高町なのはくん2   作:わず

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闇の書

 

「エスプレッソを一つ」

「シュークリームください!」

「ケーキセットをお願いします」

「私もフェイトと同じにしよ。ママは?」

「紅茶はあるかしら」

 

 店員がメモを取りオーダーを通す。

 ジェイルたちは現場確認をした後、喫茶翠屋に来ていた。

 

「お待たせしました」

 

 注文した品がテーブルに並べられていく。早速、キャットがシュークリームに齧りついていた。

 

「う~ん! ずっとこれが食べたかったの!」

 

 次々と頬張っていく。ものの数秒で完食する。キャットはすぐにおかわりを注文していた。

 

「いい香りだ」

 

 コーヒーを一口含む。味も予想以上のものだった。気づけばカップの底が顔を覗かせていた。

 ジェイルもおかわりを頼む。だいぶお気に召したらしい。

 

「プレシア」

 

 おかわりしたコーヒーに口をつける。

 

「どう見る?」

「転移の足跡があったわ。記録も取れた。後は解析すれば道を開けるんじゃないかしら」

 

 珍しいことにジェイルから驚きと共に汗が流れていた。

 

「足跡なんて残ってたかい?」

「ええ、消そうとしない限り残り続けるものよ」

「それは驚いたね」

 

 ジェイルが見た限り、次元が断裂した痕跡しか見当たらなかった。プレシアはそこからさらに転移してきたであろう足跡まで見つけていた。

 

「たまたま明るい分野だったってだけよ」

 

 プレシアは転移関連に強かった。公に知られていることではない。なぜならアルハザードに行くために身に着けた知識であり、ここ最近急速に伸ばした分野であるためだった。

 ジェイルも時間を掛ければ発見できていた可能性は高い。ただ転移に関してはプレシアが一枚上手だった。

 

「フェイト」

 

 プレシアがティッシュを取り出す。

 それから口元のクリームを拭き取った。

 

「ゆっくり食べなさい」

 

 優しい手付きだった。

 夢ではなかった。夢に見ていた時間が現実となっていた。

 

 心が幸せで満たされていく。

 

「ずる~い、私も」

 

 アリシアがクリームを口元にくっ付ける。

 

「はい、ママ」

「もう、ダメよアリシア。食べ物を粗末にしちゃ」

「は~い」

 

 フェイトと同じように取ってあげる。この光景すらも夢のようだった。

 十分に満たされた時間。これ以上望むものはない。そう言い切ることができればどれほど楽だろうか。

 

 フェイトにとってもう一つ足りないものがあった。絶対に欠けてはいけないもの。それは高町なのはである。

 

 今度こそなのはを手に入れる。その想いを胸にこの世界へと跳んできた。失敗は許されない。

 

(まだ、今じゃない)

 

 なのはに想いを伝える。それは必ず実行する。しかし今ではないと考えていた。

 

(きっと、断られる)

 

 なのはにはやるべきことがあった。救うべき存在がいる。それらを放っておくなのはではない。

 それにおそらくなのははこう考えている。自分だけ幸せになることはできない。元から存在しない世界とはいえ、消滅させた原因は自分にある。ならばその分の幸福は世界に捧げる必要がある。

 ただそんなことを言い出すと人間一人の幸福だけでは事足りない。だからできる限りの範囲内で動こうと思っているはずだ。全てを救うことはできないかもしれない。それでも知り得る限り、手の届く範囲で救える存在は救う。

 それが高町なのはの考えである。

 

 フェイトはずっとなのはを見続けてきた。だからこそ思考をトレースすることは可能だった。その誤差は小さく、ほぼ完全再現と言ってもよかった。

 

(なのはが自分を許せるまで手伝う。それが今の私にできること)

 

 どこかで気持ちに区切りをつけられるときは来る。

 そのときこそ、改めて告白をするときである。それまではなのはを横取りしようとする存在の排除に徹するのみである。

 

(敵は多い。アリサにすずか、そしてはやて、アクトロスとキャットもいる。それに)

 

 ケーキを頬張るアリシアを見る。

 どうにも判断に迷っていた。言動こそなのはの妹ポジションであるが、その胸の内は完全に把握できていない。

 

(油断は禁物)

 

 警戒をしておくに越したことはない。家族のように振舞っていても気付いた時には盗られていましたでは笑えない。

 

