高町なのはくん2   作:わず

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おでかけ

 

「てことなんだけど」

『ふむ』

 

 なのははすずかについて相談をしていた。

 

『もう少し情報が必要だね』

 

 現状において結論を出すのは難しかった。

 

『月村すずかから話を聞いたらまた連絡してくれるかい?』

「何聞いておく?」

『飛ばされる直前のこと、そのほかに普段と変わったことはなかったか、それらを聞いて欲しい』

「わかった」

 

 相談を終える。

 この場にすずかを連れてきて、ジェイルと直接話してもらうことも考えた。

 それでも良かったのだが今は止めておいた。

 

 理由はすずかを不安にさせないためである。

 少し落ち着いたとはいえ、精神的に万全の状態とは言えない。ジェイルと会話をさせてあまり不安を抱かせることはしたくなかった。

 ジェイルは人を弄ぶ傾向がある。敢えて不安を煽るようなことを言うことも十分に考えられた。

 そのため、今回に関しては間接的にやり取りをすることにしていた。

 

「あ、それと」

『なんだい?』

「家族が話をしたいみたい。いいかな?」

『構わないよ』

 

 待機していた恭也を連れてくる。

 面白そうと言い、美由希も同席した。

 

「初めまして、兄の恭也です」

「美由希です!」

 

 ジェイルが名乗り返す。

 挨拶もそこそこに、恭也が本題へと入っていった。

 

「まず、なのはとはどのような関係なんですか?」

『利害関係者、といったところだね』

 

 仏頂面の恭也が眉をひそめる。

 

「利害?」

『彼は驚異的な戦闘力を持っている。私はひ弱で頼りない存在だ。ただ知恵と知識には少しばかり自信があってね。力を貸してもらう代わりに、助言を提供させてもらっているのさ』

「十にも満たない子どもを大分評価しているんですね」

『適切に評価をしているつもりだよ。それに、なのは君の力量に関してはあなた方のほうが理解しているのでは?』

 

 言葉に詰まる。

 ジェイルの言葉を否定することができない。

 ちゃんと確かめたわけではない。そのため断言することはできないが、なのはは以前よりも強くなっていた。

 それもとてつもなく強くなっており、恭也が油断できないほどだった。

 

 そしてここまでジェイルと話して感じたことがある。

 恭也はジェイルのことを苦手だと感じていた。

 

 この手合いとはそりが合わない。

 

「わかりました」

 

 なるべく早めに切り上げようと考える。

 

(いや、なのはのためだ。好き嫌いで判断するべきではない)

 

 なのはが絡む事態であるため、やはりしっかり話を聞こうと考え直す。

 

「これからなのはにさせようとしていることを聞かせてくれますか?」

『承知した。とはいえ今のところ具体的に決まっているわけでもない。先ほどなのは君に伝えた内容と同じになるが構わないかい?』

「はい」

 

 宣言通り同じ内容を話していく。

 恭也も現時点で疑問はなく、特に質問もなかった。

 それほど長くは掛からず、話はすぐに終わることとなる。

 

「じゃあなドクター」

『それではまた』

 

 通信を切る。

 恭也は小さい溜息をついていた。

 

「食えない男だな」

 

 なのはが心労を察する。

 その気持ちは痛いほど理解できた。

 

「お疲れ」

 

 恭也を労る。

 だいぶお疲れの様子だ。

 そして、やはりすずかを連れてこなかったのは正解だと実感していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 玄関で靴を履く。

 今日は学校がある日である。

 だが学校には向かわない。これからお出かけをする予定である。

 

 俗にいうズル休みであり、なんと家族公認によるものだった。

 

「ハンカチは持った? あまり無駄遣いはしちゃダメよ」

 

 襟を正される。ついでに髪も整えられる。

 

 隣にはすずかがいた。

 今日はショッピングモールに向かい、すずかの服を買え揃える予定である。

 他にも必需品があれば買っておくつもりだ。ついでに気分転換も兼ねて映画を見に行く予定となっている。

 

「なのは、頑張って!」

 

