泡沫紀行   作:みどりのかけら

1404 / 1409
雪に覆われた宵のはじまりに、足音だけが細く続いていく。
踏みしめるたびに、白の下からかすかな温もりが返り、遠い記憶に触れるようだった。


淡い気配が空に滲み、見えない地図が静かに広がっていく。
冷えた空気は頬を撫でながら、どこか懐かしい輪郭を残していく。
歩くほどに、境の曖昧さが心の奥に柔らかく染みていった。


手のひらに触れる空気は乾ききっており、指先に小さな痛みを灯す。
その痛みはやがて消え、代わりにかすかなぬくもりが滲み出てくる。



1404 時空を守る神域の灯

雪を踏むたびに、かすかな軋みが足裏にひろがり、白い静けさが胸の奥へ染みてゆく。

息を吐くと、宵の色にほどけて消え、遠くの木立がゆるやかに揺れていた。

 

 

道は細く、踏みしめられた跡だけが頼りとなり、冷えた空気が指先をやさしく刺す。

衣の内に忍ばせたぬくもりが、歩幅に合わせてわずかに揺れていた。

 

 

雪の粒が頬に触れ、すぐに溶けて消える感触に、時の縁がほどける気がした。

 

 

かすかな香が漂い、湿った木の匂いが胸に満ちる。

足元の土は凍りながらも柔らかく、踏むたびにわずかに沈み、過去を抱え込むようだった。

 

 

枝に積もる雪が、風のない空気の中でかすかに滑り落ちる。

その音は遠い記憶の継ぎ目をなぞるようで、胸の奥でひそやかに響く。

掌に触れた冷気は乾いていて、静寂の形をしていた。

 

 

歩みを進めるほどに、白さは濃く、影は薄れていく。

 

 

ひび割れた石の面に触れると、凍りついた時間が指に残り、温もりが吸い取られるように感じた。

その感触は、忘れていた名を呼び戻すように、内側へ静かに降りてくる。

 

 

雪の上に落ちる自分の影が淡く伸び、宵の気配がゆっくりと縫い込まれていく。

遠くでかすかな音がほどけ、どこかで灯が揺れている気配がした。

 

 

冷えた空気が喉を通り、胸の奥で小さくひびく。

それは音ではなく、記憶のようなものとして残り、歩みの中で揺れ続けた。

雪を踏むたびに、その余韻はわずかに形を変えていく。

 

 

足元の白は均されておらず、凹凸が靴裏に細かな震えを伝える。

 

 

指先をすり合わせると、乾いた冷たさが細かく砕け、かすかな痛みとして残る。

その痛みはやがて薄れ、代わりに静かなぬくもりがじんわりと広がっていった。

 

 

見えない境が重なり合い、時間の層が足元で静かにずれていく。

そのずれは怖れではなく、やわらかな受け入れのように、身体に馴染んでいく。

 

 

吐いた息が白くほどけ、やがて闇に吸い込まれる。

その行方を目で追ううちに、内側のざわめきがゆっくりと沈んでいった。

雪は変わらず降り続き、すべてを同じ白へと整えていく。

 

 

やがて灯の気配が近づき、微かな明かりが雪面ににじむ。

 

 

その光は揺れながらも消えず、凍てつく空気の中で静かに息づいていた。

近づくほどに、胸の奥で何かがほどけ、歩みは自然とゆるやかになる。

触れた空気はわずかにやわらぎ、指先に残る冷たさが穏やかに変わっていった。

 

 

灯の揺れがわずかに遠ざかり、白い地面に淡い影だけが残されていく。

足を運ぶごとに、その影はほどけ、静かな闇へと溶けていった。

 

 

足裏に伝わる雪の冷たさが、先ほどよりもやわらかく感じられる。

凍てついていたはずの空気は、わずかに湿りを帯び、頬に穏やかに触れてくる。

その変化は言葉にならず、ただ身体の奥に静かに沈んでいく。

 

 

遠くの気配がひとつずつほどけ、音のない広がりが戻ってくる。

耳の奥に残っていたかすかな響きも、やがて消え、白さだけが残された。

 

 

歩みを進めると、踏み跡はすぐに新たな雪に覆われ、形を失っていく。

その消えゆく様子を感じながら、足裏には確かな重みだけが残り続けていた。

 




灯の余韻が背後に溶け、雪の道は再び静けさに包まれていく。
振り返らずに進む足裏には、先ほどまでの温もりが確かに残っていた。


宵の気配は次第に薄れ、白の奥へと吸い込まれていく。
指先に残る冷たさはやわらぎ、代わりに穏やかな重みが静かに沈んでいった。
その重みは消えず、歩みとともに静かに寄り添い続ける。


吐く息がかすかに揺れ、やがて何もなかったように溶けていく。
雪は変わらず降り続き、足跡さえもやさしく覆い隠していった。
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