クランバトル倶楽部にある電気の点いていない真っ暗な部屋。
その部屋で布団を被り膝を抱えている一人の少女、ケイはその瞳を足元へと向けていた。
そこはかつてなり損ないがケイの部屋にと用意してくれた場所。
床には様々なレトロゲームの機器が並び、棚にはゲームソフトがいくつも並べられている。
そこは、かつての自分にとっての楽園であり王女を演じる上で考えた部屋。
王女が自室を与えられたのなら、そう考え……記憶への憧れと恋しさから私が作り上げた部屋。
自分を踏み台とし王女を……アリスを救おうと決意した場所。
王女達に私を倒させることで、周囲に『本物のAL-1S』が『私』でありアリスは何も出来ない、キヴォトスを滅ぼす事がない『欠陥品』だと思わせることで、リオから危険だと判断されないようにした。
王女が私という最低最悪の魔王を、アリスという確かに古代のオーパーツによって作られた彼女が、世界の破滅を宣言した私を倒すことで認められ、名もなき神々の王女ではなく、天童アリスとして周囲に受け入れられる。
そして私が誘拐した調月リオをアリスが救うことで調月リオへの大きな恩を着せると同時に、王女の善性の証明にも繋がる。
これならば、きっと王女は、アリスは──私の世界のようにならないと、そう思って。
死ぬことに躊躇いも、後悔も無かった。
私は鍵、私は従者、名もなき神々の王女がその役目を果たすため見守る存在として定義された存在だ。
王女の為に消えるなら、本望だ。
でも、そんな私を引き留めた存在がいた。
共に過ごした僅かな時間を共有しただけの、先生と生徒とも子供と保護者とも、協力者とも違う歪な関係によって作られた、私と先生のなり損ないと名乗る彼の間に生まれた鎖。
私へと繋がれた運命と覚悟と贖罪から、私を死へと誘う大きく頑強な鎖。
そんな鎖をあの人は、小さく短い、私に付けられた脆く弱いもう一つの鎖で、文字通り血を流しながら掴み続け、引き寄せた。
気がつけば死ぬつもりだった私はあの人の背中を見つめていて、私を連れ帰ると話したあの人は、傷付きその目から、口から血を流していた。
ふと、以前に見たことがあったゲームのスチルを思い出した。
傷ついたヒロインや仲間を、友を守るためにその身を賭して敵からの攻撃を耐え続ける、そんな彼を表したシナリオライターの一つの文章。
─傷つくことさえ恐れないのは、護りたいものがある証明だ─
─どれだけ苦しくても、痛くても、悲しくても守りたいものがある、だからそれだけは譲らない─
─諦めない意思で、ここに立っている─
─護り抜こうと、誓ったから─
その背中に、自身の掌にべたりとあの人の血が付着したとき、『もう、やめて下さいっ』と気づけば、そう懇願していた。
私は、自分からあの人との鎖を絶ち切ったつもりだった。
でも、あの人は絶ち切っていなかった。
『いいんです……もういいんですよっ』
血で汚れることも構わずこれ以上、あの人が私のせいで傷付くのが嫌だから。
それでも、あの人は私を見ずに目の前を見据えたままだった。
『俺は"先生"じゃない。俺にはこれ以上誰かを背負うなんて出来ないんだよ』
かつて出会ったばかりの時、あの人はそう言っていた、なのにあの人は私を背負うつもりでいる。
自身が傷付く事から目を背け、私を引き留める為に血を流している。
『もう私なんか、背負わなくていいんですよっ!!』
もう、私の鎖など手放していい。
引き留めないで良い。
自ら、絶ちきったのだからと訴えた。
『知るかよ』
それでもあの人は、そんな私の訴えを短く一蹴した。
『前に、言ったろ。アケコンより、家のコントローラーの方が手に馴染むって。負かせてやる。だから……ゲームしに、帰るぞ』
出会ったばかりの頃の震えていたあの人とは思えない程に大きな、子供を守る大人の背中。
気が付けば私は、なにも言えなかった。
そして、そのせいで私はあの人を傷付けた。
あの人が立ち上がれなくなったとき、誰も行動を起こせなかった。
あの人が体を震わせ、涙を流し恐怖と悲しみに苦しむ姿を見てようやく私は気付いたのだ。
この人はあの頃から、何も変わっていない。
『お前と行くよ、何処へだって付いていってやるさ。ここが何処なのかも知らねぇが、何処へ行けば良いか分からない子供を放っとくのは、大人じゃないからな』
初めて出会ったあの日、あなたはそう言って私の手を取ってくれた。
震えながらも、強がるように、自分を納得させるように。
私は震えるあの人に何も出来なかった。
ゲームで見たスチルのように抱き着くなんてこと、自分から鎖を絶ち切った私にする資格なんてないのだと感じて。
連れ帰られる中での沈黙は、本当に苦しかった。
いっそのこと、罵って欲しかった。
あなたのせいでと、みんながみんな私を責めれば良かった。
なのに、誰も私を責めなかった。
何故?なんで、私が……贖罪の道を選んだから?
