リコリス・リコイル 軍神と亡霊の戦闘記録   作:だいちゃんDY

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数年ぶりの投稿です!
是非寛容な心で読んでください!


「Easy does it」
#00:Prologue


極左暴力集団……革マル派や中核派、革労協など、民主主義国家の日本において社会主義革命・共産主義革命を目指して暴力的な闘争を展開する集団。

過去には民間人を巻き込む凶悪な「テロ、ゲリラ」事件を数多く引き起こすなど、市民生活を混乱させ、日本の治安に大きな影響を与えた。

誕生から半世紀以上が経過した現在、構成員の高齢化などにより組織は衰退の一途を辿っており、活動も下火になりつつある。

しかし、組織の中でもより過激な思想を持つ者たちはこれを良しとしなかった。

彼らは組織を抜け、「革命統一委員会」なるものを発足する。

 

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2022年2月3日 東京都 北区 王子一丁目

 

JR東日本 京浜東北線や東京メトロ 南北線、 東京都交通局 都電荒川線が乗り入れる王子駅からほど近い場所にある5階建ての古めかしいビル。

このビルこそが革命統一委員会のアジトであった。

その一角で2人の男が密談を交わしている。

 

「仲間たちと連絡が取れなくなった。ここがやられるのも時間の問題だろう」

 

「日本警察は優秀だと聞いていたが、まさかここまでとはな……」

 

「仲間が本国へ帰る船を新潟港に用意している。11時20分の高速バスで新潟へ向かうぞ」

 

「わかった」

 

この2人……林 善実(リム・ソンシル)と趙 浩然(チョ・ハオラ)は朝鮮民主主義人民共和国の工作員である。

2人は日本への工作活動のため、革命統一委員会と協力関係にあった。

だが、朝鮮民主主義人民共和国による弾道ミサイル発射実験が行われるたびに警察庁警備局(俗に言う公安警察)や公安調査庁は工作員の摘発を強化。

さらに、革命統一委員会の構成員が東京駅や新宿駅、渋谷駅などの主要駅に爆発物を仕掛ける等のテロ事件を相次いで起こしたことで、日本政府を本気で怒らせてしまった。

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10時45分 同所

 

アジトから半径1キロ圏内に警視庁と国家保安隊による規制線が張られ、大勢の警察官と国家保安官が住民の避難誘導や警戒に当たり、20式小銃などで武装した警視庁の緊急時初動対応部隊(ERT)と国家保安隊の広域機動運用部隊の隊員たちが防弾盾を構えてアジトを包囲する。

そこに、1台のWRブルー・パールのSUBARU WRX S4 STI Sport R EXが乗り付け、薄いベージュ色の制服に身を包み、その上から日本国旗を取り付けたプレートキャリアやFASTヘルメットなどを着用し、20式小銃やAA-12、H&K SFP9などで武装した独立国家防衛組織(FOSD)長官の神宮 悠夏とコンバットシャツやニーパッドが取り付けられたコンバットパンツなどの戦闘服に身を包んでバラクラバで顔を覆い、その上から日本国旗を取り付けた分厚い防弾バイザー付きのFASTヘルメットや「FOSD」と書かれたボディーアーマーなどを着用し、H&K HK416A5やH&K USP9などで武装したFOSD警備部長の小鳥遊 ハルカが降りてきた。

 

「悠夏ちゃん、楓渚ちゃんがいないと寂しそうだね」

 

「あはは……やっぱりわかりますか?」

 

「顔にデカデカと書いてるからね。まぁ、楓渚ちゃんなら大丈夫でしょ」

 

「そうですね」

 

悠夏とハルカがそんなやり取りを交わしていると、ドクターカー仕様のSUBARU レヴォーグ STI Sport R EXが二人の前に停車する。

 

「悠夏さん、ハルカさん、お疲れ様です」

 

助手席から紺色の制服に身を包んでバラクラバとESS CROSSBOWで顔を覆い、その上から日本国旗を取り付けた黒色のプレートキャリアや黒色のFASTヘルメットなどを着用し、FN SCARやSIG SAUER P229などで武装した自衛隊中央病院特殊機動衛生隊隊長の守月 セナが降りてきた。

 

「セナちゃん、お疲れ様」

 

「お疲れ〜」

 

悠夏とハルカはセナに労いの言葉をかける。

 

「市川さんと斉藤さんもお疲れ様です」

 

「お疲れ様です」

 

「「はっ!」」

 

そして、セナと一緒に降りてきた特殊機動衛生隊隊員の市川 辰雄3等空尉と斉藤 慎也3等空尉にも労いの言葉をかけた。

 

「お、来ましたね」

 

警視庁の銃器対策警備車2台と公安調査庁のLenco Bearcat3台、国家保安隊のVBMR グリフォン3台が到着すると、刑事ドラマや映画、アニメなどの創作物でもよく登場し、おそらく日本で一番有名な特殊部隊であろう警視庁の対テロ特殊部隊である特殊急襲部隊(SAT)と公安調査庁の対テロ特殊部隊である特殊対応部隊(SRT)日本の法執行機関最後の砦とも名高い国家保安隊の対テロ特殊部隊である治安介入部隊(SIU)の隊員たちが続々と降車し、配置についていく。

 

「そろそろ時間ですね……私たちも行きましょう!」

 

「OK!私の可愛い後輩たちに手を出したこと、後悔させてあげないとね!」

 

「えぇ、絶対に許しません!」

 

悠夏、ハルカ、特殊機動衛生隊の5人、コールサイン「アーチャー」も配置につき、その時を静かに待つ。

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10時53分 東京都 新宿区 FOSD統合作戦司令所

 