 美由希に応援される。

 

「俺と同じ道を行くか──わからないことがあったら聞け。月村家に関しては多少なりとも心得がある」

 

 肩を叩かれる。そしてなにやら感慨深い表情をしていた。

 

 完全にデートだと思われていた。

 なのは自身そんなつもりはなかったのだが、もはや否定しても意味はない。

 否定すればするほど、恥ずかしがっているとしか思われないだろう。

 

 初デートを家族全員に見送られる。

 しかもそのデート相手が隣にいる状態でである。

 

 なのはは自分史上一番の羞恥プレイを受けていた。

 

(誰か殺してくれ)

 

 消えてしまいたかった。

 穴があったら入りたかった。

 

「……行こっか」

「うん」

 

 二人が出ていく。

 バス停に着くまで、なのはの瀕死の状態は続いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫?」

「うん、もう平気」

 

 元気がなかったため心配される。

 ただショッピングモールに着く頃には流石に気を持ち直していた。

 

 ひとまず映画館に向かう。先にチケットを買っておこうという意向だ。

 

 上映中の作品を物色する。

 お互いに観るものを決め、同時に指をさした。

 

 なのははアクション、すずかはホラーである。

 

「月村、この映画の制作費すごいらしいぞ。気にならないか?」

「このホラー失神した人が出たんだって。気にならない?」

 

 二人の視線が交差する。

 

「苦手なの?」

「い、いや? そんなんじゃ、ないけど」

 

 一筋の汗が流れる。

 

「なのは君が選んだのでも大丈夫だよ」

 

 すずかが大人の対応を見せてくる。

 それゆえに引けなくなってしまった。

 

「いや、全然、月村の観たいものにしようよ」

 

 なのはは自分の口を恨んでいた。

 

「そう? じゃあチケット買おっか」

 

 受付に行く。

 震える手でお金を支払う。

 

 チケットを受け取り時刻を確認する。上映までは一時間ほど余裕があった。

 

「少し時間あるね」

「早いけど、お昼にしよっか」

「うん」

 

 同意してなのはに付いていく。

 真っすぐハンバーガー屋へと向かう。

 到着してから気付く。隣にいるのは女の子である。つい男友達と遊ぶように流れで来てしまっていた。

 

「ごめん、勝手に決めちゃってた。何か食べたいものある?」

「うーん……わたしもハンバーガーが食べたいかな」

「そ、そう」

 

 気を遣われた。

 そのことに流石のなのはでも気付いていた。

 

「なのは君も食べたかったんだよね?」

「まあ、そうだな。いつものクセで来ちゃったってのもあるけど」

「じゃあ、なおさらここがいいかな」

 

 すずかが先に入っていく。

 

(どういうこと?)

 

 言葉の意味がわからず困惑する。

 

「まあ、いっか」

 

 それほど気にすることでもないため考えるのをやめる。

 今度から気を付けよう思い、すずかの後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 予定を消化し、帰り道を歩く。

 途中でベンチに座り小休止を取る。

 

 川面には夕陽が映っていた。

 

「こっちの世界に来る前のことなんだけど」

 

 帰り際にジェイルからの宿題を思い出す。

 少し遅くなったが情報収集を行うことにした。

 

「なんか普段と変わったこととかなかった?」

「うーん」

 

 すずかが当時のことを思い浮かべる。

 ぱっとは出てこないらしい。

 

「何か不思議なものを拾ったとか」

 

 もしかしたらと思い質問する。

 どうにも脳裏に青い石がチラついていた。

 最近お騒がせしている例のアレではと予測する。

 

「どうだろう」

 

 すずかがポケットを探る。

 

「これとか?」

 

 何気ない感じで見せてくる。

 手には見慣れた青い石があった。

 

「そうそうこれこれ」

 

 キラリとジュエルシードが光る。

 夕陽を反射してとても綺麗だった。

 

「って、これじゃねーか!!」

 

 瞬間、石が輝きを放った。

 すずかの中に入っていき同化していく。

 

