・夢主以外にもオリキャラが登場するタイプの夢小説
・トリップ、転生、救済、異能力……とにかく何でもありな要素の闇鍋
・地雷に一切配慮しないスタンス
・別作品とのクロスオーバー要素
・夢も腐も存在時空
・キャラ崩壊あり
・警察学校組、長野組をメインにしたい気持ち
・本当になんでもあり
第一話
──『生贄トリップ』というものをご存知だろうか。
それは遥か昔、ネットの海のそれはそれは深い部分……時に大量のリンクサイトからたった一つだけパスワードが書かれている場所を探し出したり、時に真っ白は背景を反転させて隠されたリンク先を探し出したり、また時にサイトを開いた瞬間に † 〇〇番目のお姫様 † やら † キミは○○人目のアリス † から始まり、 † おや、もう帰るのかい? 僕らのアリス † や † お帰りの際はお気をつけて 我らのお嬢様 † で終わるといったどこぞの銀髪三白眼ニキもニッコリなポエムに遭遇したり等……ひっそりとオタクが活動していた頃に流行った要素の一つである。
先ず『トリップ』から説明しよう。
トリップ、とはオタク用語で今現在生きているリアルな世界から全く異なる世界へと迷い込んでしまうことを指し示す言葉である。
尚、この場合トリップ先は大抵が現実世界ではアニメや漫画、果てには小説といったものであることが多い。
因みに派生として『逆トリップ』というものも存在しており、これはトリップの逆で異なる世界からキャラクターが現実世界へと迷い込んでしまうことを意味する。
では、生贄トリップとは?
そう、それは言葉の通り、生贄を差し出すことで異世界にトリップすること、である。
しかもこの場合の生贄は大抵が人であり、そしてほぼ強制的に生贄にされた人も異世界にトリップさせられるのだ。
とてつもなく闇深い用語であるが、そもそもこの要素が流行った時には『嫌われ』やら今とは違った意味の『悪女系』がブイブイ言わしていたので言わずもがなではある。
光あるところに闇あり。闇があるところに光あり。いつの時代も人間という生き物は光と闇を求めてしまうものなのである。
さてはて、多少長くはなってしまったが何故そんな人によっては触れられたくない古の記憶を呼び覚ますようなことを言い出したのかと問えば。
それは単に、とある四人の人間が生贄トリップの『生贄』となってしまったからである。
そしてこれはそんな生贄となった被害者による『ハッピーエンド』のお話。
──に見せかけた、彼らが欲望のままに好き勝手した結果何故かいい感じの結末を迎えたというお話である。
いっけなーい生贄生贄☆
私、緋蜂紗夜。常時目が死んでいることに定評のあるアラサー社畜オタク!ちなみに前世(裏社会在住マフィア幹部♂)の記憶持ち!!
いつものように社畜していたある日の帰り道で知らない女が暴れ出してもう大変!
素人が闇雲に刃物振り回してんじゃねェ咬み殺すぞ──じゃない、一先ず駄犬──ではなくて、女を制圧する為に応戦した際に少ーーーしだけ刺されたと思えば、次の瞬間には知らない真っ白な世界に飛ばされた挙句、神様とかいうなんかちょっと見てるだけでSAN値が削られそうなぐらい整った容姿をした存在から「異世界で高校生からやり直してね。ついでに特典もあげるね。あと生贄にされてるから契約が切れるまでは死ねないからね(要約)」って言われちゃって!?
私たちこれからどうなっちゃうの〜〜〜〜!?!?
次回『生贄トリップしたら転移先が日本のヨハネスブルグと名高い米花町だった件について〜with前世の記憶持ちの愉快な仲間たち〜』お楽しみに!
……いや、ツッコミ所が多いッッッ!!!!
先ず百歩譲ってトリップは分かる。進〇ゼミならぬ支部で習ったやつだからね!!
前世だったら「は?何言うとんねん」って、絶対零度の眼差しで言ってたし何なら即鉛玉が飛んでたと思うけど、今世は足の先から頭までどっぷりオタクをしているのでその辺は履修済みです!!任せてください!!舞えます!!!!
ただし生贄トリップ、テメェは駄目だ。
というかこのご時世に生贄トリップを知っているオタクっているの……?
大分古の要素だと思うけど大丈夫??ついて来れてる????振り落とされてない????