「こちらイチガヤ、シードへ。予定通り1055に屋上からの突入を許可する」

 

「こちらシード1、了解した」

 

コールサイン「イチガヤ」ことFOSD統合作戦司令所には作戦の進行をリアルタイムでモニターするための大型スクリーンと自衛隊から出向した自衛官で構成された陸海空自衛隊の迷彩服を身に纏った100人以上のオペレーターが配置され、陸上自衛隊の迷彩服3型に身を包んだFOSD副長官の岩崎 繁晴が中央に陣を構えて指揮を執っている。

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10時55分 東京都 北区 王子一丁目

 

1機のヘリコプター、警視庁航空隊に所属するベル412EP おおとり8号が黒一色の装備に身を包んだ5人のSAT隊員、コールサイン「シード」を乗せてアジト上空に姿を現した。

彼らの任務は屋上からアジトに潜入し、3階にある監視ルームを制圧するという極めて危険なものである。

そのため、SATの中から選抜された5人の精鋭で構成されている。

 

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《隊員の氏名・階級・役職》

 

・高橋 和人警部補(SAT第1小隊制圧班長)

 

・黒澤 裕樹巡査部長(SAT第1小隊制圧班)

 

・田村 誠巡査(SAT第1小隊技術支援班)

 

・小野寺 翔平巡査部長(SAT第2小隊制圧班)

 

・大内田 正弘巡査(SAT第2小隊制圧班)

 

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隊員たちはおおとり8号が降下予定地点のアジト屋上でホバリングすると、ロープを素早く垂らして次々とラペリング降下し、屋上に降り立った。

 

「こちらシード1、降下地点クリア。これより内部に突入する」

 

隊員たちはH&K HK416やSIG SAUER P228、グロック19を構えて屋上の扉に近づくと、黒澤がドアノブをゆっくり回して扉を少し開け、高橋がHK416の銃口を扉の隙間に差し込み、中の様子を探る。

高橋がゴーサインを出すと、隊員たちは高橋を先頭に建物内へと足を踏み入れ、極秘に入手したアジトの構造図を基に監視ルームへと向かう。

隊員たちは物音一つ立てずに階段を下って3階へと降りる。

そして、短い廊下を進んで奥にある広間の入り口まで来ると……

 

『しゃがめ』

 

高橋が広間に男の姿を捉えたため、ハンドサインで隊員たちをしゃがませる。

 

『田村 偵察しろ』

 

高橋の指示で田村が黒色のアタッシュケースから小型カメラが内蔵されたボールのようなものを取り出し、広間の入り口まで近づく。

高橋は男がいなくなったことを確認すると、田村にゴーサインを出す。

田村が広場にボールを転がすと、ボールは3メールほど進んで植木鉢にぶつかって止まった。

田村はアタッシュケースからタブレット端末を取り出し、リアルタイムで小型カメラから送られてくる映像を確認する。

 

『敵 2 武器 なし』

 

田村のハンドサインを見た隊員たちは頷くと、高橋がカウントを開始する。

そして、カウントが0になると、隊員たちは一斉に立ち上がり、二手に別れて広間へと突入する。

 

「ふんふ〜ん♪」

 

男は呑気に鼻歌を歌いながら広間を歩いていた。

すると、突如として何者かに押し倒され、後頭部に強い衝撃が走った。

 

「がはっ!」

 

男の意識はそこで途切れた。

黒澤は男の両手を結束バンドで縛ると、高橋と一緒に男を引き摺り、物陰に隠す。

もう1人の男は胸騒ぎがして後ろを振り返ろうとした瞬間、小野寺に背後から取り押さえられ、床に組み伏せられた。

 

「くそ!離sぐあっ!」

 

大内田は男の後頭部を警棒で殴りつけ、気絶させた。

小野寺が男を拘束すると、大内田は離れた場所にいる高橋たちにハンドサインを送る。

3人は頷くと、小野寺たちと合流すべく広間を進む。

そして、高橋たちは2人と合流し、監視ルームへと向かった。

隊員たちが監視ルームの扉の前まで来ると、高橋は田村に偵察するよう指示を出す。

田村はアタッシュケースから工業用内視鏡を取り出し、カメラが内蔵された先端部分を扉の下のわずかな隙間に差し込む。

 

『敵 2 武器 不明』

 

田村のハンドサインを見た高橋は頷くと、カウントを開始する。

やがてカウントが0になると、黒澤が扉を開け、高橋を先頭に隊員たちが監視ルームへと突入する。

 

「うわああああ!!」

 

「な、何だ!?」

 

2人の男は突然のことに驚愕し、男の1人は近くにあったドライバーを手にして高橋に襲いかかる。

しかし、何の訓練も受けていないど素人が屈強なSAT隊員に敵うはずもなく、男はあっという間に組み伏せられ、結束バンドで両手を縛られる。

もう1人の男はそれを見て戦意消失してしまい、両手を上げて降参した。

 

「こちらシード1、イチガヤへ。アマノイワトヒラク」

 

「こちらイチガヤ、了解した。実行部隊各員へ。我々の使命は日本国民が平和で豊かな生活を送れるよう、子どもたちが飢えず苦しまず安心してベットで眠れるよう危険を顧みず、身をもって職責を全うすることだ。くだらない野望のために一般市民を標的としたテロを起こし、挙げ句の果てには未来ある子どもたちを拉致した奴らに代償を払わせてやれ。この作戦を"オペレーション・オニタイジ"と呼称する。各員の健闘を祈る」

 

岩崎自らが作戦開始を告げると、配置についている隊員たちが一斉に行動を開始する。

ちなみに、オペレーション・オニタイジは決行日が奇遇にも節分と重なったことから悠夏が面白半分で名付けたものであり、飛んでくるのは豆ではなく銃弾である。 

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11時10分 同所

 

