泡沫紀行   作:みどりのかけら

1503 / 1505
乾いた尾根道には薄い霧が漂い、踏みしめた土の匂いが冷えた胸へ静かに沈んでいった。
遠い谷から響く水音だけが絶えず耳の底を揺らし、空は淡く鈍い灰色を保っていた。


崩れた岩の隙間には赤黒い落葉が溜まり、湿った風が袖口を静かに通り抜けていった。
足先へ伝わる小石の硬さに導かれるまま、薄闇へ滲む斜面をゆっくり辿っていた。


雲間に滲んだ淡い夕光は水煙へ細く散り、その揺らぎが瞼の奥へ静かに残っていた。
濡れた掌を合わせると、冷えた感触の奥で小さな熱だけが微かに脈打っていた。



1503 深紅の裂け目に響く水の詩

濡れた岩肌に触れた指先が冷え、谷を渡る風の薄い匂いだけが胸の奥へ沈んでいった。

 

 

崩れかけた斜面の土は深い錆色を帯び、踏みしめるたび乾いた葉が脆く砕けた。

細い流れの音は遠くへ散り、空に溶け残った白い靄だけが静かに揺れていた。

 

 

水際へ下る獣道には古い苔が柔らかく沈み、足裏に湿り気の重さを残していた。

 

 

裂けた雲間から差した淡い光が水面を掠め、その揺れを見ているうちに呼吸がゆっくり深くなった。

肩へ落ちた冷気は薄布の隙間を抜け、皮膚の奥へ静かに染み込んでいった。

 

 

細い枝に残った紅の葉は乾ききらぬ血のように暗く、触れればすぐ崩れそうに震えていた。

 

 

谷底へ近づくにつれて水音は低く太く変わり、胸骨の裏側まで微かに響き続けた。

濡れた石へ腰を下ろすと、冷えた感触が長い疲れを静かに吸い取っていった。

白く泡立つ流れの奥には沈黙より深い色があり、目を逸らせずにいた。

 

 

落葉の積もる窪地では腐葉の甘い匂いが立ち、湿った空気が喉へ柔らかく絡みついた。

 

 

崖沿いの細道は足幅ほどしかなく、崩れた砂利が靴底の下で絶えず細かく滑った。

遠くの水煙は夕の薄明へ溶け込み、境目の曖昧な景色だけが静かに残っていた。

 

 

濡れた袖口を握るたび冷たさが増し、指の節には小石の硬さがまだ残っていた。

 

 

川霧の漂う岩陰には淡い青さが沈み、冷えた空気の中で息だけが白くほどけていった。

足元を流れる細い支流は硝子片のように透き、揺れる光を砕きながら消えていった。

 

 

擦れた木肌へ掌を置くと、乾いた温度がかすかな安堵のように指先へ返ってきた。

 

 

谷を覆う紅葉は燃え残る炭火のように暗く、夕闇の縁で静かな熱を保っていた。

その色を眺めているうちに、水へ落ちる葉音だけがやけに鮮明に耳へ残った。

 

 

細かな雨粒が頬へ触れ、冷えた皮膚の上で砕けながら淡い痺れを広げていった。

 

 

浅瀬に積もった石は青灰の鈍い艶を宿し、流れのたびに微かな震えを返していた。

湿りを含んだ風は首筋を静かに撫で、歩幅だけがゆるやかに整っていった。

 

 

暮れかけた空の裂け目には深紅の滲みが残り、水面へ細く長い影を落としていた。

 

 

冷えた指先を袖へ隠すと、遠い水音が胸の奥で静かな余韻のように揺れ続けた。

濡れた落葉を踏む柔らかな感触だけが残り、薄闇の中へ呼吸がゆっくり溶けていった。

 

 

濡れた岩棚を越えるたび足裏へ冷えが滲み、細かな震えが脛の奥で長く続いていた。

水際に散った紅葉は深い朱を沈め、揺れる流れの中で静かに形を崩していった。

 

 

谷間を渡る風は次第に弱まり、耳に残る水音だけが夜の深さをゆっくり運んでいた。

 

 

崩れた斜面に積もる落葉は柔らかく湿り、踏み込むたび淡い腐葉の香りが立ち上っていた。

薄闇へ沈む木立の奥には青白い霧が漂い、その冷たさが頬を静かに撫でていった。

 

 

細流へ指先を浸すと痺れるほど冷たく、澄んだ感触が腕の奥まで鋭く駆け抜けていった。

 

 

空を覆っていた雲はわずかに裂け、淡い月明かりが水面へ細く零れ落ちていた。

磨かれた石の艶は静かな硝子のように青く沈み、その光を見つめる間だけ呼吸が浅くなった。

遠い流れの反響は胸の奥で静かに重なり、消えかけた余熱をゆっくり揺らしていた。

 

 

濡れた袖口を握り直しながら歩みを進めると、谷を満たす気配が次第に穏やかさへ変わっていった。

冷えた空気の底で白い水煙だけが静かに漂い、薄明へ続く淡い余韻を残していた。

 




浅瀬を覆う朝靄は白く薄れ、流れの上には砕けた硝子のような光が揺れていた。
濡れた靴底へ残る冷えは消えきらず、歩くたび静かな余韻のように広がっていった。


崖沿いの木々は深い紅を沈めたまま動かず、谷を渡る風だけが葉裏を細く鳴らしていた。
掌へ触れた岩肌のざらつきは柔らかく乾き、遠い水音へ静かに溶け込んでいった。


暮れ残る空の裂け目には淡い群青が滲み、その下で細流だけが絶えず白く揺れていた。
湿った落葉を踏む感触を確かめながら、薄明へ沈む谷の気配を静かに抱えていた。
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