転生者はセキレイへ   作:マルラ

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遅れてすみません。


第七話

 

 

 

「それで、日高さん。彼女のことはどうなさるおつもりですか?」

 

「家賃は何とかするので、彼女ーー秋津も出雲荘に住まわせてくれませんか?」

 

あのあと無事逃げ切って出雲荘に帰ってきたんだけど、初戦闘(碌な戦闘はしてない)で疲れていたのか俺はすぐに寝てしまったらしい。

 

そして朝起きて、昨日風呂に入ってないから朝風呂でもしようと思ったら、風呂からうずめちゃんの声が聞こえて慌てて引き返したら、居間で美哉さんに呼ばれて昨日のことを一通り説明させられたというわけだ。

 

 

俺の目的としては、原作でも羽化もしてないのに焔さんと互角に戦っていたくらいには強い秋津を味方につけておきたい。そして着々と戦力を集めて何とかしてうずめちゃんと千穂を救いたい。

 

というわけで、ここで秋津が出雲荘に居てくれれば少なくとも協力関係には持ち込めるんじゃないかと思っている。冬華や結ちゃんみたいに、葦牙を無条件で慕ってくれるなら嬉しいし助かるんだけど、俺か皆人が秋津の葦牙になれるかどうかも分からない現状、頼めば協力してくれるように、(言い方は悪いが)貸しを作っておきたい。

 

もし皆人が秋津の葦牙になったとしても、皆人なら頼めば協力してくれる程度には親しいつもりだから、大丈夫。悔しいけどな!

 

「分かりました。幸いまだ部屋は余ってますから、秋津さんはそちらに寝泊まりしていただきます」

 

「だってさ。良かったな秋津」

 

話の途中で秋津が来たことに気づいたので、そう呼びかける。

 

 

ところで、結構人数多くなってるんだけどまだ部屋余ってるのだろうか?

 

「…………何、で?」

 

いつの間にか、昨日は裸ワイシャツだったのが、原作の格好(長襦袢って言うらしい。鎖はない)になっていた秋津が、そんなことを聞いてきた。

 

 

……さて、その質問はどれに対するものだろうか。俺が秋津をお持ち帰りしたことか? それとも出雲荘に住めるように交渉したことだろうか? まさか俺に対する質問じゃないとかはないよな? 俺を見て言ってるから、それはないと思うが。

 

まあ、どれだったとしても答えになるような言い回しで言うのが最善か。

 

「何でって言われてもな。俺が葦牙でキミがセキレイだから、かな」

 

言ってから思ったが、この言い方はちょっとよろしくない気がしてきた。節操なしのナンパ野郎の発言にしか思えなくなってきたし。

 

 

……うわぁ、取り消したい。

 

「……そう」

 

秋津が無口すぎて何を思ってるのかが分からない。いや、無口系美少女は好きだけどさ!

 

 

よし、話題を変えよう。これ以上は考えない方向で。

 

「あー、そうだ美哉さん。廃棄ナンバーって知ってますか?」

 

秋津がそうなのは知ってるし、原作では確か調整失敗したからそうなったんだったはずだけど。

 

まあ一応確認だ。原作と違う可能性もなくはないし。そもそも現状でも原作崩壊してるからな。

 

「廃棄ナンバー、ですか。それをどこで?」

 

「秋津を見つけた時に、冬華がそんなことを呟いてたんで」

 

秋津って確か羽化出来ないんだったかな。その辺り何とかしたいと思う。味方になってもらう可能性をあげるため、っていうのと、単純に好きなキャラだから、っていう理由で。

 

「そうですね。日高さんは知っておいた方が良いでしょう。廃棄ナンバーとは、調整に失敗したセキレイ達のことです」

 

原作通り、かな。しかし、原作でもそうだったけど、何で秋津は公園にあんな格好で居たんだろうか。失敗したから捨てたとか、まさかそんなことはしてないよなMBI。

 

「……私、逃げた」

 

逃げた、か。

 

「調整って、何ですか?」

 

確かリミッターか何かのような感じだったっけ。

 

「調整とは、セキレイ達の力を抑えるためのものです。本来の力をそのままにしてしまうと、加減を知らない皆さんではあちこちを壊してしまいかねないので、一種の制御方法として調整が行われています」

 

あー、まあ確かにそういうのは要るか。セキレイは割と脳筋が多いし、あっさり帝都崩壊とかしそうだ。

 

「そして、廃棄ナンバーと呼ばれる子達は羽化が出来ないと言われています。調整に失敗した影響だと思いますけれど、出力が不安定な他、様々な問題があるそうです」

 

……達? もしかして、秋津以外にもいるのか?

 

……原作で登場しなかったセキレイ達の中にいたってことか。

 

 

まあとりあえず保留。考えても分からないんだからな。

 

「なるほど。ってことは、あんまり戦いには参加させない方が良いんですかね?」

 

出力が不安定なのに戦いに出すとか危険すぎる。……篝さんは戦いまくってた気もするけど。あの人とは状況が違うだろう、多分。

 

「…………私は、要らない?」

 

秋津が悲しそうにそう言ってきたので、言葉に詰まる。

 

そんな顔でそんなことを言わないでほしい。俺が悪いことをしてるみたいじゃないか。

 

 

……あー、でもこういう子には禁句だったか。何もしなくていい、的なセリフは。

 

うん、俺が悪い。美少女は正義!

