高町なのはくん2   作:わず

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死闘

 

『誰?』

 

 実の姉に言われた言葉である。

 思い出すたびに呼吸が苦しくなっていく。

 

 昨日まで普通に話していた。

 それなのに急に他人のような態度に変わっていた。

 

『迷子かな?』

 

 知らない子を相手にするように優しく話しかけてくる。

 その優しさに胸が痛くなる。

 これ以上聞いていたくなかった。

 

 すずかはその場から逃げ出していた。

 

 学校の友達を見かけた。

 声を掛けたが、姉と同じ反応だった。

 

 その次も、その次の子も。

 皆、月村すずかという存在を知らなかった。

 

 いつもの通学路を歩く。

 

 知っている場所、知っている人々。

 周りではいつも通りの日常が流れていた。

 

「どこなの? ここ」

 

 知っているはずなのに、知らないものに見えてくる。

 今、何が起きているのか全くわからなかった。

 

 人気のないところへと行く。

 なるべく自分の知らない場所へと向かった。

 

 知っている場所にいると、逆に心が苦しかった。

 

 膝を抱え込む。

 ひたすらに考える。どうしたらいいのだろうか。

 これは夢だろうか。夢ならこのまま過ごしていればいつかは覚めるのだろうか。

 

 考えれば考えるほど、気持ちが塞ぎ込んでいく。

 やがて考えることを止めていた。何も考えずただ時間が過ぎていく。

 

 何時間経っただろうか。

 気づけば夜になっていた。

 

 元気はない。気力もない。

 それでもお腹は減るのだった。

 

 立ち上がる。

 誰かの目につかないよう路地裏へと入る。ゴミ箱を漁り、食べれそうなものを回収した。

 

 公園に行き水を飲む。

 それからベンチに座り、比較的きれいなパンを口にした。

 

 パンの味はわからなかった。

 ほとんど涙の味しかしなかった。

 

 そのままベンチで横になる。

 

「夢なら覚めて」

 

 目を閉じて眠りにつく。

 

 起きるとベンチの上だった。

 願いは届かず、現実は続くのだった。

 

 何日か経った頃だった。

 

 いつものように路地裏へ行き、生きる糧を探していたときである。

 すずかは見たことのない少年に声を掛けられた。

 

 その少年はすずかのことを知っていた。

 自分の知らない少年が自分のことを知っている。

 なぜという疑問は尽きない。けどどうでも良かった。

 

 初めて自分を知っている人と出会うことができた。

 自分という存在が認められた気がした。世界にちゃんと自分はいるんだと言われている気がしていた。

 

 光が差していた。

 

 思わず思いをぶつけてしまう。

 今までの苦しみを吐露していく。

 泣きじゃくった。体裁などなく、みっともない姿をさらけ出す。

 

 少年は優しく背中をさすり続けた。

 そして全てを受け入れてくれていた。

 

 差し出された手を取る。

 何日かぶりに人の温かさに触れる。

 

 冷たくなっていた心に温もりが宿る。

 

 少年は高町なのはという名前だった。

 同姓同名かと思ったがそうではないらしい。

 

 同じ人物であり、この世界では性別が違うとの話だ。

 

 ここは異世界であると聞かされる。

 ならば、そういうこともあるのだろうと納得した。

 

 それからなのははすずかのために行動をした。

 

 最大限出来る範囲で助力をしてくれていた。

 安全な場所に連れていき、食事を用意してくれた。

 お腹がいっぱいとなり、つい眠ってしまった。

 気付けばベッドに寝させてくれていた。しかも起きるまで近くにいてくれた。

 

 どうしてここまでしてくれるのかわからなかった。

 

 その疑問はなのはが恭也の質問に答え、理由が判明することとなった。

 

『一人はつらいから』

 

 その言葉からなのはの過去を察することができた。

 一人のつらさを知っている。

 だから一人だったすずかにここまで尽力してくれる。

 

 すずかがなのはの気持ちを理解する。

 

