「教会?」
俺が訊ねると、五代さんはヘルメットを被りながら頷いた。
「ああ。そこがあいつらのねぐららしい」
俺たちが乗ってきたのは五代さんのバイク。エンジン音が心臓を揺さぶる。跨るだけでその重量感とスピードの期待に足が竦む。
「ちゃんと掴まってろよ」
促され、おそるおそるタンデムシートに座る。背中に伝わるエンジンの振動。そして五代さんの肩越しに感じる鼓動。
そして、走り始めたバイクの風圧が全身を叩く。
「っ……」
思わず首に回した腕に力が籠る。恐怖が喉元まで迫り上がってくる。さっき決めたばかりの覚悟が早くも揺らぎそうだ。
(やっぱり怖い……人を殴るなんて……ましてや怪人だって……)
街灯の明滅が目に入る。赤信号が青に変わるまでの数秒が永遠に感じる。
だが左腕の白い紋様が突如として熱を持ち始めた。ジンジンと疼くような感覚が肘から肩へ駆け上がる。
「五代さん……っ」
声が震えた。何事かと振り向いた彼の目には迷いがない。
「何か来るのか?」
短く問う五代さんに俺は曖昧に頷くしかない。確信はないが、確かに"何か"を肌で感じている。あの蜘蛛や黒衣の男に似た……悪意の気配。
「あと5分で着きますよ」
速度が増す。風の刃が頬を切るように掠める。信号待ちもなく住宅街を縫うように進む。やがて遠くに黒煙が見えた。星空を飲み込むように立ち昇る不穏な柱。
「火事……!」
教会だった。古びた石造りの建物が橙色に染まっている。煙が幾筋も空へと伸びては消える。異様な光景。
「突っ込めってのかよ……」
呟く声は恐怖に濡れていた。教会へのアクセスは正面階段しかない。あそこを堂々とバイクで乗り付けるなど正気の沙汰ではない。
しかし五代さんは減速すらせずに向かっていく。ブレーキを握る手に汗が滲むのを感じる。
「行きますよ……!」
「ちょっ……!」
制止の声をあげる間もなく、バイクは教会正面の大扉へと突撃した。重厚な木製扉が轟音と共に吹き飛ぶ。
内部は薄暗く燻っていた。煤けた香りと火薬のような匂いが混ざる。壁一面のステンドグラスが炎を反射し不気味な色彩を放っている。
エンジンを切った途端に静寂が訪れた。遠くで焼ける木材の音だけが不気味に響く。
その中には、見た事のない蝙蝠を思わせる怪人が、近くにいる人を襲おうとしていた。
すぐにバイクから降り、バイクがそのまま近くの炎まで向かい、爆発する。
怪人は、その爆発に驚き、離れる。
「刑事さん!」「っ!」
すぐに俺達は燃えている刑事のコートの消火に入る。
すると、刑事さんは。
「なぜ、こんな所に!」
驚きを隠せない最中で、怪人は俺達に敵意を向けている。
「戦います!」
「まだ、そんな事を!それに彼は!」
「戦う為に来ました!!怖くて仕方ないのは、今でも変わらない!」
「けど!」
同時に怪人に向かって、俺達は、殴る。
「こんな奴らのために!! これ以上誰かの涙は見たくない! 皆に笑顔でいて欲しいんです! だから見てて下さい! 俺の…いや、俺達の変身!!」
「変身!」
五代さんの叫びと共に腰のベルトが眩い光を放つ。同時に俺の左腕の紋様も脈打ちながら輝き始めた。二人の身体が同時に変容していく。熱風が狭い教会内を吹き荒れる。
五代さんの姿は前回と明らかに異なっていた。白基調だった装甲は鮮烈な赤に染まり、複眼も深紅に燃える。肩部の装甲が隆起し、全体的により攻撃的なフォルムに進化していた。
「これが……俺の新たな力か」
赤き戦士となった五代の声はより低く荘厳さを増していた。
一方で俺の変化も劇的だった。異形だった頭部は五代さんに酷似した形状に近づきつつも、基盤となるボディは純白に統一されていた。各関節部や胸部には漆黒の鎧がアクセントとなり、首元には風になびく黄色のマフラーが巻かれている。
「な……なんだこれは……?」
鏡もない状況で自らの姿を認識できず戸惑う。
「馬鹿なっクウガとダグバが並んでいるっ!やはり噂は本当だったのかっ」
「クウガにダグバ?」
「えっ、宮崎君、あいつらの言葉、分かるの」
俺が呟いた言葉に、五代さんは問いかける。
「なんとなくですが、たぶん、これが」
「・・・そうか、あいつら、止める事は」
「・・・無理ですね、あいつら、人を殺す事を楽しんでいる」
「分かった、だったら!」
それと共に俺達は構える。
「ここでなんとかする!」