 

「分かった俺が悪かった。もしまた次があれば秋津にも一緒に戦ってもらおう。それでいいか?」

 

「……うん」

 

まあ、結果的に助かったな。秋津が一緒に戦ってくれるのは心強い。力の暴走とかが心配だが、そこは常に見ておけばいいだろう。何かあったら美哉さんに任せればいい。

 

「じゃあこの話は終わろう。俺は散歩に行ってくるけど、どうする?」

 

今日も散歩をするつもりだ。……いや、流石に今日はセキレイを求めてはいない。何日も連続でイベントが起こっても対処出来ないし。

 

今回は単純に気分転換だ。あとついでに、引っ越す前の仲が良かったご近所さんに挨拶しに行く予定。あと荷物を持ってこないと。

 

「……行く」

 

秋津は付いてくると。で、ちょうど降りてきた冬華は来るか?

 

「あ、秋津ちゃん。ちょっとお話ししたいから残ってくれないかな?」

 

「……なに?」

 

「翔にはまだ内緒の話をしたいんだよ。いいかな?」

 

「……分かった」

 

ということは、二人とも来ないってことか。……しかし、俺には内緒か。まだって言ったわけだから、いずれ話してくれると信じよう。

 

「翔、ごめんね? また今度一緒に行くから」

 

「分かった。秋津と仲良くしてくれよ?」

 

「あはは、もちろんだよ」

 

よし、じゃあ行くか。二人が来ないってことは、他の葦牙に襲われないように、襲われても逃げれるように身構えておく必要があるな。

 

「お昼までには帰ってきてくださいね、日高さん」

 

「はい、了解です美哉さん。じゃ、行ってきます」

 

「行ってらっしゃーい」

 

 

 

 

というわけで、ちょっと前(というか昨日)まで住んでいた下宿先に到着だ。ちなみに、皆人がいたところとは違う。

 

とりあえずささっと荷物をまとめて、部屋を綺麗に掃除してっと。

 

「おや? 翔くんじゃないか。何をしているんだ?」

 

「あ、麻耶さん。えっと、引っ越すことになったんで、片付け中です」

 

この人が、仲良くしていたご近所さんの、麻耶(マヤ)さんだ。格好良い系の美女、しかも独身らしい。

 

何故か物凄く強い人で、何度か模擬戦をしてもらったことがあるんだが、手も足も出ずにボロ負けした。

 

多分セキレイより強い。というか美哉さんぐらい強いんじゃないかと今見て思う。

 

「まあ、私に何も言わなかったことは一旦置いておこう。それで、どこへ引っ越すんだ?」

 

……やっぱり昨日言っておくべきだったか。

 

「出雲荘ってとこです。昨日の内に言っておくべきでしたね、すみません」

 

謝っておく、それが一番だ。一応連絡先も知ってるから、連絡出来なかったわけではないんだけど。

 

流石にセキレイ云々のことを言うわけにもいかない。まあ麻耶さんのことだから知ってるかもしれないけど。

 

 

……忘れてただけ、何て言えない。

 

「ああ、あそこか。……ふむ。君の散歩趣味はまだ続いているのか?」

 

「ええ、昨日も散歩に出かけましたよ」

 

健康的だし、良いじゃないか散歩。色々知識も得られるし、体力もつく。前世みたく引きこもるよりはよっぽど良い。

 

……いや、せっかく転生したんだし、前世にしなかったことをしたかったんだよ。転生デビューだ。

 

「そうか。何か困ったことがあったら頼るといい。君の頼みなら大抵は聞こう」

 

「ありがとうございます。何かあったら、そのときは頼りにしてます」

 

何故か知らないけど、麻耶さんは俺にかなり好意的だ。このセリフもよく言ってくれるし、以前一度頼ったときは嬉しそうに笑って、俺が頼んだことをあっさりこなしてくれた。

 

その時から麻耶さん最強説が俺の中で急速に浮上。そういう人に甘え過ぎるのは良くないと思って、できるだけ頼らないようにしてる。

 

「あ、手伝ってくれてありがとうございます」

 

全然気付かなかったんだけど、話している間に掃除を手伝ってくれていた。

 

ありがたいんだけど、気配消してそういうことをしないで欲しい。お礼すら言い損ねるところだったじゃないか。

 

「気にするな。それより……その荷物、一人で運ぶつもりか?」

 

「え、ああ、はい。これくらいなら大丈夫ですよ」

 

うん、まあちょっと多い気もするけど。今世ではかなり鍛えてるから、大丈夫だろう。それに、流石にこんなことで麻耶さんに頼むのは情けないからな。

 

「さて、そろそろ行きますね。また今度連絡します」

 

「ああ、ではまたな」

 

片付けも掃除も終わったので、出雲荘へ戻ることにする。早めに帰らないと般若が降臨してしまうしな。

 

 

「出雲荘、か。やはり、翔くんは……」

 

 

 

 

 

 




麻耶

翔が以前まで住んでいた下宿先のご近所さん。年上のお姉さんで、作者的にはISの織斑千冬をイメージ。かなりの強さを誇る人で、翔は彼女に武術を教わっていた。大体何でも出来るチート的存在。それなりに長い付き合いの翔でも知らないことが多く、謎多き人である。
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