アジト上空に国家保安隊航空保安隊に所属するMH-47G 特殊作戦ヘリコプター1機が飛来し、降下予定地点のアジト屋上でホバリングすると、機体後部のランプドアが開き、エクストラクションロープが垂らされる。

 

「降下ッ!降下ッ!降下ッ!」

 

SIU第2小隊介入班とSRT第1小隊強襲班、SAT第2小隊制圧班の隊員たちがファストロープ降下で屋上に降り立つと、班ごとに分かれて屋上の扉から室内に雪崩れ込む。

地上では正面玄関に悠夏、ハルカ、特殊機動衛生隊とSRT第2小隊強襲班が、裏口にSIU第1小隊介入班とSAT第1小隊制圧班がそれぞれ集結する。

悠夏が扉の鍵穴にAA-12の銃口を向けて引き金を引くと、放たれた12ゲージスラッグ弾が鍵を破壊する。

悠夏は20式小銃に持ち替えると、取っ手を引いて扉を開け、ハルカ、特殊機動衛生隊、SRT第2小隊強襲班と共にアジトへと突入する。

革命統一委員会の構成員たちは突然の事態に全くと言っていいほど対応できず、ほとんどの者が手を上げて投降するか、銃口を向けられて無様にも失禁する始末だった。

中には抵抗しようと武器を手にした者もいたが、泣く子も黙る特殊部隊員に敵うはずもなく、あっけなく制圧される。

SRT第2小隊強襲班と別れ、裏口から突入したSIU第1小隊介入班と合流した悠夏たちは階段を使って地下1階に下りると、薄暗い廊下を奇襲に備えて全方向を警戒しながら進んでいく。

そして、突き当たりの部屋の前まで来ると、悠夏が手を押す動作をする。

どうやら内開きの扉らしく、ハルカがドアノブをゆっくり回し、セナがフラッシュバンの安全装置を抜いていつでも投げ入れるようにする。

悠夏が手を前にやると、ハルカが扉を少し開け、セナがフラッシュバンを投げ込む。

閃光と180デシベル以上の大音量により室内にいる者たちの平衡感覚や視界がなくなったと同時に悠夏たちとSIU第1小隊介入班は部屋へと雪崩れ込む。

そこは会議室らしく、革命統一委員会の幹部たちやトップの清川 辰夫、立憲民主党衆議院議員の枝山 由紀夫や社民党衆議院議員の大花 洋子の姿があった。

悠夏たちとSIU第1小隊介入班は幹部たちを椅子から引き摺り下ろすと、床に組み伏せ、結束バンドで両手を縛り上げる。

 

「き、貴様ら!日本を正しい方向へと導くために立ち上がった我々にこのような真似をしておいてタダで済むと思っているのか!国民が黙ってないぞ!」

 

会議室の奥にいた清川は悠夏たちに罵声を浴びせると、立ち上がって近くに置いてある日本刀を手に取り、鞘から引き抜いて威嚇する。

そんな清川とは対称的に枝山と大花は諦めたような表情を浮かべていた。

 

「清川 辰夫さんと枝山 由紀夫さん、大花 洋子さんですね。あなた方とこの会議室におられる方々を外患誘致罪、スパイ防止法違反、テロ等準備罪などの重要参考人ならびに被疑者として逮捕します」

 

悠夏は逮捕状を取り出して罪状を読み上げると、3人に逮捕状を見せ、ハルカと特殊機動衛生隊が3人を取り囲んで銃口を向ける。

 

「これは国家権力の横暴だ!日本はまた同じ過ちを繰り返そうとしている!」

 

清川は日本刀を振り回し、悠夏たちを近づかせまいとする。

 

「清川さん、私たちも手荒な真似はしたくありません。大人しくお縄についてください」

 

「貴様らの都合など知ったものか!」

 

「はぁ……」

 

悠夏はため息をこぼすと、テーザーガンに持ち替えて清川に照準を合わせ、引き金を引く。

 

「うがぁっ!」

 

放たれたワイヤーが直撃し、強力な電流を受けた清川は身体を動かすことができなくなり、その場に倒れ込む。

その瞬間、悠夏とハルカは清川に、特殊機動衛生隊は枝山と大花にそれぞれ駆け寄る。

枝山と大花は抵抗することなく特殊機動衛生隊に拘束され、SIU第1小隊介入班に連行された。

悠夏は動けない清川の両腕を背中に回し、両手に手錠をかける。

ハルカはHK416A5の銃口を清川の頭に向け、いつでも撃てるようにする。

 

「清川さん、昨日あなた方は私と同じ制服を着た4人の少女を拉致しましたね。彼女たちはどこにいるのですか?」

 

「……」

 

「おじさ〜ん?答えないならその頭に大きな穴が空いて風通しが良くなっちゃうよ〜?」

 

ハルカが満面の笑みを浮かべて引き金に指を添えるのを目の当たりにした清川は身体をビクッと震わせる。

その時、清川が見た視線を悠夏は見逃さなかった。

 

「セナちゃん、あの棚を調べてみて」

 

「わかりました」

 

特殊機動衛生隊とSIU第1小隊介入班のメディックが会議室の角にある棚を捜索すると……

 

「悠夏さん、この棚は隠し扉になっています。開けてもよろしいですか?」

 

「うん、お願い」

 

セナがSCARを構え、市川が棚を押すと、ギギッと音を立てて棚が開く。

そこには手足を縛られ、口をガムテープで塞がれて檻に監禁された4人のサードリコリスの姿があった。

工具を使って南京錠を破壊した特殊機動衛生隊とSIU第1小隊介入班のメディックは檻の中に入り、4人の拘束を解いていく。

 

