「はぁっ……はっ……はぁ」
な、何とか……逃げれた。
知らない気配から全速力で逃げ続けること十数分、ようやく気配がいなくなったので止まって息を整える。こんなに息切れしたのは久しぶりだ。
しかし、何だったんだ、あれ。笑いながら追いかけて来たから思わず怖くてプチパニック状態になっていたが、今冷静に考えてみると失敗したかもしれない。
だって、声可愛かったし。もしかしたらセキレイだった可能性もある。
もしそうだったら自分からチャンスを逃したことに……!
「……あれ、翔?」
うわーやっちまったー、なんて感じで悩んでいると、何故かいた皆人が声をかけて来た。
「お、皆人……と、ええっと」
座ってる皆人の横に倒れているのは……ま、まさか!
まさかの結ちゃんキター!!
胸デカっ! 流石巨乳キャラ、半端じゃねえ。……っと自重自重、いくら結ちゃんがそういうの気にしないタイプでも、失礼すぎる。
っていうか皆人は今日結ちゃんに会ったばっかりの筈だよな。そしてここは河原。
……双子から逃げ切った後のやつ、か?
たぶんまだ羽化してないだろうし、その辺りだろう。
「うわああ、えっと、えっと、ち、違うんだ!」
まあ美少女が横に倒れてて友人がそれを目撃すればな、そんな反応にもなるだろう。ヘタレな皆人クンならなおさら。
「……はぁ、まあ何となく分かったから。ほら、いつまでも言い訳してないで、その子を運ぶんだろ」
「あ、ああ、うん。えっと、どうやって運ぼう……」
ああうん、困るよな。結ちゃんみたいなナイスバディな女の子なら特に。
「まあ……お姫様抱っこか、背負うかだな」
「おひっ! お、俺にはむりかな。背負って行こう、うん」
この様子だと気づいてないよな皆人は。背負ったら結ちゃんの豊満な胸が直で当たるってことに。
「背負うんならしゃがめ。乗っけてやるから」
「あ、う、うん」
その時に触るのはまあ、役得ってことで。勿論変な所を触る気はない。
紳士じゃないとな。
「よし。……軽っ」
身体軽い、柔らかい。……俺自重しろマジで。
「ほんとだ、軽い……うわっ!」
どうしたし。いやまあ当たりまくる胸が気になるんだろうけど。
「どうしたー?」
「な、なんでもない……」
ん、まあ顔真っ赤だが、一応取り繕えてるから大丈夫だろう。
「何でもないなら行くぞー。目的地はお前ん家だ」
「あ、ちょっ、ちょっと速いって翔!」
「はむっ……はむ、むぐむぐ」
原作でもあったけど、流石結ちゃん、すごい食べっぷりだ。ハンバーガーを両手に持ってるし。
皆人の借りてるアパートというか、下宿先というか。そこの皆人の部屋に三人で座って、結ちゃんがぱくぱく食べてるのをぼんやり見てる俺達。
ちなみに、途中で別れて俺が某ハンバーガーショップで色々買ってきた。原作では確か、結ちゃんが腹減って倒れてたような気がするし。
既に簡単に自己紹介は済ませてある。結ちゃんは元気に挨拶してくれたから、ちょっと安心した。まず無いとは思ったけど、葦牙である皆人だからあんなに無警戒なのかと不安だった。
ここまで無警戒だと別の意味で不安だけど。
まあそれはともかく。
これ以上は俺がここにいる必要もないだろう。この後、確か二人がキスするはずだから、そんなシーンに立ち会うとか気まず過ぎる。
それに、結ちゃんを見てると俺も自分のセキレイを見つけたくなってきた。俺が葦牙かどうかはいまだに分からないけど、とりあえず葦牙の見つかってないセキレイと仲良くしたい。
「というわけで、俺は帰るから」
「え、ああ。何か用事でもあったの?」
「ん、まあそんな感じ。じゃあ結ちゃん、また会ったらよろしくな」
「はい! またお会いしましょう」