エデン条約の調印式が行われる筈であったトリニティ地区の大聖堂、そこでは大規模な戦闘が行われていた。
調印式の最中に投下された巡航ミサイルにより、トリニティとゲヘナの両陣営は大きな被害を受けつつも死者を出すことなく、襲撃してきたアリウス生徒との戦闘が続けていた。
羽沼マコト率いるパンデモニウムソサエティは、イブキが気絶していることを除けば軽傷であり、銃を握り戦闘すること事態は可能であった。
気絶したイブキを抱えたマコトは、イブキの体調を心配しながらも側で万魔殿制式拳銃を構え周囲を警戒するイロハへと声をかける。
「イロハ、虎丸は……」
「さっきのミサイルで大破してます、救急医学部が緊急車両と共に来ているので合流できれば…」
「くそっ、何故こんな事に…」
そう呟くマコト達のいる場所から離れた場所では、トリニティ自警団と正義実現委員会がアリウス生徒と戦闘を行っていた。
だが、トリニティ自警団と自警団に一時的に協力している放課後スイーツ部が前線を維持していた、のだが。
「宇沢!起きろ宇沢!……起きなさいよ、レイサぁ」
ヘイローの消えた宇沢レイサを抱き起こし、意識を取り戻そうと体を揺する杏山カズサ。
アリウス生徒からカズサを庇った宇沢レイサは、意識を失っており、カズサがどれだけ話しかけてもピクリとも反応せず瞼を閉じたまま動かない。
「カズサさん!レイサさんを背負って下がって下さい!一時的ですが、補給地点が設置されいますのでそちらで医療処置を!!」
「わ、私たちが頑張ってアイツらを押さえます!カズサさんも早く!」
「仲間を守るため敵を足止めする、実にロマン溢れる展開だね」
「泣いてないで早くいきないよ!本当に大変なことになっちゃう前に!ほらっ!」
スズミの言うとおり、レイサを背負ったカズサはスイーツ部にその場を任せて補給地点へと向けて走り出す。
トリニティ地区、大聖堂付近の一角。
そこにあるもの達が潜んでいた。
暗い部屋らしき中、長い黒髪が特徴的な少女は抱えた巨大な銃から戦車内でタブレット端末を見つめる大人へと視線を向ける。
その隣に座っている桃色の髪をショートカットにした少女は手に持った盾の展開動作、そしてホルスターから取り出したハンドガンの弾倉の確認を終え視線を大人へと向ける。
向かいに座る、少しくすんだ水色と紫色の髪が特徴的な黒いジャージの少女は手に持ったショットガンを握りしめ、視線を大人へと向ける。
そんな少女の隣に座るウサギ耳と首輪が存在感を放っている少女は、手に持ったスナイパーライフルのスコープについたカバーを外し持ってきた銃弾の弾数を確認し大人へと視線向ける。
大人の隣に座る帽子をかぶり、片手にメモ帳を持った金髪の幼い姿の少女は戦車内で見つめていた計器から視線を大人へ向ける。
白いスーツを身に纏い白い手袋を身に付け、灰色のタブレット端末を持っている大人はタブレット端末から顔を上げると、一度深呼吸をし口を開いた。
「各位、準備は……覚悟は決まったか」
その言葉に、戦車内の全員が同時に頷いた。
それを見た大人はタブレット端末握りしめ、全員に告げる。
「これより、武力介入を行う」
『時間ね、インビジブルクロークを解除するわ』
トリニティ地区、大聖堂付近の一角の風景が歪み一台の黒い戦車が姿を表す。
「HiNA、虎丸・零式前進。移動しながらアリウスを薙ぎ払う、第168戦術でいくよ。状況に合わせて第123戦術でも行く」
『了解よ、イブキ』
「ミユは予定していた狙撃ポイントへ移動、ターゲットが戦場から安全に離脱できるよう監視、及び敵対者への狙撃を行ってくれ」
「分かりました」
ミユと呼ばれた少女は移動する戦車から飛び降りると、首に着けていた首輪をポケットに仕舞い走り出す。
「レイサとホルスは想定される目的地にて、目標の安全の確保及びアリウスの撃退、殲滅」
「うん、分かったよ。いこっかレイサちゃん」
「はい!」
そう言ってホルス、レイサと呼ばれた少女達も戦車から降りると指定された目的地へと駆け出していく。
「イブキは虎丸零式の指揮を、ケイは虎丸零式の上からアリウス生徒への砲撃を頼む」
「ケイではなく、アリスです先生。ではアリス、勇者として皆さんを救います!」
そう言いながらケイと呼ばれるアリスを自称する少女は戦車の上に出ると、光の剣:スーパーノヴァを構えた。
ハッチから上半身を出したイブキは、ハッチの上に仁王立ちしているケイを見てポカンとするが即座に進行方向へと視線を向け直す。
やがて聖堂前でアリウスと戦闘を行っているパンデモニウムのマコトとイロハ、そして気絶した自分へと迫るアリウスへと向けてイブキは虎丸零式の砲門を向ける。
「せんせ、例のやついけそう?」
「分かった。HiNA、P.A.N.D.O.R.A.の箱を接続。Alternative Protocolを起動してくれ」
『Alternative Protocolを起動するわ……っ』
P.A.N.D.O.R.A.の箱にいつの間にか内蔵されていたアプリ、Alternative Protocol。
