仮面ライダーダグバ   作:ボルメテウスさん

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初戦

俺達の眼前にいる未確認との戦いが始まる。

 

以前の蜘蛛のグロンギと戦った時とは違い、俺の身体は羽のように軽かった。

 

五代さんの拳に合わせて俺の蹴りを叩き込む。今までとは違う反応速度で未確認を翻弄することが出来た。

 

未確認が口から吐く酸性の液体を避けるのも容易だった。

 

だが……

 

『お前……』

 

未確認が俺の姿を見て訝しげに呟く。どうやら俺のこの白い装甲が気になるらしい。

 

『お前……ダグバ……?』

 

「……ダグバ……?」

 

それが何なのか分からない。けれど俺の手の平が妙に熱い。まるで何かを求めるように。

 

五代さんが戦ってる間も未確認の猛攻は続く。だが以前のような恐怖はない。むしろ仲間がいる安心感の方が強い。

 

「危ない!」

 

五代さんの声に反応し咄嗟にしゃがむ。頭上を未確認の爪が通過する。風圧が髪を乱す。

 

その隙をついてクウガが跳躍し未確認の背中に蹴りを入れる。相手は体制を崩し数m滑って壁に激突する。

 

「よし……」

 

息を整えているとパキリと嫌な音。見ると床のタイルが割れている。炎によって建物の劣化が進んでいるのだ。

 

「五代さん……ここ危険かも」

 

「ああ、急ごう」

 

俺達は倒れていた刑事を抱え出口へ向かう。しかし未確認も這いつくばりながら追ってくる。

 

「早くっ!崩れますよ!」

 

五代さんが叫ぶ。天井から降ってくる灰や建材の欠片。俺の白い装甲に当たる度に小さな火花が散る。

 

『お前……ダグバ…ではないなっ、一体…!』

 

未確認が意味不明な言葉を叫びながら腕を伸ばす。だがその指先が届く前に、五代さんの拳が顔面を捉える。

 

『ぐあっ……!』

 

壁に叩きつけられた未確認は動かなくなる。恐らく一時的な気絶だろう。

 

「こっちです!」

 

五代さんの誘導で出口を目指す。途中で燃え落ちた教会の天井が倒れてきて逃げ道を塞ぎそうになる。

 

だが、俺と五代さんは勢いと共にその道を通り抜ける。

 

『待てぇええ!』

 

未確認の咆哮が響く。しかし火災の影響で通路が崩れ彼は進めない。

 

俺達は教会の外へ飛び出した。湿った土の匂い。

 

「大丈夫ですか!」

 

地面に倒れていた刑事に呼びかける。意識は朦朧としているようだが命に別状はなさそうだ。

 

「助かったが、まだ…」

 

刑事の問いに答える間もなく俺達もまた構える。

 

それと共に教会を見れば。

 

「危ない!」

 

「っ」

 

五代さんが俺と刑事さんを庇うように前に出る。

 

それによって、教会から飛び出た蝙蝠の未確認からの攻撃を代わりに受け止める。

 

「五代さん!」

 

遙か上空に飛んでいった五代さん。

 

すぐに俺も追いかけようとしたが、眼前に現れたのは蜘蛛のグロンギ。

 

「お前は」

 

『今度は、殺す!』

 

「お前は……」

 

蜘蛛の未確認の両手が蠢いた。甲から黒光りする鉤爪が伸長し、月光を受けて凶悪に輝く。その動きは蟷螂の鎌さながら――正確無比で、致命的。

 

白い鎧は彼の呼吸に合わせて微細に発光し、思考より早く判断を促す。

 

『斬り裂く!』

 

未確認の叫びと共に左右から交差する鋭い斬撃。俺は咄嗟に右手を水平に翳した。白く輝く手刀が鉤爪と火花を散らして接触する。

 

キィン!

 

金属同士が擦過する不快な高音が夜空に響く。俺の腕が痺れ、視界の端で火花が散る。直撃すれば骨ごと肉を削ぎ取られるだろう。しかし同時に気づく――この手刀も相当の硬度を持つ。

 

(硬い……けれど……)

 

手刀を引き戻す動作すら敵の動きを予測させているかの如く滑らか。先程までの狼狽が嘘のように、身体が自然に次の動作へ移行する。

 

未確認は間髪入れず回転しながら足払いを仕掛けてきた。地面に手を突き、宙返りで避ける。

 

(さっきなら無理だった……でも……!)

 

地面に着地した瞬間、俺は手刀を斜め上へ振り抜く。それは偶然にも未確認の腹部装甲に当たり、亀裂を生んだ。相手が呻く。その隙を見逃さず左肩を掴み投げ飛ばす。コンクリートが砕ける衝撃音。

 

「まだだっ!」

 

体勢を整える暇を与えず追撃。白い掌打が胸部へ直撃する。未確認が大きく仰け反るが、口から粘着糸が吐き出され足元に絡みつく。バランスを崩し転倒しかけるも、瞬時に足首を捻り糸を断ち切る。手刀が硬化する要領で爪先から足全体が剣のように変化したのだ。

 

(どんどん……使い方が分かる……!)

 

連続した攻撃で息が上がる。白い装甲は衝撃をある程度吸収してくれるが、その内側の筋肉や神経は消耗していく。額の冷却水滴が蒸発し湯気となる。痛みも鈍化し始めている。

 

しかし蜘蛛の未確認も負けてはいなかった。鋭い跳躍で屋上のフェンスへ飛び移ると、糸を放ち再び空中へ舞う。蜘蛛らしい三次元運動で死角を突こうとする。

 

蜘蛛の未確認が月光を背に糸で跳ねる。三次元的な動きは目で追うのがやっとだ。

 

(……来る!)

 

案の定、屋根から急降下する影。鉤爪を伸ばし首を狙って突進する未確認の動きは完璧な暗殺者のそれだった。

 

だが動かない。

 

むしろ腰を落とし重心を定める。白い手甲が拳を覆う。

 

ゆっくりと、全ての力を込めるように握り絞める。

 

未確認が目前に迫る。

 

その瞬間が来た。

 

「だぁあっっっ!!」

 

俺の叫びと共に拳が跳ね上がった。蜘蛛の鉤爪を弾きながら突き進む。

 

カウンターのタイミングは完璧だった。しかも単なる直拳ではない。

 

エネルギーパワーが拳へ集中している。

 

未確認は絶叫した。

 

胸骨を粉砕する鈍い音が空気を震わす。拳が体内に深く沈んだ。同時に衝撃波が円を描き放射される。

 

屋上コンクリートに無数の罅割れが走る。

 

蜘蛛の身体が宙に浮く。

 

まるでビデオテープを逆再生したように弾き飛ばされ、フェンスを突き破り虚空へ投げ出される。

 

「ぎゃあああああ!!」

 

絶叫とともに地面へ激突する直前だった。

 

蜘蛛の肉体が内側から膨張する。そして大輪の花のように爆散した。

 

熱風と破片が吹き荒れる中、俺は荒い息を吐きながら立っていた。手甲には蜘蛛の血液が滴っている。

 

(……やってしまったのか)

 

初めて確実に命を奪った。その事実が重くのしかかる。

 

「君、大丈夫か」

 

「はっはい、大丈夫ですっそれよりも、五代さんを」

 

だが、俺は力が入らなかった。

 

それを刑事さんが受け止める。

 

「君はここにいろ、俺が行く」

 

「刑事さんっ」

 

それと共に、俺は刑事さんを見届ける事しか出来なかった。

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