なりそこないと、壊れた生徒   作:クレナイハルハ

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二色の眼が見つめる先

クランバトル倶楽部、それはブラックマーケットに存在する新企業。

スケバンやヘルメット団といった子ども達の他にも、カイザーPMCといった様々な大人が訪れる学校の跡地をそのまま利用した賭博施設だ。

この施設は、その日に登録されていた二人チーム同士のどちらかが戦闘不能になるまで戦い、どちらが勝つのかを賭けるというものだ。

他にも、カイザーPMCの運営する銃器販売所の他に軽食を食べられる飲食店がある、最近では週に2日程アビドス地区のラーメン屋が営業に来ておりそれが目的で来る者もいる。

大人達は賭け目的で、子ども達や傭兵は腕試しや金銭の稼ぎのために参加する。

最近ではその人気さに様々な企業から出店の希望が出ている。

 

「本当に、よくここまで来たな……」

 

カイザーPMCから借りた金は既に完済している、だがカイザーPMCの銃器販売所が出店しているのもありカイザーとの関係は続いている。

それに、何故かカイザーPMC()()()も何故か賭博目的で来ていたりする。

 

そう、本当に頻繁に………。

 

「あのバディはかなり連携がとれているな……やはりあのチームに賭けた私の目に狂いは無かったか。後はイレギュラーさえ無ければ……」

 

俺の隣にいるカイザーPMC()()()は、戦闘エリアで銃撃戦を繰り広げるトリニティらしき制服の少女とスケバンの少女が組んだチーム『ワンワンズ』、ヘルメット団二人が組んだチーム『ネオ・ヘルメット団』の戦闘を見て顎に手を添えている。

 

「この後のチームにも賭けてるんですか?」

 

「何を言う」

 

まぁ、カイザーPMC元理事は色々と忙しい時期だろうしこの試合だけだろう。

 

「この後のチーム全てに賭けているとも。特にチーム『ノリと勢い』と『@アビドスター』、『必ず最後は運で勝つ』、『パワーとテラー』には期待している。この場は、面接では判断できない戦闘面からカイザーPMCにスカウト出来る人材を見ることが出来るからな、視察と言うものだ」

 

「そーですか、まぁ賭けてくださってるお陰で此方も儲かるんで助かりますけど」

 

最後までいるつもりかよ、カイザー元理事。

カイザー元理事、彼は俺がクランバトル倶楽部を開設してすぐに借りた金を返した翌日には理事ではなくなっていた。

どうやらこの世界ではアビドス二章は多少遅れていたらしい、先にレトロチック・ロマンが終わるとはさすがに予想できていなかった。

おまえいつか競馬場のおじさんみたいに叫び出さないようしろよ、マジで。

そう思いながら、何故か俺の膝に座るミユとカイザー元理事を交互に見る。

ミユが首輪を着けても、パンドラの箱の生徒以外に見られることは無かった。

てか、何で俺はここでカイザー元理事と一緒に戦闘を眺めているのだろうか?

ちなみに言うが、俺は賭けてない。

 

「カイチョ!」

 

「ん?」

 

聞こえてきた方を向けば、ダークグレーのブレザーを羽織っている元ヘルメット団の少女が慌てた様子でやってきた。

 

「どうした?」

 

「正面玄関で揉め事らしく、現在はホルスさんとレイサさんが対応してるんですけど……まだ解決に向かっていなくて」

 

「え、揉め事?しかもアイツが制圧できないって……」

 

な、なんか凄く嫌な予感がする……い、行きたくねぇ。

 

「どうした、クランバトル倶楽部会長」

 

「なんでも正面玄関で揉め事があったらしく。家でもかなりの実力がある二人が対応してるんですけど、制圧できてないらしいので様子を見に行こうかと」

 

「ならば、私も行こう。もしもの時を考えて私が増援を上に掛け合う事も可能だ。クランバトル倶楽部は重要な業務提携先だからな、すぐに上も対応さてくれるだろう」

 

「いえ、お客として来てくださってる元理事殿にご迷惑をかけるわけには……」

 

それに、ここで貸しを作っておくと後がめんどいしだるい。

それにしてもホルスとレイサでも倒せないってブラックマーケットにそんな奴らいるのか?まさかネームドのどこかの学園?でもその場合はなぜ?

確かにクランバトル倶楽部はブラックマーケットじゃ有名だが、外にも人気になるほどじゃない筈だ。

なら、どうする?

