泡沫紀行   作:みどりのかけら

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夜露の気配がまだ草に残り、薄い光が大地を撫でていた。
踏み出す足の下で、湿った土が静かな温度を返す。
遠い空の奥に、白いかたちが淡く浮かび上がる。


風はまだ眠たげで、衣の端をわずかに揺らすだけだった。
胸の奥に、名を持たぬ静かな呼び声が落ちていく。



927 天空へ歩む巡礼者の白き霊峰

朝の光はまだ薄く、草の匂いだけが静かに満ちていた。

足裏にやわらかな湿りが伝わり、夜露の名残を踏みしめる。

ゆるやかな斜面の向こうで、白い気配が遠く呼吸している。

風は低く流れ、背に触れて進む歩みを促した。

胸の奥で、まだ名を持たぬ予感がゆっくりと揺れた。

 

 

草は腰のあたりまで伸び、触れるたび涼しい水を含む。

歩幅に合わせて葉先が揺れ、細かな露が脛へ弾けた。

遠い空の奥で、淡い白が静かに膨らんでいく。

その沈黙の高さへ、足取りだけを重ねていく。

 

 

陽は高まり、背を撫でる熱が少しずつ濃くなる。

乾いた土が靴底にきしみ、硬い粒を伝えてきた。

振り返れば草の海が波のように重なっている。

その奥から風が吹き上がり、汗ばむ首を冷やした。

白き頂はなお遠く、雲の縁にかすかな輪郭を置く。

 

 

歩くたび、空の色が少しずつ淡くなる。

足元の石は白く、掌に取ると粉のように崩れた。

風は軽く、乾いた布のように頬を撫でる。

静けさだけが高く澄み、胸の奥へ広がった。

 

 

斜面はやがて鋭くなり、脚の奥に熱が宿る。

岩肌に触れると、昼の温もりが指先へ残った。

足首の周りで砂が細く流れ、歩みを試す。

見上げた白の峰は、光を抱き静かに息づく。

その明るさに触れるほど、内側の影が薄れていく。

 

 

雲は低く流れ、額に冷たい影を落とした。

汗に濡れた衣が背に張りつき、風でかすかに震える。

掌を岩に置くと、粗い面が確かな重さを返した。

白い高みは近づき、光だけを静かに降らせる。

 

 

息は深くなり、胸の奥でゆるやかに波打つ。

足元の石は脆く、踏むたび乾いた音を返した。

指先に触れる土は温かく、夏の陽を抱いている。

その温もりが、歩く身体の奥まで染みていく。

 

 

斜面を越える風は細く、耳元で長く鳴る。

白い砂が光を弾き、まぶしさが足元に散った。

足裏は熱を帯び、歩みの重さを確かに伝える。

それでも視界の奥には、澄みきった白が揺らがない。

歩くほど静けさが深まり、胸の底へ沈んだ。

 

 

高みに届く風は冷え、頬を静かに研いでいく。

汗の乾いた肌に、細かな寒さが沁み渡る。

白き面は近く、光が柔らかな膜のように広がる。

足元の影だけが、静かに長く伸びていた。

 

 

空は深く澄み、白い峰の輪郭をそっと包む。

掌に残る岩のざらつきが、歩んだ時を語る。

遠い風が背を押し、また一歩を促した。

静かな光の中で、呼吸だけがゆるやかに続く。

 

 

白い光は柔らかく、目を閉じても瞼の裏に残る。

足裏に伝わる細かな砂が、歩みの重さを静かに返す。

風は高く澄み、胸の奥へ細い道を通した。

息を吐くたび、空の深さがわずかに近づく。

遠い白の気配は、なお静かに広がっている。

 

 

陽は真上に近く、影は足元へ縮んだ。

岩に触れた掌が、微かな熱をゆっくり受け取る。

乾いた風が頬をかすめ、汗を淡く奪っていく。

白い面は光を返し、空の青を薄く映した。

 

 

細い道は砂へ溶け、足跡だけが並んでいく。

歩みの合間に、胸の鼓動がゆるやかに広がる。

指先に触れる石は冷え、影の温度を宿していた。

遠くから流れる風が、衣の端を細く揺らす。

その揺れに合わせ、視界の白も静かに息づく。

 

 

高みの空は淡く、雲の縁だけが明るい。

乾いた砂が脛へ触れ、柔らかな痛みを残す。

汗の乾いた肌に風が通り、薄い涼しさを運んだ。

歩みの先で、白の面が静かな光を広げる。

 

 

足裏の感触は軽く、砂が静かに沈む。

踏み出すたび、小さな音が夏の空へ溶けた。

風はほとんど止み、静寂だけが残る。

その静けさの中で、白い高みがやわらかく揺れる。

胸の奥で、名もない澄みがゆっくり広がった。

 

 

光はやや傾き、白の面に淡い陰を置く。

岩の隙間に触れた指先が、冷たい粒を感じ取る。

足の疲れは重くなく、静かな温度を保つ。

空を渡る風が、長い息のように耳を抜けた。

 

 

白き面は近く、細かな筋が光を刻む。

掌を置くと、粗い面が確かな重さを返した。

足首の周りで砂がゆるく崩れ、歩みを試す。

それでも身体は静かに前へ傾く。

 

 

高い空の奥で、淡い雲がゆっくりほどける。

頬を撫でる風は冷え、夏の熱を遠ざけた。

足裏の感触は次第に硬く、岩の粒が増える。

白い頂の光が、静かに視界を満たす。

呼吸は深くなり、胸の奥で長く広がった。

 

 

傾いた陽が、岩の縁に薄い影を描く。

乾いた空気が肌を通り、静かな疲れを残す。

足跡は淡く続き、白い砂へ溶けていく。

その先で光は静まり、穏やかな広がりを保つ。

 

 

空の色は深まり、白の面は柔らかく沈む。

風は遠くで鳴り、かすかな冷えを運んだ。

掌に残る石の感触が、歩いた時間を伝える。

足裏に静かな重みを抱えながら、また一歩を置く。

 




陽は傾き、白き面に柔らかな影が流れている。
歩いてきた斜面は静まり、草の揺れだけが遠く続く。


掌に残る岩のざらつきが、長い歩みをそっと伝える。
頬を撫でる風は穏やかで、昼の熱を静かに連れ去った。
白い高みは薄い光の中で、ただ静かに空へ溶けていく。
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