「特殊機動衛生隊の守月です。もう大丈夫ですよ。一緒に帰りましょう」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

セナの優しい言葉と笑顔に4人は安堵し、涙を浮かべて抱き合った。

 

「立てますか?無理なら担架を用意しますが」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「わかりました。では、私たちの肩に掴まってください。ゆっくりで構いませんからね」

 

4人は特殊機動衛生隊、SIU第1小隊介入班のメディックに支えられながら立ち上がり、ゆっくりと歩き出す。

 

「清川さん、この2人をご存知ですね」

 

悠夏が林と趙の顔写真を見せると、清川の表情は一変する。

 

「そうだ!アイツらはどこに行ったんだ!突然いなくなりやがって!」

 

「じゃあ、清川さんは2人の居場所をご存知ないのですね」

 

「当たり前だ!」

 

「わかりました」

 

悠夏は清川を立たせると、SIU第1小隊介入班に引き渡す。

 

「これは国家による弾圧だ!こんなことが許されていいはずがない!」

 

清川は喚き散らしながらSIU第1小隊介入班に連行されていった。

 

「やっぱり逃げられたか……こちらアーチャー1、イチガヤへ。北京冬季オリンピックの開会式は2月4日。繰り返す、北京冬季オリンピックの開会式は2月4日」

 

「こちらイチガヤ、了解した。作戦4号を発動する」

 

『こちらイチガヤより緊急電。都内全域で活動する全部隊に通達する。作戦4号を発動。繰り返す、作戦4号を発動。なお、この命令は最優先事項である。事前マニュアルに従い、直ちに行動を開始せよ』

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《オペレーション・オニタイジ 予備プラン4号》

 

発動条件 : 林 善実と趙 浩然の身柄確保が逃亡により失敗し、且つ首都圏内にいる事が確実である場合。

 

発動請求権所在 : 実行部隊

 

概要 : 首都圏内の主要駅や空港、港湾の警備強化。幹線道路の県境で大規模な検問を実施。

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11時20分 東京都 練馬区 練馬駅(練馬区役所前)バス停

 

西武バスが運行する池袋駅東口発万代シティーバスセンター行きの高速バスは練馬駅(練馬区役所前)に定刻通り到着する。

林と趙はバスに乗り込むと、1列目のB1席に林が、C1席に趙が座る。

 

「発車します。ご注意ください」

 

ドアが閉まり、自動放送が流れると、バスはゆっくりと動き出す。

 

「お待たせしました。発車します。ご注意ください。座席に座りましたらシートベルトの着用にご協力をお願い致します」

 

運転手がアナウンスで乗客にシートベルトの着用を呼びかける。 

バスは一般道を10分ほど走り、練馬ICから関越自動車道に入る。

 

(ここまでは順調だな。あとは目的地に着くのを待つだけだが……)

 

林はバスに揺られながら窓の外を眺める。

このバスを真っ赤なスポーツカーが追尾しているとも知らずに。

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11時32分 東京都 新宿区 FOSD統合作戦司令所

 

作戦4号を発動したことによって司令所内は慌ただしくなり、オペレーターも増員される。

大型スクリーンに映し出された都内の地図上に表示される各部隊や航空機を示すマークが激しく動き出す。

林と趙を取り逃がしたことで、アジトの制圧が始まって20分で当初の予定は破棄された。

この大幅な変更は10兆円の国家予算と日本の最先端技術を惜しみなく注ぎ込んで作られた世界最高峰のAIである「統合戦闘指揮システム ケラスス」が無ければ大混乱を招いていただろう。

作戦4号が発動した瞬間、ケラススによって全てのオペレーターに仕事が割り振られ、機械的に処理されていく。

すると、岩崎の元に1本の内線が入る。

 

「はい、岩崎です」

 

「岩崎さん、お疲れ様です。サイバー対策部長の由春です」

 

「あぁ、由春さん。お疲れ様です。あなたが電話してきたということは何か進展があったのですね?」

 

「はい。結論から申し上げますと、あの2人は11時20分に練馬駅を出発した西武バスの高速バスで新潟方面に向かいました。そちらに監視カメラの映像を回しますね」

 

「新潟……新潟港から船で逃げる気か。由春さん、よくやってくれました。ありがとうございます」

 

「いえいえ、それと真っ赤なスープラがこのバスを追いかけるように走っています。運転手の顔がわからないので確証は持てませんが、赤色の制服を着ていることから常盤さんの可能性が高いです」

 

「常盤さんですか……わかりました。こちらで確認します。由春さんは引き続き2人の追跡をお願いします」

 

「了解しました。それでは失礼します」

 

由春との通話を終えた岩崎は情報部長の大久保 俊光に内線をかける。

 

「大久保君、お疲れ様。岩崎だ」 

 

「副長官、お疲れ様です。どうかなさいましたか?」

 

「内調に中野隊を動かしたのか確認してもらえるかな?もし動いているなら我々の指揮下に入るよう伝えてくれ」

 

「中野隊ですか……承知しました。少々お待ちください」

 

「NEXCO東日本に関越道下り線の練馬から高崎までの全てのインターを封鎖し、交通管理隊に2人が乗ったバスとスープラ以外の通行車両を最寄りのインターで降ろさせるよう伝えてくれ。西武バスにはこのバスを時速80キロを維持して関越道を走らせ、乗客たちにこの件を伝えないよう要請してくれ。それと、埼玉県警に高速隊で高速バスを追跡させるのと、機動戦術部隊(RATS)を出動させるよう伝えてくれ。あと、海上保安庁の特殊警備隊(SST)を新潟港へ向かわせ、万が一に備えて海上自衛隊の特別警備隊(SBU)にも出動待機を命じてくれ」