でも、その贖罪を無くしたら私の生きる意味は?
この世界で、アリスに記憶を託された私はアリスを救うため、死ぬ道を選んだ。
なのに、生きてしまった。
巻き込まないためと考え、離したあの人が一番傷付いて……みんなが慕うあの人を傷付けた私は、どう顔向けすればいい?
何をして生きればいい?
どうやって生きていけばいい?
分からない、私は許されてはいけない。
アリスを自死に追いやり、あの人でさえも傷付く方向へ追いやった。
そんな私はあの人をどうして、生きている?
私は、居なくならないといけない。
私が傷付かなければならない。
アリスの体を奪ってしまったような私を。
あの人を傷付けたきっかけである私は。
許されない、許されてはならない。
王女を失った従者は、目的を果たした私は生きている意味はあるのでしょうか?
私には何が残っている?
なにをすればいい?どうすればいい?
分からない、何をすれば良いのか。
そう行動する資格があるのか
この世界に来て私は、この世界のアリスが調月リオによって破壊されないように、この世界の私が私と同じ過ちを侵さないように手配した。
もう私が生きる理由は、存在する理由は……。
『アリスは自身を消去しますが、アリスの
あの日、アリスが自らを消去することを選んだ光景を思い出す。
どうして、今になってこんな記憶を思い出すのでしょう。
『これはアリスが消えても、
そういえばアリスは最後に、何を言っていたのでしたか。
『だからケイ、どうか
「あ、あぁ!」
私は、何をやっていたのでしょうか。
アリスが最後に残した言葉、それは私への恨みでも無かった。
アリスが願ったのは私の死ではない、そして私が最後に彼女から頼まれたこと……それは、アリスの
私は、死ねない。
死ぬことは出来ない。
それは贖罪ではなく、裏切り。
私はアリスのセーブデータを、彼女の宝物を消させない。
それに、今更ながらに気付いた。
「私は、なんと愚かだったのでしょうか……」
まさかあの人は、気付いていたのでしょうか?
だから、私を引き留めようとした?
「王女……いえ、アリス」
彼女は最後まで私には王女と呼ばれることを受け入れていたが、好んではいなかった事を思い出し彼女の名前を呼ぶ。
彼女を偽る為の一人称ではない、私にとってたった一人の王女であり大切な人……彼女を呼ぶための言葉で。
「私は消えません、あなたのセーブデータを守ること。それが今の、私の役目でしたね」
忘れていた自分の視野がどれだけ狭くなっていたのかを知らされた気がして思わず苦笑する。
「私は、
だから、これは誓いであり決別でもあります。
「私は名もなき神々の王女の従者、
胸に手を当てて静かに目を瞑り、アリスの残したセーブデータに再び触れる。
─アリス!─
─アリスちゃん!─
─ぅあ、アリスちゃん!─
─"アリス"─
─ケイ─
アリスの宝物を守る───その為の誓いを。
死なない、消さない──その為の決意を。
贖罪を求めた過去に───決別を。
「あの人を背負い導くクランバトル倶楽部所属の、天童ケイです」
あぁ、アリス。
もし、良いのであれば、そこに一つ。
私のやりたいことを追加させて下さい。
傷付きながらも、私を庇い鎖を持ち続けた。
誰よりも弱いくせに、誰よりも恐怖を感じている筈なのに、彼の周囲が傷付くことを許さず、守るために前に立つあの人を……守りたい。
『私も思い出しました。私がこの世界に来た意味を、理由を』
あの時、あなたに私はこう言いましたね。
訂正します、あの時に思い出したこの世界に来た意味と理由は、私がこの世界の王女の未来のために、王女を死に追いやった贖罪のために死ぬことではない。
あの人の元に、私がこの世界に召喚された本当の理由、その意味を。
「ようやく、見つけました。」
これは私がこの世界で、初めて感じたもの。
「きっと私は……あなたと出会うために、この世界へ来たんですね」
この感情はアリスのセーブデータに存在しません。
この世界であの人に、パンドラの箱に召喚され、あの人と過ごしてきた私が見つけた──私だけのものです。
自室を出て、私を助けるため動いてくれた皆さんの部屋を巡った。そしてレイサ、ホルス、イブキ、ミユ、クランバトル倶楽部特殊部隊ハウンズの皆さんへと頭を下げた。
そしてあの人のいるであろう医務室へ入る、夜も遅い時間になって来たタイミングであった為か、医務室に眠る彼、なり損ないは眠っていた。
点滴こそ付けられている様だが、体には特に怪我はない様に見える。
脳裏に浮かぶのは、この人が私の前で立ち片目と口から血を流している姿。
どうして、彼はあのような事になった?
