エデン条約のゴタゴタも片付き、平穏な日常が帰ってくる……そう思っていた。
俺たちはクランバトル倶楽部での日常を謳歌していた。
「会長、来ましたっ!!」
クランバトル倶楽部の制服扱いとなっている(これさえ着ていれば良いとしている)ダークグレーのブレザーを着用している少女が慌てた様子で会長室へとやってきた。
「
「来たか、予定どおりアイツらに迎えにいかせてくれ。その後はこの部屋に通してくれれば大丈夫だ」
「わ、分かりました!」
少女が出ていったのを確認して、俺は机に突っ伏す。
そう、今日はシャーレの先生がクランバトル倶楽部へとやってくる日なのだ。
エデン条約のあと、シャーレの先生からメールがあり俺と直接会って話がしたいとのことらしい。
本当にやめてほしい、俺が黒服のように先生と大人同士の対談が出きると思うか?否、不可能だ。
そんなんが出来てたらなり損ない名乗ってないし、大人だわ。
断るわけにもいかず、取りあえずパンドラの箱が呼んだケイ達には自室に待機してもらっている。
ちなみに今先生を連れてくる少女たちは、ブラックマーケットの路地裏で倒れていた元ヘルメット団の少女達だ。
エデン条約の始まる前、ハンドラーの単語を聞いた後に路地裏で倒れていたのを拾いクランバトル倶楽部で働かせたのがきっかけだ。
なんでレイサやホルスを呼んだときにあんだけ渋ってた癖に自ら生徒を抱えているのか。
正直な話を言えば、白髪が癖だからとしか言えない。
わんわんヘルメット団は何故か全員が白髪だった、後はもう勢い任せで拾ってしまったんだよな。改めて思い出すと恥ずかしさと呆れが出てしまう。
"お前に意味を与えてやる"そんな言葉で勧誘して所属させるなんて、本当に子どもかよおれ。
そりゃそんな中二病みたいなこと言えば、アイツらも無言でこっちを見てくるわ、俺って本当にバカ……これだからなり損ないなんだよな。
それに拾った後にケイとレイサにめちゃくちゃジト目で見られたし……。
ちなみにその元わんわんヘルメット団の彼女たちは、今ではクランバトル倶楽部での荒事を取り締まったり、俺の部屋の近くを警備するクランバトル倶楽部特殊部隊ハウンズというくくりになっている。
部屋の扉がノックされ、4人の少女に囲まれた白いスーツの入ってくる。
優しそうな印象を受ける男性は、俺を目にすると目を細めるが即座に元の表情と戻る。
「案内完了だハウンズ、持ち場に戻れ」
俺の言葉にハウンズの4人は頷くと、会長室を出ていく。最後の1人が部屋を出ていき、扉がしまる。
「はじめましてとでも言えばいいか?シャーレの先生殿」
「"貴方が、クランバトル倶楽部会長だね"」
「取りあえず座ってくれ、立ったまま話すのは疲れるんだ」
そう言いながら先生を向かいの椅子に座らせ向かい合う。正直もうこの時点で冷や汗とかモロモロが出ててしんどい。
「それでシャーレの先生殿、態々ブラックマーケットまで来てもらいすまないが、俺と話したい事はいったいなんだ?」
「"まずは謝罪かな、以前にアビドスの子達が迷惑をかけてしまい申し訳ない事を──"」
「謝罪は受け取らないって言ったんだが」
頭を下げようとするシャーレの先生の言葉を遮るようにそう告げる、メールでも以前に話したとおりホシノの件に関しては謝罪を受け入れないと話したからだ。
「"子供達の責任を取ることが、大人の役目だからね"」
「
まっすぐこちらを見つめ、責任を取ることが大人の役目だと告げるシャーレの先生に俺は肩を竦める。
「"………貴方は、エデン条約で何が起こるのか知っていたのか?アリウスの事を"」
「ずいぶんといきなり怖い表情だな。あぁ、そうだな。
俺なんかじゃ救えるわけない、先生でなければ救えないと分かっていたがら手を出す意味はない。
分かっているからこそ、その分かっている未来に繋がるよう手を伸ばさず、静観した。
そもそも、クランバトル倶楽部が安定するまでの間に時間があったとしても、目の前のことで手一杯で知り合い以外を気にかける余裕なんてなかった。
俺の言葉に先生の雰囲気が先程までの優しいものから変わる、目は鋭く顔は見るからに怒りを表していた。
「"あの子達が可哀想だとは思わなかったのか"」
「は、なんで?」
目の前で手一杯、全てを失い道を踏み外せば簡単に死ぬような道を歩いてきた。
自分以外を気にする余裕なんてあるわけがなかった。
「悪いが俺はアンタのような
元から全部を持ってるお前には、決して分からないだろうな。
俺は大人じゃない、大人になりきれてない。
俺は
主人公はお前だろ?
「"いや君にならできた筈だ、未来に起きる出来事を知っていたならすれ違いが悲劇になる前に救えた、なのになぜそうしなかった"」
「俺がそうする必要は無かった、だって俺にはそんな役割はない。この世界の主人公はお前だよ、"シャーレの先生"殿」
主人公が助けるのが分かっていて、手を。
「お前がやらなきゃ進まない、ここでトリニティとアリウスを手駒に加えなければ『終着点』で詰む。これはアンタにとって最善のルートなんだよ」
「"何を言って……"」
先程までの怒りから一変し困惑した様子のシャーレの先生の言葉をこれ以上続けさせないためにも、先生のペースにしないためにも口を開く。
「ところでアンタは、自由こそが幸福だと……そう思うか?」
「"な、何を言って"」
「首輪に繋がれた奴は、
ケイは共に背負ってくれると言った。
……アイツを、俺に縛り付けてしまった。
それが正解なのか、不正解なのか分からない。
でも心のどこかでずっと思うんだ。
俺なんかより、なり損ないより"先生"の方が良いんじゃないんかって。
「今いる場所、果たしてその場所は、その人物の居場所だといえるのか。自分の居場所とは何処なのか」
俺は、みんなの居場所を作った。
別世界から来てこの世界に居場所がないやつらが暮らせるように、俺が生活できるように。
……おれはアイツらをここに、縛りつけた。
ずっとずっと考えている、俺よりも"先生"の方がもっと上手くやれたんじゃないかって。
俺へと、ここへと彼女たちを縛り付ける事にはならなかったんじゃないかって。
アイツらが自分の意思でしたいことを縛っているんじゃないかって。
「そうだ、アンタの意見を聞かせてくれよ。大人のアンタのな…アンタにとって俺は何だ?愚者?それとも敵か?」
俺の問いに"シャーレの先生"は答えない。
「そういや、さっきアンタはこう言っていたな。"いや君にならできた筈だ、未来に起きる出来事を知っていたならすれ違いが悲劇になる前に救えた"と、答えはNOだ。先生、アンタは蟻が川の流れに逆らって泳ぐことが出来ると思うか?」
「"君は少なくとも自分で思っているほどに弱くない"」
俺のようなちっぽけな存在ごときで、世界を変えられるなんて事は考えるだけ無駄だ。
「せめて、これらの質問に答えを得てから来てくれよ。これ以上は時間の無駄だろ?お互いに」
そういって俺はシャーレの先生を帰らせた。
帰る時、シャーレの先生は考え込むように黙って歩いていた。
パンドラの箱、更新情報なし
ケイが語録を話した事に関する批判がありましたのでここで弁明させて頂きます。
ケイが明るく話すのは前回で最後だった為、はっちゃけさせてしまいました。
申し訳ありません
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