 そっと手を伸ばす。

 なのはの手を握る。

 温かさが伝わってくる。こうすると心も温かくなる。

 ずっとこうしていたいと思えるほどだった。

 

(なのは君も同じだといいな)

 

 体温をもらう。それを自分の体に通してなのはに返す。

 

(一人じゃない)

 

 体温を交換していく。

 今、確かになのはと繋がっている実感があった。

 

 今日会ったばかりの少年。

 だけどずっと一緒にいたかのように思い始めていた。

 その要因の一つとして、友達の高町なのはと似通っている部分があるからだった。

 

 なのははすずかを助けようと一生懸命に家族を説得している。

 

(きっとなのはちゃんも同じなんだろうな)

 

 その姿に友達を重ねる。

 友達のなのはは困っている人を見捨てることをしない。

 同じ行動をするのだろうと、しっかりイメージすることができた。

 

 それから一緒にお出かけをした。

 楽しい時間が過ぎていた。

 何をしても、何を見ても楽しかった。それは隣になのはがいたからだった。

 友達と一緒にいるときと感じる楽しさとは違う。また別の楽しさを感じていた。

 

 人生で初めての経験だった。

 

 そういえばと思い返す。

 

(男の子と遊ぶの初めてかも)

 

 それを自覚した途端、胸の高鳴りを覚えていた。

 高揚感に包まれ、鼓動が少しだけ速くなる。

 

 気持ちが落ち着かない。

 けれど嫌な感じではなかった。

 

 なのはがゲーム売り場を見る。

 すずかもそちらを見る。

 

(ゲームが好きなのかな)

 

 自分の服のことは頭から抜けていた。

 それよりなのはの趣味を知りたかった。

 いつしか、なのはのことをもっと知りたいと思い始めていた。

 

 なのはに付いていきハンバーガー屋に到着する。

 好きなハンバーガーは何だろうか。

 好きなドリンクは何だろうか。

 

 全てを知りたかった。

 

 買い物を終えた帰り道。

 ショッピングモールでの言葉を思い出す。

 

『何か欲しいものとかある?』

 

 何気ない会話。

 取り留めのない内容である。

 

 だが、すずかはその問いに対して真っ先に思い浮かんだものがあった。

 

 ──なのはが欲しい──。

 

 その願いに呼応し、ジュエルシードは覚醒と至った。

 

 

 

 永遠を求め、終わりを厭う。

 氷帝はただ一人を愛し、亡骸と共に自らを凍らせた。

 

 ジュエルNo 3 サファイア。

 氷槍、スノーホワイト。

 

 

 

 氷帝の力が顕現する。

 

 王としての資質が目覚めたことにより、月村すずかは真祖となっていた。

 

 今ここに、夜の一族において歴代最強の存在が誕生していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔力が押し寄せてくる。

 それらが重圧となり、心が圧し潰れそうになる。

 

 ここにいる傑物たちでなければ、立っていることもままならない圧力だった。

 

「妖魔の類か?」

「とんでもねーバケモノだな」

 

 シグナムとヴィータが似たようなことを言う。

 

「……本人には言うなよ。多分傷つくから」

「おまえの友人か?」

「まあ、そうだな」

 

 もう他人ではない。

 一緒に楽しい時間を過ごした仲である。なのはにとって友達と思うには十分だった。

 

「大切な友達だ」

 

 胸を張って返答する。

 

「そうか、それはすまなかったな」

「ま、テメーに比べれば可愛いほうか」

「どういう意味だ、オイ」

 

 ヴィータが答えようとしたところに砲撃魔法が飛んでくる。

 それを各々が違う方向に回避をした。

 

 橋が落ちていく。

 威力は言わずもがなである。

 

 「ラケーテン」

 

 切り込み隊長が仕掛ける。

 

「ハンマー!」

 

 いつでも突破口を開くのは鉄槌の騎士であった。

 

 手が伸びてくる。

 すずかは突起部分を掴もうとしていた。

 

 無視しても良い行動である。

 そのまま鉄槌を振り抜けば吹き飛ぶのは手のほうである。

 

「アイゼン!」

 

