やっぱロマン武器よロマン武器。
「おーい! 行商人のおっちゃーん!!」
「ん? お、タクミじゃねぇの! 今日はどんな入用だ?」
「今日もいつも通りの製図紙とインクをくれ!! また新しいロマンを思いついたんだよ!!」
「おうおう! 相変わらず面白いもんを作ってるみてぇだな!! で、今回はどんなのを作る予定なんだい?」
今日も今日とてあらほらさっさと採掘場で鉱石を大量に掘り出し、『ドワーフの里』に持ち帰ることができた俺は、この里の中心にある集会所のような場所――『ギルド』に訪れていた、顔なじみの行商人のおっちゃんから設計図を記録するための製図紙とインクを購入していた。
実はこの『ドワーフの里』、採掘場と一体化した街だということもあって鉱石資源は大量に手に入れることができるのだが、それ以外がだいぶ入手しづらい。
一応野菜とかは、この街特有のものがあって栄養バランス云々の良い食事に困るというのはないのだが、如何せんそれ以外の物――特に設計図を描くのに必要な『紙』とか『インク』はかなり枯渇しやすい。
一応、ドワーフの一部の職人が頑張って作ろうとしているのだが、この熱に満ちた街の状況的にまず生産が安定しないそうな。
なので、行商人のおっちゃん達のように街の『外』から訪れる人から買うしかないのである。
まぁそこまで高くはないし、むしろこんだけの値段で売ってくれる行商人のおっちゃんが良心的すぎるので、俺は喜んで買っていくのだった。
「しっかし、お前が作る『ロマン武器』だったか? アイツはすげぇな! 武器に関しちゃド素人の俺でも分かるぜ。あの武器の凄さってのがよ! まるで王都にある『魔導工学』ってやつだな!!」
「ぬっふふふふふふふ……!! いいだろぉ? 俺の自慢の子供達だぜ……って『マドーコーガク』??」
「おっと? お前『魔導工学』について知らねぇのか? ちなみに聞きてぇか?」
「聞きたい! はいこれチップ!」
「毎度有り! なら聞かせてやろう、『魔導工学』ってのはな……」
軽く雑談をしていると、おっさんがふと口にした『マドーコーガク』なるものに俺は少し興味が湧く。
『マドーコーガク』……漢字に直せば『魔導工学』ってところか?
聞きたいかどうか尋ねて来たおっちゃんにチップを渡しながら、機嫌よく話し始めたおっちゃんの言葉に耳を傾ける。
「各国の頭がいい学者サマ方が、最近特に力を入れている分野の名前が『魔導工学』ってぇもんでな? こいつぁ今までの主流だった「歯車の組み合わせ」による「物理的な動作」に、『刻印魔法』なんかによる「動作の補助」を組み込むことで、今までの技術を発展させていこうっちゅう考えらしいんだよ。んでもってこれの凄いところがな……」
「……ん? 物理的な動作と魔法による補助……?」
って、ノリノリで解説していく行商人のおっちゃんだが、俺は話を聞いていくにつれてなんでか分からないがどこか既視感というものを感じていく。
って言うかそれ俺のロマン武器にいつも組み込んでいるやつで……あっ。
「なぁなぁおっちゃん。それ俺の考えてるやつと同じなら、俺もう既にやってるぞ??」
「……へ? あ、もしかしてお前のロマン武器ってやつにはそれがあんのか!?」
「おう! そりゃもちろん! 『
どこまで一致しているかどうかは分からないが、俺は既に『魔導工学』っぽいことはしていると思うのだ。
なんせ、『ヴァンガード』の「多機能さ」と「高性能さ」を両立させるためには、その2つの掛け合わせが必須だったからである。
んでもって、特に『ヴァンガード』には気合入れて詰め込んでおり、その過程で様々な動作問題にもぶち当たりかけた。
まず一番最初に『ヴァンガード』の原型ができた時には、『刻印魔法』という装備などに「魔法的な補助」を付与するという超が付くほど便利な技術なんぞ知らなかったため、物理的なバネやギアだけによる動作を試したときがあったのだ。
まぁもちろん動作させるためだけの部品を詰め込み過ぎて超重いわ、衝撃を逃がし切れずに内部の細かなパーツが壊れて故障を起こすわ、そもそも展開する動作が遅いわなどなど……様々な壁にぶち当たったのである。
そこで俺を拾ってくれたダイゴロウのおっさんの協力の下、『刻印魔法』の技術を学び、そこからさらに数週間をかけて軽量化と動作の安定化を成功させ、ついに完成したのが今の『ヴァンガード』なのである。
神話の時代の遺物のように、高度な魔法が込められた神秘的な武器ならまだしも、俺はロマン脳をフル回転させてるだけの一般ピーポーに過ぎない。
だから持てる技術をすべて積み込んで作ってみたのだが……まさか頭いい人と同じこと考えられていたとは……ってことは実質『魔導工学』の学者さんは俺と同類なのでは???
