早苗の幻想列車旅   作:hironeco33

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2日間が空いてしまいすみません...
これからは2-3日で投稿できたらいいなと思います。


一畑電車に揺られて

朝日と車内放送の声で目が覚める。どうやら岡山駅の手前らしい。なぜか列車は止まっている。

 

体を起こして時計を見ると、7時10分――……あれ?

 

【お客様に再度お知らせ致します。ただいまこの列車は、岡山駅でのポイント故障により運転を見合わせております。まもなく運転を再開致します。瀬戸号は到着すぐの発車となります。お急ぎの所....】

 

朝から運が悪い。サンライズは遅れるものとはいえ、勘弁してほしい。いやそもそも寝坊したのに解結作業が見れるだけまだ運は良い方なのだが。

 

「もうここに30分以上止まってるんですか!急いでないとはいえこんなことあるんですね。とりあえず切り離しだけ観たいですし準備準備....」

 

浴衣から洋服に着替え、カメラと身分証だけを持ってデッキへ向かうと、すでに同じ目的らしき人だかりができていた。

 

移動しているうちに列車は動き出し、定刻から1時間遅れで岡山駅に到着した。

 

 

〈岡山、岡山です。乗り降りの際、足元にご注意ください。8番乗り場に到着の列車は6:31発....〉

 

まわりの見物客が連結部分へと走っていく。早苗も負けじと早足で向かった。

 

連結部に着くと、すでに作業員が解結作業を行っていた。

 

慣れた手つきで淡々と進んでいく作業を動画に収めていると、早苗の隣で、子どもが父親に支えられながら楽しそうにその様子を眺めていた。

 

(家族とこんなふうに旅ができるなんて……羨ましいな)

 

微笑ましいその様子を横目で見ながらも、作業は着実に進んでいく。

 

貫通扉が閉められる頃、先に発車する瀬戸号のほうで発車ベルが鳴り、乗降促進の放送が流れた。

 

〈サンライズ瀬戸号の方、まもなく発車します。ご乗車のお客様はお乗り遅れ無いよう車内へお戻りください。〉

 

何人かが駆け足で車内に戻っていく。先ほどの親子連れも瀬戸号の乗客だったようで、父親が子どもの手を引いて急ぎ足で駆けていく。子どもはその状況すら楽しんでいるようだった。

 

(あの人たちの旅が、楽しい思い出になりますように)

 

小さな祈りを心の中でしていると瀬戸号のドアが閉まり、前寄りの7両は静かに出雲号と別れて高松・琴平方面へ向かう。定刻なら8時39分に終点の琴平駅に着く列車だ。

 

動画を撮りながら、7号車がホームの端を離れる瞬間を見届ける。すぐに早苗は録画を止め、急いで出雲号の中へ戻った。

ここで置いていかれたらそれこそ笑えない。

 

〈出雲号も発車いたします。ドアが閉まりますのでご注意ください。〉

 

部屋に戻ると外から放送が聞こえた。それを合図にまた録画を始める。

数秒の静寂ののち、列車はゆっくりと動き出した。

 

「でも.......親子かぁ....」

 

早苗はぽつりとつぶやいた。ホームで見かけたあの親子の姿が、ふと脳裏に浮かぶ。

 

早苗の両親は、彼女が幼いころに突然失踪した。警察による捜索もすぐに始まったが、手がかりは一切なし。数ヶ月の捜索もむなしく、結局ふたりは見つからなかった。その後、早苗は親戚に引き取られて育てられることになった。

 

早苗の記憶に残っているのは、家族3人での鉄道旅。母の実家がある上諏訪へ、183系で運転された「あずさ号」で帰省したときのものだ。

 

「......いつかまた会えるのかな」

 

ベッドに横になり、早苗はつぶやく。しかし返事はなく、ただ鉄橋を渡る音だけが響いていた。

 

 

 

_________________________________________________________

 

しばらく本を読みながら過ごし、お手洗いから戻ると窓一面に海のようなものが見えてきた。スマホで現在地を確認しようとしたそのとき、車内放送が流れた。

 

『進行方向右側に見えて参ります湖が宍道湖でございます。周りがおよそ45km、日本で7番目の大きさの海水と淡水が入り混じる汽水湖で、様々な魚介類が生息しており白魚やうなぎ、しじみは宍道湖の代表的な味覚となっており、シジミはこの地区の特産品です。また宍道湖の夕陽は、日本の夕陽百選に選ばれる景色です.......』

 

「おぉ〜!これが宍道湖……! すっごい綺麗! さすが、宇佐見ちゃんが推すだけありますね〜」

 

アナウンスを聞きながら、スマホのシャッターを切る。ああ、こんなことなら、部屋からカメラを持ってくればよかった……と軽く後悔。

 

そうこうしているうちに、あっという間に絶景区間は終わったので早苗はカメラの録画を止める。

 

「さて、宍道ってことは……そろそろ部屋の片付け、しなきゃですね」

 

手早く身支度を整えていると音楽と共に最後の放送が流れた。

 

【ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、出雲市です。お降りの際は車内にお忘れ物がないようお手回品にご注意ください。サンライズ出雲号をご利用くださいましてありがとうございました。】

 

...