 だがヴィータはそう考えていなかった。

 以前、なのはに素手で止められたばかりである。

 過去の教訓を活かし、同じ過ちは繰り返さなかった。

 

 グラーフアイゼンが加速する。掴まれる瞬間、回避するように急加速を行った。

 その場でヴィータが一回転し、加速した勢いを顔面へと叩きつけた。

 

 硬いものと衝突する音が鳴る。

 

「……バケモノがっ!」

 

 攻撃は当たっていなかった。

 歯で止められていた。突起部分に噛みつかれ、勢いを殺されていた。

 

 嚙む力が強まっていき、突起部分が砕け散る。

 人間が行える所業ではなかった。

 赤い目がヴィータを捉える。

 

「ベルカの騎士を!」

 

 噴射口から火花が散る。

 

「ナメんじゃねー!!」

 

 三段階目の加速である。

 限界以上の加速だった。アイゼンの噴射口にヒビが入る。

 

 恐れは人を弱くし、時には強くしたりもする。

 恐ろしく強大な敵であるからこそ、ヴィータはひとかけらも油断していなかった。

 

 グラーフアイゼンがすずかに叩き込まれる。

 横っ面へモロに入っていた。

 

 吹き飛び、ビルへ激突する。

 

「高町!」

「おう!」

 

 追撃する。

 後を追うようにビルの中に入る。

 

 中はオフィスフロアとなっていた。

 デスクがなのはに向かって飛んでくる。すずかが片手で持ち上げ投げてきていた。

 

 ディバインソードで一刀両断する。

 

 その隙にシグナムが仕掛ける。

 余裕あり気に反応する。今度は突きでなく、槍を横に振るってきていた。

 それをレヴァンティンで受け止めようとする。

 

 直感する。

 これは受け止め切れない。

 

 剣と槍が衝突する瞬間、二刀が攻撃を防いだ。

 

「止まるな! 攻撃しろ!!」

 

 少し口が悪くなる。

 それほどひっ迫した状況であり、なのはは必死だった。

 

「レヴァンティン!」

 

 カートリッジをロードする。

 剣が炎を纏う。

 

 両翼がシグナムを襲う。

 

「させん!」

 

 チェーンバインドが両翼を縛り付ける。

 それでも止まらない。まだ左手が残っていた。

 

「クラールヴィント!」

 

 左腕がバインドに拘束される。

 

 剣が、すずかへ向かっていく。

 

 ──止まる。

 剣は氷の壁に阻まれていた。

 

『Schwalbe fliegen』

「でやぁ──ー!」

 

 鉄球が放たれる。

 魔力を一球に込め、乾坤一擲によって打ち出された一撃である。

 

 直撃する。

 真祖といえど、これだけの攻撃を捌くのは無理があった。

 

 吹き飛び、壁を突き抜ける。

 外へ出たのを見計らい、遠隔操作により鉄球を爆発させた。

 

 魔力衝撃がすずかを襲う。

 

 全員が武器を構える。

 誰もが思っていた。

 これで終わるわけがないと。

 

 すずかは健在だった。

 ダメージは入っているはずである。ただ表情が変わらないので、いまいち実感が持てなかった。

 

「ヴィータ」

「あんだよ」

「アレを使うぞ」

「……しゃーねーな」

 

 すずかの様子を見て決断する。

 通常の攻撃だけでは倒しきれないと判断した。

 

「シャマル」

「はい」

 

 シャマルが二人に一つ分の弾を渡す。

 それをカートリッジへと装填した。

 

「高町、今度は私とヴィータで隙を作る。おまえ自身の手で友を助けろ」

「前座を務めてやっからよ。ありがたく思えよ」

 

 こんなときに虚勢を張ったりはしない。

 二人がそう言うのであれば、それは実現可能なのだろう。

 

「行くぞ」

「おう!」

 

 カートリッジをロードする。

 大量の魔力が二人を包む。

 通常のカートリッジとは比にならないほどの量だった。

 

 二人がロードしたカートリッジ。

 それはジェイルから渡された代物だった。

 

