泡沫紀行   作:みどりのかけら

1796 / 1804
黒の手前にはまだ名前のない湿度が漂い、足裏の感覚だけが先へと引かれていく。
境目の薄皮のような空間が呼吸に沿って揺れ、歪みを確かめるように歩みを落とす。


見えない圧が遠くから滲み寄り、皮膚の上に微細な重さを積もらせていく。
指先に触れる空気は冷えすぎず、しかし確かに温度を欠いている。
欠落を踏みしめ、まだ形にならない道へと進んでいく。


湿った光が層のように重なり、視界の奥行きを曖昧に溶かしていく。
歩くたびに足元の黒が浅く沈み、時間の輪郭だけが遅れて追いかけてくる。
遅延の中に身を置き、境の始まりを探り続ける。



1796 漆黒に宿る艶の秘殿

漆黒の霧が足裏に絡み、重さだけが道を示すかすかに。

境目のない道を、ただ静かに歩き続けるゆっくりと。

湿った光が皮膚へ沈み、時間の輪郭を曖昧にするわずかに。

 

 

漆の地面は柔らかく、歩くたび微かに沈むかすかに揺れて。

指先に触れる空気は冷え、黒い温度を含んでいる静かに。

遠くで層の崩れる音がして、視界がわずかに揺れる深く。

 

 

漆の匂いが湿度に混ざり、呼吸の輪郭を鈍らせるかすかに。

足裏の感覚だけが確かで、境を確かめていく静かに。

黒い空間が折れ曲がり、遠近の判断を奪っていくゆるやかに。

 

 

見えない壁のような圧が、肩に静かに乗りかかる重く。

漆の床は温度を持たず、冷えが遅れて伝わってくる深く。

歩幅の記憶だけが残り、それに従って進むかすかに。

 

 

微細な光が漆面を滑り、深い黒に吸い込まれていくゆっくりと。

手のひらで空気を押し、抵抗の有無を探る静かに。

黒の奥に微かな脈動があり、空間がわずかに揺れる深く。

 

 

湿った風が衣の縁をなぞり、存在の境を曖昧にするかすかに。

床に残る微かな熱が、誰かの痕跡を示している静かに。

気配を踏みしめ、さらに奥へと進んでいくゆっくりと。

 

 

漆黒の層が重なり、視界は深く沈み込んでいくわずかに。

足音の代わりに圧の波が返り、身体を押し戻す重く。

均衡を保ちながら、黒の奥へと沈んでいく静かに。

 

 

空間は粘度を帯び、歩くたびに絡みついてくるゆるやかに。

指先に触れる黒は冷たく、微かに震えているかすかに。

揺れに身を預け、時間の層を感じる深く。

 

 

遠い影のような残響が、床下から滲み上がる静かに。

漆の壁は呼吸しないはずなのに、わずかに脈打つかすかに。

不規則な律動に足を合わせて進むゆっくりと。

 

 

黒の奥に薄い光があり、境界を溶かしているわずかに。

光に触れようとし、指先を伸ばす静かに。

しかし触れる前に、光は霧へと変わって消える深く。

 

 

黒の中で方向を失い、温度の差だけを頼りに歩くゆるやかに。

漆の層が衣の隙間に入り込み、皮膚を静かに覆うかすかに。

重みを呼吸の奥で受け止め続ける深く。

 

 

足裏から伝わる微振動が、道の形を教えてくるわずかに。

情報を踏みしめ、静かに重心を移すゆっくりと。

黒い空間は応答せず、ただ圧だけを返してくる重く。

 

 

漆の闇に沈むほど、輪郭は内側へと折り畳まれる深く。

自分の影さえ薄れていく感覚に従う静かに。

境界はもはや外ではなく、皮膚の内側にあるかすかに。

 

 

漆面の奥で微かな温度が生まれ、消えていくゆっくりと。

循環に触れ、時間の流れを誤認するわずかに。

黒の層は静かに増え、重さだけが深度を示す深く。

 

 

歩くほどに足音を失い、空間へ溶けていくかすかに。

漆の壁は触れた記憶だけを残し、形を変えている静かに。

変化の中に自分の輪郭を探すゆっくりと。

 

 

黒い空間は呼吸のように膨らみ、また縮むわずかに。

周期に身を合わせ、歩幅を調整する静かに。

漆の床は静かに応え、足裏へ微かな抵抗を返す深く。

 

 

黒の奥で、時間の方向を見失っていくゆるやかに。

残響のような気配が背後から追いつき離れるかすかに。

それを追わず、ただ前方の圧に従う静かに。

 

 

漆黒の層が一瞬だけ薄れ、遠い光が覗くわずかに。

裂け目に指先を滑らせ、温度を知る静かに。

しかし光は再び閉じ、黒はより深く沈黙する深く。

 

 

歩みの中で、自分の輪郭すら曖昧になるかすかに。

漆の闇は内側へ浸透し、記憶の端を溶かしていくゆっくりと。

それでも歩き続け、圧の流れに従う静かに。

 

 

黒の奥で微光が結び直され、新たな境が生まれるわずかに。

生成の瞬間に立ち会い、呼吸を止める深く。

漆黒は静かに閉じ、旅の続きだけが残されるかすかに。

 




漆黒の深みは静かに収束し、かすかな光の気配だけが残されている。
足裏にあった沈みは消え、代わりに均された冷たい平衡が広がっている。


歩みを止めることなく、しかし進行の方向を失ったまま立ち尽くすように在る。
皮膚に残る圧の記憶だけが、かつての境の存在を示している。
記憶は薄く、しかし確かに時間の層を伴って沈殿している。


遠ざかる黒の残響が空間の端でほどけ、微光へと変わる過程を見届ける。
それに触れることなく、ただ温度の移ろいとして受け止める。
境は閉じられ、旅の形だけが静かに呼吸を続けている。
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