「はえー、たまげたなぁ……まさか武器のことしか考えてないお前がそんなことができるなんてなぁ……」
「えっへへへ、それほどでも~」
「ほいほい褒められとけ褒められとけ」
若干苦笑いしているおっちゃんをよそに、テンション上がった俺はこれからのロマン武器について考えていく。
さぁてと! 次はどんなの作ろうかな~!
2つの剣を合体させて弓にしてみるのもいいな! ガントレットに鉄杭を射出する機能を乗っけて、パイルナックル! あ、拳で言うなら魔法補助機能とかも乗っけて……!!
「あ、あの! そこの人! ちょ、ちょっといいですか?」
「おろん? 俺に何か御用で??」
ってことを考えていると、背後から声をかけられたので、声の主であろう人物がいる方向に振り向く。
そこにいたのはまぁ、『王道の姫騎士』って感じのお嬢ちゃんだった。
黄金というよりかは蜂蜜色の髪をボブカットでそろえた顔立ちの良い軽鎧のお嬢さんは、緊張しているのか「あの……えっと……」と視線をせわしなく動かして何とか言葉を紡ごうとしている。
護衛の騎士……にしてはかなり華奢だな。お忍びか……?
だが纏う雰囲気は確かに未熟ではあるものの強者のそれ。なんて言うか可憐な騎士ってロマンあるな!!
ちなみに行商人のおっちゃんはすでに姿を消していた。逃げやがったなこれ。
そんな彼女の顔をじろじろと値踏みするように見てしまったからなのか、表情を硬くさせてしまった少女は「あ、あうあうあう……」と変な言葉を出し始めたので、一旦咳払いをして話を切り出す。
「オホンッ! えっと、お嬢さん……でいいですかね? なにか俺に用件がありますか?」
「! は、はいっ! えっと……そのぉ……」
俺の言葉に元気よく返事をした彼女だったが、次第に言葉が尻すぼみになっていってしまう。
だ、大丈夫かこの子……?
