「ただいまー」
あっぶねぇぇ。間に合わないかと思ったぞ。
「お帰りなさい日高さん。お昼の用意、出来てますよ」
セーフセーフ。無事優しい美哉さんが出迎えてくれた。
いやあ、まさか帰りに御子上を見つけるとは思わなかった。幸い向こうには気付かれなかったみたいだが、やり過ごすのにかなり気を遣った。運良くNo05と会わずに済んだのは幸運だったな。あれレベルだと流石に俺じゃ無理だ。
俺が頑張って気配を消したら、並のセキレイには気付かれないみたいだし、そういう意味では収穫があったな。
ただ疲れたけど。隠れるのは苦手なんだよなぁ。
「翔ちゃんお帰りー。ってすごい荷物だね。どしたのそれ?」
「うずめちゃんか、ただいま。これは下宿先に置いてた荷物。それより、その格好は何だよ?」
あー、そういえばうずめちゃんって原作でも下着だけで家の中を歩いてたっけ。まさか実際に見ることになるとは。
役得……って言いたいけど、もうほとんど妹みたいなもんだからな、だらしない方の。
「良いじゃん別に。パンツ履いてるんだし」
「うずめさん? はしたない格好は禁止ですよ」
「うっ。美哉、怖いって……分かったよ、着替えてくるからその顔やめて」
うずめちゃんは般若様に脅されて着替えに行った。
まあこれからは俺も皆人もいるからな。慎みは持って欲しいところだ。
「じゃ、俺は荷物置いてきます」
皆で楽しく昼飯を食べた後、俺は前の下宿先に荷物を取りに行った皆人を迎えに行くことにした。
皆人達がここまでの道を覚えているか微妙だしな。まあ皆人は頭良いから覚えてるかもしれんが。
そもそもあいつが出雲荘に来たのは空からだし、道知ってるんだろうか、と不安になったので、迎えに行くことにしたって訳だ。
で、せっかくだから冬華と一緒に出かけている。まだバトルロイヤル編に入ってないんだし、平和な内に楽しんでおかないと。
「そういえば、佐橋クンだっけ。翔のお友達なの?」
「ああ、高校が一緒でな。まあ色々あって仲良くなったんだよ」
特別なイベントがあったわけではないけど。原作知識があるから大体の人柄は分かるし、実際に話してみるとやっぱりいい奴だった。
「そっか。……ね、翔。セキレイはさ、残り一人になるまで戦わなきゃダメなんだよ」
ちょっと沈んだ声でそんなことを言いだした。
……ああ、そういえばそうだったっけ。鶺鴒計画は最後の一人が願いを叶えられるんだったかな。実際のところ、神器がどうとか人類滅亡とか、そんな感じだったような気がするけど。まあ願い事が叶えられる前提で行くとしてだ。
「ああ、知ってる。でもまあ、大丈夫だって」
あいつらの目標からして、勝っても負けても良いし、俺の願いも似たようなもんだし。全てのセキレイは葦牙の元で幸せに暮らせばいいんだ、ってな。
せっかく葦牙になったのに、セキレイを一人だけ選ぶなんてしない。やるんならハッピーエンド一択だろ。
「……戦わなきゃ、ダメなんだよ?」
「だから大丈夫だって。俺もあいつも、それで諦めるほど弱くない」
やることは結構あるからな。千穂の病気を何とかしたり、セキレイ達と仲良くなったり、世界救ったり。
それに、あいつと戦うことになっても、試合みたいなものになるだろうし。正々堂々、恨みっこなしって感じで。
「っと。着いたし、その話はまた今度だな」
「……うん」
うーん、冬華は気にし過ぎだと思うんだけど……まあ原作知識があるからこんな考えになるのかもな。
「よしっと。それじゃ……皆人、手伝いに来たぞ!」
皆人の部屋の前でノックして声をかける。いきなり入ると結ちゃんの裸とか見る可能性があるからな。気をつけないと。
「翔? えっと、とりあえず入って来てくれ」
「えっ、翔さん来たの!? どどどどうしよお兄ちゃん!?」
あ、ユカリちゃん来てるのか。そういえばこっちの大学に受かったって聞いたな。
そして何故か知らないけど、ユカリちゃんから見ると俺は美形に入るらしく、俺がいるとユカリちゃんは若干挙動不振になる。まあ可愛いから良いんだけど。
「よお皆人と結ちゃん、手伝いに来たぞ。ユカリちゃんは久しぶりだな」
「来るなら連絡くれれば良いのにさ。まあ手伝いはありがたいんだけど」