あと犯人の駄犬に伝えたいんだけど、お前はもっとちゃんと生贄にする相手を選んだ方がいい。
若しくはお前の運の悪さを恨め。いや、本当に、マッッジで恨んだ方がいい。
「とりあえず犯人に会ったらアバダっとく?」
「出会い頭にオフへる某後輩より殺意マシマシで大草原不可避〜〜〜〜」
「そんなJKが放課後にタピるみたいなノリで行って良いんでしょうか……?」
お前が選んだ生贄、前世が某魔法学校な児童書に出てくるラスボスと、某捻れたリズムで踊り狂うゲームに出てくる冥府の番人な天才科学者と、某国擬人化マンガに出てくる祖国だったからな??一人目の時点で何もかも詰んでるからな????
あとめっちゃみんな顔がいい。
ここだけ顔面偏差値めちゃくちゃ高くて私は死んだ。
尚、この世界で私たちを引き取ってくれたという設定らしい保護者である『立花 悠』さんもかなりの美形なのでマジで私は泣いてもいいと思う。顔面の格差社会……!!!!
おかしいだろ、色んな意味でパワーバランス崩壊してんじゃん。
生贄側のパワーが強すぎて最早どっちが生贄なのか分かんないよ……過剰防衛にも程があるって……
生贄トリップって生贄側が不憫な扱いを受けてそれを色んなキャラクターが哀れに思った所から接点が出来て、そこから愛されルートか復讐ルートかってルート分岐を舵取りしていくのが定番のはず。
だがしかし、これだとどう頑張っても生贄達による仇討ちRTAルート一直線になってしまうのではなかろうか。かの有名な三分クッキングもおっかなびっくりな内容になっちゃうこと間違いなしである。
誰得なの……?これの何処に萌える要素があるの……??
いや、そもそも生贄の四分の三がヴィラン側な時点で萌え要素なんてあるわけがなかった。こっち側の良心、元祖国だけだわ。終わりだ終わり。
まあそんな理由でなんだかんだありつつも日本のヨハネスブルク、犯罪の見本市かと思われるほど多種多様な犯罪に事欠かないことで有名な米花町での『ワクワク☆若返り生活』がスタートしたのだけど、いやホントこの町は犯罪が多いのなんの。
常時そこかしこでサイレンが鳴り響いてるとか何処の羽生蛇村だよ。
待てよ……その場合、私たちって屍人扱い……?えっ、普通に無理すぎてキレそう。
兎に角、洒落にならないくらいに事件・事故が多いこと多いこと。
毎日何処かの横断歩道で誰かが轢かれそうになってる場面に遭遇するし、ちょっとコンビニに寄れば三回に一回は強盗と鉢合わせする。なんなら外食に行けばほぼ高確率で殺人事件が発生する。
……マジでこの町怖すぎる。もしかして死神達が人魂早集め選手権でもしてたりする??
お陰でこちらは事件やら事故に巻き込まれる日々である。
毎日何処かしらに包帯やらガーゼやらを引っ提げて登校する高校生とはこれ如何に……って思ったけど、よく考えたらポートマフィア幹部入り最年少記録を保持していた友人も常日頃そんな感じだったな、と思い出した。
んで、親友がそれをずっと心配してたっけ。まあ『俺』もなんか死んだら死んだでいいや〜寧ろ早く死にた〜い♡(悪意ある意訳)みたいな生き方してたアイツの事を結構心配してたけども。
それはそれとして、な〜〜~んで大親友の『俺』よりもアイツの方が心配されてんのかな〜〜??っと、ちょっとジェラったのは内緒。親友は『俺』の親友なんです〜〜!!幼少期からのズッ友の
まっ、親友が『俺』のことをあまり心配をしないのはそれだけ信頼と信用があったからなんだけど。勿論、逆も然り。
「あっ!立花さん、おはよう」
「おん、おはよぉ」
今日も今日とて私は社長出勤よろしく、規定の登校時間を優に超えての御登校である。
最初こそ大遅刻して登場する包帯女と化した私をクラスメイトは割と遠巻きに見ていたけれど、日が経つにつれて見慣れてきたのか普通に挨拶ぐらいならしてくれるようになった。何故か未だに誰とも目が合わないのが不思議なんだけどね。
ちなみに今日の遅刻理由は配送業者の小型トラックから熱い抱擁を受けた為だ。
尚、怪我自体は軽い全身打撲で済んでおり、トリップ早々既に顔馴染みへとなりつつあるお医者さんからは化け物に遭遇した一般人みたいな顔をされた。ツライ。
すみません違うんですこれはトリップ特典とか前世で培ってきたあれやこれやの結果なんです……!!とは口が裂けても言えない私は曖昧に微笑んで受け流しているけれども。
「おはよう、立花さん」
「おん、おはよぉ諸伏クン」
自分の席に向かい、今朝使った分のエネルギーを補給する為にコンビニで買ってきた栄養補助食品をバリボリと食していればお隣に座るクラスメイトこと諸伏景光クンが爽やかな笑みを携えて挨拶してくれた。
そう!!何を隠そう!!私のクラスメイトには登場したと思ったら既に故人でした!でお馴染み且つ、長野県警組がメインな映画でも丁寧に丁寧に公式から「こいつ死んでます」と分からされる羽目になったCVグリリバこと諸伏景光クン(高校生のすがた)がいるのである!!!!
