生まれ変わったら死んでました 〜怠惰なゾンビは隠者になりたい〜 作:かんた ※ノベプラで活動中
その日の彼は、なんだかすっきりしない気分で目を覚ました。
「何が」とか考える前なのに、何かが普通じゃないとわかるのだ。
寝ても覚めても真っ白。上も下もわからないようなふわふわした世界の中で、彼の意識は明滅しながらも覚醒し、ゆっくりと安定していく。
痛みはない、不快感もない、でもなんだか怠い。全身に意識を巡らせた彼は、未体験の感覚をもう一度噛み締めた。
「この感じ、なんだろう?」と考えた瞬間。
『パッシブスキル【触覚】を手に入れました』
『パッシブスキル【平衡感覚】を手に入れました』
『パッシブスキル【深部感覚】を手に入れました』
頭の中で、抑揚の無い中性的な声が響く。
直後に、ずぅんと身体が重くなった。比喩ではなく、物理的にだ。
彼がなんとなく感じていた『怠さ』の原因は、今感じたこの『重さ』にあって、【触覚】【平衡感覚】【深部感覚】で初めて感じる事が出来たのだと、本能的に理解する事が出来た。
(はて、そもそも頭に響くこの『声』は何だろう? )
彼のそういった疑問にも、『声』は律儀に応えてくれた。
『ご誕生おめでとうございます。この世界の女神様の気まぐれによりあなたのサポートをさせていただきます、【天の声】と申します。私自身は既にスキルとして入手済みですので、何かご質問などございましたらお応えいたします』
(女神? スキル? 説明ぷりーず)
『前者は禁則事項に抵触する為、返答出来ません。後者はその限りではありませんが、いずれわかることなので説明を省かせていただきます』
応えてはくれるけど答えはくれないんだなぁ。そう考えて思考を巡らせるも、彼の頭は上手く働かない。まるで、脳に血が巡っていないかのようだった。
視界が真っ白なのは、自らの目が光を上手く絞れてないからだと気づく。彼は眉根を寄せる勢いで目を凝らし、一点を見つめる事で光の量を調節しようとした。
視界を埋め尽くしていた白は少しずつ薄れていき、焦点も定まっていく。やがて、木製の壁や床・天井などを、うっすらと確認する事ができた。
ここで初めて、目だけじゃなく耳も聞こえない事に気がついた。
【天の声】とかいう話し相手がいるので、精神的な不安もなく、正直このままでも問題ない。ただ、無音のままなのもどうなのかと思い、使えるかわからない耳を澄ましてみた。
そんな視力と聴力の回復に
年齢にすると10代に届くか否かというところで、見るからに幼い子供である。
手には小さな白い花を生けた花瓶を抱き、ちょうど部屋の扉を開けたところで立ち止まっていた。
その眼は瞳の形がはっきりするほど見開かれ、口は半開きのまま動かない。
そんな状態が続いていたが、彼の脳内に『パッシブスキル【視覚】と【聴覚】を手に入れました』というアナウンスが流れた瞬間、少年と少女の目が初めて合ったのだ。
しばしの沈黙。そして―――――
「せ、せんせー! おかーさん! おにーちゃんが生き返った!!!」
初対面なはずの少女の口から飛び出した言葉には、ここまで冷静だった少年もさすがに面食らってしまったのである。
明日から20時投稿です