 

内線が保留になると、岩崎はオペレーターに指示を出す。

 

「お待たせしました、大久保です。内調に確認しましたところ、中野隊の常盤 サコが赤色のスープラで2人が乗った高速バスを追跡しているそうです。指揮権については我々の傘下に入ることで合意させました」

 

「よくやった。ご苦労様」

 

「ありがとうございます。それでは失礼します」

 

岩崎は内線を切ると、悠夏に電話をかける。

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11時35分 東京都 北区 王子一丁目

 

悠夏とハルカがアジトから出てきたところ、悠夏のスマホに岩崎から着信が入る。

悠夏が使うのは普通のスマホではなく、過酷な戦場での軍事作戦の遂行を想定してパナソニックが開発した軍用スマートフォン「TOUGHBOOK N1 Tactical」である。

悠夏は電話に出ると、スピーカーモードをオンにし、隣にいるハルカにも聞こえるようにする。

 

「神宮さん、お疲れ様です。岩崎です」

 

「お疲れ様です、岩崎さん。もしかして2人の居場所がわかったんですか?」

 

「はい。2人は11時20分に練馬駅を出発した高速バスで新潟方面に向かいました。中野隊の常盤さんが赤色のスープラで追跡しています。バスはちょうど今、関越道下り線の新座料金所を通過したところです」

 

「わかりました。すぐに追いかけます」

 

悠夏は終話ボタンをタップしてスマホをしまう。

 

「どうする?ヘリで追いかける?」

 

「ヘリですか……相手は工作員なので下手に追い込むと何をしでかすかわかりません。ヘリは目立つのであまり使いたくないですが、埼玉県内でけりをつけたいのも確かです」

 

悠夏は顎に手をやり、考え込む。

すると、付近の掲示版に貼られているポスターが目に入る。

 

「よし、一か八かやってみよう」

 

悠夏は再度スマホを取り出し、ある人物に電話する。

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11時37分 東京都 渋谷区 東日本旅客鉄道株式会社 本社ビル

 

「はい、吉村です」

 

電話の相手はJR東日本新幹線統括本部長の吉村 慎之介だった。

 

「もしもし、FOSD長官の神宮 悠夏です。お忙しいところ申し訳ありません」

 

「神宮さんじゃないですか。とんでもございません。こちらこそご無沙汰しております。今日はどのようなご用件でしょうか?」

 

「え〜、結論から申し上げます。東京駅を11時50分に出発するALFA-Xを貸してください」

 

「……はい?」

 

悠夏の突拍子もない申し出に思わず聞き返してしまう吉村。

 

「ですから、ALFA-Xをk

 

「いや、聞こえていますよ。聞こえていますが……え、えっと……どのような目的で使用するのか教えていただいてもよろしいですか?」

 

「今から話すことはくれぐれも内密にお願いします」

 

「わかりました」

 

「先日、東京駅や新宿駅、渋谷駅に爆発物が仕掛けられるテロ事件が発生したのはご存知ですよね?」

 

「えぇ、勿論です。私たちも対応に追われましたからね」

 

「その首謀者が先ほど高速バスに乗って新潟方面に逃走しました。ヘリで追いかけたいのは山々ですが、相手に気付かれてしまう可能性があります。民間人を標的とした無差別テロを起こすような連中ですから、自分たちが追われていると知れば何をしでかすかわかりません」

 

「そこで、今日東京駅に初入線したALFA-Xに白羽の矢が立ったということですね」

 

「はい。吉村さん、バスの乗客たちの命が懸かっています。費用はこちらが言い値で払いますのでどうかお願いできないでしょうか?この通りです」

 

悠夏が頭を下げて懇願しているのが電話越しでも伝わり、吉村は暫し考え込む。

 

「……あなたと空崎さんには60号事案の時に大変お世話になりましたからね……わかりました。ALFA-Xをお貸ししましょう」

 

「本当ですか!」

 

「ただし、1つだけ条件があります。くれぐれもALFA-Xを壊さないよう大切に扱ってください。ALFA-Xは我が社の次世代新幹線の中核を担う車両で、我が社の、いや、日本の技術力の象徴とも言える存在です。そこだけはお忘れなきようお願いします」

 

「もちろんです!本当にありがとうございます!」

 

「いえいえ、今どちらにいらっしゃいますか?」 

 

「王子駅の近くです」

 

「王子ですか……東横INNの前に保線車両が出入りするためのスロープがあるのはご存じですか?」

 

「はい」 

 

「では、そこでお待ちください。東京新幹線車両センターから職員を向かわせます。それではご武運をお祈りします。お気をつけて」

 

「ありがとうございます。よろしくお願いします。それでは失礼します」

 

悠夏は通話を終えると、ハルカにこれからの段取りを説明する。 

 

「なるほど……じゃあ、悠夏ちゃん。そのスロープとやらがある場所に案内してよ」

 

「わかりました」

 

悠夏はWRXのトランクからギターケースを取り出して肩に担ぐと、ハルカを先導しながら岩崎に連絡を入れる。

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11時40分 埼玉県 さいたま市 JR東日本新幹線総合指令所

 

「ALXA-Xを上越新幹線に?」

 

吉村から連絡を受けた総括指令長の笠置 雄一は驚愕し、思わず聞き返す。

 

「あぁ、王子に停める以外は新潟までノンストップだ。大宮から先は360キロで走らせててくれ。先行する列車は全て待避させろ」

 

「わかりました」

 