そういえば連絡忘れてたな。すまんすまん。
「翔さん冬華さんこんにちは!」
うんうん、元気でよろしい。その学生服姿もグッドだ。
「あっあの、お久しぶりです翔さん!」
うん、昔よりはちゃんと喋れるようになったな。
「えっと、そっちの子は初めましてかな。ボクは冬華。よろしくね」
「あ、うん。わたしはユカリ。よろしくね冬華さん」
二人が仲良く出来そうで良かった良かった。
「しかし……手伝いは必要なかったか。もう荷物まとめるところみたいだし」
風呂敷の中にまとめられている荷物を見て言う。掃除も終わってるっぽいし、本当に手伝うことがなさそうだ。
「結ちゃんとユカリが手伝ってくれたからさ。思ったより早く終わったんだ」
「そかそか。じゃ、せめて荷物くらいは持とうか。よっ、と」
馬鹿でかい風呂敷を持ち上げる。ちょっと重いが、まあ普通に持てる。問題は部屋から出れるかどうかなんだけど。
「おおー! 流石翔さん、カッコイイ!」
「はは、ありがとうユカリちゃん」
原作だと結ちゃんが持ってたけど、流石に女の子に持たせるわけにはいかない。いくらセキレイとはいえ、だ。
「で、皆人。出雲荘に持って行けばいいんだよな?」
「え、ああ。いいのか?」
「手伝いに来たんだから、これくらいさせろ。それじゃ行くぞ」
「じゃああたし、友達の家に泊まりに行く約束してるから。翔さんも、また」
「またね、ユカリちゃん」
ユカリちゃんと別れて、四人で出雲荘へ帰る。
「可愛い子だったね、ユカリちゃん。あんな子が妹だなんて、幸せ者だねえ佐橋クン」
「だなあ。ちょっと男に耐性がなさすぎる気はするけど、まあそれも愛嬌だしな」
あの子は原作と同じく、ちょっとしたブラコンだからな。なんだかんだで皆人のことを信頼してるし。
しかし、彼女今日は結ちゃんの胸を揉んだりしなかったな。原作だとやってた気がするし、ちょっと期待してたんだけど……。
「翔クン……? 今何か変なこと考えなかったかな?」
「い、いや……何でもないぞ?」
何故ばれたし。余計なことを考えないようにしないと。俺より強い冬華に怒られるのは怖い。それに、雰囲気が若干美哉さんっぽくなってるし。
常に紳士たるべし、だな。今後も皆人の周りではラッキースケベ的な展開が多数起こるだろうし、気をつけないと。
まあそれはそれとして、話題を変えよう。ちょうど皆人と結ちゃんもいることだし、セキレイ関連の話題をチョイス。
「そうだ冬華。まだ良く分かってないんだけどさ、セキレイの力ってどんなもんなの?」
いくら原作を知ってるとはいえ、セキレイの力はそれぞれ違うからな。結ちゃんみたいな身体能力系とか、月海や草野ちゃんみたいな魔法っぽいものまで様々だし。
「えーっとね、炎を操ったり、布を操ったり、風を操ったり、色々あるんだよ」
それ、出雲荘の面々の能力じゃないか。焔さん、うずめちゃん、風花さんだな。松さんは……あの人、能力の説明がし辛いからかな。
「あの時の二人は雷だったな。結ちゃんは拳系、だったっけ」
「はい!」
皆人もこの話題に食いついたようで、結ちゃんと話している。ぶっちゃけ皆人にセキレイの説明をするためにこの話題を出したから、良かったと思う。
「冬華はどんなことが出来るんだ?」
「ボクは剣を操れるよ」
剣か。それはつまり、近接タイプってことだよな。そっか、近接か。
正直なところ、あまり好ましくはない。近距離といえば、あのNo4鴉羽のことを考えると、同タイプだとちょっとマズイ。いや、遠距離でもダメな気はするけど。
まあ、強さでセキレイを選ぶわけでもないし、それは良いや。それより今後、どれだけ強くなれるかだな。今がどれくらいの強さなのかは未だによく分からないが、少なくとも美哉さん以下なのは確かだろう。
まあその辺りは今後だな。もしかしたらまだセキレイが増えるかもしれないし、俺は今後皆人と協力していくつもりだから、戦力云々については今は考えないでおこう。
「剣か、カッコ良いな!」
何にしても、剣と魔法は現代日本人の憧れ。しかも扱うのは美少女だ。冬華が華麗に戦うのを見てみたいと思うのが男ってもんだろう。
「そ、そうかな? ありがとう」
照れた顔もまた可愛い。うん、葦牙になれて良かった!