 魔力の奔流が押し寄せてくる。

 膨大な量であり、物理的な衝撃としてなのはに襲い掛かった。

 

 耐え切れず、この場から吹き飛ばされてしまう。

 

「レイジングハート!」

 

 バリアジャケットが展開され、衝撃が緩和される。

 

 すずかは宙に浮かんでいた。

 次々と魔力が溢れ出していく。

 

「なんつー魔力だよ」

 

 戦慄する。

 とてつもない魔力量だった。キャットよりも多く、その量は計り知れなかった。

 

 暗く、冷たい魔力。

 量もさながら、その異質な魔力に息が苦しくなる。

 

 すずかの手には槍があった。

 槍を中心に周りの温度が下がっていく。その証拠にすずかの服には霜が出来ていた。

 

「なんだ、あれ」

 

 すずかの背中に注目する。

 そこには赤い羽があった。生物的な羽というよりは、魔法で作られたかのような羽だった。

 形はコウモリの羽と言えなくもない。

 

 赤い目がなのはを射貫く。

 その姿はまるで吸血鬼のようだった。

 

 突如、目の前にすずかが現れる。

 

「くっ!」

 

 ギリギリで防御が間に合う。

 すずかの手とブラック・オルロフがぶつかる。

 その際、金属音に近い音が鳴っていた。

 

 五本の指にはつららが出来ていた。

 それを爪のように扱い、攻撃を仕掛けてきていた。

 

 槍が突き出される。

 それをレイジングハートで弾く。

 

 一旦飛び退く。

 追撃は来ない。

 

 すずかは自分の力を確かめるように手を開いたり閉じたりしていた。

 

(人間の膂力じゃない)

 

 レイジングハートを持つ腕が痺れていた。

 槍を弾いたとき、信じられないほどの衝撃が伝わってきていた。

 

 人の限界を超えた力である。

 

 異常事態に呼吸が荒くなっていく。

 

(あのときの感覚に似てる)

 

 アルハザードでヒドゥンを相手にしたときのことを思い出す。

 人の領域の外にいる存在。

 その感覚を月村すずかから感じ取っていた。

 

(どうする?)

 

 すずかが動き出す。

 

(いや、どうするかなんて決まってる!)

 

 助ける。

 無力化して動きを止める。

 考えるまでもなく、やることは決まっていた。

 

 再び槍が一直線に向かってくる。

 今度は二刀で受け止める。

 

 槍が止まる。

 二刀であれば完全に防ぐことができた。

 

 だが次の攻撃を防ぐ手段がなかった。

 氷の爪がなのはへと向かう。

 

「紫電」

 

 炎が舞い。

 

「一閃!」

 

 剣が走る。

 

 赤い羽の片翼が剣を受け止める。

 勢いを殺しきれず、遠くへと飛ばされていった。

 

「シグナム」

 

 騎士甲冑を身に着けたシグナムがいた。

 

「手が必要か?」

 

 どうやら手助けをしてくれるらしい。

 

「ああ、助かる」

 

 非常に心強かった。

 

「苦戦してんのか?」

 

 横にヴィータが降り立つ。

 

「かなりな」

「手伝ってやろうか?」

 

 ニヤニヤと見てくる。

 なのはを下手に出させるのが嬉しいみたいである。

 

「頼む」

「素直じゃんか。後でアイス奢れよ」

「三百円までなら何でもいいぜ」

「三百円ってアイス何個買えるんだ?」

 

 ヴィータはまだ日本通貨と物価に慣れていなかった。

 六十円のアイスが五個は買えると返答する。

 

「よっしゃ!」

 

 ヴィータが気合を入れる。

 

『結界を張りました。被害は気にせずに戦ってください』

 

 シャマルから念話が届く。

 実に手際が良かった。

 

「俺が盾となろう」

 

 さらにザフィーラのサポート付きである。

 これ以上ないほどの助っ人だった。

 

 すずかの圧力が増し、一段と恐れを感じさせる。

 

 平穏な日常が唐突に終わり、今、死闘が開始された。

 

 

 

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