 原料はラトリアの魔鉱石から採取した魔力である。それを加工し、カートリッジシステムで使用できるように流用したものであった。

 

 ラトリア製のカートリッジ。

 数値にして、その量は通常のカートリッジの十倍である。

 

 二人が一瞬で間合いを詰める。

 

 槍と剣が衝突し、力が拮抗する。

 

 鉄槌がすずかへ向かう。

 今回は素手で受け止めることはしない。氷で盾を作り、ハンマーを防いでいた。

 魔力が込められており、氷の盾は強固な壁となっていた。

 

 二人がすずかと同じ土俵に立っていた。

 

 刀身に魔力が宿る。

 紫電一閃にて槍を弾き飛ばす。

 壊すつもりで放ったのだが、氷槍は予想以上に頑丈だった。

 

「アイゼン!」

『Jawohl』

 

 轟音が響き渡る。

 爆発が起きた。そう思えるほどの音だった。

 

 氷の盾を一瞬で破壊する。

 そのまま左肩へと鉄槌が襲い掛かった。

 

 骨を粉砕する。

 陥没し、左肩は使い物にならなくなっていた。

 また、砕けた骨が肺に突き刺さり、すずかの口からは血が出ていた。

 

「……あはっ」

 

 初めて表情を変化させた。

 

 左肩が一瞬で再生する。

 肺のケガも治り、吐血も止まっていた。

 

 ヴィータの顔が鷲掴みにされる。

 脱出を試みようとするが抜け出せない。

 

「ヴィータ!」

 

 シグナムが助け出そうとする。

 しかし、足が凍結されており身動きが取れなかった。

 

 すずかの手に魔力が集中する。

 それは街を一つ消せるほどの魔力量だった。

 

 そうして魔力が放たれようとしたときだった。

 

「ごめん、月村」

 

 すずかの片腕が斬り飛ばされる。

 それによってヴィータが解放されていた。

 

 なのはは覚悟を決めていた。

 すずかを殺すという覚悟ではない。今だって何がなんでも助けるつもりではある。

 

 なのはが決めたのは、自らの人生をすずかに捧げるという覚悟だった。

 

 ケガを一瞬で治しているのを見たため、左腕も再生できるのではと考えた。

 それでももし、左腕が治らなかった場合は一生すずかの左腕として生きようと決めていた。

 

 ヴィータを殺させるわけにはいかない。

 すずかを人殺しにさせるわけにはいかない。

 はやてにも守護騎士にも悲しい思いはさせられない。

 

 覚悟を決めるには十分な理由だった。

 

 すずかが大きく飛びのく。

 その際、手放したスノーホワイトも回収していた。

 

 左腕に魔力が集まっていき、斬られた部分から新たな腕が生えていく。

 動作を確かめるように手を握りこむ。

 

 それを見てなのはは一安心していた。

 

「おい、大丈夫か」

 

 ヴィータに駆け寄る。

 

「こんなもん、屁でもねー」

 

 起き上がろうとするが、力が入らず倒れこんでいく。

 カートリッジ使用による反動である。

 

「無茶すんなって」

 

 倒れないようになのはが抱きとめる。それからヴィータを優しく地面に降ろした。

 

 その光景がすずかの目に映る。

 

「うあああああ!!!」

 

 すずかが狂ったように叫ぶ。

 

「それは! 私だけのものだあああー!!」

 

 金切り声が響き渡る。

 

 槍が投擲される。

 狙いはヴィータ。喉元目掛けて一直線だった。

 

 シャマルとザフィーラがシールドを張る。

 

 飴細工を砕くように突き抜ける。

 そこには最初から何もなかった。そう感じるほどだった。

 

 二刀で受ける。

 全力だった。全身の力を使って迎え撃っていた。

 激突すると同時になのはが吹き飛んでいく。

 

 槍の勢いは止まっていた。

 その場で静止し、物理法則を思い出して落下する。

 そうして先端部分が地面へと突き刺さったときだった。

 

「凍っちゃえ」

 

 スノーホワイトの力が解放される。

 

