退学になったから自分で学校建てる 作:タオンガ
「ここが俺たちの新しいハウスね!!」
「変な言い方しないで」
と言うわけで俺たちが新しく契約したのは、ミレニアム校区からちょっと外れた所にある、ちまっとしたアパート。
1DKで4万5000円。まぁ、妥当なところだろう。
駅とスーパーがかなり近くにあると考えれば、むしろ割安ではないだろうか。
「ふっふっふっふ……ここがオレたちの学校のスタート地点になるのだ……」
今はまだ1DKのちっぽけなアパートの一室だが、ゆくゆくはビルを丸々一棟手に入れてやるぜ。
そのグレードがどれほどの物になるのかはこれからの頑張り次第だがな!
「感動してるところ悪いけど、さっさと荷解きしてくれない? 荷物もまだ運び終わってないでしょ?」
「ん? ……ああいや、オレの荷物はこれで全部だぞ」
「は? それだけ?」
カヨコが目を見開いて驚く。
……いや、それだけって、服と布団と食器と、あとは銃の整備用品一式だぞ。
少なくとも段ボール3つ分はあったぞ。
「……何もおかしな事はないと思うが……」
「いや、私物少なすぎでしょ。私もあんまり私物を持ってないけど、あんたのよりは多いよ?」
そう言いながらカヨコが指差すのは、部屋の隅に纏めて置かれた段ボール。
まぁ、確かにオレの持ってきたそれよりかは多い。
「ん〜……オレの場合、屋根と床と生活用品さえありゃあ満足だからなぁ」
「……前の寮にあった家具とかって、備品だったの?」
「おう」
あったから使ってたけど、家具とか正直あんまり要らないんだよね。
座るのは布団の上でいいし、飯食うのもキッチンで立ちながらでいいし、課題のレポート書くときも床で十分だし。
タンス? しまう程の量の服なんて持ってないけど?
「……あ、でも家具はいらないけど、最低限の家電は欲しいな。少なくとも洗濯機と電子レンジ、湯沸かしポットはマストだ」
「レンジと湯沸かしポットは確かに欲しいけど、洗濯機の方はコインランドリーで何とかすればいいんじゃない? ゲヘナじゃないんだし、そうそう盗まれたりはしないでしょ」
「そうかねぇ? まぁ、確かにゲヘナのそれよか圧倒的に治安がいいのは確かだけどさ」
あの辺、キヴォトス全体で見てもトップクラスで治安の悪い混沌とした場所だったからなぁ。
爆発音なんて1時間に1発の割合で鳴り響いてたし。道とかボロボロで窓ガラスなんて割れてないのを探す方が難しかったし。
数少ない店の売り物とかにも金網が張ってあって、ガチで窃盗対策をしてるのを見た時は思わず笑っちゃったよね。
「ん〜……じゃあ、洗濯はランドリーで済ませちまうかぁ」
「うん、そうしよう」
「よし、んじゃあ早速その辺の一式を買いに……ってか、そういやまだここって電気通ってねぇのか。あとガスと水道も」
「急な引越しだったからね。まぁ、手続きはしてあるし、暫くすれば通ると思うけど、それまでは外で色々済ませるしかないね」
「……マジでやってくれやがったなあの
どうせ今もあの野郎、あの無駄に豪勢な椅子にふんぞり返って葡萄ジュースでも飲んでるんだろうなぁ……やべぇ、想像したらムカついてきた。
今度出会ったら絶対にその鼻っ柱へし折ってやる。
「何? 学校を立てて、ゲヘナに戦争でも仕掛けるつもりなの?」
「いや、特にそういうつもりはねぇなぁ。やるならあくまでも個人的に、かつ秘密裏にだ。これでも学校を作ろうとしてる身、余計な悪名が付くのは避けたい。……まぁ、トリニティに雇われでもしたら分からんが……」
「……あの見栄とプライドの塊みたいなお嬢様達が、私たちみたいなのを雇ってくれるのかな?」
「連中、相当な腹黒だぜ? 裏で大金握らせて、私達との関係をバレないようにして騒ぎを起こしてこいとか、普通に言うぞ」
「……想像できるね」
アイツらはそう言う事をマジでやる。
っていうか絶対に現在進行形でやってる。
涼しい顔しながら不良とかゲヘナ生を騙して内ゲバ起こそうとしてる。
何がすごいって、そう考えられるどころか、むしろそれをしていないって方が不自然に思えるって事。
一回でもトリニティ生と関わると分かるけど、あの連中マジで腹の中真っ黒の極悪人だから。
いやまぁ、トリニティ生全員が全員そうってわけじゃないのは分かってるけど、少なくともゲヘナを嫌ってるような連中は大体そう。
アイツらゲヘナ生の事を同じ人間としても見てないから。虫か、風呂場に湧いた頑固なカビくらいにしか見てないから。
それこそ自分たちのせいで誰かのヘイローがぶっ壊れても知らん顔を貫き通すんじゃない?