 のどかな時間が流れる昼下がり。

 フェイトは静かなる闘志を胸にケーキを食べていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 背伸びをする。

 最後の授業が終わり、ようやく放課後を迎えたところだった。

 人生で二度目となる小学生。

 退屈、と思っていた授業だったが案外そうでもなかった。わかりきったことを聞き続ける苦行の時間と覚悟していたが思いのほか楽しめていた。

 

 特に国語の時間は面白かった。感性が成長したため、改めて読むとまた違った見方ができていた。当時では気付けなかった登場人物の心情が読み取れ、より深く物語にのめり込むことができた。

 以前は苦手だった読書感想文も今なら嬉々としてしたためることができそうである。

 

 一方算数はつらかった。元々得意で成績は良く、今更四則計算を解き続けるのはつらいものがあった。

 考え悩む必要はない。問題を見て手を動かす。もはやただ数字を書く練習と成り果てていた。

 そんな修行僧みたいな時間から解放され、今やっと校門前である。

 

 他の生徒も下校していく。

 校門の中央には不審者が突っ立っていた。誰も気に留めることはしない。白衣の男に目をくれることもなかった。

 

「何してんの?」

「迎えに来たのだよ」

 

 少しだけ非難を込めて言い放つ。対してドクターはどこ吹く風である。

 この男の心情を読み解くことは難しい。ジェイル・スカリエッティの考えを書けなんて国語のテストに出たらさぞ難問となることだろう。

 

 同級生がドクターにぶつかりそうになる。

 ドクターが避ける様子はない。むしろ男の子が衝突しないように避けていた。

 

 気付いていないわけではない。けど、気にしている様子はない。

 

「認識阻害だよ。上手く機能しているようで何よりだ」

「何でもありだな」

「何でもとはいかないさ。私に出来るのは人が成しえることの範疇にしか収まらない。君やアリシアにはどうしたって届きえない」

 

 なにやら弱気だった。

 明日は雨が降るかもと珍しがる。

 

「らしくないじゃん」

「少しばかり遅れを取ってね。有り体に言えば悔しいという表現が最もなところだろうか」

 

 どこに向かうのかと聞くとはやての家と答える。

 帰路を外れ、そちらへ向けて歩き出す。

 

「で、何があったんだよ」

 

 たまには話を聞いてあげようと思い質問する。

 ジェイルが話始め耳を傾ける。どうやらプレシアに一歩先んじられたことが悔しかったらしい。自信満々に助けに来たところ、役に立てずあまつさえ他人に手柄を立てられてしまった。そのことを気にしているとのことだ。

 

 

「でも、ドクターがいなきゃ何も進まなかったよ」

 

 なのはがフォローをする。

 傷口に塩を塗ろうか迷ったが止めた。いつもの奇行による心的苦労を鑑みるとそれぐらいは許されるかもしれない。だがジェイルは助けに来てくれている。

 むしろ水に流してあげるべきだろう。

 

「いつも大事なとこで支えてもらってる。ドクターは必要な存在だよ。まあ役に立っても立たなくても、もうそんなの関係ないけどさ」

 

 家族のようなものだから。

 けどそれは口にしなかった。

 

「……感謝する」

 

 ちゃんと伝わってはいた。

 そしてこれまた珍しいことに純粋な感謝だけを述べていた。

 

(明日は雨じゃなくて雪だな)

 

 そう思いながらはやての家へと向かった。

 

 家に到着する。

 中にはかなりの人数がいた。ただ守護騎士の様子がいつもと違っていた。

 

 心ここにあらず。

 他にやるべきことがあり、時間の消費を嫌っている節があった。

 

「待たせたね」

 

 この集会は予定されていたものではなかった。急遽ジェイルが設定し、はやての家に集合を掛けていた。

 

 役者が揃い、ジェイルが口火を切ろうとした時だった。

 

「すまないが、席を外させてもらう」

 

 シグナムとヴィータ、それからザフィーラが腰を上げる。

 

「その代わり私が残ります。話の内容は後ほど私から皆に」

 

 シャマルから代案を提示される。ただそれに対して是非を問わせる余地はなかった。三人は返答を待つことなく立ち去ろうとする。

 

「どちらに?」

「野暮用だ。言うほどのことではない」

 