いやぁ、本当にびっくりしたよね。
高校生からスタートって聞いてたから初めは原作沿い時空なのかな〜とか四人で話してたのに、いざ学校に行ったら主人公ではなく最推しの弟が待ってるとかさぁ〜〜〜。思わず腰を抜かすかと思ったわ。
アッ、私の最推しは長野でコウメイしているあの人です。もっというと長野組箱推しでもある。
今世の夢の一つは勘由を最前線で眺めることと二人が結婚した暁にはミッチミチに詰まった御祝儀を渡すこと。推しの幸せが私の幸せ。
どうも私が長野組オタクですよろしくお願いします!!
推しの幸せを脅かす存在は絶許♡だけど『あなたに逢えたそれだけでよかった 世界に光が満ちた』系のオタクなので何卒よろしくお願いします!!!!
「……また、怪我したの?」
「おん?あァ、軽い全身打撲やから明日には治ってるやろ。多分な」
まるで自分が怪我したかのように悲痛な顔をしている最推しの弟こと諸伏クンには大変申し訳ないが、割とガチで大抵の怪我は一日で治るから安心してほしい。
まあそれもこれも、私のトリップ特典『摂取したカロリーをエネルギーに転換し、更にエネルギーを消費する事で自身の身体能力を向上させる』という能力がお仕事をしてくれているからなんだけどね。
そのお陰様で自然治癒力をバフ上げして超回復人間になれるのである。
まあ明日には明日でまた新たな事件・事故に巻き込まれてるんですけどね!!!!
あとデメリットとしてずっと何かしら食べている女になってるという!!!!
というか、諸伏クンって実は結構感受性豊かなタイプだったんだね。
あと原作を読んでた時からずっと思ってたけど、諸伏クンって色々と優しすぎるでしょ。
知ってる?クラスの中で唯一、諸伏クンだけは私の目を見てお話してくれるんだぜ……?
でも推しと目が合うと素直にお喋りできなくなりそうだから私の方は目線が合っているように見せかけて彼の眉間辺りを見つめているのだけれども。
ごめんね素直じゃなくて。多分だけど夢の中でも無理なもんは無理なんだわ。
「まァ、そないな顔せんでも早々死なんよ」
そもそも私、死ねないからね。
生贄あるあるで常時即死無効のバフ付いてるようなものなんでね。
実は一度、死に掛けたらどうなるかと思って試したことがあるんだけど、致命傷とか即死系の怪我はほぼ一瞬で重傷ぐらいにまで回復するみたいなんだよね。
尚、全快じゃないってところがポイント。
あと怪我は治っても痛みはそのままみたいでめちゃくちゃ痛かった。正しく死ぬほど痛いってやつだった。
正直、あまりの痛さに人目も憚らずに泣き叫ぶかと思ったよね。流石に元幹部としての意地とか大人のプライドとかで耐えたけども。
いやマジであれは軽率だったわ、と過去の自分に対して乾いた笑みを浮かべていると不意に誰かが私の左手を握った。
いや、この場合誰かなんて一人しかいないんですけどね!!
ええ、未来のスコッチこと諸伏クンですよ!!
えッ、ちょッ、待って??なんで私の手を握るんです……????今までの会話の何処に手を握るコマンドが発生するような特殊カードがありました????ちょっと会話デッキを見直してもよろしいですかね????
エッ、手汗とか大丈夫かな!?というか推しと握手するって分かってたらもっと丁寧にお手入れしてたんだけどな!?!?内心「俺の方が手、綺麗だな……」とか思われてないかな!?!?
……いや、そんなこと思われてたら私は死ぬ。
すぐそばの窓から笑顔で飛び降りる。死ねないけど。
「も、諸伏クン……?」
「立花さんって──」
「う、うん……?」
私がなんぞ??と思いつつ諸伏クンの言葉を待つ。
しかし彼は何度か音もなく唇を震わせた後に「……ううん、やっぱり何でもない」と小さく呟くだけだった。
いやそれ何でもあるやつッッッ!!
めっちゃ何か言いたいことがあるやつッッッ!!!!