「……もし本当にトリニティから依頼が来たとして、どうするつもり?」
「断るに決まってるだろうが」
「まぁ、そうだよね。切り捨てる魂胆が見え見えだし、私だってそうする」
「ん。……でもまぁ、その辺について深く考えるのはもっとチャートが進んでからでいいだろ。まずは金稼ぎだ。どうせ暇だし、バイト見つけようぜ。とりあえずオレは力仕事系のバイト探してみるわ。引越し業者とか」
「私は……まぁ、なんでもいいか」
と、二人してスマホの画面を覗き込み、バイトを探す。
ノートパソコンは持って来てはいるが、まだ部屋にネットが通じていないので使えない。
「……そう言えばさ」
「ん?」
「賞金稼ぎもするっぽいけど、そっちの方はどうするの?」
「あー……お互いで暇な時間に探してボコって引き渡すしかねぇだろ。賞金首の数だって無限じゃねぇし、どっちか一方が全く稼げない時間があるってのは正直避けたい」
「……シャクならともかく、私一人でどうにかなる気がしないんだけど」
「だよなぁ……ンー……」
男ということもあって、オレにはキヴォトスの大抵の生徒にはタイマンで圧勝できるという自負があるが、しかしカヨコはそうもいかない。
カヨコもキヴォトス全体で見れば相当な実力者であるのは確かなのだが、賞金首のような連中を相手に確実に勝てるレベルかと聞かれれば恐らくNO。
上には上がいるという言葉があるように、カヨコよりも格上の存在はその辺にゴロゴロしているし、質で考えれば格上でなかったとしても、数の暴力で攻められれば敵わない。
そしてそれは、同じことがオレにも言える。
となれば────
「よし、じゃあアレだ。土日は賞金稼ぎの日って事にしよう。いい感じの賞金首がいなかったら……まぁ、勉強か、お休みってことで」
「……うん、まぁ、いいんじゃないかな、それで。暫くは」
「よし、じゃあそうしよう」
「おし! 決まりだな! シフト決める時はその辺注意してやってくれよ!」
「分かってるよ。シャクこそ忘れないでね」
「オレが言い出した事だぞ! 忘れるわけねぇだろ!」
「…………………………そうだね」
「……いや、今回は大丈夫だ。大丈夫だから。だからそんなに不安そうな顔しないでくれ」
前にカヨコとの約束を3回ほどすっぽかしたことがあります。
前科三犯です、よろしくお願いします。
「……ふふっ」
「いや、何で笑ったんだよ」
「え? ……あー、忙しくなりそうだなって」
「へっ。こんなのまだまだ序の口だぞ。今後はもっと忙しくなるんだ。束の間の休息を楽しんでおきな」
現在の生徒数:2人
預金残高:約23万円
次のステップまで、残り約977万円。