 シグナムがドアのレバーに手を掛ける。

 

「蒐集かい?」

 

 守護騎士が一斉にジェイルを見る。

 緊張が走り、一気に空気が張りつめていた。

 疑念と敵意、二つの感情がジェイルを貫く。そのうちの疑念だが、こちらはすぐに解消されることとなった。

 この男なら知っていてもおかしくない。この一言で全てを納得させられてしまうほどだった。それほどまでに傑出し、ジェイルは比類なき頭脳を持ち合わせている。

 

 シグナムとヴィータが待機状態のデバイスを手に取る。

 

 次に発せられる一言。

 それによって動きが決まることだろう。

 

「主を助けたいかい?」

 

 含みのある言い方である。悪気はなくともジェイルが発する言葉には含みがあるように思えてしまう。

 

「おまえのことだ。何もかも承知しているのだろう。その問いに対する我らの答えもわかっているはずだ。故におまえの意図が見えん。この問答の真意はなんだ?」

「そのままの意味だったのだがね。君たちの思いがどれほどのものか確かめてみたかったのだよ」

 

 変な風に受け止められてしまうのは日頃の行いが悪いせいである。

 

「では我らの覚悟、受け取ってみるか?」

 

 守護騎士には余裕がなかった。

 おそらく、この場にいる全員を殺してでも主を優先するつもりである。

 どれだけ血を流そうと、はやてが無事でいればいい。それが何よりの願いだった。

 

「それは楽しみだ。疑似生命体たる君たちに宿る忠誠心、プログラムされたものなのか、まごうことなき本物か、その魂の輝き是非私に見せてくれたまえ」

 

 悪い癖である。ここまで来たら病気と言ってもいいかもしれなかった。

 そしてこの狂人を止めるのは毎度のことながらこちらの聖人である。

 

「ストーップ」

 

 アリシアが間に入る。

 

「もう、毎回止めてあげられるわけじゃないんだからね」

「申し訳ない」

 

 この性分は死んでも治らないことだろう。

 

「はやての足、悪化してきてるよね」

 

 ストレートに聞く。今は誤解が一番怖い。なので言葉選びより正確性を優先した。

 

 アリシアがシグナムと向き合う。はやて本人には聞かない。病院の診断結果を知っているのは、本人を除く守護騎士のみであるからだ。

 

 返答はない。それは肯定を意味していた。

 

「今からそのことについて話し合う予定なの。だからお願い。一度パパの話を聞いてあげて」

 

 この場にはやてを害するものはいない。それはわかっていることだ。

 けど矛は収めない。今は下げるだけに留める。何かあったときに守れないのであればそれは守護騎士ではない。

 

「やっぱ悪くなってたんやな。人が悪いで、内緒ごとなんて」

「申し訳ありません。我が主」

「でもまあ、しゃーないか。私を気遣ってのことなんやろーし」

 

 はやては笑っていた。その笑顔に寂しさが見え隠れするのは家族に内緒話をされたからだろう。

 

「はやて、私たちに任せて。皆はやての力になりたいんだ」

 

 力強く言葉を発する。そこまで言われて否定することはできない。

 

「わかった。でもあんま無理せんといてな」

 

 嬉しかった。それと同時に申し訳なさもあった。

 皆が自分のために動いてくれる。とても喜ばしいことである。

 けれどここまでしてもらう理由がない。はやて自身、皆にとって大切な存在ではないと自覚はしている。もちろん守護騎士は別である。彼らはすでに家族である。

 ジェイルやプレシア、彼らがはやてを助ける理由はない。はやて個人に向けて助けたいという気持ちはないはずだ。だが助けようとしてくれる。その理由は何か。そんなのはただ一つである。

 

(世界でただ一人、私だけのヒーロー)

 

 理由はなのはにあった。なのはがいるからジェイルも他の皆もはやてを助けようとする。

 それはすなわち、なのはがはやてを助けたいと思っていることに他ならない。そう思わなければ誰も動くことはない。

 

(誰にも、渡したくはないなぁ)

 

 暗い感情が心を染めようとする。そのとき、ハッと理性が戻った。

 

(いやいや、こないなこと考えたらダメや)

 

 すぐ心に付いた汚れを拭き取る。

 だが一度染み付いた汚れは綺麗にすることはできなかった。そのことに気付くことができるのは、欲が肥大化し、気持ちが抑えられなくなったときだろう。

 

