ついに……ついに俺も葦牙だっ!
「聞いてますか日高さん?」
「は、はい! 俺はそのセキレイ計画ってのに参加した、ってことですよね!」
出雲荘の居間で、美哉さんの話を聞くことになった。
セキレイ計画のことをさらっと説明してくれていたんだけど、ぶっちゃけ知ってるからつい聞き流してたらちょっとだけ般若が出た。
……恐ろしい。原作でもそうだったけど、リアルで見るとヤバイ。
「翔ちゃん、美哉を怒らせたらダメだよ。こわ~い般若が出るから」
「うずめさん。何か言いましたか?」
「なな何でもないっす、はい……」
『パンパカパーン! おめでとう日高翔君。君は見事セキレイのパートナーに選ばれた』
ナイスタイミングだ社長! これで美哉さんの怒りは全部社長に行くからな。俺のケータイにかけてきたことは見逃してやろう。
「うふふふふ……」
笑顔が怖いです美哉さん!
『君には否応なく守秘義務が発生したからそのつもりで。おっと、私は忙しいのでこれで失礼するよ。詳しいことはそこにいる人達に聞いてくれたまえ。ではな、諸君』
言うだけ言って切りやがった……逃げたな社長。
というか、般若のオーラが収まらないんだが。社長が出てきたせいで余計酷くなったし。社長許すまじ。
……逃げよう。
「色々聞きたいから、冬華の部屋にでも案内してくれないか?」
「あ、うん。じゃあボクについてきてね」
よし、これで逃げれる。
「お二人とも。お夕飯になりましたら降りてきて下さいね」
「はーい」
「俺も一緒しても良いんですか?」
「もちろんですよ」
一緒に飯だと……何という俺得!
……交渉して、出雲荘に住もう。冬華が羽化したんだから、俺は葦牙だろうし、たぶん大丈夫。
ああでも、冬華としばらく二人でいたい気もするな。皆人と結ちゃんも今頃一緒に住んでるんだろうし。
……あいつらが出雲荘に来るのっていつだっけ?
「それで、聞きたいことって何かな」
というわけで、冬華の部屋に来たわけなんだけど……何もないな。殺風景な、って言葉が当てはまりそうな部屋だ。
「えーっと……セキレイと葦牙ってのは一緒に住んだ方が良いのか? だったら俺か冬華が引っ越さないといけない訳だが」
もう原作始まってるんだから出来れば出雲荘に住んだ方が良いんだけど。
流石に今俺が住んでる所だと、頻繁にここに来れないくらいには遠いから、毎日ここに来るとかは出来ないんだよな。
「うーん……絶対に一緒に居なきゃいけないってわけじゃないんだけどね。葦牙が死んじゃうと一緒にセキレイも機能停止するから、あんまり離れない方がいいと思うよ?」
あー……そういえばそうだった。セキレイに守ってもらわないとダメなのか。……情け無い。
とはいえ、武術を習いはしたが、数年程度しかやってないから、流石に懲罰部隊とかが相手だと勝てるわけないしな。……それに、見た感じ冬華にも勝てる気がしない。
「……それに、一緒にいたいし」
「え?」
「ええっと……な、何でもないよ! あ、そうだ。ボクはこの出雲荘に住んでたいな。色々理由はあるんだけど、やっぱり一番は美哉ちゃんかな」
美哉さんが理由って……やっぱり強いからか? ある意味、最強の護衛だからな。
でも、なんで冬華は美哉さんをちゃん付けで呼んでるんだろうな。ちゃん付けとか般若が出てくるとしか思えないんだが。ああでも、あの瀬尾がしてたっけ?
まあそれはともかく、冬華はNo49だから、神座島で懲罰部隊やってたわけもないだろうし。どういう関係なんだろうな。
「美哉ちゃんは強いからね。それに、ボクみたいにお金のないセキレイに部屋を貸してくれるくらい優しい人だし」
……お金、無いのか。ま、まあ仕方ないよな。MBIのマネーカードは出雲荘では使用不可って原作で言ってた覚えがあるし。
冬華はマネーカード、持ってるよな? うずめちゃんみたいに持ってないなんてことはないよな?
……どっちにしても、俺にそれを聞く手段はないんだけどな。もし原作知識がなかったら、マネーカードの存在なんて知らないから。
ちなみにうずめちゃんは、さっきも言ったようにマネーカードを持ってない。たぶん松さんと一緒に出てきたからマネーカードを受け取る暇がなかったんだろう。
そして千穂の入院費とか俺の生活費とかは親の仕送り金で何とかしている。今頃両親は、千穂の治療法を探すために国内外走り回ってるんだろう。
……あ、そういえば原作で、皆人にセキレイの分も家賃払えとか言ってたような。
「……ってことは、もしかして借金だったりする?」
「…………ゴメンね?」
マジかぁ、借金か……。いやまあ、仕送りも結構あるし、何とかならない訳じゃないんだけど。ここの家賃は確かかなり安かったような気がするし。美哉さんなら高利貸しみたいなことにはならないだろう。
「まあ、それは何とかする。それより『……わぁあああ!!』なんだ!?」
「ひゃう!?」
男の叫び声と何か大きな音が……って、もしかして敵か?
……いや、美哉さんがいるからそれはないかな。
あと、可愛い声が聞こえた気がしたが……気のせいということにしておこう。
……可愛い。
「とりあえず、見に行って見よう」
「う、うん!」