アプリの説明を確認した限りだが、今後の戦闘で起こるすべての行動から予測される最悪の未来を観測し、適切な行動を選ぶための未来を予測、演算するシステムらしい。
「HiNA、主砲とデストロイヤーを全面アリウスへ。砲撃を開始!撃ちーかたー始め!!」
『うっぁあ……あァッ!』
アリウス生徒へと向け放たれたデストロイヤーの銃撃と主砲による砲撃により大きな爆発と共に、一部のアリウス生徒達が吹き飛ぶ、他の生徒達はデストロイヤーによる銃撃により崩れ落ちる。
「アリスも行きますよぉ……光よ!」
そしてケイのスーパーノヴァによる砲撃でも、次々とアリウス生徒達が倒れていく。
「砲身冷却……完了、バッチェ冷えてますよ~光よ!!」
虎丸・零式がパンデモニウムソサエティの3人を守るように停車させ、イブキは向かってくるアリウス生徒達を見据える。
「イブ、キ?」
聞こえてきた懐かしい声、聞こえてしまうだけで感情が溢れてしまいそうになる声。
イブキは思わず、チラリと後ろを振り返り二人の存在と目があった。
虎丸・零式に乗るイブキを見つめ呆然としているマコト、そしてイロハは信じられない光景に声が出せなかった。
マコトとイロハが虎丸零式のハッチから体を出しているイブキと気絶しマコトに抱かれているイブキを交互に見ている。
自身を庇い、居なくなってしまった二人。
そして私を残して居なくなってしまったみんなを絶対に、絶対に守りたい。
私はもう、守られる程弱くないんだよ?マコト先輩、イロハ先輩。
見てて、私は強くなったから。
前を向き、帽子を強くかぶり胸を張る。
イブキは向かってくるアリウスへと向けて叫ぶ。
「キキキっ!私はパンデモニウムソサエティ…議長!丹花イブキである!我らに、ゲヘナに牙を向いた事を、後悔させてやるっ!HiNA!第168戦術!虎丸・零式、前進!」
『了解、よ……イブキ議長』
虎丸・零式に搭載されたデストロイヤー主砲おまけにケイのスーパーノヴァ、合わせて四つの砲撃がアリウスへと放たれる。
そんな姿を、マコトとイロハはただ困惑した様子で眺めていた。
場所は代わり、レイサを背負ったカズサは補給地点にて襲撃をしかけてきたアリウス生徒との戦闘状態になっていた。
補給地点についたものの、レイサを下ろすことが出来ず銃弾を避けて走っていたカズサ。
レイサの治療が出来ずに焦っていた彼女は、走る先に待ち構えていたアリウス生徒に気付かなかった。
「しまっ!?」
銃口が向けられる、目の前の光景がゆっくりに感じられアリウス生徒が引き金に添えた指を引くのが見えた、次の瞬間。
アリウスとカズサたちの間に短いピンク色の髪の少女が背後から現れると、カズサ達を守るように盾を構えた。
アリウス生徒の放った銃弾が彼女の盾によって防がれ、その後即座に聞こえた聞き覚えのある銃声にカズサは背負っている彼女を確認する。
確かにレイサはカズサに背負われていて、銃声が特徴的なシューティング☆スターを握っていない。
見れば、前に出会った宇沢レイサと瓜二つの彼女がシューティング☆スターを持ってアリウス生徒を制圧していた。
「私が守ります、その間に治療を」
「え、えっと……味方なの?」
「今はね、レイサちゃん!そっちをお願いっ!」
「はい!任せて、下さいっ!」
そう言いながら、目の前の盾を持つ少女からレイサと呼ばれた彼女が姿勢を低くし向かってくるアリウス生徒へと向けて駆け出す。
「アンタ、アイツとどういう!」
「そんなことより、あなたが背負ってる人を早く治療した方がいいと思いますよ」
「……絶対に後で話聞かせてもらうからっ」
そう言いながらレイサを背負ったカズサは、ホルスに守られながら治療できそうな場所まで向かった。
また場所は変わり、ある建物の屋上、そこにミユはスナイパーライフルを構えある方向を確認していた。スコープに映るのはメガネをかけた大人の男性が、白く長い髪が特徴的な少女に守られる姿。
「あの人が、"シャーレの先生"……」
シャーレの先生に迫るアリウス生徒へと照準を定め、引き金を引く。
アリウス生徒の1人が倒れるが、"シャーレの先生"達は目の前の戦闘に夢中のため気付いていない。
ミユが受けた指示とは、"シャーレの先生"が死なないよう掩護射撃に回ることだった。
「どうせなら、先生を守る側に回りたかったな」
服のポケットにいれた首輪の鈴がチリンと鳴る。
「頑張ったら、お願い……しても良いかな」
エデン条約の調印式、アリウス生徒による襲撃や巡航ミサイルによる死者は出ることがなく"シャーレの先生"もまた重傷を負うも、生還し無事原作通りに世界は進んだ。
だが、エデン条約で現れたイレギュラーの存在を見逃すほど、世界は彼女らに優しくなかった。
パンドラの箱、情報更新。
─Alternative Protocol.─
P.A.N.D.O.R.A.の箱にいつの間にかインストールされていたアプリ。
戦闘で起こるすべての行動から予測される最悪の未来を観測し、適切な行動を選ぶための未来を予測、演算するシステム。
なおコスト(デメリット)はHiNA持ちです。
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