と思ったのも束の間、彼女がちらちらと視線を動かしていた先には彼女の腰に差されている『鞘に収められた剣』があり、ここで俺は何となく状況を察したのである。
「もしかして……武器の修繕でしょうか?」
「!! そ、そうなんです!! も、もし可能でしたらお願いしてもよろしいでしょうか!!??」
「近い近い近い!! 距離の詰め方下手くそか!?」
「あ、すすす、すみません!!!」
どうやら正解だったようだ、何かに射出されるかのように距離を取っていた彼女が思いっきり近づいてきて、その素早さに一瞬圧倒されてしまう俺。
えぇ……もしかしてコミュ障ってやつこの子……? いやそれだいぶ失礼だな、うん。
「で、それをなんで俺に? 特にここは『ドワーフの里』だし、腕のいい鍛冶師なら他にも……」
「え、えっと……ほ、他の皆様は、き、気迫というものがすごく、と、とても声をかけられるような状況じゃなくて……」
「あー……納得したっすわ。今だいぶ修羅場ですからね」
彼女が声をかけられないのも無理はない。
つい先日から、俺やダイゴロウのおっさん達が掘り進めている採掘場から掘り起こされる鉱産資源の影響のため、今の『ドワーフの里』は一種のフィーバー状態……俗っぽく言うなら『修羅場』に入っている。
俺みたいなロマン脳全振りで特に依頼も受けていない『変人』などを除き、普通に稼ごうとしている職人のおっさん達的には今は最高の稼ぎ時なのである。
そのため、個人の依頼を受けている暇……というか余裕が無い。
大方、ピリピリしているおっさん達の気迫に圧倒されて逃げるように人ごみを彷徨ってたんだろう。
うーん……『ドワーフの里』を初めて観光する人によくあるやつだぁ……。
「そ、そのため、ギルドの方で話しかけられそうな方はいないかと探していたら、あ、貴方ともう一人のおじさまが武器について話してらっしゃったので……」
「なるほどねぇ……しかも、俺はドワーフじゃないから幾分か話しかけやすかったと」
「は、はいぃ……」
まぁ、今日の俺はほぼオフの日なので、比較的ラフな格好をしている。
まぁ比較的と言っても毎日同じような作業着を着ているのであんま変わらないんだけどな。
んでもって、さっきの行商人のおっちゃんとかもそうだが、いくらここが人の住む街と言っても、環境的にはだいぶ過酷である。
なんせ火山の麓にあるんですよここ。川には水の代わりに溶岩流れてるし、慣れてない頃はクソ暑いし、しかも金属を打つ音がそこかしこで響いてくるから耳も痛い。
さっきから彼女も一際大きく鳴り響いているハンマーの音にびっくりしているようだし……まぁ慣れてないと気圧されるよなぁ……
んで、そんな中で見つけたのが職人っぽい格好の人族である俺だった、という感じだろう。
「うーん……やれないことはないんだけど、俺だいぶこの街でも変人の部類に入るやつなんで、真っ当な修繕ができるかどうかわからないんですよ。それでも良ければ……」
しかし俺はあくまでロマン脳全振りの男。
やんわりと「俺だいぶイロモノだけど頼って大丈夫?」と暗に伝えようと思ったのだが……
「――! 構いません! この『父の形見』と共に、また歩むことができるのなら……!」
「……なるほどねぇ……」
彼女は腰に差している剣を『父の形見』と言った。
託されたものであり、大切な宝物なのだろう。
ダイゴロウのおっさん曰く「武器は、きちんとした使い手の下で役目を果たすことこそが本懐だ」とは言っていたのだが、それでも使い手の志半ばで折れてしまうのは武器としても嫌なことらしい。
『造物と話ができる』というドワーフの『長老』とかは、特にそういうものを感じ取れるのだろう。
しかも彼女は『父の形見』を大事にしまい込むのではなく、共に並び立って行こうとしているのだ。
これはあれだな、うん、そうだ――
――これも一つの『ロマン武器』ってやつだ。
「良いぜ、久しぶりの依頼だ。ちッとばかし時間がかかるけどいいよな?」
「!! それって――!!」
「あぁ! 全力でやらせてもらうぜ!!」
そう言って、俺は彼女の依頼を受けるのであった。
~登場人物紹介~
・クロガネ・タクミ
ロマンキチ主人公。
「継承!それもまたロマンだね!!」と、見知らぬ少女からの依頼を名前を聞く前に受けた変人。
「三度の飯とロマンがあればハッピー」とか言うやべーやつ。
・行商人のおっちゃん
界隈ではそれなりに有名なやり手の行商人。
どこから仕入れてきているのか分からない情報も渡してくれる謎の多い人。
・謎の姫騎士ちゃん
『父の形見』である剣と共に戦ってきたが、やはり長年愛用されてきたのか剣が先に折れてしまった。
他にも武器を振ろうと思えば振れるのだが、やはり形見だけとは言えど『父』と共に歩みたいという心残りから今回は『ドワーフの里』を訪れた。
実は結構すごい人だそうで……?
~登場武器紹介~
次回に持ち越し!
という訳で今回のお話はここまでです。
もしよければ感想などを送ってもらえると嬉しいです。
特になかったら皆の好きな武器とか書いていってくれよな!!