博麗咲夜、十六夜霊夢   作:茶蕎麦

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 こそりと書けました!

 序の次の破として、弾幕ごっこルールも何も無い中かなり強めな彼女たちの活躍をお送り出来たらと思いますー!

 取り敢えずは1~2面。少しでも驚きと楽しみを覚えていただけると幸いですー。



闇が差す/光振り斬れる


 紅魔館にいる妖怪ども。ひいてはレミリア・スカーレットこそ幻想郷のパワーバランスを崩しかねない存在として封じられていた。

 

 

 なるほど500年ものの妖怪とあれば、それだけで決して侮ることは出来ない存在であるだろう。

 しかし()()()()でしかない力だけある小娘達を封印してしまうのは或いは可哀想ではないかという意見も過去には出ている。

 

 それはレミリアの父が起こした吸血鬼異変の直後のこと。実際に被害を被った大小妖怪共は何をとその知らぬが故の悠長さに怒りを覚えてしまう。

 しかし山の奥に座すばかりのそれとて賢者のひとつ。反駁は視線ばかりで彼のろくに下がらぬ頭巾は少しの間安堵されていたのだが。

 

「――いいえ。アレは哀れむには少し強大すぎますわ」

 

 しかし、さらりと言葉の一刀を持って緊張を裂いたのは、その場の誰もがよく知る神算鬼謀の持ち主八雲紫。

 権能に迫る程の能力よりも尚その未来予知地味た怜悧なまでの知恵を持つことの方が恐ろしい、そんな存在がなんと後ろ向きな。

 慌てる老天狗に、しかし八雲紫はそれまで隠していた白磁の指先が付いた手をはらりと表に。

 

「操るのは運命のみ……しかし、彼女ならそれだけでもこれくらいの噛み跡は残せるものなのですから」

 

 そして顕になったは、彼女の美しきその手のひらに連なるはそれこそ石灰そのもののように肘先までま白き骨ばかりの有り様。

 痛いを通り越した無でありそれでも治りつつあろうが無様にも残った傷跡。それを見せつけることで、八雲紫はその場の意見を一つにすることを可能にした。

 

「紅魔館は、私が責任を持って封じます……ふふ。どうやら異見はないようで、嬉しいですわ」

 

 そう彼女は微笑んで、レミリア・スカーレットという吸血鬼は、決して容易く自由にしていい存在ではないのだという認識を賢しきを誇るばかりの頭どもに叩き込んだのである。

 

 

 

「げほ……ヤバいなこれ……」

「そうね……力で保護しないと呼吸もままならないわ。魔理沙も魔力を全身に廻すこともう少し意識してちょうだい」

「そうだな……苦手だがそうしなきゃ死ぬもんな」

 

 異変に慌てて向かう、博麗咲夜に霧雨魔理沙ははじめにそんな会話をした。

 

 幻想郷に突然湧いて出たその紅い霧。薄く少しづつ地をなめていくそれは毒性があまりに強かった。

 当日の風が弱く向きが神社の方であり人里にまでそれが届かなかったのは幸いだろう。

 

 近寄るだけで、冷や汗をかき触れれば爛れて飲み込めば真っ当な生き物であれば即座に死ぬ。

 とはいえ、妖怪変化のような曖昧であろうとも影響が皆無ではいられないだろう。

 この色づいた霧はあまりに強力な毒。それをこうも広範囲に飛ばしている下手人の狂気に恐れなす魔理沙。

 

「ったく……異変っていうかこれ止められなきゃ幻想郷の人間全滅するだろ……あむ」

 

 立ち向かう勇気、そして力を増すためにも食べればくらくらする茸を一口かじって魔法での保護を増させていると、後方から凛とした声がかかった。

 

「ふむ、魔理沙。安心しろとまでは言わないが……それはないだろう。この紅い霧と見紛うような悪魔の血煙。もし一体から湧いているものならそう保つものではない。そのうち止まるだろう」

「悪魔のって……私にはさっぱりだが、ひょっとして明羅さん、そんなのに出会ったことでもあんのか?」

「ああ。私はとても斬りがいのある特別しか知らないが……アレらが死に物狂いにでもなれば、これくらいの被害は周囲にも及ぶだろう」

「……うん? それって明羅さん、どういうことだ?」

 

