未覚醒者は『強化再生』で成り上がる   作:傷付 津々木

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第10話

「なぁ、フェイ」

「ン?」

「俺はどうしたらいいと思う?」

 

 正直、満足してしまったのだ。

 

 探索者に憧れた。

 未知の世界を探検し、怪物を恐れず討伐し、強くなって日本を支える探索者に。

 

 覚醒者に憧れた。

 人外の膂力と能力で怪物を討伐する、常人を遥かに凌駕した特別な存在に。

 

 探索者となった俺を待っていたのは、予想外に幸福な遭遇と、予想外に悪辣な現実だった。

 しかし今、俺は理不尽を跳ね除ける力を持ち、大切な仲間たちとの再会を果たした。

 

 それで、満足してしまったのだ。

 

「ンー、デモミチナリ、マダヨワイヨ?」

「……弱い?」

「ウン、ヨワイ」

 

 少なからず天狗になっている自覚はあったが、弱いか。

 そうか、俺はまだ弱いのか。

 

「それは、何と比べてだ?」

「……イエナイ」

「それはいつか、俺の脅威になるか」

「……」

「フェイ。お前個人として、俺に強くなってほしいと思うか?」

「ウン」

 

 個人の主観を尋ねる形なら、フェイは答えやすいのかもしれない。

 とにかく、当座俺が弱いことは分かった。

 だが、それよりも大きな問題がある。

 

 世界最大の幻素蓄積量を持つ俺が、「弱い」と言うことだ。

 つまり、俺以外の人間全てが相手にならないだけの脅威がいつか襲ってくる。

 

「フェイ。お前は俺が何処に行くべきだと思う?」

「ニンキナイ、メイキュウタベテ、ソノアト、バベル」

 

 ……それはつまり、俺がこのままだとバベルを攻略できないという事なのでは?

 確かに、バベルは現状多くの第5級探索者と最上位探索者たちが集まって、32層までしか攻略できていない最高難度の迷宮だ。

 俺の実力で攻略できないというのも無理はない。

 

 だが一つ腑に落ちないのは「人気がない」という言葉だ。

 

「……わかった、ありがとう」

「イイヨー」

 

 いつになく機嫌がいいのは、遊び疲れて寝てしまったディーのお腹の上に座っているからだろう。

 フェイ含め妖精と言う存在には怪物が恐れて近寄らないので、可愛くて柔らかいディーとの交流はとても心癒されたようだ。

 

「そう言えば、この迷宮も人気ないが」

「エッ、ココハダメ!!ココハノコス!」

 

 両手を必死に振ってアピールするフェイ。

 お気に入りの迷宮は残してほしいらしい。

 

 ――――――――

 

 ついでに完全攻略して所有する事にした。

 57層まで来てこのまま地上に帰るのはなんだか勿体ない。

 

 という訳で62層。

 見覚えのある宮殿が雪原の中心に建っている。

 

「これは同じなんだ」

 

 宮殿に入る。

 

 中央には肉塊。

 ブヨブヨとしたそれが水気のある粘着音と共に変形、人の形をとった。

 中肉中背、長く伸びた前髪で目が見えず陰気な気配が漂っている。

 

「またお前かよ」

「どっかで会ったかな?」

 

 お前の同種にはな。

 面倒なことに、人間を取り込んでいるタイプだ。

 と言うか、こいつあの迷宮の特産守護者じゃなかったのか。

 

「なぜ外に出ない?」

「連中とは折り合いが悪いんでね、戻ってきた」

 

 連中?戻ってきた?

 

「連中とは?」

「知ってて追って来たんじゃかいのか。新入りかな?」

 

 ……俺はヴェイドだと思われているようだな。

「連中」という事は人類に溶け込んだヴェイドが徒党を組んでいるのか、或いはヴェイドの存在を認知している人間たちが居るのか。

 

「なんにしても、ろくな集まりじゃないだろうな」

「違いない、俺は人類の根絶なんかに興味ないからな」

 

 人類根絶?

 どうも野放しにするのは危険な連中なようだ。

 

「……外では随分と暴れているようだな」

「そうらしい」

 

 相手が何者であろうと守護者であれば討伐するつもりだったが……。

 それにしても戻ってきた、ね。

 

「お前は守護者じゃないな」

「御名答。守護者は湧く度に俺が潰して吸収してる」

 

 実質的に所有してるも同然か。

 強さは未知数だな。

 

「お前の目的は?」

「平穏かな?」

 

 ヴェイドは吸収した探索者に応じて性格が変わるのかもしれない。

 吸収し強くなって、より強い存在を吸収する。

 そんな生態をしているヴェイドにとって、平穏は生存戦略として不適格だ。

 

「……どう信じたものか」

「うーん、この迷宮やろうか?」

「お前のメリットは?」

「君の協力。お仲間の割に話し通じそうだし」

 

 協力とは、生存のためだろう。

 より長くより平穏に、この迷宮に居座っているのは脅威を退け平穏に暮らす為の力を手に入れる為に違いない。

 

「……俺はお前の同族じゃない」

「へえ……確かに、ちょっと違うかも。でもまあ、信じない理由にはならないよね」

 

 変形した両目で分析しながらそう言う。

 人間臭いことを言う奴だな。

 

「と言うか君、まあまあ強くね?」

「……誰と比較してだ、それは」

 

 まあまあで済まない程度には覚醒者の中では強い筈なんだが。

 

「そりゃあ、地上のお仲間よ」

「俺より強い奴は居るか?」

「20匹中、12匹くらい?」

 

 俺は早急に強くなる必要があるらしい。

 まさかヴェイドたちがそこまで強力な戦力になっているとは。

 

 こいつの情報は貴重だ。

 無力化して取り込んでしまえば俺も相当に強化されるだろうが、俺以外にヴェイドに敵対し得る強力な存在が居る事は、後々大きな意味を持つだろう。

 

「ひとまず、信じよう」

 

 宮殿の中央に向かうと、覚醒者を検知した迷宮が核を差し出してくる。

 守護者が討伐済みだとこうなるのか。

 

 核に血を垂らして、所有した。

 迷宮との繋がりを感じる。

 迷宮核が生成した幻素のうち、迷宮運営の為に消費される幻素を除いた余剰分が俺に供給されている。

 

「地上に出たらどうする?」

 

 核に登録している間、無防備に近かった俺を攻撃しなかった奴が話しかけてくる。

 

「とりあえず俺は片っ端から迷宮を吸収していく。お前は地上で情報収集してくれ」

「うーん、まあバレないように頑張るよ。強くなった君がスムーズに連中を討伐できるように、精々協力するさ」

 

 さて、人類根絶を止めに行こうか。

 




駄文ですが、少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。
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