___は諦める。 作:匿名冷ボウ
今日も今日とて魔物を砕く。
今日の晩御飯分のご飯代を稼ぐ為に。
「はぁ…」
手にした鉄の棒切れが使用不可能になるまでの損傷を負い、遂にはポッキリ折れてしまった。これではもう使えない、思いっきりぶん投げて魔物を二体貫通ダブルキルする。
ここに来るまでに拾ったブツだが、中々に殴り心地の良い鈍器だった分ここまであっさり失うと少し喪失感がある。どうせ後ですぐ忘れてしまうものだが。
魔物はもういない。先程のダブルキルで最後だったようだ。魔石は…あぁ、残ってる。運が良い。
魔石を三つ拾ってポケットにin。そのまま、私は地上へと向かって歩いた。
「はい、1200円です。お疲れ様でした」
無機質な受付の嬢から封筒に入れられた現金を貰い、そのまま立ち去る。
周りからは「5万6千円」だの「24万円」だの聞こえてくるが、生憎大金を稼ぐべくこんな仕事をしている訳ではない私にはノイズにしか聞こえない。
さて、今日はトッピングも付けれるし、調子に乗ってサイドも頼んでみようか…と行きつけの店の覚えてしまったメニューを思い出しながら足を進めると…ッチ。
私は出口に向かう足をすぐさま回れ右して近くの柱のそばに向かう。
「さー帰還いたしましたー! 我らが安置のギルド!」
カメラに向かってそう叫ぶ三人組の内の一人。
ったく、ここ最近の
ドローン型の配信カメラが入り口から離れた瞬間に柱から離れ、なるべく迂回するように出口に向かって外へ出た。
最後の最後で不快になった。今日は多少のオーバーを気にしないでギガを頼もう。
私の足は、迷うことなく行きつけの店へと向かう。
私の好きな席は店の角。それも妙に小さく壁で仕切られた、二人がけのテーブルが三つ囲まれたような感じの場所だ。
いつもの如く迷わずそこに座り、タッチパネル式のメニュー表をその場所から動かすことなく慣れた手つきで指先で操作する。
「四種のチーズ」「ギガ」「つゆだく」「ねぎだく」「サイド:からあげ(5個)」「ジンジャーエール」。
一度ももたつくことなく操作が完了して注文完了をタッチ。厨房の方で電子音が聞こえ、確かに注文が完了したことを察する。
待ち時間にはスマホを弄る。狂ったようにおすすめに出てくる配信者の動画を無意識に除外し、昔から見ているゲーム実況者のチャンネルを見ながら、面白そうな動画を吟味して見る。
見て待つこと数分、店員がお盆を持ってこちらにやってくる。
「お待たせしました」
典型的なマニュアル通りのセリフと共に目の前に置かれるお盆。
注文通りのジンジャーエールに、氷入りのコップ。湯気を立たせる唐揚げに、本命であるチーズがたっぷり乗ったギガ盛りの
何本も刺さっている箸入れから一膳箸を取り出し、手を合わせてから牛丼に箸を入れる。
とはいえこの量の牛と一緒に米を口に入れられないため、まずは先にチーズと牛を先に食べる。___うん、僅かな塩味と牛と玉ねぎが美味しい。
一口それらを食べた後に、つゆだくのオプションによってつゆに沈んだ米を箸で器用に塊を持ち上げて食べる。つゆで濡れた米の柔らかさが大好きだ。
その工程を何度か繰り返すと、つゆでバラバラになった米は箸で掴めなくなる。私は箸を置いて、箸入れの隣にある匙に手を伸ばす。
最初から匙にすればよかった…とはいつも思うが、まぁ私が洗う訳でもないしと気にせずに匙を使ってバラバラの米を食べる。
そういえば唐揚げを忘れていた。でも牛丼を食べ終える寸前の無傷なからあげはどこか特別感があると思うのは私だけだろうか。どこか得した気持ちになる気がする。
からあげを齧ることなく一口で食べ、牛丼屋にしてはレベルの高いからあげの美味しさを口内に残しつつ残りの牛丼を食べ進める。
そして牛丼を食べおえた後、意味の分からない調整をして残した最後のからあげを一口で食べ…ごちそうさま。
タッチパネルで確認したが、何故かまた見てしまう伝票の値段を見つめながらポケットの中の札と小銭を確認して、立ち上がってレジへ向かう。
私が立ち上がったのを確認した店員がすぐさまレジに来て、伝票を受け取って操作した後に毎回の如く「お支払いをお願いします」と言い放って次の仕事に向かう。
レジのタッチパネルの「現金」を押した後、青く発行する札を入れる場所と小銭を入れる場所。
ささっと金を入れた私は出てくるレシートをレシート入れにぶちこんで、店を後にした。後は家に帰るだけだ。
今日も、昨日と特に行動が変わってないな。そろそろ趣味でも見つけたほうがいいか?
…どうせ長続きしないからいいか。面倒だ。
意味もなく黒い空を見つめながら、そんなことを考えながら帰路を歩いた…。