書いてて分かるコナンエミュとおっちゃんエミュの難しさよ。
騒ぎが起きた…人が死んでいると。
時間にして午前の10時頃、発見者はこのツアーに来ていた子供達…探検気分で森を散策していた所を発見、悲鳴を聞きつけた保護者の手によって事態が拡散されるに至る…現在は、駆けつけた警察の手によって調査が行われている所だ。
島だからだろうか、ヘリで来たと言うことあって人間が少ない気がする…刑事四人に加えて鑑識の人間と思われる人間が三人…まぁ、人一人ともなればこれで充分なのかもしれない。
野次馬に紛れて様子を伺う…耳を澄ませて聞こえてきた内容は死亡時刻と殺害方法、この場所に来た経由の推理…聞こえてきた声の中には毛利さんの声も混じっていた、眠りの小五郎の名声故かそれとも元刑事の縁故か、事件現場に入れたらしい。
───面倒だな。
普段はチャランポランな印象を受ける人ではあるが、その刑事としての推理力と直感は本物だ…真面目になったら普段の様子は何処へやらと言わんばかりの思考能力を見せてくる…そんな人だ、そう時間の経たない内に犯人がマトモなトリックも使わずに人を殺していることに気が付くはず。
そうなったら後は動機を探せば終わりだ…その人を殺す動機とアリバイの無い人間を探し出せばそれだけで全て済む…アリバイが残るように動いたりカメラに映らないように動きはしたけど、それで誤魔化せるほど名探偵は甘くはないだろう。
殺し切る必要がある、あの人が勘付く前に…あの人が俺をそうであると確信するその前に、残る対象全てを。
野次馬から外れる、人混みに紛れるようにその現場から離れていく…そうして離れる最中に…俺は見つけた。
怯える三人の男の姿…真面目そうな眼鏡を掛けた男、人受けしそうなハンサムな顔つきをした男、ガタイの大きいスポーツマンのような男…其々が揃って顔を青く染め上げていた。
怯えていた…そう、怯えていたのだこの三人は。
人が死んだことにか? 違う…『仲間』が死んだ事実に怯えていた、立て続けに三人の仲間が消えた事実に怯えているのだ。
三人の内の一人、眼鏡を掛けた男と目が合った…何かに気がついたようにハッとした表情を浮かべた男へと、俺は何てことないように笑いかけた…その瞬間、男はその顔色を更に青白くさせる。
知っているのだろう、俺のことを…覚えているのだろう、俺のことを…そうでなければあんな顔色にならない、あんな表情にならない。
…普通なら、気が付かれた段階でその表情をするべきは俺の方なのだろう、気が付かれた事実に焦って早く殺さなければと墓穴を掘るのだろう…だが、こと奴等に限ってはその必要は無かった。
何故ならそれをするには、俺が一連の事件の犯人であり次の標的は自分達なのであると、そう警察に伝えるにはまずその理由を話さなければならない…根拠が無ければ警察は動かない、その根拠を示す為には奴等は自分の犯した罪を告白しなければならない。
口八丁ではどうにもならない、明確な説得力が必要になる…そして、奴等にはそれが出来ない、何故なら捕まりたくないから。
攫い、辱め、そして死へと追い込んだ…その事実を告白しようものなら待っているのは豚箱への特等席、当然警察は協力者の存在も誘拐の方法も何もかもを洗い浚い調べ尽くすだろう…何せ、解決出来なかった事件の真相に繋がる手掛かりが転がり込んでくるのだ、見逃す手は無い。
そうした果てに待っているのは法による裁きと社会的な死…やったことがやったことだ、直ぐには出れないしで出た後にしたって誰も奴等を助けようとはしないだろう…そして、奴等はそれが分かっている。
ならばしないだろう罪の告白なぞ…自分の人生を棒に振るに等しいその行いを奴等がやるわけがない…だから、俺がこうすることに対するデメリットなんて無いに等しいのだ。
内容を伏せて伝えてみると良い、そんなことしても誰もお前を信じない、もしも真実を話して護りを固められようが関係無い、全部踏み越えてお前達を殺してやる。
対策するなり抵抗手段を用意するなりすれば良い…関係無い、それら全て遊び道具にして嗤ってお前達を殺してやる。
野次馬から完全に離れる…背中に突き刺さる三つの視線を気にもせず、俺は笑みを押し殺してホテルへと戻っていく。
そんな俺の背中を、小さな影が見つめていたことに気がつくのは、全てが終わった後のことだった。
妙だと…そう思った。
事件現場を見ながらそう思う…小さくなった身体を木陰に沈み込ませながら彼は…江戸川コナンは現場の内で動く保護者の姿に違和感を覚えていた。