鈍感系ヒロインなら恐らくここで愛らしくコテンと小首を傾げて終わるのだろうが、生憎と私は鈍感系でもましてやヒロインという柄でもないのでね。
なにせこれでも前世はマフィアの幹部。銃の腕と情報収集能力で成り上がった実力者だ。
ヤベェことを隠している
長年培ってきたシックスセンスが「コイツ何か言いたがってる」と囁いているのだ!!
しかし、しかしだ。
確かに私は前世、多種多様な方法で二枚貝のように固い相手の口を割っては必要な情報を入手していたけれど、その手練手管を推しに向けていいわけがないのは重々承知している。
貧民街でヤンチャしていた頃とは違って、今世ではちゃんと道徳心を養ってきたからね。学生になって初めて教養って大切なんだなって思ったもん。
トロッコ問題……?あれは有能な人間が多い方を残せばいいんですよね、私知ってます!(純粋な眼差し)
となるとこれはやはり、自分で推理するしかないか……と視線を少し動かした時だった。
不意に視界に入ったゴミ。
そう、先ほどまで私が無心で貪り食っていた栄養補助食品の空箱である。
それが視界に入った瞬間、私は雷に打たれたような衝撃を受けた。
──コレだ!!絶対にコレだ!!
恐らく……いや、ほぼ確定事項といっても過言ではないだろうが、諸伏クンは私に「お前、食べ過ぎだよ」と言いたかったのだろう。
なにせ机の上には空箱で山が出来ているのだ。総カロリーは既に一日に必要なカロリーを超えている。
例え私にとってこの高カロリーの山が生命活動に不可欠であるとしても、事情を知らない第三者からすればどう見てもただの暴飲暴食女にしか見えない。
そしてここで思い出してほしい。
そう、諸伏クンはとても『心優しい』人間である。
そんな諸伏クンが例えそこまで仲良くもない相手であろうと、同級生の、それも異性の女に向かって「お前、食べ過ぎ」を多量のオブラートに包んだとしても、はたして言えるだろうか。いいや言えない。
これが彼の親友である金髪褐色肌をした未来のトリプルフェイス、祖国の彼ピこと100億の男であったなら火の玉ストレートの大剛球を繰り出していただろうが、純度100%バ○ァリンのような優しさで形成されているであろう諸伏クンには到底無理な芸当。
だからこそ彼は勇気を出したけれど躊躇い、その結果があれだった……ということではなかろうか。
──パンッ(手を打つ音)、コレッッッ!!!!
ここまでの推理に掛かった時間はほんの数秒である。
元々頭は良い方ではないが、かなり頑張った方なのでは……?と思わず自画自賛したくなるのをグッと堪える。
今はそんなことよりも手札から会話カードを選ばなければ……!!
最も伝えるべき事は『総カロリーがなかなかにエグいけど身体に影響はない』事だろう。
なにせ諸伏クンは私の健康を危惧してくれているのだろうし。
あと『心配してくれてありがとう』という感謝も必須。
前世の頃から挨拶と感謝と謝罪は人間としての当たり前!!と自分の
何より!!推しが!!私なんぞを心配してくれているのに!!それに対して感謝をしないなんて選択肢があるかッッッ!!!!
「──諸伏クン」
意を決して私は諸伏クンの目を見る。
は〜〜〜今日も顔がいい。とてもいい。めちゃくちゃ肌がきめ細かいね。化粧水何使ってる?洗顔は??いやホントマジでいっぱいちゅき……じゃない。
彼は私に呼ばれ「どうしたの?」と小さく首を傾げた。
あ〜〜〜〜〜心がぴょんぴょんするんじゃ〜〜〜^^
可愛いが可愛いことしてる〜〜〜〜!!可愛いに溢れるこの世界がプライスレス!!心のシャッターを切る手が止まらないんじゃ〜〜〜〜!!推しのスチルブックがまた一つ埋まってしまう〜~~~!!
なるほど、ここが楽園……!!って、そうじゃない。いや楽園なのは間違いないけどそれよりも会話だ会話。
言葉を交わせ……!!トークを繋いでいけ……!!
私のターン!ドロー!!
会話カードを守備表示で召喚!!!!
「心配してくれて、ありがとうなァ」
「立花さん……」
先ずは感謝の気持ちを伝える。
いいか、世の中思ってるだけだと絶対に伝わらないからね。自分の気持ちは自分の為にも口にしなきゃいけないよ?
まあ、壊れるほどに愛しても3分の1も伝わらなかったりもするんだけど。
ただちょっとここで先程よりも強くギュッと左手を握られることに関しては私、少々理解が追いつかなくてですね……?
なんでなんで??私にも分かるように伝えてほしいな??3分の1どころか何もかも全部分からないよ????
