泡沫紀行   作:みどりのかけら

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朝まだき、草の海は淡い霧に包まれていた。
露を含んだ風が頬をかすめ、冷たい気配を静かに残す。
足元で細い葉が触れ合い、かすかな音をこぼした。
遠くの空の下、蒼い輪の気配がほのかに沈んでいる。


ゆるやかな道を踏むと、土はまだ夜の湿りを抱いていた。
草の匂いが低く流れ、胸の奥まで静かに満ちてくる。
歩みの先で、蒼の円はまだ眠るように霞んでいた。
風は草を撫で、見えない波をゆっくり広げてゆく。
空の光は淡く、世界の輪郭を静かに起こしていた。


指先に触れた露はひやりと冷たく、すぐに消えた。
その小さな冷えが、胸の奥で長く残り続ける。
草原の彼方にある蒼は、まだ遠く静かに呼吸していた。
私はただ歩みを重ね、ゆるやかな風の流れに身を任せた。



985 天空の草原に輝く蒼き円環の湖

朝のひかりが浅い雲を透き、ゆるやかな草の海へ落ちていた。

露を抱いた葉が足首に触れ、冷たい粒が歩みにほどける。

遠くで蒼い円がかすかに息づき、静かな光を返していた。

 

 

風は背の低い草をなで、波のように起伏を広げてゆく。

踏み出すたび、土の匂いがかすかに温もりを帯びて立つ。

乾いた茎が指先に触れ、細かなざらつきを残した。

蒼の円はまだ遠く、空の欠片のように眠っている。

 

 

草の間を抜ける風が、頬をやわらかく押して通る。

陽に温められた石が掌に重く、沈黙を伝えてくる。

 

 

ゆるい坂を登ると、視界がふいにほどけた。

蒼い輪郭が広がり、空よりも濃い色で静まっている。

岸に寄る草は深く伏し、風の重みを受け止めていた。

靴底に細かな砂がきしみ、乾いた音が胸へ沈む。

水面はゆるやかに揺れ、光のかけらを散らしていた。

 

 

近づくほどに、蒼は深さを増してゆく。

水辺の土は湿り、足裏に柔らかな重みを残す。

指をかすめる風がひやりと冷え、汗をそっと奪った。

 

 

岸辺に座ると、草の影が膝に揺れて落ちた。

水はゆっくりと呼吸し、細かな波を寄せてくる。

指先を浸すと、澄んだ冷えが骨まで染みていく。

遠い雲の白が、蒼の奥で静かにほどけた。

 

 

陽は高く、草の匂いが濃く満ちていた。

背に触れる地面は乾き、細かな粒が衣をくすぐる。

 

 

立ち上がると、風が少しだけ重くなっていた。

草原の波は深くなり、蒼い円をゆっくり包む。

足取りの影が長く揺れ、光の縁を静かになぞった。

 

 

蒼い水面は風を受け、細かな皺をほどいてゆく。

湿った土が足裏にやさしく沈み、ひそかな冷えを残した。

岸の草は身を伏せ、やわらかな擦れを耳へ寄せる。

光は水にほどけ、ゆるやかな輪を深くしていた。

 

 

湖面の蒼は静かに揺れ、空の色を抱え込んでいる。

小石を踏むたび、乾いた響きがかすかに胸へ落ちた。

 

 

草の奥から、涼しい匂いが流れ出てくる。

水辺へ吹く風が腕をかすめ、汗を薄くさらっていく。

ひと筋の波紋が広がり、蒼の奥を遠くへ運んだ。

 

 

岸に沿って歩くと、地面はしだいに湿りを増す。

指先で拾った石は丸く、冷えた重さを掌に残した。

陽の粒が水面で弾け、静かな光を散らしている。

遠い草の揺れが、蒼の輪に淡く溶けていた。

胸の奥に、言葉にならない涼しさが広がる。

 

 

やがて雲が流れ、光の色がゆるく変わった。

水の蒼はわずかに深まり、静かな影を抱く。

頬を渡る風が冷え、歩みをそっと軽くする。

 

 

草の穂が肩に触れ、柔らかな粉を落とした。

指で払うと、乾いた粒がさらりと散っていく。

 

 

湖の輪は、草の海に抱かれて静まっている。

遠い波が岸へ寄り、細い線を描いてほどけた。

湿った土が靴底に絡み、ゆるい重みを残す。

風はやがて穏やかになり、草の波を浅くする。

 

 

歩みを止めると、蒼い円がゆっくり息をする。

陽の名残が水に溶け、やさしい光を残していた。

草の匂いが静かに満ち、ひそかな温もりを運ぶ。

掌の石はまだ冷え、沈黙の重さを保っている。

 




夕の光が傾き、草原は柔らかな影に包まれていた。
蒼い円の水面は静まり、淡い光をゆっくり沈めていく。
岸辺の草が揺れ、乾いた匂いをそっと運んだ。


足裏に残る土の温もりが、歩みの記憶を確かめる。
指に触れた小石は冷たく、静かな重みを保っていた。
風は昼よりも穏やかで、草の波を浅く整えている。
蒼い輪は変わらず、空の色を深く抱き続けていた。


やがて光は薄れ、水面の蒼がゆるやかに沈む。
遠い草の擦れが、静かな音を細くほどいた。
胸の奥に残る涼しさが、ゆっくり夜へ溶けていく。
振り返らず歩くと、背後で風が静かに草を揺らした。
草原の深い息づかいが、薄闇の中で長く続いていた。
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