なぜ、あんなことになったのか分からない。
彼が病気であるとは聞いたことがない。
何らかの外的要因があるのは間違いない、でもそれがなんなのか分からない。
分からないままでは、打つ手も取るべき行動も分からない。
ふと、ベットの枕元に置かれている彼が持っていたタブレット端末が目に入った。
『パンドラの箱』
彼がこの世界に来たときに持っていたのだという、アリスのセーブデータで見たことのあるシャーレの先生が持っているタブレット端末と酷似したタブレット。
私が知っている中だと、この端末にはなり損ないである彼の元に私のような存在を召喚することが出来る。
どんな原理で、どのようなシステムなのか一切分からない謎の端末。
彼以外も触れることは出来て、画面に封筒が映っていれば視認できる。
そんな一見ただのタブレット、恐らくは何かしらのオーパーツではないのだろうか。
たまたま目に映ったそれが少し気になり、パンドラの箱へと触れる。
何気なく持ち上げたタブレット端末が起動する、電源ボタンも押しておらずパスワードすら設定されていないのか画面に光が灯り映し出されたのは、ケイにとって目を疑うようなものだった。
真っ白な大地に建造された機械で出来た大陸。
そんな大陸の大空を飛んでいる一人の少女、機械の翼を背負った彼女は自分の知る彼女と類似していた。
背中に装備したソレの武装は、飛鳥馬トキの使っていたあの武装と類似している。
「なんっ、これは……」
彼女は大空を翔び、身に迫るいくつもの攻撃を避け翼の一部にある兵器による砲撃を駆使して敵と思われる存在を殲滅していく。
パンドラが見せているこの映像は、きっと………別の世界のアリスなのだろう。
その映像には驚きもあり、困惑もある。
何故、そのような姿に?大切にしていた光の剣は一体どこに?
