退学になったから自分で学校建てる   作:タオンガ

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賞金首みーつけた

 電車に揺られ、俺たちが辿り着いたのはミレニアムの校区、その端に位置する、未だ開発の追いついていない、閑静な住宅街だ。

 ネットから得た情報が正しければ、どうやらここに賞金首は居るらしい。

 

 被害者で、かつ賞金150万円の出資者である民間企業の記述によると──不良グループに商品を運搬するルートの一つを潰されて困っている上、無駄に実力が高いので容易に手が出せない。本来ならミレニアムに頼むべきなのだろうが、泣き付いたら足元を見られそうなので頼みたくない。中小企業ゆえ、大した額は出せないものの、捕まえてくれれば賞金をお支払いする。

 との事だった。

 

「極めてクリーンかつ分かりやすい仕事だ。早めに見つけられたのはありがたい」

 

「クリーンって言っても、だいぶグレー寄りだけどね」

 

「違法じゃ無ければ問題ナシ!」

 

 キヴォトスにおいて発生した不良の対処は、不良の出自を問わず、不良の出現した自治区の学校が行わなければならない。

 それが例え本当に無関係な学校所属の生徒だったとしても、である。

 

 逆に、仮に自分の学校から出た不良が他の学校の自治区で悪さをしたとしても、手出しはNG。

 悪さをされた学校側からの要請があったり、そもそもどこの自治区にも所属していない土地であったりすれば話は別であるが、それはあくまでも例外である。

 

 なので、今回の事件も、普通ならばミレニアム所属の生徒が対処せねばならない問題であり、他校籍を持つ人間は関わるべきではないのだが────

 

「今の俺たちは無所属だからな。仮に見つかったところで、正当な防衛であるって事にすりゃあ、何の問題にもならねぇ」

 

 それは、何らかの理由で退学を余儀なくされ、無所属となった生徒たちを守るための法律を悪用するという意味であったが、何はともあれ合法は合法。

 間違いなく違法ではない。

 

「それにどうせここで稼いだ金は大体全部機材だの装備だの、新しい拠点だのにぶち込むんだ! ツッコまれる事は何もねぇってもんよ!」

 

「モノを奪るとか、余計なことさえしなければ、ね」

 

「ボコって縛って証拠残して通報、それ以外はしない。これ大事!」

 

「ん」

 

 あくまでも認められているのは『正当な防衛』だけだ。

 それ以外の犯罪行為は普通にアウト。

 めでたくお縄につく事になる。

 

「……あ、あれじゃない?」

 

「お? ……あー、ホントだ、アレっぽい」

 

 と、アレコレと雑談をしながら歩いていると、何やら倉庫に入っていくスケバンどもを発見。

 彼女らが下品に笑いながら入って行ったその倉庫は、そこかしこにスプレーで落書きされているのみならず、その傍らには如何にもと言わんばかりにゴテゴテと改造されたバイクが止まっており、その威容は『ここがウチらのアジトでござい』と喧伝しているようであった。

 彼女らからしてみれば、この倉庫の威容で以て目障りな近隣住民達を遠ざけているのだろうが、しかしオレ達からしてみれば実に有難い看板である。

 ネギを背負った鴨がのぼりも担いで居座っているようなものだ。

 

「へっへっへ……それじゃあ早速始めさせていただきますかね……あ、カヨコは入り口見張っといて。他にも仲間がいるかも知れんし」

 

「うん、わかった」

 

 倉庫の入り口にカヨコを待機させ、中に入る。

 中の様子は、まぁ、想像通りといった具合だ。

 床には空の薬莢やらスプレー缶やらが散乱して汚れ放題。

 辺りに漂う埃っぽい空気はなんとも言えない異臭を含んでいて、実に気持ちが悪い。

 よくもまぁこんな空間に居られるもんだ、と。思わず感心さえしてしまう。

 屋根と床と生活用品さえあればその環境で満足できると豪語するオレですら、こんな環境は願い下げだ。

 もしオレがここに住む事になったならば、まずはすぐに掃除から入るだろう。

 

「すんませ〜ん!」

「……あぁ?」

 

 わざとらしく大きな声を出してみれば、反応するのはスプリングの飛び出たベッドやらソファやらに寝そべったり座っていたりしていたスケバン達。

 

「男だ」

 

「男子生徒だぜ」

 

「マジかよ、実在したのか」

 

「ってかなんでここにいんのよ」

 

 ヒソヒソ、というにはあまりにも大きな声で、スケバン達は顔を見合わせて話し始める。

 

「……あのー、すみません?」

 

 もう一度声をかければ、彼女達は黙り込んで、リーダーらしき人物の方を見る。

 皆の視線を受け、ため息を吐いてリーダーは立ち上がった。

 

「あー、ニイちゃん。ここいらじゃ見かけない顔だけど、どっから来たんだい?」

 

「ゲヘナの方ですね! ちょっと色々あって逃げてきたんですけど、道に迷っちゃいまして! 駅ってどっちにあるかわかります?」

 

「は? 駅ぃ?」

 

「はい! 駅です!」

 

「何? 帰んの?」

 

「まぁ、色々置いてきちゃった物もありますから! スマホとかも置いてきちゃいましたし」

 

「へぇ〜……そりゃあ大変だねぇ、じゃあ今、ニイちゃんはスマホも何も無い、ほぼ手ぶらなわけだ」

 

「そうですね! すみません、お礼として渡せる物は無いんですが……」

 

「はぁ〜? 何それ、そんなんいいわけないじゃん」

 

