退学になったから自分で学校建てる   作:タオンガ

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命名

 ヒメカが加入してから1ヶ月が経過した。

 その間にもバイトやら賞金稼ぎの合間に勉強を進めて行ったわけだが、そろそろ貯金が500万の大台を突破するかという折に、カヨコがオレにこんなことを言ってきた。

 

「良い加減、学校の名称を決めたら?」

 

「……もうか? 早くねぇか?」

 

「別に、すぐに決めろなんて言ってないよ。でも、明確な名称があった方が色々と都合がいいのは事実でしょ。意識もつけられるし……何より、考えるのには時間がかかる」

 

「……あー」

 

 それもそうだ。

 実際、明確な名称はあった方がいい。

 名前というのはすなわちシンボル。

 有るのと無いのとでは、それこそカヨコが言うように意識の点で大きな違いが出てくるし、他にも色々と都合が変わってくる。

 

「……そうだな、早いうちに考えるか」

 

「うん、その方がいいよ」

 

 と、そうカヨコに返事をしたのが30分前の出来事である。

 

「と言うわけで今から『学校の正式名称を決めようの会』を始めようと思います! 司会の天帝シャクです!」

 

「……ノッた方がいいですかね?」

 

「いや、いいよ」

 

「はいそこ! そんな寂しいこと言わない!」

 

 ミレニアムの方にいたヒメカを招集し、集まったのはオレの家。

 ちなみに現在の時刻は夜の11時。遅い時間によく来てくれたとお礼を言いたい。

 

「それで、早速だけど何かいい案はない?」

 

「まぁ、取り敢えず後ろに付けるのは無難に『傭兵学校』でいいとして、前半ですよね」

 

「正直あの辺って地名とか用語あたりがベースでしょ? どっかの神話から取ってくればいいんじゃないの?」

 

「それをどれにしようかって話をしてんの!」

 

 基本的に、キヴォトスに存在する学校の名称には、神話などに登場する名称がそのまま用いられる事が多い。

 例えばゲヘナ(Gehenna)はとある書物に登場した地獄の名を用いたもので、トリニティ(Trinity)も同じ書物の『三位一体』を意味する名称から。他だとかつて栄華を誇ったアビドス(أبيدوس)もどこかの地名から取ってきたものだし、ヴァルキューレ(Valkyrie)はとある書物において、『戦乙女』を意味する言葉である。

 と、そのように考えれば、我が校も似たようなところから名前を取ってくるべきなのだろうが、しかし気の利いたものが思いつかない。

 

「ふむ……成程、地名ですか。パッと考えつくものですと、アスガルズやミズガルズですが……傭兵学校と繋げるとなると何だか違う気がしますね」

 

「ゲヘナと同じ所から引っ張って来るとリンボってのがあるっちゃあるけど……まぁ違うよね」

 

「傭兵学校だからなぁ……出来る限り強そうな名前と意味合いのところがいいよな。でも流石にスパルタとかヒッタイトとか付けてもって感じだし……」

 

「そもそも地名から名付けなければならないと言うルールは無いのですし、別のところから取ってくれば良いのでは? トリニティなんて、三位一体の意味そのまんまの学校でしょう。我々も似たようなことをすればいいのでは」

 

「傭兵を意味する言葉を探すってこと?」

 

「そうなる……のですかね。傭兵の神なんて聞いたこともありませんが」

 

「別に傭兵って意味に縛られることはないでしょ。もう強そうなら何でもいいんじゃないの?」

 

「いやよくねぇだろ。でもまぁ傭兵って意味に縛られることは無いってのは確かにそうだな。どこぞの戦神とかから取るか?」

 

「流石に神の名前をそのまま用いるわけにもいかないでしょう。その神にちなんだもので良いのでは?」

 

「OK、んじゃあ、その方針で行こう」

 

 と、そんな具合で方針が決まってからも、あーでもないこーでもないと議論は続いてゆき……

 

「ってなわけで、オレたちの学校の名前は『マルト傭兵学校』に決定いたしました! 拍手!」

 

「わー」

 

 最終的に、オレの愛銃の名称である『シャクラ』と『ヴァジュラ』の元ネタになった書物に近しい、『リグ・ヴェーダ』という書物に登場する『マルト神群』と呼ばれる神々の総称から取ってきた。

 暴風雨の化身たる彼らは黄金製の武具や装飾具で美しく着飾り、腕力に優れ、黄金の車を持つ、優雅な神であると同時に、恐るべき殺戮者にして戦士でもあったという。

 

 複数人存在すると言う点、強大な存在として描かれている点、『ヴァジュラ』の保持者の部下として描かれている点などから、この名称こそが最適であると判断した次第だ。

 

「やっと決まった……」

 

 そして現在の時刻は深夜2時。

 大体3時間ほどずっと学校の名称について考えていたと言うわけである。

 正直もう死ぬほど疲れたので早く寝たい。

 

「うん、寝よう。さっさと寝よう。あと5時間後にはバイトで家出なきゃならねーんだ。少しでも睡眠をとっておきたい」

 

「ヒメカも泊まっていけば? この時間から帰るのも面倒でしょ」

 

「はい、それじゃあお言葉に甘えて」

 

「じゃあシャク、布団」

 

「オレに床で寝ろと申すか?」

 

「誰のせいでこうなったと思ってんの?」

 

「それを言われるととても弱い」

 

 そうして、オレは硬い床の上で寝ることになってしまった。

 結果、その日のバイトで死ぬほど苦労したことは、言うまでもない。

 

 

 現在の生徒数:2(+1)人。

 預金残高:約477万円

 

 次のステップまで、残り約523万円。




オレンジを脱したかと思ったらまたオレンジになるんだよな。
どの辺が気に食わないんだろう。
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