青い装甲が風を纏う。軽い。骨格が透明になったかのような解放感。跳躍力が爆発的に向上しているのがわかる。
「来いよ」
挑発するように空を見上げると、キツツキの女グロンギは遥か頭上で旋回している。まるで空に溶け込むかのようだ。あの高さでは俺の跳躍でも届かない。
(奴を地上に引き摺り下ろすしかない……!)
周囲を見渡す。ゴミ捨て場の側に無造作に放置された鉄パイプ。反射的に手が伸びる。
掴んだ瞬間──パイプが変形した。金属の擦れる音とともに刃が伸びる。青白く光る刀身が月光を反射する。
(これで……!)
頭上の気配が変わった。グロンギが狙いを定める。嘴を開き、甲高い鳴き声を発する。
次の瞬間──急降下。
「ぐっ!」
凄まじい羽根とともに迫る巨体。その速度は弾丸のようだ。避けきれないと悟り、咄嗟に刀を構える。
ゴオォォッ!!
轟音と共に蹴りが炸裂する。鋼鉄の靴底が刀身にぶち当たった。
衝撃が全身を貫く。腕が痺れる。だが押さえた! かろうじて防いだのだ。
「うおおっ!」
力を込めて押し返すと、グロンギは軌道を変え、空中で回転しながら再度上昇していった。
(まだだ……こっちから仕掛けないと!)
地面を蹴り、青い閃光となって跳び上がる。ビルの壁を蹴り返しながら上空へ。グロンギの高度に近づく。
「ここで決める!」
刀を構えながら空中で体勢を整える。対峙する二つの影。
キツツキのグロンギが再び急降下してくる。
今度はこちらが迎え撃つ番だ。
「ハアッ!」
青い刀が月光を吸い込むように輝きを増す。迫り来る影に向けて突き出す──!
ガキン!
甲高く響く金属音。空中で激突する二つのエネルギー。火花が散る。
そのまま、すぐにカウンターを放とうするが。
「逃げられたっ」
既に、グロンギは別の方向へ逃げている。
その方向は。
「まさか!」
その方向に居たのは。
俺が会っていた夏目実加が立っていた。
(嘘だろ……!)
キツツキグロンギの狙いは明らかだった。俺を引きつけておいて、実は夏目実加を狙っていたのだ。
彼女はまだ状況を把握できていない。呆然と空を見上げている。
「逃げろ!!」
俺の叫びが虚空に消える。間に合わない。
グロンギが旋回し、急降下。嘴が一直線に彼女へ向かう。
(くそっ!)
全速力で跳ぶ。だが距離がありすぎる。青い装甲の瞬発力でさえ届かない。
俺はすぐにその手にある刀をグロンギに向けて投げる。
青い光の線がグロンギへと向かうが、その攻撃はあっさりと避けられてしまう。
そして、そのまま俺の方に旋回した。
「あの速さに対抗しなければ」
その呟きと共に、俺の目の前は、真っ暗となった。