笠置は受話器を下ろすと、輸送指令員たちを集めて指示を出す。

 

「本部長連絡の内容は大体理解できたな?9012BはATC開放。東京新潟間の全列車を待避させ、9012Bにルートを空ける」

 

「はい!」 

 

輸送指令員たちは一斉に動き出す。

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同刻 東京都 新宿区 FOSD統合作戦司令所  

 

「神宮さんの発想力と行動力には毎度驚かされるな」

 

悠夏から事の顛末を聞かされた岩崎はテーブルに地図を敷き、関越自動車道を指でなぞる。

 

「本庄児玉インターの先で上越新幹線と交差する。バスとALFA-Xの交差地点通過時刻は?」

 

「バスは12時29分、ALFA-Xは12時27分です」

 

「決まりだな。神宮さんと小鳥遊さんが乗ったALFA-Xを交差地点へ先回りさせ、常盤さんのスープラが交差地点の400m手前でバスの前に出て強引に停めさせたところを常盤さんとRATSで制圧する。2人は手榴弾やIEDで自爆する可能性が高いので神宮さんの狙撃でそれを封じる」

 

岩崎は瞬時に作戦を立案すると、オペレーターに指示を出す。

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11時48分 東京都 千代田区 東京駅20番線ホーム

 

鉄道に興味がない人でも思わず足を止めてしまうほど特徴的な外見をしている試験用新幹線電車E956形、愛称「ALFA-X」(列車番号9012B)は東京駅20番線ホームに停車していた。

ホームには鉄道ファンが大勢詰めかけ、ALFA-Xにカメラを向けている。

運転席では東京新幹線運輸区所属の主任運転士である柳沢 陽一が発車前のチェックを行っていた。

 

「ATC開放、よし」

 

柳沢はレバーを下ろしてATCを解除し、手動運転に切り替える。

 

「20番線を回送列車が発車いたします。ご注意ください」

 

「20番線から回送列車が発車いたしま〜す。お見送りのお客様は黄色い点字ブロックの内側までお下がりくださ〜い」

 

11時50分、ホームに発車ベルが鳴り響き、自動放送と駅員による放送が流れる。

 

「戸閉め、点」

 

「時刻、よし」

 

柳沢はブレーキハンドルを手前に引き、ブレーキを緩める。

 

「緩解、よし」

 

「発車」

 

プワ〜〜〜ンッ!!

 

「東京定発」

 

そして、マスコンを3ノッチに入れると、ALFA-Xはゆっくりと動き出す。

柳沢はホームにいる子どもが手を振っているのに気付き、笑顔で手を振り返した。

ALFA-Xは徐々に速度を上げながら東京駅を後にする。

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同刻 東京都 北区 王子一丁目

 

東横INN京浜東北線王子駅北口の真正面にある軌陸車が東北新幹線の高架橋に乗り入れるためのスロープが設置されている保線部門敷地の鉄柵の側にいた悠夏とハルカの前にJR東日本と書かれたダイハツ ハイゼットカーゴが止まり、反射チョッキを着用して緑色でJRと書かれた黄色いヘルメットを被った2人組が降りてくる。

 

「お待たせしました。東京新幹線車両センターの池田です」

 

「同じく、坂下です」

 

「こちらこそ、お忙しい中お越しいただきありがとうございます。本日はよろしくお願いします」

 

「よろしくお願いします」

 

悠夏とハルカは池田と坂下に頭を下げる。

 

「鍵を開けますので少々お待ちください」 

 

池田はポケットから鍵を出すと、鉄柵の南京錠を解錠する。

 

「どうぞ、お入りください」

 

坂下が鉄柵をスライドさせると、池田は悠夏とハルカを敷地内へ案内する。

そして、スロープの入り口まで来ると、池田は再び鍵を取り出し、有刺鉄線付きの門扉に取り付けられた南京錠を外す。

 

「さぁ、行きましょう」

 

坂下が門扉を引いて開けると、池田は悠夏とハルカを先導し、スロープを上っていく。

スロープを上りきって東北新幹線の高架橋に辿り着くと、池田は左右に首を動かして列車が来ていないか確認する。

 

「よし、来てないな。それでは渡りましょう。足元が悪いのでお気をつけください」

 

池田を先頭に線路を横断して下り線の線路脇にあるスペースに移動する。

 

「あと2分で来るはずです」

 

池田は腕時計で時刻を確認する。

2分後、銀色の車体に水色の帯が入ったALFA-Xが下り線に姿を現わす。

 

(60号事案ぶりだな……)

 

悠夏はALFA-Xを懐かしそうに見つめる。

 

「悠夏ちゃん!すごい!めっちゃカッコいい!てかめっちゃデカい!」

 

ハルカは目を輝かせながらALFA-Xに興奮する。

池田は無線機を口元に近づけ、柳沢に指示を出す。

 

「あと5m、あと4m、3m、2m、1m、やわやわ、やわやわ、止まれ」

 

柳沢は池田の指示通りにALFA-Xを停車させる。

しばらくして、先頭車両の乗務員用扉が開き、柳沢が悠夏とハルカを出迎える。

 

「高いところから失礼します。東京新幹線運輸区所属の柳沢です。本日はよろしくお願いします」

 

「「よろしくお願いします」」

 

悠夏とハルカは深々とお辞儀をする。

 

「どうぞ、お乗りください」

 

柳沢は緊急脱出用はしごを下ろし、悠夏とハルカはそれを使ってALFA-Xに乗り込む。 

 

「池田さん、坂下さん、ありがとうございました」

 

「ありがとうございました」

 

「いえいえ、お役に立てて光栄です。それではお気をつけて」

 

「お気をつけて」

 