───普段のおっちゃんじゃない。
視線の先に居たのは自身の保護者である毛利小五郎の姿、刑事達に混ざって現場を捜査をしている男の姿が何時ものモノと違うことに気が付いたのはこの現場について直ぐのことだった。
必死なのだ…何時もの小五郎と違って何処か切羽詰まっているような雰囲気、現場に入れば雰囲気が引き締まるのは何時ものことだがそれでも抜けないはずのチャランポランな印象が何処にもない。
何かが違う…そう感じさせられる何かがあった。
事件現場に踏み込む…手袋をはめ込み、死体の側に寄ってその姿を見つめる…その一連の動作には、熟練とは言えずとも一種の慣れを感じさせる。
死因は話を盗み聞きしていて分かっている…首の骨を折られたことによる神経の損傷、それによる呼吸困難その他諸々…羅列してしまうと長くなるので割愛するが…まぁ、そんなものだろう。
とてつもない…人間とは思えないような力で首の骨を圧し折られたのではないか…そう鑑識の人間が話していたのをコナンは聞いている、事実触れただけで分かる程に歪な変形を首の骨は遂げていた…それこそ、人間にこの様なことが出来るのかと問い質したくなる程に。
被害者はこの場にうつ伏せになって倒れていた…側にあった木には何かを押し付けたような跡も残っており、恐らくこの木に押し付けられた状態で被害者は殺害されたのではないかと警察の人間は推測している。
被害者の首元には指紋が残っていなかったが、それと同時に道具を使用して殺害された形跡も存在しなかった…だから鑑識の人間は人の手によるものなのではないかと推測していたし、コナン自身もそれが正しい推測だと思っている。
足跡は残っていた、大人の男性二人分の足跡だ…一人を被害者のモノと考えればもう一つは十中八九犯人のものだろう。
足跡から履いている靴を特定し、その大きさから足の大きさや形状を特定する…これによって事件が解決されたということも少なくはなく、非常に重要な手掛かりと言えるだろう…だが、しかし───
「───何やってんだお前はぁっ!!」
そう思考を回そうとしたその瞬間、ムンズっとコナンの身体は何かに摘み上げられた…それと共に聞こえてくる聞き慣れた保護者の声。
「ちょっ!? おじさ───」
「勝手に現場に入ってくんじゃねぇよ毎回毎回っ!!」
有無を言わさず現場の外へと放り出される…放り出されるとは言っても投げ出すとかそういった方法でなく、外に置くというやり方を取っている辺り、勝手に現場に入った相手に対する対処法としては優しいとしか言いようがない。
気になることはまだある…が、先程少し話しただけでも良く分かる程度には今の毛利小五郎は普段のソレとは格段に違う、そうさせる何かがこの事件にはあるのだとコナンに確信させてしまう程度には。
兎にも角にも事件現場から離れる、あの状態の小五郎が相手ではそう何度も現場に踏み込めないだろう、ならばその間に別の情報を集めておこうと…そんなことを考えながら。
…だから、それを見たのは単なる偶然だった。
青褪めた顔色をしている三人の男、大量の冷や汗を流して今にも倒れてしまいそうな様相を見せる三人の姿にコナンは訝しげに三人の姿に注目し…ふと、その向いている視線の先へと同じように視線を向けた。
瞬間、コナンは確信した……あの人だ……と。
その男は嗤っていた…自分を見て怯える三人の姿に、その怯えた姿を楽しむように、これから起こる惨劇を楽しみだと言う様に。
その足音が嫌に大きく聞こえた、感じるはずの無い…この場にないはずの血の匂いが異様に強く鼻を擽る、何一つ怪しい姿を見せていないはずの背を向けた男の姿がコナンには恐ろしい怪物のように見えて仕方がなかった。
ただ見ていることしか出来ない…怖いからじゃない、何もしていないからだ、何かしたと確定出来ないからだ、その存在の罪を暴き出すことが出来ないからだ。
だからただ見送るしかない、笑みを浮かべながらこの場所から離れていくその背中を…その、犯罪者の背を。
後に江戸川コナンは確信することとなる…自分の直感は、何一つとして間違っていなかったのだという事実を…それと共に、江戸川コナンは突き付けられることとなる。
復讐とは何か、それを決意し突き詰めた人間が何を得るのか、その果てに何が残るのか……そして、自分がその位置に立たない保証など、何処にも無いのだという事実を。
主人公について
多分劇場版で暴れるタイプのキャラ、正しくトリックなんてない。