あまりの衝撃に、口から色々と出てはいけないものが飛び出しそうになるのを、私は己の理性をフルに使ってなんとか阻止する。
ビークール、落ち着け落ち着け、私の心臓と脳内。
ドンドコドンと動揺に動揺を重ねる心を何とか落ち着かせてから私は続ける。
「諸伏クンからすれば私(みたいな常に食いまくってる女)は異常者に見えるとは分かってるんやけどなァ」
「そっ、んなことは……!」
「ええんよええんよ。実際、世間一般的に見たらそう見えるんやろうし。ただ、やっぱ私としても(主に生命活動的な意味で)譲られへんし、誰に何を言われてもやめられへんのよ」
いや、マジでカロリーを摂取しないと足りないエネルギーを何とかしようとして身体が内臓脂肪とか下手したら内臓なんかも消費し始めちゃうんだよね。
生贄効果で死なないから永久機関が完成するじゃんと思われるかもしれないけど、ぶっちゃけマジで痛すぎて洒落にならんのでやるとしても最終奥義レベルかなっていう。所謂奥の手ってやつ。
「諸伏クンが心配してくれてるのに、ごめんなァ」
マジで申し訳なさ1000%過ぎてUTU。
推しに心配掛けるとかオタクの片隅にも置けないけどこれに関しては私の命(物理)が掛かっているので許してほしい。私、死なないけど。
脳内で平身平頭全力で謝り倒していたらスッと左手にあった温もりが消える。
アッ、お時間ですか。分かりましたスタッフの指示に従います、へへ、握手ありがとうございました。
これは一生手が洗えないゾ〜〜〜なんて考えていれば、諸伏クンは何を考えているのか今度はお互いの指同士を組むようにして私の左手を捕まえ直した。
少し骨張った長い指と前世に比べて随分と細く丸みを帯びた私の指が絡み合う。
ヒュッ、と喉から空気が抜ける音がした。
こ、こここ、これは俗にいう恋人繋ぎというやつでは〜〜〜〜〜〜!?!?!?
「……ずるいなぁ」
「諸伏クン……?」
「ねえ、その立花さんの……譲れないものの理由って、いつも一緒にいるあの三人は知ってるの?」
いつも一緒にいる、というと十中八九、私と同じくしてこの世界へトリップさせられたあの愉快な生贄たちのことだろう。
勿論、彼らには私の能力云々は全て話してあるし、反対に彼らのことも聞いている。
私が「まァ、うん」と頷けば、諸伏クンは「ふうん」と何処か面白くなさそうに鼻を鳴らした。
……それより、一旦、一旦この手を離さない??
そろそろ私のキャパシティも限界だし、思考回路もショート寸前なのだが????
あと、お客様!!組んだ指先で手の甲を撫でるの、とてもエッッなのでやめてください!!私の心臓が死んでしまいます!!お客様!?お客様!?!?
「諸伏クン、そろそろ──」
手を離さない?と続けようとしたが、できなかった。
あまりにも諸伏クンが真剣な、覚悟を決めたような、そんな顔をしていたから。
……もしかして、脳内でキャッキャしてるのがバレた!?
ウソやん、ポーカーフェイスは得意な方だと思ってたんだけどな!?!?
た、確かに諸伏クンって普段から割と温厚そうな顔をしていることが多いけど、女子に黄色い声を上げられた時とかちょっと困ったような笑みを浮かべることが多いもんね!?!?
ちなみに未来のトリフェ(トリプルフェイスの略)は普通に苦虫を噛み砕いたような顔をするから、嫌なんだなってことが一目瞭然だったりする。
あんなに喜怒哀楽がハッキリしているのに、将来は三つの顔を器用に使い分けるんだから凄いよね。
「立花さん」
「アッ、はい」
「あのさ、急にこんなことを言われても困るかもしれないけど……オレ、本当に立花さんのことが心配なんだ」
「お、おん」
まさか心配していることをストレートに伝えられるとは思っていなかったので目を丸くしてしまったのは致し方ないことだと思う。
普通にビックリしたよね。なんせ脳内では勝手にハピハピさせて頂いているが、実際のところ諸伏クンとは今のいままで挨拶を交わす程度の関係でしかなかったからさ。
時々、こうして軽く話をすることはあれど、そこまで仲がいいというわけではなかったし。
諸伏クンはどこか気恥ずかしそうに頬を赤らめながらもふにゃりとした笑みを浮かべて「──あと、出来たらもっと立花さんと仲良くなりたい……かなぁ」と、とんでもねぇ爆弾を放ってきた。
正直に言おう。沼に落ちるかと思った。
エッ、いつの間に諸伏景光沼が隣接してきていたの??風速ヤバすぎんか????暴風域????諸伏景光沼は暴風域なの????集めた羽が全部もがれちゃうの????