池田と坂下は悠夏とハルカに敬礼する。

柳沢は緊急脱出用はしごを引き上げて格納し、乗務員用扉を閉める。

 

「柳沢さん、本庄早稲田から3km先の関越道と交差する地点で停車してもらえますか?」

 

「わかりました。停止位置目標が無いので交差地点の少し手前からすぐに停まれる速度で走ります。ベストな位置に来たら教えてください」

 

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

 

柳沢は運転席に戻ると、ブレーキハンドルを手前に引いてブレーキを緩め、マスコンを3ノッチに入れる。

ゆっくりと動き出したALFA-Xは東北新幹線の上野から大宮間の最高速度である130km/hまで加速する。

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12時01分 埼玉県 坂戸市 関越自動車道下り線 坂戸西スマートIC付近

 

赤色の制服に身を包んでバラクラバとサングラスで顔を隠し、その上からプレートキャリアやFASTヘルメットなどを着用し、M4A1カービン URG-I仕様やSIG Sauer P365などで武装した内閣情報調査室の極秘特殊部隊「中野隊」に所属する常盤 サコ、コールサイン「フェニックス」はプロミネンスレッドのトヨタ GRスープラ RZを運転し、林と趙を乗せた高速バスを追跡していた。

その後ろを20台近いセダン、220系クラウンや130系マークX、V37スカイラインなどで構成された埼玉県警高速隊の覆面パトカーとRATSの隊員たちを乗せたPV-2 特型警備車2台が追走する。

RATSは埼玉県警の銃器対策部隊という扱いだが、装備や訓練の面では他都道府県の銃器対策部隊とは一線を画し、SATにも引けを取らない。

埼玉県警は南関東1都3県の警察本部では唯一SATが編成されていなかったが、県内には多くの重要施設が所在することから、テロ事案等に備えて県警独自の対応能力を整備する必要があるとして編成されたのが同部隊である。

 

「こちらイチガヤ、フェニックスへ。本庄児玉インターから1.7km先、上越新幹線と関越自動車道が交差する地点の400m手前でバスを停止させ、埼玉県警RATSと連携して制圧せよ。詳細な位置情報は後ほど送る。林と趙は生け捕りが望ましいが、バスの運転手や乗客に被害が及ぶようなら射殺を許可する」

 

「こちらフェニックス、了解」

 

しばらくして、スープラのナビにバスを停止させるポイントが表示される。

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12時14分 埼玉県 さいたま市 大宮駅18番線ホーム

 

ピンポンパンポ〜ン♪

 

「まもなく、18番線を下り電車が通過します。黄色い線までお下がりください」

 

「18番線列車通過で〜す。黄色い線の内側までお下がりくださ〜い」

 

自動放送と駅員による放送が大宮駅18番線ホームに流れる。

 

「お、おい!あれ!」

 

「え!?ALFA-Xが18番線を通過!?」

 

「17番線に停まるんじゃなかったのか!?」

 

ホームにいた鉄道ファンたちに衝撃が走る。

 

「危ないのでホームの柵から離れてくださ〜い!場内事故防止にご協力をお願いいたしま〜す!」

 

ALFA-Xがホームに進入するタイミングで鉄道ファンの何人かが柵から身を乗り出そうとし、駅員に放送で注意される。

 

「大宮通過、12時14分」

 

大宮を通過したALFA-Xは上越新幹線に入ると、柳沢はマスコンを全開にする。

ALFA-Xは徐々に加速していき、やがてALFA-Xの最高速度である360km/hに到達する。

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12時23分 埼玉県 熊谷市 上越新幹線下り線 熊谷駅付近

 

上越新幹線下り線を360km/hでかっ飛ばすALFA-Xの先頭車両の乗務員室にて、悠夏はギターケースから対人狙撃銃であるM110A2を取り出してマガジンを差し込み、チャージングハンドルを引いて初弾をチャンバーに送り込む。

やがて、本庄早稲田駅の手前に差し掛かったALFA-Xは速度を落とし始める。

そして、関越自動車道と交差する地点の100m手前で10km/hに減速する。

 

「ここで停めてください」

 

ALFA-Xはゆっくりと停車する。

悠夏は乗務員用扉を開けると、乗務員用扉両側の手すりにロープを縛り付け、M110A2の銃身をロープに置いて安定させる。

ハルカはケラススに接続している端末に目をやる。

この端末には敵味方の位置情報がリアルタイムで表示される。

 

「悠夏ちゃん、あと1分くらいでバスが来るよ」

 

「わかりました」

 

悠夏は気を引き締める。

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12時27分 埼玉県 本庄市 関越自動車道下り線 本庄児玉IC付近

 

2台の特型警備車が覆面パトカーを追い越してスープラの後ろにつく。

それからしばらく走ると、上越新幹線の高架橋と交差地点で停車しているALFA-Xが見えてくる。

 

「そろそろだな」

 

サコの運転するスープラはバスを追い越すために第一走行車線から第二走行車線に車線変更する。

サコがアクセルペダルを踏み込むと、最高出力387ps、最大トルク500Nmの3.0L直列6気筒ツインスクロールターボエンジンから発生する凄まじい加速力でスープラはあっという間にバスを追い抜く。

サコは左に急ハンドルを切ってスープラをバスの前に滑り込ませ、ブレーキペダルを踏むと、バスの運転手は慌てて急ブレーキをかける。

バスはスープラにぶつかりそうになるが、間一髪のところで止まった。

特型警備車2台がバスの後方に停車すると、紺色のアサルトスーツに身を包み、その上から分厚い防弾バイザー付きの黒色の戦闘用ヘルメットや黒色のプレート型防弾衣などを着用し、H&K MP5FやH&K P2000、S&W M3913などで武装したRATSの隊員たちが降車してバスを取り囲む。

サコもスープラから降りると、P365を構えてバスの乗降扉に駆け寄る。

 

「ハルカさん、測量お願いします」

 

「りょ〜かい。南南東風速2.4m、気圧1011、気温12度、湿度30%、距離411」

 

悠夏はすぐさまスコープを調整し、フィンガーセーフティーを外して引き金に人差し指を添える。

突然のことに運転手と乗客たちはパニックに陥る。

もちろん、林と趙も例外ではない。

 

(くそっ……こんなところで……)

 

林は唇を噛むと、右手にRGO手榴弾を握りしめる。

 

「党よ、我らは永遠にあなたの忠臣になろう。マンセー」

 

林が安全ピンを抜こうした瞬間……

 

バンッ!!