 マスク代わりに上等なハンカチーフで口元を押さえながら、魔理沙は首を傾げる。

 彼女にとっては毒物を撒き散らす一体をやっつけるだけのつもりであったのに、明羅はさらに遠くを見ているようだった。

 何か嫌な予感がしてきた彼女を代弁するように、咲夜は小さく呟くように問う。

 

「……明羅。これは悪魔たちの戦闘の余波かもしれないってこと?」

「そうだな。きっとそれが階で……どこに至るかが私には気にかかる」

「いやいや……はた迷惑な奴と、似たようなのがもう一体いる可能性があるってか? 私はもう帰りたくなってきたんだが」

 

 魔理沙はとても分かりやすい困惑のポーズとして頭を押さえようとしたが、しかし足元を流れる黒に近い赤の霧におぼれてしまうのが恐ろしくてハンカチ口元にしたまま片手を頭に向けただけ。

 そういえばそんなちょっと半端な自分と違い、先からずっと師弟たちは真面目だ。

 場違いの感を流石の魔理沙も覚えてきたが、それがどうしたと彼女は先頭を譲らないで飛び続ける。

 そろそろ霧の湖近くといったところで、とうとう咲夜が言った。

 

「魔理沙に義務はないのだから帰ってくれても別にいいのに……でも、貴女は帰らないのでしょう?」

「ああ。そりゃ私がいると何時もすましてる咲夜が迷惑そうな顔するから、なあ。止められないぜ!」

「はぁ……私は出来れば瀟洒に仕事をしたいのだけれど」

「それに、お荷物一つくらい持っとかないと、お前どこか飛んでいっちまうだろ?」

「……そう、かもね」

 

 友人同士の軽口。しかしそれがどうにも重く心に伸し掛かってしまうのは、実際今の状況にしっくりと来ていないからなのかもしれない。

 巫女として勤勉に働く。それが悪いとは思わないし、むしろやり応えはあると考えている。

 だが、本当に私でいいのかという不安が咲夜の脳裏に常につきまとっていた。

 

 しかし幾ら実力不足を嘆こうとも、幻想郷に現状巫女は博麗咲夜ただ一人。

 首を振って、迷いを消し去り紅にどこか暗澹とした眼下を望み直すのだった。

 

 全て後ろから覗いていた、師匠は思い出したかのように言う。

 

「さて。幼馴染仲の良いところ申し訳ないが……」

「おいおい。明羅さん。私らのこれは幼馴染や仲良しってんではなくて、もっとこう仕方なしで適当なそれこそ腐れ縁感じでさあ」

「魔理沙。お前の照れは私にはどうでもいいが……」

「いやこれは照れてるっていうかさ……と」

 

 咲夜と仲良し呼ばわりに不機嫌そうな顔をしながらも、耳の後ろに軽い赤。

 そんな逆に器用なことをやっている魔理沙だったが、しかし誰より小器用なのが明羅という女傑。

 彼女は足元をそっと指差す。すると先んじて進む二人を前にそれがさっと顕現するのだ。

 

 光も差せば、魔も差すもの。そして此度同じくして。

 

『ばぁ』

「出たぞ」

 

 闇が差し、辺りを宵闇に覆い隠したのだった。

 

「はっ?」

「っ!」

 

 世界に墨水一閃。少女らの夕焼けの前に、黒黒と。

 それは幼気な声色以外の一切合切が正体不明で、ただ驚きの事態ばかりが顕になる。

 見えもしないければ、分かりもしない。そんな、真っ暗闇に唐突に三人は閉じ込められたのだった。

 

「なんだこりゃ……痛……これは、木の枝かあ?」

「下手に動かないほうが良さそうね……」

 

 前後不明にも急には止まれず、魔理沙は周囲の闇の中、先までは避けるつもりだった枝葉に飛び込む。

 咲夜はその場に止まり、目を動かし光を必死に探しながらも耳をすました。

 

