なりそこないと、壊れた生徒   作:クレナイハルハ

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クエスト、スタート

3日後、要塞都市エリドゥの前にミレニアムサイエンススクールの生徒達が集まっていた。

銃を持ち、予備のマガジン等を確認し終えたのは美甘ネル率いる飛鳥馬トキを含めたCleaning&Clearing。

作戦を確認し改めて確認し必要な装備の最終確認を行いつつ、自身の愛銃達を確認するエンジニア部。

何処か緊張した様子で自分の銃を握りしめているミドリとモモイ、ユズにアリス達ゲーム開発部。

名も無き神々の王女、彼女が告げたタイムリミットがもう少しで終わろうとしていた。

これから始まるのはミレニアムサイエンススクールだけの問題でない、自分達が押さえなければキヴォトスが滅びるかもしれない。

そんなアニメやゲームでしか見たことがないような決戦の火蓋がもう少しで切られようとしていた。

 

「緊張してきた……まさか、ゲームみたいに世界の命運が私たちに掛かってるなんて」

 

「まぁまぁミドリ、ゲームでもやって落ち着きなよ」

 

「この時間で1試合も出来るわけないでしょお姉ちゃん!」

 

「大丈夫、大丈夫……きっと、頑張らないと」

 

「もう少しでクエスト開始ですね……」

 

ミドリの緊張を和らげようとしたモモイとそんなモモイに怒りながらも笑うミドリ。

少し顔色を悪くしながら大丈夫と繰り返すユズの隣で真剣な様子で要塞都市エリドゥの奥に見えるタワーを眺めるアリス。

 

「よお!チビども、その様子なら大丈夫………じゃあねぇな」

 

ユズを見て少し眉毛を八の字に下げたネルは、溜め息を吐きながらいった。

 

「この作戦はお前らが鍵だ、そこまで緊張すんな。いつも通り戦えばいいんだよ」

 

「痛ッたー!?今凄い音が!?」

 

そう笑いながらモモイをバシン!と叩くネルと叩かれた場所を押さえて肩を見るモモイ、そんな二人を見てユズとミドリは、クスリと笑い先ほどまでの緊張した様子が僅かに和らいだようだった。

 

「ふふ、緊張していないか心配で来たのですが、どうやら大丈夫そうですね」

 

「そうだね部長、モモイ達も何時も通りの調子に戻ったみたい」

 

そんな彼女達の元にエイミに車椅子を押されたヒマリがやって来る。

そうして全員が準備を終えいざエリドゥへと足を踏み入れようとした時だった。

 

「え?」

 

「あら?」

 

「?」

 

「アァ?」

 

その場にいた全員の携帯端末からアラート音が鳴り響く。ゲーム開発部からはゲームの主題歌やBGMが。

エンジニア部からは某十八メートルくらいの人型機動兵器の主題歌やBGMが。

特異現象捜査部からは某ニチ朝のプリティでキュアキュアな主題歌やシンデレラなアイドルの曲が。

Cleaning&Clearingからはスイートなメロディの主題歌や出走しそうなライブ曲、名作ゲームのBGM、動物娘なパークの主題歌、進撃しそうな主題歌が流れ、全員が困惑しつつも携帯端末を取り出す。

すると携帯端末に、見覚えのない風景が映し出されておりゆっくりとカメラのアングルが変わっていく。

そうして映し出されていたのは、ミレニアムサイエンススクールの生徒会長である調月リオ。

彼女は胸元が最低限の布でまとめられた、背中が大きく開いている真っ白なドレスを着ており、両腕を背後に回されて赤黒い光を帯びた“鎖”に縛り上げられ、空中に吊るされている姿であった。

 

「エイミ!録画!録画ボタンは何処ですか!?」

 

「なにこれ!?こんなの対象年齢が上がっちゃうよ!?アリスはみちゃダメ!!ミドリ?なんでガン見してるのミドリ!?」

 

「いや、イラストに使えそうだなって……」

 

端末に映し出され調月リオの姿に、ヒマリは録画しようと躍起になりエイミに肖像権と言われくやしそうな顔をし、モモイは隣で頬を赤らめているミドリに困惑している。

そしてユズもまた顔を赤らめ、アリスの目を隠そうとするが身長差からかなわずにいた。

 

『随分と余裕そうですね、ミレニアムサイエンススクールの民よ』

 

その言葉と共に映像がズームアウトしていき、やがてリオの背後にある大きな玉座へと座っている天童アリスと似た様子の少女が映し出された。

 