「では説明を始めよう」

 

 ジェイルが講師よろしく講演を始める。

 

「まず状況の確認からさせてもらおう。今現在、八神はやては闇の書に蝕まれている。結果、症状が悪化し身体機能の麻痺が進行している。それを阻止するために闇の書を完成させることにした」

 

 守護騎士がバツが悪そうに頷く。

 全てはやてに内密で動こうとしたことだ。

 

「考えとしては悪くない。君たちにとってそれしか方法はなかったと言ってもいいがね」

 

 シグナムがピクリと反応する。少し引っかかる物言いだった。なら他に方法があるのか問おうとするが言葉を飲み込む。おそらくあるのだろう。あるから自信満々にスピーチをしているのだし、何より助けるためにわざわざこうして出向いてきている。

 腹立たしくもあるが、主が助かるのであれば何を言われても我慢することはできた。

 

「だが闇の書の完成は避けたほうがいい。数多の改ざんを施され今となっては本来の機能を果たすことできなくなっている。完成させたとしてもどのような結果になるか予想できない」

「そんなもん……!」

 

 やってみなくてはわからない。

 そう言おうとしたが、あまりにも無責任と感じ口を閉じる。守護騎士の全員がはやてを想っている。その中でもヴィータは人一倍想いが強かった。

 蒐集による完成は一縷の思いに掛けた行動だった。はやての症状が良くなる、もしくは進行が止まるというのは確信を得ての行動ではない。

 

 誰もヴィータのことは責めない。もし自分だったらと立場を置き換えて考えれば気持ちを察することはできた。

 

 ここでシグナムに一つの疑問が生まれる。

 

「なぜ改変をされているとわかる」

「その魔導書の本来の名を知っているかい?」

 

 本来のと言われ言葉が詰まる。本来も何も、この本は闇の書以外ありえない。

 

「それが答えさ」

 

 守護騎士はこれが闇の書であると認識を変えられてしまっている。

 それこそが改ざんされている証拠だった。

 

「その本はね、真の名を夜天の魔導書という」

 

 どこか懐かしい響き。

 心に優しい風が吹いていく。

 

「その名を取り戻す。それが君たちの主を救う唯一の手段だ」

 

 言いたいことは山ほどある。だがここは話の進行を優先した。

 

「どのようにして行う」

「時間を戻す。闇の書ではなく、夜天の魔導書だった頃に時間を巻き戻すのさ」

「……正気か?」

「質問を変えてくれたまえ。私は十分に自覚しているのだよ。君たちからしたら私は正気から縁遠い存在だとね」

 

 清々しいほどの開き直りだった。

 

「神域の話だぞ。にわかには信じられん」

「巻き戻しの実演は不可能だが、時間停止ならばお見せすることはできる」

 

 時間停止も神域の話である。それを見せてもらえるのであれば信用することは可能だろう。

 

「アリシア、お願いできるかい?」

「うん」

 

 アリシアがヴィータに狙いを定める。

 それからすぐに実行に移した。ヴィータが停止する。瞬きもせず、置物のようになっていた。

 

「ヴィータ」

 

 返事はない。

 

「ヴィータちゃん?」

 

 シャマルが揺らそうとする。しかし押せど引けどもビクともしない。空間ごと完全に固定されているようだった。

 

「いかがだろうか?」

 

 拘束系の魔法ではこうはならない。一切の干渉を許さず、外からも内からも抵抗することはできなかった。守護騎士にとって初めて見る現象である。

 信じられない。だが信じるしかない。

 ジェイルはともかく、他の面々が嘘をつくとは考えられない。

 それゆえに、最後の抵抗とばかりにシグナムは質問をした。

 

「高町」

「……え?」

 

 不意打ちを食らった時のような反応を見せる。話を振られるとは思っていなかった。

 

「これが神域の魔法であると偽りはないか?」

 

 八神家以外で最も信頼できる者。

 その男に真偽を問うた。

 なのはが本当と言えば真実である。違うというならば嘘である。

 

「嘘はついてない。本当のことだ」

 

 シグナムは信じることにした。

 剣を交え、さらに共に戦ったことのある男の言葉であれば信じることができた。

 

「わかった」

 