あまりのトップスピードに戦々恐々としてしまう。
危ない……私が肩までしっかりと諸伏高明沼に浸かっていたから助かったけど、そうじゃなかったら今頃とんでもねぇ暴風に煽られて諸伏景光沼にドボンしていた。最推しが増えちゃうところだった。
こ、これが諸伏景光という男……!
お、恐ろしい子……!!
その後の記憶はかなり朧気だが、予鈴が鳴り出したぐらいで推しが楽しげに小指を絡めながら「改めて、これからよろしくね。立花さん」と言っていたことだけは唯一ちゃんと覚えている。
乙女ゲーのスチルかなにかかな??とんでもねぇな????
そりゃあ将来公安に配属されるし、若くして黒の組織に潜入捜査官として潜入させられるわけだ。狙った獲物は(物理的にも)逃さないスナイパーってか。
なるほど、高校生の時から彼はその鱗片を垣間見せていたのか……我が推しの一人とはいえ末恐ろしい青年である。
でもそんな彼はこの先の未来で死んでしまう。
いや、家族や親友を守るために彼は自決してしまうのだ。
……冷静に考えて、不意を突いたとはいえFBIの赤井秀一から銃を奪えるほどのポテンシャルがあるのにあそこで自決を選択したのはやっぱり諸伏クンが『
彼のような人間が裏社会なんかで生活すれば心が先に死んでいく。何度も目にした事だ。
まあ、その未来はフラグごと何から何まで潰させてもらうけどなァ!!
最推しの幸福と安寧の為に是非とも諸伏クンには生き延びてもらわなければならないのでね。
正直、彼が生きてさえいれば別に私という存在を認知されなくてもいいと思っていた。
脳内でキャッキャするのはオタクの十八番だし……掛け算も足し算も夢も履修済みだから、新しい情報さえ入手できれば楽しみ方は無限大だったし。
なにせ救済なんてものは私の──否、私たちの我儘だ。ただのエゴのようなもの。
それを恩着せがましくするつもりも、ましてや当人たちに見返りを求めるつもりなんて一切ない。
ただ、推しが愛し、求めた人の隣で幸せに生きてさえくれればそれで良いのだ。
とはいえ、傍観主や平凡主のように『私に関わらないで!』などという、どう考えてもフラグでしかないようなことを言うつもりも毛頭ない。
なにより、推しと友人関係になれるなんてオタク冥加に尽きる。全力でよろしくお願いしたいに決まっている。
ただなぁ……騙し騙され、この世の闇という闇が集合していた場所で生きていた記憶があるからなのか、この諸伏クンの一連の言動に対して、妙に裏があるように思えて仕方がないんだよなぁ……とても申し訳ないけどね。
だから本当に申し訳ないけど、ある程度仲良くさせてもらいはするけど、少しばかり彼の真意を探らせてもらおうとは思う。
まぁ、先ずは様子見かなぁ……と結論を出したところで、次の授業が始まるチャイムが鳴り響くのだった。
「──立花紗夜。趣味は……まァ散歩で、特技は……あー……いや、他はええか」
驚くほどにしんと静まり返った教室に響く淡々とした声。
その主である転校生の立花紗夜は最後に「まァ、よろしゅうお願いしますわ」と言って締め括った。
尚、この時に紗夜が言った『散歩』とは前世での情報収集の為の尾行や潜入調査といった類を示す言葉なのだが、勿論のこと誰一人として正しく読み取れた者はいない。
というよりも、クラスメイトはそれどころではなかった。
朝、クラスの担任から「今日から転校生がやって来る」とは聞いていたものの、その『転校生』はホームルームが終わる時間になっても姿を見せることはなく、漸く姿を現したかと思えば頭や腕に包帯を巻いた状態で登場となれば誰もが唖然とするしかなかった。
しかも、その原因が交通事故に遭ったからだというのだから驚くなという方が難しい。
そもそも交通事故に遭ったのに何故その日に通学してきているのか、という疑問もあるが悲しいかなそれを口に出せる者はいなかった。
何故ならこの転校生、正直に言ってとてつもなく『怖い』のだ。
先ず、目に生気がない。
瞳の中にブラックホールが存在しているのかというほどに光がないのだ。驚きの黒さである。
さらにその目の下にはこれまた真っ黒なクマが浮かんでおり、元々の目つきの悪さと相まって見る者の恐怖心を駆り立てる形相となっている。
次に、表情。基本的に終始真顔なのである。
自己紹介前に軽く教師とのやりとりの場面ではそれなりに愛嬌のある表情はしていたが、それが終わると途端にストンと表情が削げ落ちるのだ。
これには思わず誰しもが二度見してしまった。