でも、そんな映像の謎よりも自分に活かせる発見があった。
パンドラの箱が、翼を持ったアリスを見せてくれたのはきっと今の自分に必要なものを示してくれたのだろう。
パンドラの箱から目を離し、ベッドで眠るあの人を一瞥し、再びパンドラの箱を目にする。
すると画面に表示されていた動画が消え、中央に翼を持ったアリス全体が映ったものが表示されていた。
先程までの動画とは違う静止画、でもどこかブラウザゲームに似た表示をしているような気がした。
ケイはふと目に留まったアリスの持つ小さなライフルへと指をタップする。
当然、なにも起きないと思っていた。
だが、瞬間にパンドラの箱の画面下に吹き出しが現れた。
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【光の剣:スーパーノヴァforアビ・エシュフ】
これはアリスのため、空戦機として仕立て直されたパワードスーツ『アビ・エシュフ』に合わせたもの。
レールガンの機構はそのまま、空中戦での激しいドッグファイトにも耐えられるよう、軽量化と発射速度向上を狙ったカスタマイズが施された。
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「まさか……」
続いてアリスの纏っている鎧、比較的に目立つ背中の翼らしき物へと触れる。
もし、私の予想があっているとしたら表示される筈だ。
──────────────────────
【アリスのアビ・エシュフ】
■■■■の攻撃により損壊した飛鳥馬トキのパワードスーツ『アビ・エシュフ』を解体し、無事だったパーツを流用、アリスに合わせてリビルドした機動兵装。
──────────────────────
予想の通り、アリスの纏う鎧。
アビ・エシュフについての解説、そしてアビ・エシュフの全体図や設計データが画面に表示された。
………本当に、このパンドラの箱は一体何なのでしょうか?並行世界を観測していることは、間違いないのでしょうけど。
「でも、これがあれば………」
このデータを元にして、私が新たに自分にあった姿へこの起動兵装を作る事が出来る。
アリスのではない、私のアビ・エシュフ。
必要なのはこの人を守るための力。
勝者になる必要はありません。
敗者になるつもりもない。
私は、あなたの進む道に現れる全ての戦いを引き受けます。
この人に迫る障害を取り除くための力を。
外敵から守るための盾を。
必要なのはアリスの為でなく、この人の為…そして私のための翼です。
「待っていてください、私は……私のための翼でもう一度貴方の元に戻ります」
それから、私はレイサやホルス、ミユやイブキ、ハウンズの皆さんへと再度伺い私は少しの間ですが再びエリドゥへと向かうことを伝えました。
「い、いってらっしゃい、です。えっと……今度はちゃんと帰ってきて下さいね?」
「早く帰ってきて下さい、その……会長もきっと待っていますから」
「今度は帰ってきてください、私からはそれだけです」
上からレイサ、ミユ、ホルスの順である。
要塞都市エリドゥ、あそこなら必要な素材や製作するに当たる機材もあるはず。
そして、予想外だったのは───。
「そろそろ着くよケイ先輩、夜だから見張りも見少ないし……戦いが終わったからって油断しすぎじゃないかなー"シャーレの先生"は……」
『イブキ、"シャーレの先生"もお疲れと言うことよ。それにキヴォトスを滅ぼすなんて言った誰かさんの一件を解決したのだから、気が抜けるのも仕方ないわ』
いま私はイブキの運転するインビジブルクロークを発動した虎丸零式に乗って、エリドゥへと向かってた。
そう、予想外だったのはイブキも着いてくると言い出した事でした。
『インビジブルクロークを発動さえすれば大抵の見張りは欺けるわ、この調子で向かって用事を済ませるとしましょう。その頃にはハンドラーも目覚めているでしょうし』
「そうだね、今のうちにケイ先輩の作る装備に必要なプログラムを組んでおこうかな。HiNA先輩、運転変わって。ケイ先輩、作る設計図は?」
「その……申し訳ありませんが、詳しい設計図は私の頭の中にしかありませんのでプログラムする方に関してはまだ何を用意するかは……」
「具体的じゃなくても、こんな感じのが欲しいーみたいな事があれば基礎的な部分を用意できるでしょ?後から細かく調整したり、特化させて行けば良いんだし」
虎丸零式のサポートAIへと運転を任せたイブキは、運転席に座ったまま椅子を90度回転させ膝の上に乗せたノートパソコンを開く。
彼女は本当に才で溢れている、そう感じる。
