる。
何やら気まずい雰囲気となっていた。
「何かあるなら言ってくれない?」
「別に、何もないけど」
アリサとフェイト、二人がなのはを見ていた。
それも両側からジーっと、ただ見続けていた。
「あの」
背中にいるはやてが話す。
「こちらの方々は?」
「フェイトとアリサ、友達だよ」
二人の圧が増す。
なのはは恐怖を感じていた。
「そうなんやね、二人とも随分と別嬪さんやな」
「あ、ああ」
なのはが肯定する。
それを聞いた二人は笑顔になっていた。
「フェイト・テスタロッサです。よろしくね」
「アリサよ」
「うん、よろしく」
はやてが二人と握手する。
「なのは」
フェイトから優しく声を掛けられる。
(機嫌、治ったみたいだな)
ほっと胸を撫でおろす。
「背負うの代わるよ。ケガしてて辛いでしょ?」
そう提案すると同時に、はやてが握手していた手を離した。
「大丈夫や、なのは君頑丈やし」
はやてが代わりに返答する。
しかも離れる気はないと意思表示するかのようになのはの首に手を回す。
「ダメだよ。無理させちゃ。ほら、こっちおいで」
フェイトが手を広げる。
「いや、今のところ問題ない……」
なのはが断ろうとする。
だがフェイトに睨まれて全て言い終わる前に口を閉ざしてしまう。
再び機嫌が悪くなる。
乱高下する機嫌に混乱する。
なのははどうにかなってしまいそうだった。
「主、ただいま戻りました」
近くに守護騎士一同が降り立つ。
それからはやての元へ行き、全員が片膝を着いた。
「前も言うたけど、そないなことせーへんでええよ」
困った表情をする。
こういった扱いは慣れていないし、どうにも他人行儀で寂しかった。
「とりあえず立ってもらえへん? 落ち着いて話せへんよ」
「はっ」
命令と受け取り、立ち上がる。
「高町なのは」
なのはが見上げる。
「主のこと感謝する。後は私が代わろう」
シグナムが両手を広げる。
はやての腕の力が増す。離れる気はないらしい。
しかし、対策を練っていたものがいた。
アリサが接近し、わきをくすぐりまくる。
「うひゃあ! な、なにすんねん!」
腕の力が弱まる。
「フェイト今よ!」
その隙にはやてを引きはがした。
そのままシグナムへと引き渡す。
「あ、主」
落とさないように抱きかかえる。
腕の中のはやては少しだけむくれていた。
「フェイトちゃんのいじわる」
「はやてが強情すぎるんだよ」
仲良くなるの早いな、となのはは呑気なことを考えていた。
「高町」
「なんだ?」
「勝ったのか?」
アクトロスに、ということだろう。
「なんとかな」
事実であるため肯定する。
ギリギリとはいえ、勝ちは勝ちである。
「そうか」
神妙な面持ちをする。
「できることならば、この目で見たかったものだ」
強者同士の戦い。
武人であれば興味を持つのは当然である。
しかも剣士同士の果し合いとなればなおのことだった。
「なのは君」
今度はジェイルに話しかけられる。
「転移の準備が完了した」
「わかった」
はやての容体を診るため、時の庭園に行くことを守護騎士に伝える。
守護騎士が了承し、時の庭園には一緒に行くこととなった。
「君たちも来てもらおう」
リッジラインに指示を出す。
時の庭園に四英雄も連れていくこととなった。
「大丈夫かよ」
なのはが心配そうにする。
「君がいれば大丈夫さ」
「お、おう」
なんとも信頼厚い言葉だった。
「待ってください!」
話を聞いていたレイニアが止めに入る。
「彼らを連れて行かれては困ります」
ジェイルが振り向く。
「おっと、忘れるところだった。君にも来てもらおう」
「……なぜ、私を?」
レイニアがデバイスを取り出す。
「大変申し訳ないが時間が差し迫っている。話は船でするとしよう。アリシア、お願いできるかい?」
「うん」
タイムストップが発動する。
レイニアは完全停止していた。
「アルフ」
「あいよ」
アルフがレイニアを肩に担ぐ。
それから全員が魔法陣の中に入った。気づけば結構な大所帯である。
「では行こうか」
転移が発動し、なのは一行が時の庭園へと移動した。