 もう疑うことはしない。なぜそのような魔法が使えるのかも今は聞かない。

 全てを飲み込み、話を元に戻すことにした。

 

「だが巻き戻しは使えないと言ったな。それが使えないのであれば意味がないのではないか?」

「巻き戻しは大量の魔力が必要でね。それも一個人で賄える量ではない。そこでだ」

 

 はやての膝上にある魔導書。そこに目線を移す。

 

「夜天の魔導書を利用させてもらう。蒐集を行い、貯蔵した魔力を使用して巻き戻しを行わせてもらう」

 

 話の全容が見えてきていた。細かいことはさておき、大きい問題について触れることにする。

 

「理解した。しかし問題が残っている」

「どのような?」

「あまり時間は……」

 

 言いかけて止める。そのとき、はやてと視線が重なってしまう。二度に渡る失態だった。

 

「気にせんでええよ。スカリエッティさんは助けてくれようとしてる。包み隠さず話してあげて」

「承知しました……症状の進行は日が経つに連れて速くなっている。悠長に構えていられるほどの時間はない。どれほど魔力が必要なのかは知らないが、決して少なくはないのだろう? 生物から刈り取れる魔力だけでは完成には至らないぞ」

 

 生物からだけでは足りない。

 大量に集めるなら魔導師からも蒐集する必要があった。言葉にはしないが、全員そのことには気付いていた。

 

「心配はいらないさ。贄ならここにある。十分事足りるだろう」

 

 何を言っているのかわからなかった。

 皆、ジェイルの言葉を心のうちで復唱する。あたりを見渡す。周りにはリンカーコア持ちが何人もいた。全員、同時に理解へと至る。

 

「彼女に関しては一級品と言っていい。大量の魔力を蒐集できることだろう」

 

 ジェイルがキャットへと意識を向けさせる。何を隠そうこのために連れて来られていた。

 

「え? 私?」

 

 キャットはクッキーを貪り食っていた。八神家お手製クッキーである。

 

「八神はやての件に関しては以上だ。何か質問はあるかな?」

「いいですか?」

 

 シャマルが挙手する。蒐集した魔力をどのようにしてアリシアが使えるようにするのかと質問する。その他にも細かい点についての質疑があった。

 それらに答えて疑問を解消していく。ある程度出尽くし、質疑応答を終える。

 

「それと一つ訂正させていただこう。夜天の魔導書に戻すと言ったが、正確にはプログラムの一部だけを戻すつもりだ」

 

 訂正事項を述べ、その理由を話していく。

 

「全てを戻してしまうと君たちも消えてしまうかもしれないからね。戻すのは主人を蝕もうとする部分のみさ。闇の書と言われる所以、その部分と言えばいいかな?」

 

 守護騎士が顔を見合わせる。何の話かわからなかった。

 

「すまないが、そう言われても心当たりがない。ただそれが主を苦しめているというのであれば異論はない」

 

 ジェイルから軽く説明が入る。それこそが改ざんされている部分であり、悪影響を及ぼしている根源である。

 また、プログラムの詳細ついては話しても仕方ないため、この場では割愛した。

 

「では次の議題に移ろう」

 

 話は終わりではなかった。はやて以外にも議題があった。

 

「月村すずかに関してだが、こちらも時間の巻き戻しによって帰還を試みる。プレシアの慧眼によりこちらに来た時の足跡が見つけられた。それに対して巻き戻しを行い、空間に出来た穴を再現する」

 

 巻き戻しを行うということは闇の書を利用するということである。守護騎士からしたら優先順位は下がるし、何なら知った話ではないと切り捨てることもできる。しかしジェイルの協力がなければ主人を助けることはできない。なら甘んじて受け入れるほかなかった。

 

「そのときに魔導書を利用させて欲しいのだが、許可をいただけるかな? 夜天の主」

「良きに計らえ」

「ありがたき幸せ」

 

 二人は相性が良かった。

 何か共通点があるのかもしれない。

 

(腹黒さかな)

 

 なのはは真理に近い答えを得ていた。

 

 すでに張り詰めた空気はなかった。

 むしろ和やかな空気となっていた。希望が見えたからだろう。

 守護騎士にも余裕が生まれていた。今となってはジェイルに感謝をしているくらいである。

 

 この日は解散となり、計画は後日実行される運びとなった。

 

 

 

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