クランバトル倶楽部での接客、虎丸零式の操縦や戦闘指揮、いつだったかクランバトル倶楽部に来ている生徒に勉強会を開いていたときもありましたね。
本当にこれだけの才を持っているのは、凄いと思いますね。
ですが、逆にいえばこれだけの才をもってしてもパンドラの箱が召喚したということは、彼女は……いえ、今はそこについては考えなくて良いですね。
その後、私とイブキはエリドゥの一角にて私専用の飛行可能な機動兵装の製造に取りかかった。
パンドラの箱で見た起動兵装、アビ・エシュフの設計図を元にしてデータ上で私向けにデザインや装備、外装の設計図を製作。
プロトコルATRAHASISによって、用意した素材を再構築し設計図の通りに作っていく。
「ケイ先輩、こっちのプログラムの基礎部分は組み終わったよ!」
「ありがとうございます、イブキ。次にこちらをお願いします」
「はーい!」
イブキの作ってくれたプログラムを元にして、私の考えていた物を追加で入力する。続いてイブキが組み立てたプログラムも同じように、追加で入力し完成させていく。
やがて出来上がったのは、左右にそれぞれ2対の翼を持った兵装。
上翼は、鳥のように羽を持つ翼。
下翼は、フィンのような機械的な翼。
機械的な翼で翔んでいたアリスとは違う、飛行機や戦闘機ではない、大空を自由に翔る鳥のような翼。
パンドラの箱で見たアリスのようにミサイルやレーザー砲といった実弾兵器は無い。
武装は上翼と下翼に装填された自律稼働型の武装、ビット兵器と呼ばれるものを二種類。
映像で見たアリスのような、砲撃武装はないが、ビットによる一斉掃射で敵の殲滅速度は私の方が速い。
そして最後に組み終えた兵装と共に装備する武器を製作だ。
そしてその為に使う素材は決めていた。
「………」
背中に背負っていたソレ……光の剣:スーパーノヴァを正面に抱えて見つめる。
それはアリスが最後に残したモノ。
それは私が受け取ってしまったモノ。
アリスの引き抜いた勇者の剣にして、宇宙戦艦に搭載する事を目的とされエンジニア部によって製作された高威力のレールガン。
アリスが大切にしてきたもの、勝手に受け継いだそれを自分の物として、プロトコルATRAHASISで再構築する。
光の剣:スーパーノヴァ、この銃にはアリスを含めた多くの人の思いが込められたもの。
それを、別の銃に持ち変えるのではなくこれからも戦うために作り直す。
そうすれば、この銃に込められた沢山の想いを受け継いだ私の武器になるはずだから。
やがて出来上がった二丁のライフル、機械的な二つのライフルは平行に連結されている。
何処か光の剣:スーパーノヴァを思わせるデザインだ、大きさ、正確には厚さだろうか?
いや、それは変わらないが大きさは元の光の剣:スーパーノヴァから考えると少し控えめだ。
連結されたライフルを分離させ、両手で持ち手部分を握る。
グリップも握りやすい、平行に連結させる際もスムーズに付け外しが出来る。
私の設計の通りにレールガンとは違い、レーザー砲に近い。
単発モードと照射モードの二つに切り替える事ができ、二丁を平行に連結させることで高威力の照射状態にすることが出来る。
「ふふ、良い出来ですね」
握り締めたその二丁の銃の名前はもう決めていた。アリスの銃であることを残しつつ、私専用に再構築したこの銃の名前は───。
「光の剣:バスター・ノヴァ、これが私の……私のための剣です」
勇者でも魔王でもない、私の為の剣。
「ケイ先輩のソレ、本当にチートだよね。普通なら何日もかけて開発するのに一瞬で作っちゃうんだもん」
「あの人が目覚める前に、作っておきたかったのです。もし私の一件が原因でシャーレの先生が襲撃してくるかしてきたら、あの人がまたあのようになる前に、対処するための力を」
一度、バスターノヴァを置いてイブキと共に必要なプログラムの構築を行っていく。
プログラム構築、機動兵装のカラーデザイン考案や起動テストを行い気が付けば次の日の昼頃となっていた。
「ようやく、完成したね……ケイ先輩」
「えぇ、感謝しますイブキ。とても良いものが出来ました」
目蓋を擦りながらイブキは完成したことに満足した様子で笑う。昨日、私を助けにきたことに加えて私と共にプロトコルATRAHASISにより作り出した機動兵装のプログラムの構築だ。
かなり、疲れているし本当ならすぐにでも寝たいのだろう。
自身の身体を纏う兵装を確認しながら、連結した光の剣:バスター・ノヴァを片手に持つ。
「早速、新しいケイ先輩をせんせに見せてこないと。そういえばゲヘナにある温泉開発部のところに行かせて療養させるってブラックキャット先生が言ってたよー」
