泡沫紀行   作:みどりのかけら

1501 / 1502
春浅い風が頬を撫で、水を含んだ土の匂いが静かに袖口へ入り込んできた。
淡く曇る空の下では、砕けた雪の気配だけが低く流れ続けていた。


細い流れのそばへ立つと、濡れた砂が足裏に沈み込み、冷えた感触をゆっくり返してきた。
乾いた草の先には小さな芽がほどけ、まだ眠りきらぬ季節の熱を抱えていた。


遠くへ広がる浅瀬には薄緑の光が滲み、水面の揺れへ静かに溶け込んでいた。
風が吹くたび砂粒が擦れ、硝子を砕くような微かな響きだけが耳の奥へ残っていた。



影を宿す硝子の魂
1501 緑砂の扇流庭


雪のゆるんだ水が幾筋にも分かれ、淡い草を濡らしながら扇のようにひらいていた。

湿った土を踏むたび、足裏にやわらかな冷えが滲み、胸の奥まで静かな水音が満ちてゆく。

 

 

朝の薄明に砂の粒が鈍く光り、苔を混ぜたような緑が袖先へ淡く映り込んだ。

 

 

浅い流れの縁には砕けた石が沈み、指先で触れると硝子片のように冷たかった。

風の通るたび細い草が擦れ合い、乾ききらぬ春の匂いが襟元へ滞っていた。

遠くの雪影は水面にほどけ、白さだけを残してゆっくり揺れていた。

 

 

歩みを重ねるほど土は細かく変わり、湿りを含んだ砂が草履の裏へ静かに絡んだ。

薄い雲の切れ間からこぼれる光が、水脈の曲がりを淡く撫で続けていた。

 

 

枯れ枝の先に芽吹いた若葉だけが淡く透け、冷えた空気へ小さな熱を宿していた。

 

 

水際へ腰を下ろすと、川砂のざらつきが衣越しに伝わり、乾いた疲れをゆっくり沈めた。

流れの底で揺れる石は青みを帯び、磨かれた硝子玉のような柔らかな艶を返していた。

指に残った砂を払っても、薄緑の気配だけは肌の奥に留まり続けていた。

夕方へ近づく空は淡く曇り、水音だけが静かに辺りを満たしていた。

 

 

草の根元には透明な雫が集まり、踏み寄るたび細かな震えを足元へ返してきた。

浅瀬を渡る風はまだ冷たく、濡れた袖口が肌へ貼りつく感触を残していた。

 

 

白い鳥が低く旋回し、その影だけが砕けた流れの上をゆっくり滑っていった。

 

 

水を含んだ石畳のような河原では、丸みを帯びた石が互いに擦れ合い鈍い音を返した。

春の陽は薄布のようにやわらかく、肩に積もる冷えを少しずつ解いていった。

乾いた枝を踏むたび短い響きが生まれ、その余韻だけが流れの底へ沈んでいった。

 

 

細く分かれた流れは幾度も形を変え、淡い緑を抱えながら遠くへほどけていた。

湿った風を吸い込むたび、胸の奥に残っていた重さが静かに薄れていった。

 

 

砂の混じる浅瀬には白い泡が寄り、崩れるたび小さな光を散らしていた。

 

 

傾きかけた陽が水面へ細く伸び、砕けた石の輪郭を金色に浮かび上がらせていた。

冷えた指先を袖へ隠すと、布に残る土の匂いがゆるやかに息へ混じってきた。

流れの向こうで揺れる若草は淡く霞み、触れれば崩れそうな色を帯びていた。

 

 

空を覆っていた雲が静かに裂け、薄青い光だけが川筋へ落ちていた。

濡れた草を踏みしめるたび、やわらかな泥が足裏へゆっくり沈み込んできた。

 

 

細かな砂を掬うと、混じり合う緑の粒が夕暮れの明かりを淡く抱えていた。

 

 

夜へ向かう流れの音はさらに深まり、遠い雪の気配まで水底へ沈めていた。

河原に残る冷気へ耳を澄ますと、乾いた石の匂いが静かに胸へ満ちてきた。

薄闇に濡れた草は影を長く引き、歩幅だけがゆるやかに水辺へ吸い寄せられていた。

 




夕暮れへ沈む流れは群青を帯び、砕けた石の輪郭を静かに曖昧にしていた。
濡れた袖に残る冷たさだけが、歩いてきた時間をかすかに肌へ留めていた。


浅い水際には細かな泡が集まり、崩れるたび淡い光を静かに散らしていた。
踏みしめた砂の柔らかさはまだ足裏に残り、遠い水音とともに身体の奥で揺れていた。


薄闇へ溶ける草原の向こうで、細く分かれた流れが静かな銀色を引いていた。
冷えた夜気を吸い込むと、胸の奥に澄んだ余白だけがゆっくり広がっていった。
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