退学になったから自分で学校建てる   作:タオンガ

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<突然の退学>

 やぁみんな! 初めまして!

 オレは天帝(てんだい)シャク! 今年で16歳になる、ピカピカの高校一年生!

 キヴォトスの中で唯一存在する男子生徒とはオレのこと!

 よろしくな!

 

 そして、そんなオレが通う学校はゲヘナ学園!

 現在進行形で恐怖政治の真下にある、地獄みたいな学校だ!

 朝起きたら、自宅の郵便受けに退学通知が捻じ込まれてたぜ!

 今すぐ追い出すのは控えてやるけど、1週間以内にゲヘナから出て行けってさ!

 

「ふざっけんなよコンチクショウがぁぁぁぁぁああああああ!!」

 

 オレは激怒した。

 必ずかの邪智暴虐の雷帝(ゴミカス)を除かねばならぬと決意した。

 

 力じゃオレに勝てないと悟って、排除する方向に舵切りやがったなあのクソ!

 そっちがその気ならやってやろうじゃねぇかよこの野郎!

 クーデターだ! お望み通りぶち壊してやるよ雷帝政権!!

 

「……チッ」

 

 ……などと、心の中で叫んだところで、今のオレに雷帝を引き摺り下ろす事は不可能だろう。

 純粋な暴力だけで考えるなら奴の軍隊なんざ片っ端からぶちのめせる自信があるが、しかし退学させられ、ゲヘナとは無関係の未所属生徒に変えられてしまった以上、クーデターを起こそうとすると連邦生徒会に動かれてしまう。

 流石にアレの相手をしながらヴァルキューレやらSRTやらの精鋭を相手にするのは難しいし、何より俺は真っ当に卒業がしたい。

 となれば、クーデターを起こすのは悪手と言える。

 

「……はぁ、はてさて、どうしたモンかねぇ……」

 

「シャク、居る?」

 

「んおぉ、カヨコ」

 

 オレが頭を抱えて悩んでいると、白い髪と肌の少女が半ば壊れた扉から顔を覗かせた。

 彼女の名前は鬼方カヨコ。オレと同学年で、オレの相棒的ポジションだ。

 

「聞いてくれよカヨコぉ! オレ、ゲヘナ退学になっちまった!」

 

「……ああ、やっぱり」

 

「やっぱりってなんだよやっぱりってよぉ!」

 

 はぁ、と。

 オレの叫びを聞き流して、短くため息を吐くカヨコ。

 クッソこの野郎! 他人事だと思いやがって! お前のことは親友だと思ってたのに!

 

「だって、私も退学になったから」

 

 そう言ってカヨコが取り出すのは、オレの手元で皺くちゃになっているそれと全く同じ書類。

 ただ一つだけ差異があるとすれば、名前の欄が天帝シャクから鬼方カヨコに変わっている点だ。

 

「よぉし、信じてたぜカヨコ! お前はやっぱり心の友だ!」

 

「……ああ、そう」

 

「やっぱり持つべき者は友達だな! これでもう何も怖くねぇぜ! これからもオレたち2人で頑張ろうな!」

 

「うん、まぁ、それはいいとしてさ。これからどうするの。私たち2人して退学になっちゃったけど」

 

「どうするもこうするも……転入先を探すしかねぇだろ。オレ、卒業はしたいぞ」

 

「それはそうかもしれないけどさ。強制退学者を受け入れてくれる学校なんて、よっぽど困窮してる所以外にあるのかな?」

 

「……あっ」

 

 そういえばそうだ。

 強制退学者という称号は、即ち『大犯罪者』のレッテルと何ら変わりない。

 あの大犯罪者と名高い狐坂ワカモですら『停学処分』とされているのである。

 それ以上の処分が下された生徒など、それこそカヨコの言う通り、よっぽど困窮していて廃校寸前みたいな学校でもない限り、欲しがらないのが常である。

 

「……いや、大丈夫だ! ある! オレ達を受け入れてくれるマトモな学校はこの広いキヴォトスの中に必ず……きっと……多分……あると信じたい……!」

 

「……はぁ……あるとは思えないけど……まぁいいや。取り敢えず、片っ端から転入申し込んでみよっか」

 

 と、そんなわけで、何となく普通に卒業できそうな学校全部に転入の申し込みのメールを打ってみた。

 そしてなんやかんやあって5日後。

 

「一つもねぇじゃねぇかよコンチクショウ!!」

 

「やっぱり全滅だったね」

 

 どの学校からもお祈りメールが来やがったよ!

 そんなに嫌か!? 強制退学者を自分の学校に入れるのはそんなに嫌なのか!?

 ……まぁ嫌だよな、うん。普通に考えて。

 オレだって生徒会長の立場だったら普通に嫌だもん。

 それこそゲヘナくらいなんじゃねーの? 強制退学者を受け入れてくれる学校なんて。

 

「あーもう何だよマジで! もうマトモそうな学校が一個も残ってねぇぞ!」

 

「アビドスならギリギリまともそうじゃない? 昔はゲヘナとトリニティにも並ぶ巨大校だよ」

 

「零落済みだよ! もうかつての栄光のカケラも残っちゃいねぇよ! 全部砂の下だよ!」

 

「じゃあどうするつもり? アビドスも蹴るんなら、後は本当に不良高校とか半廃校みたいな学校しかないけど」

 

「ぐぬぬぬぬ…………………」

 

 仕方があるまい、これは本当の本当に最後の切り札だと思っていたが、こうなった以上はこの札を切るしかない、か。

 いや本当に切りたくない。本当の本当に切りたくない。

 だってこんなのほぼ賭けだし。

 と言うか賭け以外の何でもないし。

 ギャンブルが嫌いなオレとしては出来る限り切らずに済ませたい札だったが。

 やはりこうなってしまった以上は仕方がない……!

 

「……作る」

 

「え?」

 

「作るぞ、カヨコ」

 

「作るって、何を」

 

「学校に決まってんだろ! 学校を作るんだよ、学校を! オレ達の手で! オレ達の学校を!」

 

「……………………はぁぁ!?」

 

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