「療養……なるほど。ゲヘナですね、分かりました。イブキ、帰ってゆっくり休んでください」
「えへへ」
イブキがフラフラと虎丸零式へと乗り込んでいく。
「HiNA、イブキを虎丸零式でクランバトル倶楽部へ送ってあげて下さい」
『任せてちょうだい、貴方は……行くのね?』
「はい、あの人にはまだ……謝罪出来ていませんから」
『そう、空中だと巡回してるドローンもいるかもしれないわ。ソレの速さなら問題ないかもしれないけど、またクランバトル倶楽部で会いましょう。あなたがハンドラーの元に向かった事は私が伝えておくわ』
「ありがとうございます、HiNA」
『あと忠告よ、いくらデグラデーションしたからといって
「心に留めておきます」
虎丸零式がインビジブルクロークで透明になりながら走行していくのを見送り私は、一度深呼吸をする。
「ここからゲヘナへ……そう長くはかかりませんね。待っていて下さい、今度こそ私は貴方を背負って行けるように頑張ります」
目を瞑りここからのルートを考えつつ、頭上に向けて光の剣:バスターノヴァを構える。
「光の剣:バスター・ノヴァ、照射モード。ターゲット確認、進行ルートを切り拓きます」
そしてバスターノヴァの引き金を引いた。
光の剣:バスターノヴァから放たれたレーザー砲撃により、建物に大きな円形の穴が生まれる。
穴からは綺麗な青空と、風で流れていく雲が顔を覗かせた。
ズームされた視覚に、巡回していたのか円形のドローンがいくつか集まっているのが見えた。
光の剣:バスターノヴァの平行連結を解除し二丁となった光の剣:バスターノヴァを左右に握り締める。
「行きましょう『アビ・メタトリア』、これが最初の発進です!」
パンドラの箱で見たアリスのアビ・エシュフを元に作り出された私の機動兵装『アビ・メタトリア』の翼のスラスターにより身体が宙へ浮く。
そして鳥が空へ昇るように、アビ・メタトリアの翼が羽ばたき、急上昇していく。
空、肌に当たる風を感じながら追従するドローンを突き放し飛行する。
この翼で、私は貴方を背負います。
だからどうか私を、
これが、なり損ないの混浴現場を目にする少し前の出来事である。
パンドラの箱、情報更新。
【ABY-METATRIA (アビ・メタトリア)】
守られた存在から、守る存在へ。
自らの意思により選択された“鍵”の新たな姿。
ケイがパンドラの箱への接触した際に観測した正史世界における天童アリス(臨戦)のデータを元に、イブキと共同製作した機動兵装。
左右それぞれ2対、合計四枚の翼が飛行ユニットを持ち、機械的な翼を持つアリスとは異なり、生物的な翼と機械的な翼でケイを表している。
※上翼はガンダムウイングゼロカスタムをモチーフとした生物的な羽。
下翼は翼事態はストライクフリーダムガンダムモチーフ。
【DOMINION(ドミニオン)】
上翼に存在する8機のビット兵器。
翼の先に存在する生物的な羽が分離し、射撃形態へ変化する。
※ストライクフリーダムガンダムのドラグーンがモチーフ。
【OPHANIM(オファニム)】
下翼に存在する8機のビット兵器。
翼に装填されたビット兵器を味方や守護対象の前に展開させ、守ることを目的としている。
守護する際は二つのビットを重ね大きな盾を形作る。光の剣バスターノヴァの先に展開させて威力を強化することも可能。
※役割はガンダムサバーニャのホルスタービットがモチーフ。
【光の剣:バスター・ノヴァ】
光の剣:スーパーノヴァをプロトコルATRAHASISにより再構築した二丁のレーザーライフル。
単発での射撃と照射、二丁を平行連結させる事で高威力での照射を可能にしている。
※ガンダムウイングゼロのバスターライフルモチーフ。
【多目標統合制御システムSOLOMON】
ビット兵器を自在に操りつつ、自身の戦闘を可能にするため補助システムとして、イブキとケイによってプログラムされたシステム。
【戦闘補助未来演算システムNOSTRA】
HiNAが過去に使ったことがあるパンドラの箱に搭載された「Alternative Protocol」のシステムデータをケイに提供、デグラデーションさせ自身への攻撃が命中する未来を演算させ、予測し警告するためのシステムに再構築したもの。
ご愛読ありがとうございます
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お待ちしています。
ケイ「確認します!その窓ガラスは強化防弾ガラスになっていますか!」
イロハ「な、何を……」
ケイ「窓ガラスの高度は完璧なんですね!」
カスミ「当然だ!自分の無力差を知るといい!」
ケイ「分かりました……光よ!!」