 

こうして、定刻からおよそ50分遅れで、サンライズ号は出雲市駅に到着した。

 

〈ご乗車お疲れ様でした。出雲市に到着です。車内にお忘れ物ないようご注意ください。〉

 

「ついたー! 岡山駅から長かった……! さて、電車が遅れた分、あんまり時間もないですし、乗り換えて出雲大社へ行きましょうか!」

 

改札で無効印を押してもらい、切符を受け取ってから、早足で一畑電車の駅へ向かう。JRの駅とは建物が別になっていて、少しだけ歩く必要がある。

 

駅舎に入る直前、早苗はふと、ひとつの広告ポスターに目を留めた。

 

「ん?なんでしょうかこれ...」

 

【デハニ50体験運転 体験運転会!毎週土、日、祝に開催中!】

 

「たしかこの車両……前に観た映画に出てきたやつですよね? 今日は何曜日だっけ……」

 

時計:『今日は水曜日だよ!(`・∀・´)』

 

「……残念ですが、今回はご縁がなさそうですね。……無念っ」

 

肩を落としつつ、切符を買うために券売機へ向かう。電鉄出雲市駅から出雲大社駅までは、片道550円だ。

 

「もうちょっと時間があれば、フリー乗車券買ったんですけどね〜……って、これQRコード!? 沖縄のゆいレールみたい!」

 

見慣れない切符に驚いていると、次の電車の改札が始まった。

 

「松江しんじ湖温泉方面、改札を行いまーす。」

 

駅員さんに切符を見せてホームへ上がる。電鉄出雲市は片方は切り欠き式ホームで、片方は頭端式ホームという特徴的なつくりをしていた。切り欠き式そのものすら見るのは久しぶりで、早苗はその構造を新鮮に感じながら、カメラで記録していく。

 

「始発駅で切り欠き式って、他にもあったかな? ちょっと思い出せないけど、あんまり見ない気がしますね……。あ、そういえば学生さんが多い……もう11時台なのに」

 

夏休みだからだろうか。ホームには学生の姿が多い。早苗と同じくらいの年齢に見える……おそらく高校生だろう。

 

「この子たち、ちゃんと勉強しててえらいですね……。私なんて、こんなにほっつき歩いてるのに……」

 

そんな若干の劣等感を抱いていると、到着放送と同時に列車がホームに入ってきた。

 

〈松江しんじ湖温泉方面到着でーす。大社方面のお客様は川跡駅でお乗り換えです。〉

 

「あ、なるほど!大社へ向かう路線は別で伸びてるんですね!」

 

路線図には川跡駅で乗り換える必要があることがしっかり明記されていた。

 

(危ない危ない....乗り過ごすところでした...)

 

車両は、元東急電鉄の1000系。中間車が先頭車に改造されているせいで、当時の面影はほとんど残っていない。

けれど、運転台を見ると懐かしい東急式の特徴的なワンハンドル。ちょっとだけ、安心した。

 

(おぉ!9000系と同じ!やっぱり東急車ですね〜)

 

一通り写真を撮って、空いている席に腰を下ろす。お昼はどうしようかとスマホで調べていると、ほどなくしてドアが閉まった。

 

........

 

....

 

.

 

田園風景に揺られながらしばらくすると、川跡駅に到着。ここで大社線に乗り換える。

ホームに停まっていたのは7000系。ほかの車両とは違って20m級車体なので、かなり1両が長く見える。

 

「なんかこの電車、他のに比べて長いような……? しかも、新造車なのにドアが一つ潰されてる……???」

 

困惑する早苗。宇佐見ならともかく、ライト層の鉄道ファンである早苗には、この沼は深すぎた。……そして早苗は、また考えるのをやめた。




さて、長くなってしまったので川跡駅発車直前で切らせていただきました。
同じ会社線で車体の長さが違うなんてことあるんですね...
今回こそ出雲大社と思ったのですが思ったよりサンライズを引っ張り過ぎました。申し訳ないです。
次回は出雲大社に参拝します、皆さんは縁結びの神様を信じますか?私は出雲大社に参拝した直後、彼女と別れました。一体どういうことでしょうか....
では次回、早めに投稿するように頑張りますのでよろしくお願いいたします。
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