……ああ、そういえば今日だったっけ。皆人が出雲荘に降ってくる日。冬華がセキレイになって浮かれ過ぎてて、完全に忘れてたわ。
慌てて降りてきた俺達の前には、木に引っかかったせいかボロボロになった皆人と結ちゃんがいた。
……うん、美哉さんに任せよう。まだこっちには気づいてないみたいだし。
「おや、君は……?」
と、皆人が結ちゃんの服の状態に気づいて慌ててるのをちょっとニヤニヤしながら見ていると、後ろから声をかけられた。
「あ、どうも。ちょっとした事情で今日は夕食を御一緒させてもらうことになりました、日高 翔です」
「ああ、よろしくね。僕は篝。美哉のところで居候させてもらってる」
知ってます。何て言えないけど。
No06、焔。今は男だが皆人のせいでTSしてしまうちょっと不憫な人だ。ホストとして働いている、セキレイには珍しくニートではない社会人。少なくとも皆人のセキレイ達の中では一番の常識人だろう。
ちなみに篝ってのは源氏名? だったかな。まあ本名じゃないやつだ。
そういえばここに来てから見かけなかったな。どこにいたんだろ。
「篝ちゃん篝ちゃん。翔はね、ボクの葦牙クンなんだ」
「……そう、みたいだね。随分と仲が良さそうだし、良かったじゃないか」
言っちゃっていいのかそれ。美哉さんもわざわざセキレイのことを(軽く、だが)教えてくれたし、守秘義務とか無視だなここの人達は。
「篝ちゃんも頑張って見つk「冬華、それ以上は言わないでくれるかな」むぅ」
そして余計なことまで喋りそうになった冬華の口を篝さんが手で塞いだ。
うん、まあ葦牙に知られたら困るだろうしな。特に俺やその他男には。
そして美哉さんと皆人達がこっちを見てるんだよなー。皆人が俺見て驚いてるのは予想できたんだけど、何故か美哉さんが若干怖い気がする。あれか、怪我人放って賑やかに話してるからかね?
「あー、とりあえず二人とも。あそこ見てみろ」
「「…………」」
そう言って美哉さんの方に注意を向けさせる。見事に二人とも無言になっちゃってまあ。
「じゃあ二人とも。美哉さんの相手は任せた」
「えっ、待っ……!」
とりあえずそっちはそっちで勝手にやってもらうとして。少なくとも今の美哉さんの相手は俺には無理だ。頑張れ二人とも。
「よう皆人。派手な登場したなお前達」
「翔……? え、こんなとこに住んでたっけ?」
「いいや。今日はちょっとお邪魔してるだけ。結ちゃんも、さっきぶりだな」
「はい! こんばんはです翔さん」
うん、元気があっていいな。そしてボロボロなのは出来るだけ見ないようにしないと。
「まあとりあえずその怪我の治療でもするか。美哉さん、結ちゃんの着替えお願いします」
「ええ、そうですね。道具はあちらにありますから、使ってください」
「ありがとうございます。皆人、行くぞ」
「え、あ、おう」
というわけで、皆人を引き連れて出雲荘の中へ。ええっと、道具道具……あったあった。
「で? 何でお前は空から降ってきたんだ?」
皆人の着替えは男なんだからということで後に回させてもらった。俺としては着替えなくても良いんじゃないかと思わないでもない。
「ええ!? ……えっと、突風が」
どうせ社長の『否応なく守秘義務が発生した!』がリピートしてるんだろうな。
それにしてもその言い訳はないが。
「……お前、それはないわ」
「うっ……」
まあ詳しく聞く気は……いや、セキレイのこと話すか? 特に秘密にしておく理由もないし、どうせ出雲荘にいたらうずめちゃんか冬華がさらっと話す気もするしな。もちろん隠すとこは隠す。
「まあ、どうせセキレイだろ? たぶん、結ちゃんの大ジャンプか何かで跳んだけど降りる方法がなくて落ちたとかその辺だろ」
結ちゃんの身体能力は凄まじいものが…….って、あれ?
もちろん原作で知ってはいたが、妙に鮮明にわかるような……気のせいか?
「ええっ!? な、何で知って……!?」
「俺も葦牙で、セキレイがいるからな。さっき俺と一緒に女の子がいただろ?」
「あの子も、セキレイ……!?」
「つっても、ついさっきの話なんだけどな。だから俺にもセキレイの話はよく分かってない」
もちろん嘘だが。セキレイの事についてはかなり知ってるからな。原作知識で。
「まあセキレイ云々はともかく。可愛い女の子が近くにいるようになったとでも思えばいいんじゃないか?」
「いや、それは……どうなんだ?」
「難しく考えるなってことだよ。その辺の話はまた今度でいいだろ。……ほら、終わったぞ」
皆人の怪我の治療を終えて、道具を片付ける。
とりあえず考える暇を与えずに話したから、細かいことは気にしないだろう。皆人は頭いいから、どこから原作知識その他がバレるか分からないからな。俺は割と迂闊な方だし。
「ああ、ありがとう翔」
「気にすんな。それより……っと。着替え終わったみたいだぞ」
気配というか、足音でそう判断する。美哉さんのは全く分からないが、結ちゃんのなら分かる。あの子隠そうとしてないし。
そして今更だが篝さんはどこへいったんだ……?
「皆人さーん。お着物貸してもらっちゃいました」
おお着物! 似合ってるねえ。やっぱ可愛い子は何着ても似合うな、うん。是非冬華にも着てほしい。
「……あ、なんかすみません。服借りちゃって」
「ふふ、いいんですよ。私、お節介焼くの好きなんです。主人もそういう人でしたし」
さて、後は問題ないだろうし、夕食が出来るまで俺は冬華のとこに行こう。手伝いたいところだけど、断られたんだ。お客様にそんなことはさせられません、的なことを言われて。
というわけで、夕食の時間です。
美哉さん、冬華、篝さん、皆人、結ちゃん、うずめちゃん、俺の七人でテーブルを囲んでいる。……ちょっと人多くないか? この先もっと増えるだろうし、大丈夫なんだろうか。
「はむっ……ふわぁ、美味しいです!」
うん、美味しい。これはいよいよもってここで暮らしたくなってきたぞ。
「下宿屋さん!?」
よし、皆人に便乗してここで暮らせるように交渉しよう。ちょうどその話題みたいだし。
「ようこそ、この出雲荘へ」
おっと、早くしないと。
「あ、美哉さん。俺もここに厄介になってもいいですか?」
「日高さんもですか?」
「はい。あ、冬華の分の家賃も一緒に払いますんで」
「ええ、分かりました。日高さんも、ようこそ出雲荘へ」
よっしゃキターー!!
交渉成立だ! 交渉なんてしてない気もするけど!
「佐橋さんも、きちんと家賃は払ってくださいね? もし滞納なんてしたら……うふふ」
「えっ、ちょっ、どうなるんですか!?」
「……うふふふふ」