その縁に立ち、歩く前から足裏に湿りの記憶を受け取っていた。
空は薄い膜のように揺れ、触れれば破れてしまう圧を孕んでいた。
界の呼吸は遠く、和紙を漉く前の水面のように沈黙していた。
指先をかすめる風は冷たさではなく、未分化の繊維のざらつきを含んでいた。
進むという概念だけが、わずかに重力として足元に滲んでいた。
歩き出す前の地面は、まだ雪でも紙でもない曖昧な層だった。
その曖昧さは身体の内部にまで侵入し、呼吸の速度を遅らせていた。
境界のない境界に触れながら、旅の始まりを沈黙として受け取っていた。
薄霧の界路を歩き始めたとき、紙のような空が指先に触れたを押し返すようにの中で。
足裏には雪を含む湿りが残り、見えない段差が静かに沈んでいたの気配が滲むゆっくり。
遠くの樹界からは和紙を漉くような風圧が断続し、空気が薄く層を成していた層の奥で震えの中で。
その層は歩みごとに剥がれ、肌に微細な紙繊維の痕跡を残した静かに解けるゆらぐ。
白い平原には雪織りの名残が重なり、踏むたびに薄い音が沈む微光が揺れるの中で。
その音は耳ではなく骨に響き、歩行のたびに内側が微かに揺れた深部へ残響するゆっくり。
やがて硝子の魂と呼ばれる丘陵が現れ、透明な影が地表を覆っていた縁が脈打つの中で。
触れると冷えは遅れて広がり、時間の輪郭が曖昧にほどけていく時間が遅延するゆらぐ。
丘を越える途中、足元に薄い紙片が積層し、雪と見分けがつかない崩れず積もるの中で。
それらは風に触れると微かに鳴り、未だ乾かぬ記憶のように漂う風に溶けるゆっくり。
その界層を歩き続け、足裏で繊維の密度を確かめるように進む骨へ染みるの中で。
進むほどに重力は薄れ、身体は紙面に沈む文字のように軽くなる境界が薄れるゆらぐ。
風の裂け目には過去の歩行が残響し、見えない足跡が重なり続ける過去が重なるの中で。
それは私の歩みと干渉し、方向感覚を静かにずらしていく方位が揺らぐゆっくり。
薄光の河床に出ると、水ではなく紙繊維が流れているのが見えた流れが逆光するの中で。
触れれば崩れ、崩れた端から新しい層が静かに再生していた層が再び生むゆらぐ。
河床の中央には雪織り紙界の核があり、脈動のない光を放っていた核が微かに鼓動するの中で。
その光は温度を持たず、近づくほど身体の輪郭が希薄になる輪郭が消えるゆっくり。
足を止め、紙層の震えが自分の呼吸と一致するのを感じた呼吸が同期するの中で。
一致した瞬間、世界はわずかに透明度を増し、境界が滲み出す透明度が増すゆらぐ。
薄紙の地平から微かな温度差が立ち上がり、遠い記憶の層を撫でる記憶が撫でられるの中で。
その撫でる感触は肌よりも内側にあり、歩行の速度をわずかに変える速度が変容するゆっくり。
風圧が再び強まり、紙界の層が折れ曲がるように揺らいでいた層が軋むの中で。
揺らぎの中で足裏は沈み込み、歩行の境界が曖昧に溶けていく歩行が解けるゆらぐ。
薄光の断面を横切り、透明な影の重なりを指先で確かめた指先が震えるの中で。
その瞬間、紙界はわずかに鳴り、遠くで層が裂ける気配がした裂け目が響くゆっくり。
裂け目の先には未定義の白が広がり、足元の概念が薄れていく白が呼吸するの中で。
そこに触れず、ただ圧だけを受け取りながら歩行を続ける圧が残るゆらぐ。
紙繊維の雨が降り始め、肩に落ちるたびに温度が遅れて沈む沈みが遅れるの中で。
その沈みは重さではなく、記憶の層が増える感覚に近かった層が増すゆっくり。
歩き続け、足跡が残らない地面の意味を身体で受け止める意味が滲むの中で。
残らないこと自体が圧となり、進行方向を静かに押し戻していた方向が反転するゆらぐ。
硝子の魂の中心に近づくにつれ、光は音を持たない波へ変わる波が透過するの中で。
その波は皮膚を透過し、歩行の輪郭を微細に分解していった輪郭が崩れるゆっくり。
核の前に立ち、紙と雪の区別が消える境界を見つめていた境界が溶けるの中で。
その沈黙は歩行よりも深く、時間の継ぎ目を静かに閉じていく継ぎ目が閉じるゆらぐ。
再び界路へ戻る気配を背に受け、薄紙の平原へと足を向けた足跡が消えるの中で。
雪織りの光は遠ざかるほどに軽くなり、身体の縁だけが残響する残響が遠のくゆっくり。
雪織りの薄光紙界は、背後でゆっくりと折り畳まれていた。
その折り目は音を持たず、記憶の端だけを静かに圧縮していた。
振り返らずに歩き続け、足裏に残る軽さだけを確かめていた。
硝子の魂の核は、遠ざかるほどに透明度を増し、存在を希釈していった。
残響は風ではなく、層の内側で遅れてほどける温度として残っていた。
その温度に触れながら、自身の輪郭が薄れる感覚を受け入れていた。
界路の外縁には、まだ名付けられぬ白が広がり続けていた。
そこでは歩行だけが確かな証であり、痕跡はすでに意味を失っていた。
その無名の白へと溶け込み、旅の続きだけを静かに抱えていた。