『この通り、調月リオはちゃんと生きていますよ?本日はとても良い天気です、滅ぼすに丁度良い日です。私は宣言通り、これよりプロトコルATRAHASISを起動します』

 

「アリスが、アリスが貴方を止めて見せます!」

 

「アリスの言う通り!それに捕まえられた会長も返してもらうよ!」

 

アリスとモモイが言いはなった言葉にその場にいる全員の戦意が高まる。ネルは良く言ったと呟き、トキもまた頷く。

そんな中で携帯端末に映る名も無き神々の王女は、ニタリと嗤いながら口を開いた。

 

『調月リオを救いだそう等と考えているのですね。これを聞いてもなおその言葉を口に出来ますか?』

 

そう言いながら名もなき神々の王女が指をパチンとならすと、空中に吊るされていた調月リオが地面へと下ろされる。

俯いた彼女の顔を上げ、名もなき神々の王女は告げる。

 

『さぁ、告発です。貴方が“この世界を守るため”だと豪語してやってきたことを、あなた自身の口で語るのです』

 

愉しそうに名もなき神々の王女は、調月リオへと諭すように耳元で囁く。

だが調月リオは口を開かなかった。その目は何処か諦めたような様子だった。

 

『何を躊躇っているのですか?貴方は言っていたでしょう?"それでも私は間違っていない"と。それなら、言えるでしょう?』

 

名もなき神々の王女の言葉に、やがて調月リオは静かに口を開いた。

 

『私は、一人で名も無き神の脅威からキヴォトスを守ろうとした。そのために防衛都市エリドゥを建設した。建設に必要な資金は……ミレニアムサイエンススクールの部費から横領した』

 

「え?」

 

「そんな、会長が横領!?」

 

『横領の罪をセミナーの黒崎コユキに被せた。そして天童アリスに、“ヘイローの破壊”を選ばせ失敗した』

 

携帯端末に映った調月リオの罪。

その告発にその場にいた全員が言葉を失った。

ビッグシスターと慕われていた調月リオ。彼女が部費を横領した上にその罪をセミナーの一人に着せた。

それはその場にいた全員が動揺してしまう情報だった。

 

「コユキの債券発行は10億や100億で済む額じゃなかった」

 

その時、早瀬ユウカが口を開いた。

 

「多少スられたところで気づけなかった。それに、会計なのに会長の横領に気づけなかったのは私の責任よ」

 

「ユウカちゃん……」

 

後悔した様子のユウカの肩に手を置くノア。そんな彼女達へと名もなき神々の王女は告げる。

 

『これを聞いても、彼女を助けると?私へと挑むと言うのですか?』

 

「はい!アリスは挑みます!」

 

名もなき神々の王女の言葉に即答したのは、その手に光の剣:スーパーノヴァを持ったアリスだった。

彼女は光の剣:スーパーノヴァを握りしめ頭上へ掲げる。

 

「キヴォトスを救うのも、リオ会長を救い出すのも全部!勇者である私の役目です!!」

 

アリスの宣言に名もなき神々の王女は、一瞬だが安心したような笑みを浮かべ、直ぐに先程までのように嗤いながら言った。

 

『失敗作である貴方ごときが、魔王()に敵うとでも?』

 

「はい、アリスは勇者として!貴方を倒してみんなを救って見せます!!」

 

『楽しみに待っていますよ、勇者アリス?』

 

名もなき神々の王女の言葉と共に映像が消え、元の壁紙が表示される。全員が携帯端末をしまうと、アリスは開戦の声を上げた。

 

「クエスト、スタートです!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

要塞都市エリドゥ、その真ん中にそびえ立つタワーの最上階。

エリドゥ前へと集合していた天童アリス達の言葉を聞き通信を閉じた名もなき神々の王女、いや()()()()は安心した様子で目を瞑り微笑んでいた。

王女、貴方はこの世界で勇者として生きるのです。

これならばきっと誰も王女の力を恐れる事はないでしょう。私の知る歴史よりも良い方向へ進んでいる筈です。

 

「これでもう、大丈夫ですね……」

 

「貴方は、まさか」

 

調月リオは目を見開き、ケイを見つめそう呟く。

その言葉にケイはなにも答えない。ただ玉座へと座り、勇者の到着を待つのだった。

 




パンドラの箱、更新情報なし

ご愛読ありがとうございます
皆様明けましておめでとうございます。

今後も続きを書いていくので、最後までお付き合い頂けると嬉しいです。

感想、お気に入り登録、高評価

お待ちしています。

え?魔王ケイに縛られてるリオ会長のスチル?
誰か描いて♡(無視して良い)


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