今年で25周年という驚きと共に、本日から、仮面ライダーダクバの連載を始めようと思います。
本作は、タイトルを見たら、多くの人が察してしまう内容かもしれません。
けれど、もしもの可能性の一つとして、書いてしまいました。
あいつならば、こうなるかもしれない。
そう考え、書かせて貰いました。
もしも、気に入って貰えたら、感想をお願いします。
空が灰色に覆われた梅雨入り前の土曜日、僕は大学の研究室から紹介されたアルバイトに来ていた。歴史学部の考古学コースに籍を置く僕にとって、地方の山奥にある遺跡発掘の仕事は願ってもない機会だった。
「宮崎君!そっちの石板を持ち上げてみてくれないか?」
指導教授の声に応じて、俺—宮崎涼介—は汗だくになりながら重い石板を掘り出していた。発掘現場には十数人の研究者や学生たちが集まり、地面から何かを見つけようと必死になっている。
「教授、準備が出来ました」
「こっちも準備が出来ました」
そんな僕達が見つけたのは、棺。
これまで日本では発見される事がなかった形状。
そして、棺の中に収まっていたのは、一体のミイラ。
「なんだ、これは?」
「こんなミイラ、見た事ないけど」
そうして、棺の中にあったミイラに全員が驚きを隠せなかった。
「先生、これ?勝手に触ったら呪うぞとか書いていないですよね」
「もう触っちゃったよ、下らん事を言っていないで、手を動かせ」
全員が、その時には何も起きない。
そう感じながらも、遺跡の調査を行った時。
「んっ、なんだこれ?」
そんな俺の足下に何かが落ちていた。
気になった俺は、それを拾った。
「これは、なんだ破片なのか?」
呟いた、その時、破片はまるで俺の身体に吸い込まれるように消えた。
「なっ!」
思わず声をあげた俺。
そんな俺の耳元には不思議な声が聞こえてきた。
《お前は我を感じるのか?》
そんな声が聞こえてきた直後。突如地響きと共に遺跡が崩れ始めた。
「地震?早く逃げないと!」
だが次の瞬間。
地鳴りとともに封印されていた筈の棺の中身が突然動き始めた。
いや違う……棺ではない、アレは……
「なっ?!」
目の前に広がった光景に絶句した。
棺とは別の場所から、何かが動いた。
そこに立っていたのは、1人の人影。
長い髪の毛を振り乱す屈強な黒い姿が、そこに立っていた。
その場には、誰もいなかったはず。
「んっ、誰だ、こんな所で」
疑問に思った1人が、すぐに同級生の1人に近づいた。
部外者だから、すぐに追い出そう。
そうした時。
「復活して、早々にか、まぁ良い、この時代のリントを軽く殺してみるか」
「おいっ、近づくな!」
なぜか、そいつの言っている言葉が理解出来た。
だけど、俺はそれよりも奴から感じた殺気に本能的な恐怖を感じた。
「危ない!」
叫び声。
それは聞き慣れた同級生のものではなく、もっと古くて異質なものだった。
視界の端で捉えたのは黒い影。
次の瞬間、鮮血が宙を舞った。
「田口?」
呼びかけた同級生が倒れていた。
首から上がない形で。
「ふんっ」
そのままそいつは、簡単に捨てた。
「きゃっきゃああぁぁぁぁ!!!」
悲鳴が響く。
何が起きたのか理解できず立ち尽くす俺の眼前で、次々と仲間たちが血飛沫とともに倒れていく。
先ほどまで笑い合っていた研究者たちが肉塊となって散っていく。
教授も助教も先輩も後輩も――。
皆一様に恐怖に歪んだ顔をして地面に沈んでいった。
そして最後に残ったのは俺だけだった。
「ほう……生き延びたか」
黒衣の男――いや怪物とも形容すべき存在はゆっくりとこちらに向き直った。
その眼は紅く輝き、どこか楽しげに揺れている。
「お前……何をした……」
震える声で問いかけた俺の言葉に怪物は微かに微笑んだ。
「ただ遊んでいるだけさ、それよりも、他のリントの言葉はまるで分からないのに、君の言葉だけ分かるなんて、不思議だなぁ」
それは当然だと思った。
だって、俺もコイツの言葉が理解出来る。
どうして理解できるのかはわからないが……理解できてしまうのだ。
「さて、まだ生きているならゲーム続行といこう」
怪物が腕を振るう。
鋭利な刃のような爪が迫る刹那――。
ピキッという小さな音とともに腹部に激痛が走った。
痛みと共に突き刺さるモノ。
「あぁ……?」
自分の腹から飛び出した赤黒い棘を見つめながら崩れ落ちる俺の身体。
地面に打ち付けられた衝撃で意識が飛びかける。
死んでしまう。
そう、本能で感じた時。
「嫌だっ!嫌だっ!嫌だっ!」
思わず叫ぶ。
死にたくない。
その本能が突き動かした。
同時に、俺は本能で殴った。
死にたくない。
その一心で。
次の瞬間。
「へぇ」
目の前にいる奴はまるで面白い物を見るように俺を見ていた。
それの意味が分からず、俺は自分の腕を見る。
自分の腕が白く輝いていた。
「これが……俺の腕?」
皮膚の下から浮かび上がるような紋様。指先から肩まで続く白い装甲。明らかに人間のものではない何かに変わってしまった左腕を呆然と眺める。
「素晴らしい!」
怪物と名乗った黒い怪人は両手を広げて喜びを表現している。彼の目が更に赤く輝いた。
「普通のリントが僕の『ゲドルード』の欠片を受け入れるなど有り得ぬこと。しかしそれを可能とした貴様は特別だ」
周囲を見回せば無惨な光景が広がっていた。かつて同級生や教授たちだったものが散乱している。吐き気を催すような鉄の匂いと恐怖感が混ざり合い、全身の血管が凍りつく思いだった。
「ゲームだと?」
俺は震える声で尋ねる。
「何を言ってるんだ?こんなこと……」
「単純だよ」
怪物は優雅に歩きながら説明した。
「僕は眠りについていた間に同胞たちに封印されていた。今こそ解放されようとしている」
彼の言葉は理解できた。あまりにも理解できた。それが逆に恐ろしい。なぜ人間である自分が古代の言葉を完全に理解できるのか。
「彼らは僕を取り戻そうとするだろう。しかし僕も長き眠りから目覚めたばかり。力を取り戻す必要がある」
怪物が右手を掲げる。周囲の空気が電気を帯びたように震え始めた。
「そこで貴様を利用するのだ。僕の力の一部を宿した貴様を追いかければ、同胞たちは必ず集まってくる。互いに争い滅ぼし合い……そして最後に残るのは我々二人のみ」
怪物は笑いしながら言った。
「今の僕はまだ完全ではない。一旦姿を消すとしよう。だが忘れるなよ」
彼の姿が徐々に透明になっていく。
「これは終わりではなく始まりなのだ」
完全に姿が消える直前、怪物は楽しげに言い放った。
「次に会うときは……もっと面白いものを見せてくれ」
警察による現場検証が始まったとき、僕は既にその場から離れていた。
血痕と人体の断片が散乱する中で唯一無傷で生存していた大学生。
俺は、その惨劇での容疑者として、警察に連れて行かれる事になった。