「覚悟しろ!」
サイのグロンギが唾棄するように言った。その太い首筋に血管が浮き上がる。筋肉が盛り上がり、岩のような質感を帯びていった。
先陣を切ったのはサイだった。
大地を蹴る音が砲撃の如く響き、次の瞬間には俺の目前。
その剛腕が風を斬り裂く。
「ぐぅっ!」
左腕でガードするが、鈍器で殴られたような衝撃が肩から全身へ走る。衝撃で地面が陥没した。
(このパワー……桁違いだ!)
続いてイカグロンギが後方から参戦。口吻が筒状に伸び、濁った粘液が噴射された!
「危ない!」
咄嗟にバックステップ。だが逃げ場は少ない。背後には民家の塀。挟まれた。
粘液が塀に命中し白煙を上げる。強酸性だと理解した瞬間、タツノオトシゴグロンギの両腕がムチのようにしなった。
ビュオン!
鞭が空気を裂く音。右腿を掠めた瞬間、灼熱のような痛みが走る。
「ッ!」
鮮血が跳ねる。防御に遅れた一撃が確実にダメージを与えてきた。
(連携が巧み過ぎる……!)
サイが力で牽制し、イカが中距離で範囲攻撃、タツノオトシゴが死角から追撃。三体の役割分担が完璧だった。
「逃げ場はないぞ!」
サイの嘲弄と共に再び突進。
今度は真正面からの攻撃ではなく、巨体を生かした体当たり。回避困難な質量攻撃だ。
「くそっ!」
右に転がって躱すが、そこへタツノオトシゴの鞭が追いかけてくる。鞭は鋭利な刃物のようで、転がる地面が切り裂かれた。
「うあっ!」
右肩を浅く斬られる。装甲の隙間から血が滲んだ。
(近づく隙がない……!)
イカが再び口吻を膨らませる。狙いは無防備な背面か。
サイが前方から進軍。タツノオトシゴが右側を封鎖。
完全に包囲されていた。
「終わりだ……!」
サイの剛腕が頭上から振り下ろされる。回避不能なタイミング。
イカの粘液噴射が背面から迫る。
(このままじゃ……!)
絶体絶命と思われたその時──
その轟音が聞こえた時、俺の脳裏には死という言葉が浮かんでいた。
サイグロンギの岩石のような拳が目の前に迫り、背後からはイカグロンギの高温体液が迫ってくる。完全な袋小路。避けられない。
(クソッ……ここまでなのか……!)
歯を食いしばった瞬間だった。
ブオンッ──!!
腹の底を揺さぶるようなエンジン音。
そして。
「トウッ!!」
風を切る声と共に、真紅の閃光が視界を横切った。
ガギィィン!!
金属が激突するような衝撃音。
サイの拳が真紅の戦士によって止められていた。いや、受け流されたというべきか。
その男の姿を見て息を呑んだ。
それは紛れもなく──
「間に合った」
「っ」
クウガが、そこにいた。
「まだ、いけるか?」
その問いかけに、俺もまた頷く。