なりそこないと、壊れた生徒   作:クレナイハルハ

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イブキの秘策

次の日、クランバトル倶楽部の運営も無事終わり、俺はパンドラの箱が呼び出した生徒達と向き合っていた。

 

「来週、エデン条約の調印式が執り行われる」

 

「?」

 

「っ」

 

「……」

 

「あぁ、そんなのもありましたね」

 

「そ、そぅですね…」

 

俺の言葉に、テーブルを囲むように座っていた生徒達は俺の言葉に様々な反応を見せた。

ケイは首をかしげ、レイサとイブキは真剣な様子でゴクリと唾を飲む。

ホルスは昔に見たニュースを思い出すような軽い様子で呟き、ミユはホルスと同じように頷く。

 

「イブキとレイサは、調印式を襲撃するアリウス生徒による被害を減らすために、死者を出さない為に介入したいらしい。みんなは、どうしたい。」

 

俺の言葉に、ケイは首をかしげながら口を開いた。

 

「先生、先生達が行かなければ誰かが死ぬのですか?」

 

ケイの言葉に、レイサとイブキの表情が僅かに曇る。それを見たホルスは、彼女たちの過去に何があったのかを察して、目を伏せる。

 

「正直な話、分からない。候補が多すぎるからな……」

 

正直な話、エデン条約では多くの生徒の死が隣り合わせに存在している。

主に考えられるのはゲヘナの風紀委員長、ティーパーティー、アリウススクワッド。

イブキとレイサの反応から考えるにキャスパリーグである杏山カズサとパンデモニウムソサエティーも危ない、最後にシャーレの先生も。

俺達の介入で未来がどう変わるのか分からない、行動するのは正直怖い。

 

「分かりました、アリスも行きます。多くの人々を救うのが勇者の使命ですから!それに、パーティーメンバーの望みは私の望みでもあります!」

 

「レイサちゃんとイブキちゃんにとって、大切で守りたいものがあるから行くんですよね。それなら、私も行きます、この盾は……守るためにありますから。」

 

「わ、私なんかでも……力になれますか?」

 

ケイ、ホルス、ミユの肯定的な反応にレイサとイブキは驚きと安堵の表情を見せる。

誰かが参加しない可能性だってあった、でもここにいる奴らは共に行く事を選んでくれた。

それが彼女たちにとっての少しの安堵に繋がったのだろう。

 

「エデン条約の調印式に向かうのは良いけど、先生はどうするの?私たちは大丈夫だけど、先生は1発でも撃たれたら危ないんじゃ……」

 

「そうなんだよな……」

 

ホルスの言葉に俺はどうするべきか考える、ここでインカムを使い指示を出すのが安全だろう。

俺にはアロナバリアなんてないし、シャーレの先生のように生徒の戦闘指揮も出来ない。

そして、コイツらがこの世界の生徒と会って暴走しないか、過度な接触をしないか心配でもあるのだ。

バタフライエフェクト、行動や会話一つで未来が変わってしまうかもしれないのが怖い。

 

「ふっふっふ!私が何の策もなしにエデン条約の調印式に望むと思ったせーんせ?」

 

腕を組みながら不敵な笑みを浮かべるイブキ。

 

「何か、案があるのか?」

 

「もちろん!イブキは考えて行動してるんだよ?みんな、ちょっと付いてきて!」

 

そういいながら椅子から立ち上がり、部屋の外へと向かうイブキに困惑しつつ全員でイブキの後を追うと、クランバトル倶楽部の建物裏に辿り着いた。

そこには校舎や体育館とは違い、新しさを感じる大きな倉庫が立てられていた。

 

「ケイ、こんな建物あったか?」

 

「いえ、なかった筈です……」

 

そう呟きつつケイの方を見ると、ケイも知らなかったのか困惑しており、口調が普段のアリスとしての話し方ではなくなっていた。

 

「いま開けるねー!」

 

そういいながら倉庫の入り口の扉に設置された電子キーへとパスワードを入力し始めるイブキ。

 

「あの、イブキさん?この建物って」

 

「私が稼いだお金で作ったの、凄いでしょー?大変だったんだよ、でも流石はブラックマーケットだよね、安くゲットして高く売っても何処で買ったのか聞かれないんだもん。あ、クランバトル倶楽部のお金はつかってないよー?イブキのお給料で色々と頑張ったんだー!」

 

転売じゃねぇか!?いや転売でここまで稼げるのかよ……いやいや、まだ転売と決まったわけじゃ……じゃなくて!?

 

「イブキ、一つだけ約束しろ。モモフレグッズだけには手を出すなよ?あと転売だけは辞めておけ、何処で恨みを買うか分からないからな」

 

「?はーい」

 

もしモモフレグッズ……特にペロロ関連を扱って自称普通の女子高生に目をつけられるのは勘弁だよ。

アイツ、ヤバイだろ。

アイツを敵に回せばアビドスとティーパーティーが連鎖召喚されるのは流石にバグだろ。

そんなことを考えているとガチャっと鍵が空いた音が聞こえて、見れば倉庫の入り口の扉を開けたイブキがいた。

 

「みんなも入ってー」

 

そういいながら倉庫に入るイブキについて全員で入ると、電気がついていないからか真っ暗でなにも見えない。

するとガコン!という音と共に部屋が証明に照らされ、目の前に広がっていたのは様々な工具が置かれた机と、大きなシートでおおわれた巨大な何か。

 