 世界が氷結していた。

 辺り一面氷漬けである。見渡す限り、どこもかしこも凍っていた。

 

 結界内が氷の世界となっていた。

 

 雪が降り始める。

 白い雪が落ちていき、ヴィータとシグナムに積もっていく。

 二人は氷の中に閉じ込められていた。身動きは取れず、すでに意識はない。

 

「くそっ!」

 

 なのはが足に張り付いた氷を砕く。

 遠くにいたため、全身氷漬けにならずに済んでいた。とはいえ極寒とも言える寒さに体が震える。

 

 二人の状況を視認する。

 それを見てすぐさま助けに行こうとする。

 

「待て」

 

 ザフィーラに止められる。

 肩を掴まれ、無理やり停止させられる。

 

「あの二人は問題ない」

 

 どう見ても問題だらけだった。

 一刻も早く助ける必要がある。

 

「我らは魔法によって生み出された疑似生命体。そう簡単には死なん」

 

 そう言えばと思い出す。

 この頃の守護騎士は人とは違う存在である。

 

「それよりアレを止めるのが先決だ」

 

 ザフィーラが手を離す。

 なのはが冷静になっていると判断したのだろう。

 

「私たちがサポートします」

 

 シャマルが横に並ぶ。

 

「ありがとう……でも、どうしてここまで」

 

 はやての友達だとしても、ここまでしてくれる理由にはならない。

 今となってはではあるが、ここはすでに死と隣り合わせの戦場である。命を掛けるほどの動機は守護騎士にないはずである。

 

「はやてちゃんのお友達というのもあります」

「主を助けてもらった恩義もある」

 

 二人が理由の一つを挙げる。

 

「だが何より、主を守ることが最優先だ」

 

 それから戦うための一番の理由を告げた。

 

「あの子が結界外に解き放たれた場合、海鳴市はおろか、地球が焦土と化します」

「そうなれば当然、主にも危険が及ぶ」

「ここはもうあなただけの戦場じゃない」

「我ら守護騎士の戦場でもある」

 

 なのはが納得する。

 そして二人の決意は固い。

 

「高町、おまえが勝利の鍵だ」

「私たちの覚悟、その剣に預けます」

 

 三人がすずかを見据える。

 手には魔力が集まっていた。

 

「来るぞ」

 

 強大な魔力が放たれる。

 しかも今度は変換スキルを使用し氷結魔法として放たれていた。

 

 空気を凍り付かせながら直進してくる。

 二人がシールドを展開する。

 その直後、シールドの外側に少女が現れた。

 

 砲撃魔法が炎の壁に阻まれる。

 

 凍結が行われていくが、それと同時に炎が氷を溶かしていた。

 水蒸気が発生し、辺りが熱気に包まれる。

 

「仲間外れは良くないわよ。先生が言ってたでしょ」

 

 そこにはアリサがいた。

 

「そんなんじゃ友達百人できないわよ」

「アリサが友達でいてくれるならそれで十分だよ」

「……あ、そう」

 

 アリサは振り向かない。

 炎熱に完全耐性があるアリサの耳が赤くなっていた。

 

「まったく、いつからそんなたらしになったのよ」

 

 聞こえないように小さい声で呟く。

 だがなのははすぐ傍まで来ていた。

 

「タライがなんだって?」

「なんでもないわよ!」

 

 ボウッと火が出る。

 

「あぶね! てかあっちぃ!」

 

 なのはの袖が燃えていた。

 パンパンと叩き消火する。

 

「燃やす気か!」

「寒いかなと思って気を遣ったのよ。暖まったでしょ?」

「ああ、おかげで頭に血が上ってきたな」

「良かったわね。冷えは乙女の天敵よ」

「俺は乙女じゃねーよ」

「え!? そうなの?」

「ケンカ売ってんのか」

 

 アリサの周りでは熱が発生していた。

 そのおかげで体が温まり、震えは収まっていた。

 身体機能が回復し、全力が出せる状態である。

 

 そして震えていた心も温まり、体の内に勇気の灯火が点いていた。

 

 

 

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