 

「く"あ"あ"あ"ぁっ!!」

 

M110A2から放たれた7.62x51mm NATO弾がフロントガラスを貫いて林の右手首に命中し、手首から先を吹き飛ばす。

 

「く"……く"そ"っ……!!」

 

林は床に落ちた自分の右手に握られたRGO手榴弾を左手で拾おうとする。

しかし、乗降扉が開いてサコとRATSの隊員たちが車内に雪崩れ込む。

 

「大人しくしろ!」

 

林は抵抗虚しく、サコに組み伏せられる。

趙も同様、RATSの隊員たちに取り押さえられる。

 

「林 善実、趙 浩然、お前たちをスパイ防止法違反で現行犯逮捕する」

 

サコは林に、RATSの隊員たちは趙に手錠をかける。

その様子をスコープ越しに見ていた悠夏は安堵し、ハルカは「やったね!」と親指を立てる。

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12時40分 新潟県 北蒲原郡 聖籠町 新潟東港

 

新潟東港から1隻の漁船が出港する。

船内には朝鮮民主主義人民共和国の工作員4人の姿があった。 

彼らは林と趙を乗せて祖国に帰る手筈だったが、2人と連絡が途絶えたことで急遽予定を繰り上げて出発することになったのだ。

出港して1時間が経った頃、双眼鏡で周囲を警戒していた工作員の1人が白色の大型船を見つける。

その瞬間、工作員の首から上が跡形もなく吹き飛び、頭部を失った身体は糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる。

 

「こちらセイバー、目標まで200」

 

上空から海上保安庁関西空港海上保安航空基地所属のMHスーパーピューマ225 みみずくが、海上から複合型ゴムボート2艇がSSTの隊員たちを乗せて颯爽と現れる。

少し離れた海上には第9管区新潟海上保安部所属のPLH-08 えちごの姿が見え、甲板には対物ライフルであるマクミラン TAC-50を構えた狙撃班の隊員たちがいる。 

ちなみに、先ほど工作員の頭を吹き飛ばしたのは彼らである。

2艇の複合型ゴムボートが漁船の両側を並走し、みみずくが漁船の船尾でホバリングする。

スライドドアが開いてエクストラクションロープが垂らされると、黒ずくめの装備に身を包んだ隊員たちがファストロープ降下で漁船に降り立ち、H&K HK416を構えた隊員を先頭に制圧を開始する。

 

「こちらキャスター、12時の方向に1隻」

 

工作員の1人が救命ボートで逃走を図るが、そうは問屋が卸さない。

直ちに複合型ゴムボート1艇が接近し、隊員の1人がHK416の照準を工作員に合わせる。

工作員はAKMSで反撃を試みるが、引き金を引く前にHK416から放たれた5.56x45mm NATO弾が脳幹を貫いて即死する。

漁船に突入した隊員たちが船内を隈なく捜索していると、操舵室からAK-74で武装した工作員が出てきた。

先頭の隊員は瞬時に狙いを定めてHK416の引き金を引き、工作員の脳幹に5.56x45mm NATO弾を叩き込むと、工作員はその場に崩れ落ちる。

隊員たちは操舵室の前に来ると、扉を開けてフラッシュバンを投げ込む。

轟音と閃光が操舵室内を襲うと同時に隊員たちが雪崩れ込む。

漁船を操縦していた工作員はマカロフ PMを向けるが、HK416から放たれた5.56x45mm NATO弾が腕ごとマカロフ PMを吹き飛ばす。

隊員たちは工作員を床に組み伏せて手錠をかけ、危険物を隠し持っていないかボディチェックする。

 

「クリア!操舵室を確保!」

 

こうして、オペレーション・オニタイジは成功裏に幕を閉じた。

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後日 東京都 新宿区 防衛省市ヶ谷庁舎A棟

 

FOSD長官執務室にて、悠夏と岩崎がテーブルを挟んでソファーに腰掛けている。

 

「神宮さんのご活躍で作戦は無事成功に終わりました。本当にお疲れ様でした」

 

「いえ、今回も様々な方々のお力添えあっての成功です。感謝してもしきれません」

 

「相変わらず謙虚ですね。それはそうと、1000丁の銃火器が東京国際コンテナターミナルから密輸されたことはご存知ですよね?」

 

「もちろんです。はぁ……中国と戦争してアメリカで大統領が暗殺されかけて新幹線が爆破されたと思ったら今度は銃の密輸ですか……しかも1000丁って……戦争でも始める気なんですかね?」

 

「あはは……まぁ、何はともあれ今年も忙しくなりそうですね」

 

「ですね」

 

悠夏と岩崎は乾いた笑みを浮かべるのだった。




いかがだったでしょうか。文章の稚拙さが目立ったかと思いますが、ぜひ次話もよろしくお願いします。皆様からのご意見やご感想をお待ちしております。
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