 さて、そんな在り来りをするばかりの少女達よりも、此度の事態を引き起こした宵闇の妖怪「ルーミア」からして面白かったのは、目の前の一人。

 彼女だけは、芯より動揺一つせずにむしろ見えないなら瞠ることに意味はないと目を閉じてからこう言葉を置いた。

 

「闇か」

『その通り! ねえ、貴女は怖くないの~? 私には隙だらけに見えるけどなあ』

 

 見えないことをいいことに、それこそ額がくっ付きそうな距離にてふよふよ浮きながら首を傾げるルーミア。少女の金毛はいくら動かそうとも輝かない。

 ルーミアが眼前の明羅に覚えるのは、美味しそうだけれど手が出ないといった感。それこそ毒虫を前にした心地であれば、こいつ強そうかもとは思い始めている。

 

『わ』

 

 そして、佩びている剣を闇から望んだルーミアは遠くから弾幕でも作ってから食べようかなと迷ってたら、額に迷いなく指が刺さった。

 それには一切の害意がなく、また過度の力みだってなかったが、しかし明白な意図は覚えたルーミア。

 きっと、コレは私の能力のアンチとなる力があると考えたルーミアはほっぺを空気でぷっくりさせながらこう言うのだった。

 

『むぅ……私をおちょくってるの?』

「ふん。明鏡止水の果てには、感覚すら置き去りにした境地がある……私はその少し手前に居るのだろうがそれとてこの程度の不明に慌てることはない」

 

 そしてムカつこうとも、目の前の侍っぽいのは妙に難解な言葉を口にするものだから、彼女も困る。

 どうもしてこないコレは、でも明らかに知らないことを知っていて、分からないはずなのに分かってもいそうだ。

 でも、周囲はルーミア自身の味方というかそれそのものですらある宵闇に満ちていることだし、やろうと思えば彼女は心を闇に誘うことだって出来た。

 全盛の頃だったら命だって闇に染められたのになあと思いながら、こっそりとその力を明羅に向けつつ、隠すように言葉を重ねてみるのだが。

 

『へぇ。そーなんだ。なら、この状況だってどうにか出来るの?』

「そう。私なら闇など容易く斬れるが……」

『あれ?』

 

 しかし、幾ら闇に向けようとしても、なんと明羅の心の向きも形も茫洋としたものか。

 これでは闇とすら区別できないほどに、あまりに無私。

 本当にコレは人間なのか、そもそも生きているのか不思議がるルーミアに、やっと片目を開けた明羅は。

 

「……咲夜。お前にだって裂くことくらいは出来るだろう?」

 

 そう、問った。

 

 師が出来ると確信していること。それを熟せぬ弟子などあり得ない。

 そう思い鯉口を滑った緋緋色金の刀剣は過たずに空を真っ直ぐに切り裂いて。

 

「っ、たあっ!」

『わっ」

 

 光輝一閃。ルーミアの闇を暴くのだった。

 それは、絶技。別段剣に生きておらずとも、生来の刃物に関する才能を持ってそれに寄りかかり続けていれば、なるほどこれほどの業を成せるものなのだろうか。

 

「よしっ!」

 

 そう。博麗咲夜は過たず、闇を振り斬った。

 土壇場の成功に彼女が可愛らしくも小さく握りこぶしを作ったことを、明羅だけが微笑みながら認めている。

 

 

「ええ……?」

 

 闇が差したならば、光とて振り斬れるもの。だがそればかりの現実を認められず、ルーミアの大粒の瞳はぱちぱちと驚きに瞬いた。

 彼女はその際に自らの金色の睫毛の重なるところを見て、更に慌てる。

 

「わわ、また闇を集めないと……!」

 

 とはいえ、光のもとに引きずり出したばかりで仕留められないのが、この妖怪のそれらしさ。

 そもそも闇を裂いて開けたのは、妖怪ルーミアの周りばかり。

 

 慌てて黒を吸い込むように彼女は身に宵闇を纏わせだす。

 このままではろくに時待たずして元の木阿弥。或いは敵わぬと見たルーミアに、このまま逃げられてしまうかもしれなかった。

 

「え?」

「お。丁度目の前だったか」

 

 しかし、カチャリという硬質な音にルーミアは我に返る。

 そういえばどうしてあの巫女みたいな剣士からの二の太刀がなかった。そして、私はどうしてこいつの存在を忘れていたのだ。

 