 

「あ、あの、私がサポートに回りますか?」

 

「わかった、任せる。もし無理そうなら戻ってこい。そんときはケイとイブキを呼んで総力で当たる」

 

「は、はい!が、がんばります」

 

そう言うと俺の膝から降りたミユはバトル観戦エリアの出口へと走っていく。恐らくはレイサとホルスを援護できる狙撃ポイントへと向かったのだろう。

 

「一旦、応援を送ったから様子を見よう。もしダメそうならまた報告を頼む」

 

「りょ、了解ですカイチョ!」

 

そう言って持ち場に戻っていくヘルメット団の少女を見送っていると、少し驚いたような雰囲気?いや困惑した雰囲気のカイザー元理事。

 

「……クランバトル倶楽部会長殿。いま、誰と話していた」

 

そうか、元理事にはミユが見えてないから俺がひとりで誰かに話しかけているように思われてるのか。

 

「あー、ウサギの幽霊だな」

 

「幽霊だと?」

 

「えぇ、もしかしたらキヴォトスの最上位に並ぶだろう、誰も知らないスナイパーのウサギだよ。カイザー元理事殿」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クランバトル倶楽部前では二人の少女と一人の少女による戦闘が行われていた。

背負っていた盾を持ち、反対の手でピストルを構えたホルスは突如として襲撃を仕掛けてきた生徒にただ困惑していた。

彼女の後ろでは、3日前にあった二人の生徒が見える、恐らくは彼女の仲間か同じ学校の生徒なのだろう。

だがその二人ともう一人も、困惑と驚愕からか銃を握ろうとしていない。

 

「レイサ、大丈夫?」

 

「まだ、大丈夫です!」

 

背後で銃を握るレイサが無事か確認し再び盾を構えた先では、ゆらりと立ち上がりながらショットガンを構える、自身と瓜二つの姿をしている少女がいた。

 

「本当にやってくれるよねぇ……」

 

「いきなり何なんですか、貴方は!」

 

自分と唯一違うのは、髪の長さだろう。

そう考えつつ盾を構えると、ショットガンを持った彼女は見るからに嫌そうに、いやイライラした様子を押さえずにショットガンへと銃弾を装填する。

 

「あんだけ痛い目みたのに、アイツラまだ私のことを諦めないなんて、更には、アンタと()()()()()まで用意しちゃってさぁっ!!」

 

怒気の込められた叫びと共に放たれた拡散弾を盾で受けるホルス、当然だがショットガンは1ヵ所だけでなく広範囲へと銃弾が放たれる。

そのため、ホルスが銃弾を受け流すことは出来ず盾全体から自身へと来る衝撃に耐えなければならない。

 

「くっ、何なんですか……クランバトル倶楽部が狙いじゃないなら、何が狙いですか?!」

 

「狙い、あはは……そんなの分かりきった事じゃない?ねぇ、その盾……何処で手にいれた?」

 

「盾?そんなの聞いたところであなたに何の得があるんですか、さっきから。意味が分かりません……」

 

「答えてくれないなら……力ずくで聞き出すだけだよ?返せよ、その盾も拳銃も全部……全部ゼンブ返セッ!」

 

「返しません、これは私がカイザーPMCで働いていたときに貰ったもの。貴方に渡す理由がありません!それにこれは元々カイザーPMCがある学校から差し押さえた物の一つと聞いてます、貴方のものじゃありません!」

 

ただ相手の狙いが分からず、更に怒気が強まる相手に困惑しながらも盾を構えるホルスだったがその時、二人の間にレイサが取り出した閃光弾が二人の間に投げ込まれる。

瞬時に盾を正面に構えてその場に埋めつくす光、閃光から視界を守る。

流石に相手もこの状況で突撃してこないだろう、そう思っていた瞬間だった。盾越しに感じるプレッシャーに私は盾を持つ力を強める。

その時だった私の横を何かが通りすぎる、そして背後で聞こえてきた地面に何かが擦れる音がして背後を見れば、腹部を押さえて蹲るレイサの姿があった。

 

「レイサッ?!」

 

「仲間の方を見るなんて、随分と油断してくれるね」

 

「っ!」

 

即座に聞こえてきた声に、体が動き盾を構える。次の瞬間に聞こえる銃声はあのショットガンから放たれたと思えない程に強く、まるでグレネードやロケットランチャーの弾頭を受け止めたような衝撃に盾と共に後ろへと大きく後退する。

 

「レイサ、立てますか!?レイサ?」

 

「うっぐ……ごめん、なさい」

 

腹部を押さえているレイサは一向に立ち上がってこない、その代わりにレイサの起こした体から、地面へとポト、ポト……と赤い液体が落ち地面を赤く汚す。

 

「ここまで、ここまでする必要はあったんですか……」

 

その呟きは誰にも聞き取れず、その場に消えていった。

ホルスの中で何かが大きな音を立ててブチリと切れた。

目を鋭くさせ、互いに睨み合う同じ盾を持つ少女達。

対峙する少女によって怪我をした生徒の血を見た彼女の背後にいる生徒達は顔を青くさせる。

はは、そっか……忘れてました。

仲間を傷付けたこいつは止める()()()()()()じゃない、消さないと、殺さないといけない()()()()()()()()だ。

 

「さっきから、返せ返せと……本当にうるさいですね、オウムの方がまだ別の言葉を話しますよ。そんなに返して欲しいなら、返してやりますよ、ほらぁ!」

 