あまりにも早すぎるオンオフは、いっそのこと最初から最後まで真顔でいてくれた方が寧ろ安心できるとさえ思ってしまうほどに衝撃的であった。
そして最後に、彼女が漂わせている雰囲気があまりにも鋭いことだ。
まるでこめかみに銃口を向けられているかのように暴力的でありながらも、何処か洗礼された大人のような空気感は、到底ただの高校生が醸し出せるような代物ではない。
それこそ、そこいらで屯している少々悪ぶった学生の方が可愛く思えてくるほどだ。
そんなこの世の闇を寄せ集めて濃縮し、そこから不純物を取り除いたものを人の形にしたような転校生に対しクラスメイトは総じて『得体の知れない恐ろしい人』という印象を受けたのである。
故に、誰も声を発さないし、目線も合わないように逸らす。
危険から身を守ろうとするのは至極当然のこと。
だからこそ誰しもが保身に走り、結果教室内は未だかつてないほどの静寂に包まれることとなったのである。
(なんだか、すごい子が転校してきたなぁ……)
諸伏景光もまた、そんなクラスメイトの一人であった。
ただ他の生徒と少し違う点といえば、元々そこまで転校生に興味がなかったというところだろうか。
男子だったならばそれなりに仲良くできればいいし、女子だったとしても自身や別のクラスにいる親友を見て過剰に色目気立たなければいいかな、ぐらいの気持ちだった。
とはいえ、まさかそのどちらでもない全くもって予想だにしていないような人物がやってくるとは考えもしなかったけれども。
「えっと……立花さんの席は、諸伏くんのお隣ね」
教師の言葉に景光は反射的に隣を見る。
元々は何もなかった場所だが、今は誰も座っていない空席の机が主人を待つように鎮座している。
よりにもよって自分の隣か──と、景光は内心溜息をついた。
嫌だ、というわけではない。
ただ単純にああいった相手とはどう接すればいいのかが分からないのだ。
これほどまでに衝撃的な存在は、これまでの景光の人生を振り返ってみても初めてだった。
そんなことを考えている間にも転校生は自分の席へと向かって来ていたようで、ガラガラと音を立てて椅子を引くと静かに着席した。
ふわりと真新しい包帯と消毒液、それと湿布の香りがする。
「えっと……よろしくね?」
流石に無視をするのは感じが悪いかと思い、景光は小さくそっと声を掛けた。
ゆるりと転校生がこちらに顔を向ける。
それは己を縛る鎖を引き千切り、首輪さえ噛み切るほど獰猛な肉食動物と対峙しているような感覚に似ていた。
目を逸らすことも出来ない圧倒的な存在感。
少しでも下手な動きをすれば途端にその鋭利な牙が己の喉元を食い破るであろうと容易に想像させるほどの緊張感。
瞬間的に逆らってはいけない、呼吸ひとつするだけでも細心の注意を払わなければいけないと思わせる威圧感。
じっとこちらを見つめる瞳は景光さえ飲み込んでしまうのではないかと思うほど深く底のない闇が広がっている。
──お前は『だれ』だ。
彼女の視線に、空気に、そう問われた気がした。
込み上げてくる感情は、恐怖。
それなのに、目が離せない。
身動きひとつできず、見つめ合う。
景光はこれに似た感覚を知っている。
これは、そう、確か、小学生の頃。
あの鉄錆のような臭いに塗れた記憶の──
「──おん、よろしゅう」
その声で景光は弾かれたように我に返る。
気がつくと先程まで感じていた空気は霧散しており、周囲もざわめきを取り戻していた。
ドッドッドッ、と今になって心臓が激しく鼓動する。
勢いよく巡る血液に酔ってしまいそうだった。
「ぁ……」
何かを言わなくては、と思っているのに喉が強張って声が出ない。
無意識に喉をさする。そこで景光は自分の皮膚が冷たくなっていることに気がついた。
何かをされたわけではない。
何かを言われたわけでもない。
視線ひとつ。
たったそれだけで彼女は景光を制してみせた。
──恐ろしい、と思った。
あの瞬間、景光は『死』を感じた。確かな『死』がそこにあった。
そして、底知れない闇の鱗片を垣間見たような気がした。
本能が、立花紗夜という人物は危険だと警告する。
(……だけど)
知りたい、とも思った。
何が、という明確な理由も根拠もないが、どことなく彼女は似ていたのだ。
あの事件が起きてから、声を失い、全てから心を閉ざした自分自身に。
(俺には
景光は独りの怖さを、寂しさを、切なさを知っている。
