泡沫紀行   作:みどりのかけら

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落葉の匂いを踏みしめながら、細い道を奥へ進む。
乾いた葉が靴底で砕け、かすかな響きを残す。
冷たい風が林をすり抜け、まだ見ぬ水の気配を運んでくる。


土の湿りが少しずつ濃くなり、足裏に柔らかな重みが残る。
遠い奥で、白くほどける響きがかすかに揺れている。


その震えを胸の奥で受け止めながら、静かに歩みを深めていく。
森の影は重なり、光を細い糸へ変えて落とす。
見えない流れが、すでにこの空気を満たしている。



987 森の奥で白銀に砕ける秘瀑

落葉を踏みしめるたび、乾いた響きが足裏へ返る。

淡い霧が林の奥からほどけ、冷えた匂いを連れてくる。

歩みを進めるほど、見えぬ水の気配が胸の奥で揺れる。

細い風が耳をかすめ、遠くの白さを告げている。

 

 

斜面を伝う土はやわらかく、靴底に湿りが絡む。

かすかな轟きが地の奥から浮かび上がり、足取りを静かに導く。

 

 

木々の影が重なり合い、昼の光を細く砕いて落とす。

冷たい滴が枝先から落ち、頬の脇を静かにすべる。

そのたび肩の奥に、澄んだ気配がひそやかに広がる。

 

 

白い響きが森の奥で砕け、空気の粒を震わせる。

 

 

岩をなぞる流れが見え始め、光が細く跳ね返る。

近づくほどに水の息が濃くなり、胸の奥まで満ちる。

湿った風が袖口へ入り、肌の熱をゆっくり奪う。

落葉の匂いと水煙が混ざり、深い季節の味になる。

 

 

細い道は苔に覆われ、踏むたび柔らかな沈みが返る。

指先で触れた岩は冷えきり、骨の奥まで静けさを伝える。

 

 

白銀の糸が幾筋もほどけ、空から落ちてくるように見える。

砕けた水は霧となり、額へ細かな冷えを散らす。

膝の裏まで湿った風が届き、歩みが自然に緩む。

 

 

水は高みから砕け続け、光を無数の欠片へ変えている。

濡れた岩肌が鈍く光り、掌へ冷たい重みを残す。

指に触れた飛沫は瞬きの間に消え、淡い震えだけ残る。

落ち葉が流れの縁を回り、ゆるやかな輪を描いている。

 

 

白い水煙が森へ広がり、肩口を静かに濡らしてゆく。

その冷えを抱いたまま、足元の土の温もりを確かめる。

 

 

岩陰に腰を寄せると、湿った冷気が背をゆっくり包む。

水の砕ける響きが胸骨の奥まで届き、静かな振動となる。

濡れた落葉を指で押すと、柔らかな沈みが掌に残る。

 

 

霧に溶けた光が流れの上で細かく揺れる。

白い飛沫が頬へ触れ、冷えた粒となって散る。

まばたきの隙間で、景色が淡くほどけていく。

遠い枝葉がゆらぎ、柔らかな影を重ねていく。

 

 

足先に触れる小石が水を受け、ひそかな震えを返す。

流れに削られた面を撫でると、硬い冷たさが指へ残る。

 

 

落葉が一枚、白い筋へ吸い込まれてゆく。

渦の縁でくるりと回り、また静かな流れへ戻る。

その緩やかな動きが、胸の奥で長く揺れる。

 

 

湿った風が林を通り、髪を細く撫でて過ぎる。

飛沫に濡れた袖口が重くなり、腕へ冷えが染みる。

足裏の土が温かく、静かな支えのように残る。

水音が深く重なり、森の底まで満ちている。

 

 

白い落水の奥で、細い光がほどけて揺れる。

その揺らぎがまぶたの裏へ淡く残り続ける。

 

 

流れの縁に膝を寄せると、水気が衣をゆっくり吸う。

掌へ落ちた飛沫は冷えた針のように瞬きする。

やがてその冷たさが、静かな温もりへ変わる。

 

 

風が枝をわずかに鳴らし、淡い影を地へ落とす。

水煙は森の奥へゆるやかに広がっていく。

湿った空気が喉を満たし、息が静かに深くなる。

白銀の砕ける音だけが、なお絶えず続いている。

 




白い水煙を背に、落葉の道へゆっくり戻る。
袖に残る湿りが、冷たい余韻として肌へ触れる。


歩くたび、砕けた水の響きが遠くへほどけていく。
代わりに、土と葉の柔らかな匂いが静かに満ちる。
足裏に残る温もりが、ゆるやかに広がっていく。


振り返らずとも、白銀の砕ける気配は胸に残る。
森を抜ける風が髪を揺らし、淡い冷えを運ぶ。
やがてその冷えも、落葉の匂いへ静かに溶けていく。
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