そう言いながらホルスは持っていた盾を目の前の敵へと投げ付ける、勢いよく投げ飛ばされた盾は敵が構えた盾へとぶつかり合い鈍い音を立てる。

 

「ぐぁっ!?あぁっ!」

 

ガンッ!という鈍い音と共に敵は私の投げた盾の衝撃から後ろへ大きく体勢を崩した、その瞬間。握っていた()を横へと鋭く引く。

紐が繋がれた盾が横へと弧を描き、敵の脇腹をえぐった。

 

「あッ……!?」

 

盾がぶつかった瞬間、ガキン!という高音と共に吹き飛ばされた軽い体、そこに駆け込んで全体重と速度を乗せた膝を入れながら押し付けたショットガンを弾切れまで連射する

弾切れの隙をカバーするために片手でリロードしながらストライクプレートで殴りつけつつ拳銃射撃を続け、都合10発ほどシェルを撃ち込んでやれば

痛みからか敵はショットガンと盾を手放しショットガンと盾が地面に転がる。

即座に勢いよく自身へと紐を引いて更に反対側に紐を回して、敵の反対側にも盾をぶつける。

遠心力により更に威力をました盾は、ヘイローを持たない大人なら骨折と内蔵がやられてもおかしくない。

敵の両わき腹を強く打った盾を強く引いて、飛んできた盾の持ち手を掴んだホルスはそのまま盾を構える。

カイザーPMCで長期に渡って戦闘をし続けて来た経験から、こうした様々な武器を応用した攻撃は常に出来るよう準備していた。

地面へと倒れながらも、銃を拾おうと立ち上がる敵へ向けて拳銃も構えたホルスは引き金を引きあえて当たらないようスレスレに銃弾を撃ちながら近付く。

 

「これで終わりですね、なにか言うことはありますか」

 

そして目の前へと迫った敵の頭へと拳銃を向けたホルスを見上げる。まるで親の敵を見るような、強い憎しみの籠った瞳だった。

 

「返せ、それは()()先輩の……」

 

盾による二度の殴打によるダメージからか立ち上がることが出来ない、睨み付けてくる敵へと止めを刺そうと引き金を引いた。

だが、その銃弾はホルスの狙いから外れ敵の足元へと当たる。

 

「ぐっ、また!?」

 

突如として拳銃を持つホルスの手が震え、狙いがつけられない。反対の手は盾を持っているため押さえられず、正確な狙いがつけられず引き金を引くことも出来ない。

 

「ホシノ先輩っ!」

 

負けそうになった目の前の敵を助けようとしたのか、先程まで観戦し参戦してこなかった獣耳を生やした少女が向かってくる。

まずい、このままじゃ撃てないっ!?

その時だった、遠くから()()()()()がその場に響き渡り、此方へと走って来ている生徒と私の目の前にいる敵が地面へと倒れた、頭上のヘイローが消えた。

 

「い、いまのは……」

 

『こ、こちらRABBIT4……じゃなくて、ミユです。その、余計なことをしてしまいましたか?』

 

クランバトル倶楽部のスタッフに渡されるインカムから聞こえた来た声に、私は目を見開いた。

目の前に止まっていた敵だけじゃなくて、走って来るあの生徒を、一撃で?一発も外すこと無く?

先生が新たに呼び出したと言う、首輪を着けた生徒。

 

「助かりましたミユ、レイサっ!」

 

レイサの方を見れば腹部を押さえたまま、座り込んでいた。駆け寄って彼女の傷を確認する、あのショットガンの散弾でここまで傷が出来るなんてあり得ない……一体どう言うこと?

そういえば、あの黒いスーツの大人が銃弾には神秘を込めることが出来るとか何とか言ってた。

それでここまでの傷が……私が、アイツをひとりで対応さえ出来ていればっ。

 

「シロコ先輩!大丈夫ですか!?起きてください!」

 

「ホシノ先輩!ホシノ先輩!!」

 

そんな後悔をするなかで、ふと背後を確認する。

そこには倒れた二人の少女へと駆け寄り、獣耳の子を必死に起こそうとしている獣耳の子と、私とそっくりな少女を揺すっているミニガンを持っていた生徒。

私は二人の元へと向かい、震えの収まった手でそれぞれの生徒の顔に当たるギリギリを狙って拳銃の引き金を引く。

銃弾が自分の顔の真横を通過し、1人は怯え1人は顔を強ばらせる。

私は手に持った盾をわざと地面に突き刺して、二人を睨み付ける。

 

「二度と、二度とこのクランバトル倶楽部に来るな……また私の仲間を傷付けるなら、次はない」

 

彼女たちに背を向けた、拳銃をベルトのホルスターに装填して盾を走りながら背負い、腹部を押さえたままのレイサを抱き上げてクランバトル倶楽部の医務室へと走った。

 





パンドラの箱、更新情報なし

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