湾の輪郭は曖昧に溶け、夏の湿度が皮膚の表面で行き場を失っていた。
足元の砂は乾きと湿りのあわいにあり、踏み出す前から沈む予感だけが先に届く。
微光は水平線ではなく、湾の内側へ折れ曲がるように集まっている。
私はその歪みに触れぬまま、呼吸だけを浅く整えながら歩き出す準備をしている。
風はまだ外側の速度を保ち、身体の輪郭を試すように撫でていく。
境目には名のない静けさが満ちている。
私はそれを音ではなく圧として受け取り、胸の奥に薄く沈めていく。
やがて踏み入れるべき水面の皿が、ゆっくりと内側へ傾き始めていた。
泡立つ時の境目を踏み、私は薄い潮の回廊へ入る。
湾の内側は静かな皿のように凹み、夏の湿度が皮膚に沈む。
私は足裏に残る砂の冷えを確かめながら、微光の縁を辿る。
潮の呼吸は浅く、湾奥の静潮が器の底で揺れていた。
足首を撫でる水は温度を持たず、記憶だけを薄く剥がす。
湾内の曲線は静かに閉じ、月影は皿の縁で震えていた。
私は浅い水圧に胸を預け、歩くたびに世界が薄く揺らぐのを聞く。
遠い潮溜まりでは光が沈み、静かな残響だけが浮かんでいる。
私は湾の奥へ進むごとに、足音の代わりに湿り気の層を踏む。
静潮の器はゆっくりと傾き、月の影を内部へと飲み込む。
指先に触れる潮は細く、まるで時間の繊維がほどけるようだった。
私はその温度差に耳を澄ませ、湾の沈黙を歩幅で測る。
湾奥の空気は重く沈み、私は胸郭の内側で潮の揺れを数えるように歩く。
月影は水面の皿に広がり、微細な振動として指の先に触れ続ける。
私は浅い潮の層を踏みしめるたび、時間の密度がわずかに変わるのを感じる。
湾内の静潮は器の縁を越えず、ただ内側へと微光を循環させている。
私は水に沈む足跡の温度を追い、見えない誰かの気配の余白を踏む。
静かな湾曲の奥で月影は揺れ続け、私はその揺らぎに歩調を合わせる。
私は潮の呼吸が途切れる場所を探しながら、湾の内側へと深く歩み込む。
静潮の器はゆるやかに傾き、月の影を内側で静かに沈めていく。
私は湾奥の湿った空気に頬を擦られながら、時間の層が重なる感触を確かめている。
月影は水面の皿の縁で細かく震え、私はその微細な揺れを皮膚で受け取る。
私は足裏に絡む潮の抵抗を感じながら、湾の奥へと沈み込むように進む。
静潮の器の内部では光がゆっくりと沈殿し、私はその重さを呼吸の奥で測る。
私は潮の微かな圧力に身を預け、湾曲する水路の記憶を足でなぞっていく。
月影は静潮の器の縁で揺らぎ続け、私はその揺れに呼吸の速度を合わせる。
私は湾内の浅い水圧に包まれ、歩くたびに世界の輪郭がやわらかく溶けていくのを知る。
静かな潮溜まりでは月影が沈み、私はその沈黙の厚みを足裏で受け止めている。
私は湾奥に満ちる湿った空気の重みを肩で受けながら、静潮の流れに歩幅を合わせていく。
月影は皿のように凹んだ水面の縁をゆっくりと巡り、私はその循環する光の圧を皮膚で感じ取る。
私は足裏に沈殿する砂混じりの潮の冷えを確かめながら、湾の奥へと静かに歩みを進める。
静潮の器の内部では光がゆるやかに沈み込み、私は呼吸の奥でその重さの移ろいを測り続ける。
私は湾内を満たす湿度の層に全身を包まれながら、見えない潮の脈動を皮膚の奥で聴くように歩く。
月影は静かな水面の皿の縁で揺れ続け、私はその揺らぎのわずかな遅れを呼吸で追いかける。
私は湾奥の静かな圧力に押されながら、足裏で潮の層の厚みと時間の境界を同時に確かめている。
静潮の器の底で月影はわずかに歪み、私はその歪みが生む微細な重力の変化を歩行で受け止める。
私は湾内の湿った空気の層に沈み込みながら、足裏で潮の微細な振動と時間の遅れが重なる感触を確かめ続ける。
そのたびに湾の輪郭はわずかに滲み、私は歩幅を微光の揺れへと同期させていく。
私は湾奥に溜まる静かな圧の層を呼吸の奥で受け止めながら、月影の揺れが器の縁へ滲む瞬間を見届ける。
さらに私はその滲みを足裏の感覚で追い、時間の境目が崩れる気配を確かめる。
私は湾の最奥で静潮の器がわずかに傾く気配を感じ取り、足裏で水面の皿が震える微細な遅れを確かめる。
その振動は呼吸の奥で静かに増幅し、私は歩みをさらに沈める。
私は微光に満ちる湾内を最後まで歩き、月影の揺らぐ器が静かに閉じていくのを身体の内側で受け止める。
私は湾の外側へ戻りきることなく、境目の薄い層にしばらく留まっている。
背後には静潮の器が閉じる気配だけを残し、月影はすでに深く沈んで見えない。
足裏に残る湿りはまだ温度を持ち、歩みの記憶だけが遅れて続いている。
湾の曲線は遠ざかるほどに整い、かえって現実めいた硬さを帯びていく。
私はその硬さに触れながら、先ほどまでの柔らかな歪みを反芻している。
風は外側の速さへ戻り、身体の表面から潮の重さを少しずつ剥がしていく。
微光はすでに内側へ閉じ、私はその名残だけを視界の端に残して歩く。
足音は浅く、しかし確かに地面へ沈み、境目の余韻だけが遅れて揺れている。
私は振り返ることなく、薄い静けさを携えたまま外側の湿度へと溶けていく。