 パチン、と。リーダーが指を鳴らすと、ソファに座っていた二人組が、入り口を塞いだ。

 ニタニタと、汚らしい笑みを隠さない彼女らが握るのは、片方がアサルトライフルで、もう片方がサブマシンガン。

 サブマシガンの方は分からないが、アサルトライフルの方はAK-47のようだ。

 貧乏人御用達として有名な型落ち銃だ。しかもろくに手入れもされていない。

 少なくとも、金に余裕のある組織では無いようだ。

 

「ってかさ、ここってウチらのアジトなわけよ。入ってきた時点でマトモに帰すわけないじゃん」

 

「え、マジですか。困るんですけど」

 

「あぁ!? 知るかよ! 運が悪かったと思って諦めんだな!」

 

 突如として豹変し、こちらに凄むリーダー。

 他のメンバー達も、武器を手にオレを取り囲むべく歩いて来ている。

 

「いや〜、バカだよねぇホントにさ! 見るからにやべーとこだってわかるじゃん!」

 

「それを駅はどこですか〜って、あっはっは! 意味わかんねぇ!」

 

「テメーはネギ背負って来たカモなんだよ、カモ!」

 

「まぁ安心しなって! お前はウチら5人が責任持って丁寧に飼ってやるからさ! 首輪でもつけてさ!」

 

 ギャハハ、と。下品に笑うスケバン達。

 うん、よし。これでコイツらのメンバーはこの場に居る5人だけって事は理解できた。

 じゃあもう遠慮しなくていいな。

 

「いや〜、困っちまうぜ! 日頃の行いがいいと、こんなことも────ぐぺっ!?」

 

 腰のホルスターから2丁ある愛銃の片方を引き抜き、そのまま撃つ。

 改造されたM1911。『シャクラ』と名付けられたそれから鋭い銃声と共に吐き出された弾丸はリーダーの額を正確に捉え、瓦礫の山へと吹き飛ばした。

 

「……は?」

 

 スケバン共が状況を理解していないうちに、もう一発を近くにいたスケバンの額にぶち込む。

 頭に強い衝撃を喰らって、スケバンはその場に崩れ落ちた。

 

「はぁっ!?」

 

「何だソレっ……バケモンかよ!?」

 

「クソッ、さてはあたしらを騙してやがったな!? 撃て撃て! ぶっ殺せ!」

 

 残された3人がようやく状況を理解したのか、こちらに自らの銃を向けて連射してくる。

 しかし悲しいかな、その威力は、オレを倒すにはあまりにも弱い。

 

「なっ、こ、コイツ、効いてな……ぐあっ!?」

 

「んなっ……むっ、無理ゲーじゃねぇかこんな……がぁっ!?」

 

「うっ、うおおおおおおおお!?」

 

 立て続けに2人、それぞれ額に一発ずつぶちかまして、黙らせる。

 すると、たまらず最後の1人がオレに背を向けて、倉庫の外に逃げようとする。

 だが────

 

「ぐえっ」

 

 タンッ、と。サプレッサー特有の籠ったような銃声が小さく響き、最後の1人も倒れた。

 

「……これで最後?」

 

「ああ、一応これで全員一発ずつぶち込んだぜぃ。命中率は勿論100%だ。今は弾薬一つも無駄のしたくねーからな」

 

「……それにしては、1人少ないみたいだけど」

 

「あ?」

 

 そんな馬鹿な。

 そう思って辺りを見回してみると、確かに1人足りない。

 どうやらリーダーらしき人物の姿が消えているようだ。

 

「げ、逃したか?」

 

「……いや、そうでもないっぽい」

 

 カヨコがそう言うと、奥に見えていた瓦礫の山が弾け飛んだ。

 オレが咄嗟にカヨコの盾になるように動けば、なんと奥から突っ込んで来たのは軽トラック。

 ボディは塗装が剥げて所々が錆び、ヘッドライトが完全に潰れた、見るからにボロボロの軽トラックが、瓦礫を吹き飛ばしながらこちらへやって来る。

 

「うおぅ」

 

「こんなのあったんだ」

 

「へっ、へへへへへっ、もう謝っても遅いぜ、テメェら……! 覚悟しやがれ……!」

 

 と、運転席から這い出て来たリーダーが荷台にかかっていた布を取れば、そこに設置されていたのはなんと重機関銃。

 形状から察するに、M2重機関銃だろうか。

 一昔前の型落ち品だが、しかし腐っても重機関銃は重機関銃。相応以上の威力はある。

 見る限り、かなりしっかりと手入れされているようで、弾薬もたんまりとあるらしい。

 成程、彼女らの最終兵器というやつなのだろう。

 この兵器を用いて、彼女らはこの辺りを制圧したのだろう。

 しかし────

 

「ぐあっ」

 

 リーダーが荷台へ登ろうとしたところを、カヨコの『デビルズロア』が撃ち抜き、リーダーはポトリと落ちた。

 いくら強い武器があろうと、使えなければ意味はないのである。

 

「……え? これで終わり?」

 

 あまりの呆気なさに、カヨコが不安そうに呟く。

 

「終わりじゃね? あまりにも呆気なさすぎる気もするけど」

 

「ええ……」

 

「まぁいいじゃねぇか! とりあえず連中全員縛り上げて、証拠写真撮って、そんで警察につきだして、そしたら────」

 

 報酬貰って帰ろうぜ、と。

 そう言おうとした瞬間だった。

 

「────ごめんくださーい、どなたかいらっしゃいませんかァー?」

 

 メイド服姿の女が、ミニガンを構えて突入して来たのは。

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