 口をぽかんとした彼女の前にて、八卦炉の照準は過ちようもない。

 何せ、ルーミアの鼻スレスレにそれはあって、今にもその山一つ燃やしかねない程の火力を発揮しかねない、臨界寸前だったのだから。

 

 自称普通の魔法使いは、ギリギリで対象物を見つけられたことを良しとして、こんなことを叫ぶように言った。

 

「ふぅ、良かったぜ……私が咲夜と明羅さんことこの闇ごと全部吹き飛ばす前に、全力をぶつけられるお前の姿を見つけられてなっ!」

 

 光熱束ねて、線となす。しかし魔理沙の作るそれはあまりに太く纏まっていた。

 それこそ、彼女がごく最近に創り上げ名付けたところである「マスタースパーク」という名称そのままの尋常ではない威力ある光輝と化してただ只管に真っ直ぐ進むのだ。

 

 そして、丁度目の前にあった半端に集まっていた闇ごとルーミアは。

 

「そーなのかー……」

 

 少し余裕のありそうな返答ごと、光となってその場から消え去ったのだった。

 

 

 宵闇はそしてその場から拭われ、辺りは夕焼けの斜光に再び包まれ始める。

 こうなってみると薄れてきた紅霧が見難いなと思う魔理沙に、隣にそっと咲夜が現れた。

 彼女は素直にも、言う。

 

「魔理沙。助かったわ」

「おう、助けたぜ。まあ、咲夜も明羅さんも確かに斬れ味は凄いが、やっぱり面制圧なら私だよな」

「……はぁ。直ぐに調子に乗るんだから」

 

 助けられたとて、こぼれてしまうため息一つ。

 近頃咲夜の刀と同じように森近霖之助から八卦炉という力を得て調子づいている魔理沙。

 これは自分が以前に躓いた時に似通っていてあまり良くない傾向だと咲夜は思う。

 

「これなら、私があの紅い屋敷ごとふっ飛ばしちまえば簡単に終わるんじゃないか? 試してみようぜ!」

「はぁ。ここからだと距離があるし、もし仕留めきれずに爆発に散り散りに逃げられたら困るわ」

「うーん……それもそうか」

 

 とはいえ、理想を夢見ながらどこか現実主義者でもある魔理沙は大暴れしたくも理のある一言にて大人しくなる。

 そもそも、屋敷ごとぶっ飛ばすなて大きく出たそんな全ては幼馴染の友達を前にもっと格好つけたい、そんな一念がこぼさせたものだったのだが。

 

「なあにい~」

 

 それを真正面から拾った雪華が一つ。

 彼女、氷精「チルノ」はぷんと空を飛んで遠くを睨む魔理沙を遮るように現れる。

 妖精の特異点である彼女は、普通の人間離れに向けて問った。

 

「あんた。あの屋敷をぶっ飛ばすつもりって……本当?」

「ん? それは止めたな」

「そう。なら見逃してあげても……」

「まあ、結果的にそれとあまり変わらない結果にするつもりではあるが……なっ」

「ふん」

 

 そして、なんだ妖精かと舐めて本心をそのまま披露した魔理沙に小さな小さな指先一つが向けられた。

 氷の妖精が行ったそれだけの仕草でマイナスを受けきった魔理沙は半身(勘でずらさなければ全身)氷漬けとなる。

 自然、飛べなくなった彼女は地を這う紅い霧のもとへと落ち込んでいく。

 

「っ」

 

 それを見て、魔理沙が地に砕ける前に助けようと慌てて時を止めた咲夜。

 

「あら」

 

 だが万物が凍る時の最中に、しかし感嘆の声色が流れる。

 

 そう、何事も冷やせば止まる。そして【氷を操る程度の能力】を持っているチルノにとって、或いは流れる時ですら水のようなもの。

 故に、凍った時をも気にせず存在できてしまう彼女は、同じく凍えるような冷たい世界の中存在している人間を見てその青い瞳をきゅっと尖らせて。

 

「あんたは結構やりそうね」

 

 ここではじめて、博麗咲夜という巫女を見定めたのだった。

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