それと同時に差し出された手の温もりを、嬉しさを、安心を知っている。
だからこそ、彼女を深淵の中から掬い上げて、もう一度光のもとへと連れ戻してあげたいと思ったのだ。
かつて、自身がそうしてもらったように。
その為にも景光が立花紗夜という人物をよく知りたいと思うようになるのは、ある意味で自然なことであった。
──何故、そんなにも鋭い空気を纏っているのか。
──どうして、死んだような目をしているのか。
──君はいったい、何者なのか。
考えれば考えるほど、景光の中で知りたいことが増えていく。
(あの時のゼロも、こんな気持ちだったのかな……)
景光は盗み見るように隣に座る彼女を見た。
既に彼女は此方から視線を外し、今は反対側にある窓から外を眺めている。
外の景色に何かがあるわけではない。そこから見えるのは至って平凡な、当たり障りのないただの街並みだ。
それを見つめる彼女の目に、やはり光はない。
景光には彼女の行動が、ただ退屈を埋める為に天井のシミの数を数えているのと同じように思えた。
そこに確かな意味も、理由もないのだろう。
だけど彼女は無数にある『退屈しのぎ』からそれを選んだ。
それはきっと、この教室内にもどこにも彼女の興味を惹かれるものが何もないからだ。
それがなんだか、景光には面白くなかった。
景光は特別自身の容姿がいいとは思っていない。寧ろ、どちらかといえば別のクラスに居る親友の方が容姿がいいと思っている。
だが、少なくとも女子生徒の中でそれなりに話題として上がっていることは知っているし、一定数『そういう目』で見られているということも自覚していた。
だからというわけではない。
そうではないのだが、だからといってここまで興味を持たれないというのも、なんだかモヤモヤとするのだ。
普段は自身の言動一つ一つに黄色い声を上げられることへ多少なりとも思う所はあれど、景光とて一人の男。意地もあればプライドだってある。
(先ずはオレに興味を持ってもらわないといけないかなぁ……)
それはとてつもなく長い道のりになるだろう。
なにせ、相手はどう考えても一筋縄ではいかなそうな人物だ。そもそも自分なんかでは太刀打ちできないかもしれない。
それでも、と景光は思う。
人は変われると知っているから。
いつだって人を変えるのは人だけだと理解しているから。
だから一歩一歩でも、彼女に近づいていきたい。
その為には、先ずは挨拶から始めてみよう、と景光は誰にいうでもなく心の中で誓ったのだった。
果たして、その感情にはどのような名がつくのだろうか。
奇異な存在への単純な好奇心か。
同じような者への同情心か。
はたまた、ただの正義感か──
少なくとも確かなのは、この日、この時から諸伏景光という人間の人生が大きく動き出したということだろう。
*登場人物紹介*
▼ 生贄にされた本作品のメイン夢主
名前︰緋蜂 紗夜
元アラサー社畜オタク(♀)
推しの幸せが私の幸せ、基本的に推しが何をしてても幸せになれる限界オタク
前世で割と人の生死が激しかったこともあり、推しが生きてるだけでハッピーになれる
最推しは諸伏高明、勘由強火オタク
前世は某文豪が異能力でボコスカする世界の地下組織ポートマフィアの幹部(♂)
情報収集や嘘を見破るのが得意なフレンズ
真顔がデフォルト
顔が怖い
▼ 生贄にされた本作品のサブヒロイン
名前︰春ヶ崎 雪乃
前世は某傷のある少年が主人公な魔法学校の小説に出てくるラスボス(♂)
カリスマ性に溢れた魔法が得意なフレンズ
APP17の美女
▼ 生贄にされた本作品のサブヒーロー
名前:柳原 ハヤト
前世は某捻れたリズムでダンシングするゲームに出てくる冥府の番人系天才科学者(♂)
魔法工学と化学と魔法が得意なフレンズ
APP17の美男
▼ 生贄にされた本作品の良心
名前:本田 透
前世は某国擬人化マンガに出てくる祖国(♂)
空気読みと家事全般が得意なフレンズ
ザ・日本人
▼ 生贄たちの保護者
名前:立花 悠
とても顔のよい大人
生贄組の保護者ポジション
名探偵コナンの世界の人間
▼ 転校生が気になり始めたクラスメイト
無限大の可能性を秘めしトラウマ持ち
転校生のことは『怖いけど自分に似ている人』という認識
微妙にニアミスしているし勘違いしているところもあるが誰もそれを知らないので加速する一方だったりする
無自覚にハニトラ、はじめました
▼ まだ何も知らない未来のトリプルフェイス
親友がハニトラはじめました、したけどまだ知らない