「やった……」
独り言が虚しく響く。瓦礫の山に立ちすくむ俺の足元には、黒ずんだ肉塊が転がっている。さっきまでグロンギだったものだ。
「はぁ……はぁ……」
肩が上下する。全身の装甲が軋む。特に胸のあたりが重い。まるで鉄球でも飲み込んだみたいに。
視界の隅で何かが動いた。生存者か? 警戒して目を凝らすと――犬だった。茶色い雑種犬が肉塊に鼻先を寄せ、低く唸り声を上げている。
「ダメだ!」
叫んだ途端、犬はびくりと跳ね上がって逃げていった。遠吠えがかすかに聞こえる。あのクマグロンギも同じように吼えたのに。
壁際に寄りかかる。背中の冷たさが心地よい。手の平を見る。指先が震えている。血は付いていないはずなのに、ぬるりとした感触が残ってる気がする。
「……なんでだよ」
呟いた声は枯れていた。喉の奥が鉄っぽい味がする。さっき爆風で吹き飛ばされた時、喉を打ち付けたせいだ。
壁に寄りかかったまま、ズボンのポケットを探る。
携帯を取り出す手が震えてる。画面の光が目に眩しい。履歴から一条さんの番号をタップ。コール音が3回。4回目で出た。
「もしもし」
「一条さん……俺です。宮崎です」
「どうしたんだ?こんなときに」
電話の向こうでサイレンの音が混ざってる。緊急指令が出てるのか。
「グロンギを……倒しました」
言葉が喉につかえる。倒した? 殺した? どっちなんだよ。
「そうか……詳細は後で聞く。とにかく今はそこから離れるんだ! 周辺住民の避難誘導が始まって——」
「俺、また……殺しちゃいました」
沈黙が落ちる。受話器越しに一条さんの息遣いが聞こえる。いつも冷静な彼が珍しく言葉を選んでる。
「宮崎くん。君がいなければ、もっと多くの市民が犠牲になってたかもしれない。その事実を忘れるな」
「でもっ……!」
「いいか? 今すぐそこを離れろ。警察や消防が間もなく到着する。君がそこにいると色々ややこしくなる。それに……」
言いかけて彼は一旦区切った。
「君は、間違われる可能性がある。0号と」
「・・・」
その事実に俺も理解している。
この身体が、0号と同じ力を持っている。
そして、この身体から力を使うには。
未確認生命体0号と同じ力を使う必要がある。
その事実が俺にとって辛い。
「分かりました」
「それと、五代にも連絡しておくから、後で合流しておけ」
「ありがとうございます」
通信が切れる。
俺はすぐにその場を後にする事にした。
それと共に、俺は電話を切ると共に、履歴を見る。
そこには、俺の元には、一条さん以外に見えたのは。
「これは、確か教授の娘さんの」