「これは、倉庫というより車庫?」

 

「すごいです……」

 

驚いた様子のミユとホルスの言葉にニヤリとしたイブキはシートで覆われた何かの近くへと寄るとそのシートに手を掛ける。

 

「これが私がエデン条約の調印式に向けて、全財産を使って用意した切り札!!」

 

そういいながらイブキが勢い良くシートを取る。シートの下から現れたのは巨大な黒い戦車だった。

そしてその戦車には見覚えがあった。確かイロハの使っていた、ティーガー戦車の超無敵鉄甲虎丸に似ている。

主砲の左右に配備された見覚えのある機関銃や黒い装甲以外は、虎丸とほぼ同じように見える。

イブキは虎丸?の元へと駆け寄り、此方へと振り返りながらまるで研究成果を発表する博士のように手を広げ口を開いた。

 

「虎丸・零式!」

 

「いつの間にこんなものを……」

 

「エデン条約の調印式に備えて準備しておいたんだー!ある学園で迷彩効果の付与できた装甲が開発されたの。試作光学迷彩装甲ファントム・ミラージュって言ってね?この装甲は周囲の風景に溶け込むことができて、擬態した状態で移動できるんだ!」

 

なにその条約違反しそうなシステム。

でもその装甲のおかげで隠密移動が可能なのか。これなら良い感じで先生側に見られずエデン条約に関与できそうだ。

 

「そして主砲の他にも副砲として、ヒナ先輩が使っていたデストロイヤーと同じものを左右に一つずつ搭載!」

 

「てか、これイブキが動かすのか?戦車って確か3人くらい必要じゃ…」

 

イブキ以外で、俺らで戦車を動かせる奴なんているのか?

考えてみればセイアやフウカ、自称普通の女子高生も戦車やオープンカーを乗りこなしている。もしかしてこのメンツの中で操縦できる奴がいるのか?

 

「ふふふ、なんと虎丸・零式にはサポートAIが搭載されているから、イブキ1人でも操縦できるんだよ!どう?すごいでしょー?」

 

「サポートAI付きで1人で操縦できるのかよ……」

 

「科学の力って凄いですね……」

 

やっぱこの世界やべぇわ……。

レイサと共にAIの補助で1人でも戦車を操縦することが出来る事に驚いているとホルスが戦車に片手で触れながら、イブキの方を見ると口を開いた。

 

「これなら皆で移動できそうだね……イブキちゃん、試乗はしたの?AIも何回か使ってないと慣れないんじゃない?」

 

「ふっふっふ!ホルス先輩、既に試乗してAIもバッチリです!」

 

そんな自信満々なイブキの様子を見るに、何とか成りそうだ。これならアリウスや邪魔な残骸を破壊して移動できそうだ。

 

「あ、あの……先生」

 

袖が引かれる感覚と声にそちらを見れば、ミユが袖を引いていた。

 

「どうした?」

 

「その、パンドラの箱が……」

 

そう言われ、持っていたパンドラの箱を見ると画面が表示されており、真っ暗な画面の中央に、何やらインストール中という白い文章と100%と表示された数字が映っていた。

 

「インストール中?」

 

「先生?」

 

ミユと共に何の事か分からず困惑している内に100%という文字が消え、インストール完了という文字が表示されると、元の画面に戻った。

パンドラの箱の事だ、バグでは無さそうだけど見た限り新しく追加されたアプリも生徒も確認できない。

一体、どういう………。

 

「さっそく起動して見せるから見ててねホルス先輩にレイサ先輩、ケイ先輩!先生にミユちゃん!」

 

そういいながら彼女は無敵鉄砲虎丸・零式へと振り返りながら口を開いた。

 

「にゃんにゃーんちゃん、エンジンを起動!」

 

イブキの言葉に虎丸・零式は、動かなかった。

エンジンの起動する音も聞こえず、イブキが首をかしげる。

てかAIの名前はにゃんにゃーんちゃんなのか……虎丸なのに、猫……。

 

「あ、あれ?音声認識がされなかったのかな……もう一度、にゃんにゃーんちゃん!」

 

『名前が違うわ、イブキ』

 

イブキがもう一度AIの名前を叫んだ時だった。戦車のスピーカー?から聞こえてきたのは、AIとは思えないほどに流暢な言葉。

しかも、透き通るような聞き覚えのある音声に思わず自分の耳を疑う。

寝不足でもないし、今日はそこそこ疲れていない方だ。

間違いなく幻聴ではない筈、そう思いながらイブキを見れば、イブキは信じられないと驚愕した様子で虎丸を見つめると呟いた。

 

「ヒナ、先輩?」

 

その言葉に答えるように、虎丸・零式のエンジンが起動し、迷彩のテストするようにまるでその場になかったかのように姿を消すと、直ぐに姿を表した。

 

『…私はゲヘナの風紀委員長』

 

「はは、まさか……」

 

さっきのパンドラの箱が示していたインストール中の意味って。

 

『とは何も関係ないサポートAIの"HiNA"よ、よろしく頼むわイブキ、そしてハンドラー?』

 

 






パンドラの箱、情報更新。

虎丸・零式サポートAI『HiNA』
High quality
Navigate
Artificial Intelligence
略して『HiNA』、パンドラの箱から突如としてインストールされた虎丸零式のサポートAI。

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